toremorの旅手帳

鉄道と旅行と温泉と。大学生の放浪の様子をご覧ください。

台風から1年、上田電鉄の現在はどうなっているのか?

「赤い橋」が流された上田電鉄

f:id:toremor:20200719211809j:plain

上田電鉄千曲川橋梁。

昨年の台風19号の被害を受け、千曲川橋梁の一部が流されてしまった上田電鉄

現在はどうなっているのでしょうか?

取材班(一人)は現場に向かいました……

 

 

現在も上田ー城下間で代行バスによる運行が続く

f:id:toremor:20200719211545j:plain

一部流失した千曲川橋梁。

上田電鉄は上田ー別所温泉間を約30分で結ぶローカル線です。

昨年の台風19号で、上田電鉄の上田ー城下間にかかる「千曲川橋梁」の一部が流失してしまいました。

現在では堤防の工事と合わせて、橋梁の復旧作業が続けられています。

 

そのため上田駅と橋を渡ってすぐの城下駅の間の路線は、事実上の休止状態となっていて、すべての列車は城下駅発着となり、城下駅から上田駅まで代行バスに乗り換えとなります。

f:id:toremor:20200719212032j:plain

「丸窓電車」の愛称で親しまれた上田電鉄の車両。なんと現役引退後すべての車両が解体されずに保存されている。

上田電鉄上田駅の現在

f:id:toremor:20200719212607j:plain

列車の来ない上田電鉄上田駅のプラットホームは、広場として公開されている。

列車しばらく来ることのない上田電鉄の上田駅は、広場として開放されています。

記念撮影ができるパネルや復旧工事の様子などが展示されていて、わずかながら観光客の姿もありました。

f:id:toremor:20200719213020j:plain

上田駅ホームには復旧工事の状況が展示されている。

そして筆者の目に留まったのはこの鉄道警戒標識

f:id:toremor:20200719212818j:plain

ホーム先端にある鉄道警戒標識。「台風」の文字がある。

当時のものなのでしょうか、「警戒:台風」の文字でホーム端に取り付けられています。

現在進行形で「台風の復旧工事をしている」という想いをひしひしと感じます。

f:id:toremor:20200719213111j:plain

上田電鉄上田駅。

上田駅のきっぷ売り場は営業しているようで、券売機も使えるようです。

 

さて、鉄道代行バスは上田駅の温泉口から出発します。

代行バス乗り場に移動すると、そこには想像以上の列が…

f:id:toremor:20200719213534j:plain

代行バス乗り場は列になっていた。

写真にはありませんが、筆者の背後にもほぼ同じくらいの長さの列がありました。

訪れたのは休日の昼下がりでしたが、代行バスは満席、立ち客もかなりいる感じでした。

f:id:toremor:20200719213818j:plain

代行バスは通常の路線バスの車両が使われる。

代行バスは、別所温泉からやってきた列車が城下駅に着く時間に合わせて上田駅を出発します。

本来であれば城下駅に到着する列車がそのまま上田駅に到着し、折り返しで運用に入ります。

したがって現状では、普段の上田駅の出発時間より相当前倒しで代行バスに乗車する必要があります

 

仕方ないですけどね~

 

バスに揺られて10分もしないうちに城下駅に到着。

城下駅では臨時の切符販売所が設けられ、こちらでもきっぷの販売をしています。

f:id:toremor:20200719213958j:plain

城下駅はバスからの乗り換えの乗客で賑わう。

突然ターミナル駅の役割を背負った城下駅、列車の到着とバスの乗り換えが重なると、かなりの人数になります。

f:id:toremor:20200719214232j:plain

城下駅に停車中の上田電鉄1000系。当駅が臨時のターミナル駅になっている。

 

「赤い橋」の現在を眺める

f:id:toremor:20200719214644j:plain

千曲川橋梁の流失箇所には近づくことはできない。

一方、流されてしまった千曲川橋梁を眺めてみます。

赤色のトラス橋、1924年開通の歴史ある橋梁です。

 

当時の地方私鉄の橋梁は、国鉄からの払い下げたり、海外製のいわば「お古」の橋梁をかけることが多かったのですが、なんとこの橋は上田温泉電軌(上田電鉄の前身)の独自設計で新造。

 

立派な橋だっただけに流失は残念でしたが、廃線にならず、復旧(というよりは一部新造?)が決定しただけでも嬉しいですね。

 

ニュースでたびたび報じられた鉄道橋の途切れた箇所は、立ち入り禁止で見学もできません。

最も城下駅寄りの一つのトラス(?)が流されてしまったことが分かります。

f:id:toremor:20200719215022j:plain

千曲川橋梁を下流側に向かって眺める。右端が流失部分。

では反対側に回ってみましょう。

f:id:toremor:20200719215237j:plain

台風被害の復旧のスローガンは"ONE NAGANO"

近づくとこのトラス橋、結構迫力があります。

かなり重厚な造りで、歴史を感じますね~

 

おお、東急建設も関わっていますね~流石…

後に述べますが上田電鉄は東急系列の鉄道会社です。

 

地域に愛され続ける上田電鉄

f:id:toremor:20200719215649j:plain

f:id:toremor:20200719215545j:plain

別所温泉駅や上田駅には寄せ書きや折り鶴が飾られている。

上田駅にもその反対の終点、別所温泉駅も寄せ書きやメッセージ、折り鶴が飾られています。

かなり地域住民に愛されているという雰囲気が、一度行っただけでも感じとることができます。

 

事実、上田電鉄の早期復旧のために5万人の署名や3000万を超える寄付が集まり、これを見た上田市も補助金を出すことを決めました。

上田電鉄の千曲川橋梁を上田市が所有する形をとることで、交付税を復旧費用に充てられるようにする、という斬新なアイデアで復旧費用を賄っています。

f:id:toremor:20200719215840j:plain

f:id:toremor:20200719220228j:plain

別所温泉駅は美しい景観の残る駅舎である。

余談ですが上田市は公共交通機関への投資が熱心で、市が補助金を出してバスの上限運賃を設けたりして、利用の促進をしています。

これはこれからの高齢化社会を見据えたもののようです。

 

地域住民の熱意が自治体を動かし、鉄道を早期復旧させる決断に至った今回のケースは、「公共交通機関としての鉄道の今後のあり方」を考える上でも一つのモデルになるかもしれません。

 

おまけ:長野県と東急創始者の意外な関係【#GoTo慶太キャンペーン】

f:id:toremor:20200719220732j:plain

先日、Twitterで「go to トラベルキャンペーン」にあやかりまして、一部で#GoTo慶太キャンペーンなるハッシュタグが広がりました。

 

五島慶太とは東急の創始者であり、「渋谷」という町の初代の大家さんともいうべき実業家です。

実はこの方、長野県の出身

 

 

上田電鉄は東急グループ

五島慶太の出身地は長野県青木村で、上田電鉄の前身、上田温泉電軌青木線の沿線が実家でした(現在は青木線は廃止)。

青木線沿線の名湯、田沢温泉は五島慶太ゆかりの旅館も現存しています。

www.toremor.work

 

青木村には五島慶太の資料館が最近オープンしました。

f:id:toremor:20200719222316j:plain

青木村に今年6月に完成した、五島慶太未来創造館。入場無料。

かつてこの地域では生糸の生産が盛んで、また沿線に温泉地があったことで、上田電鉄の路線がいくつもありました。

f:id:toremor:20200719221119j:plain

上田電鉄下之郷駅にはかつての路線の分岐の跡が残る。

ところが全国の地方私鉄の例に漏れず、需要の低下から現在は別所線のみになっています。

 

 

上田電鉄は1958年から東急の系列会社となり、現在へ至ります。

今では車両も東急の中古車両を使っています…おかげで車両のvvvf化も達成。

車両内装もほとんど東急時代のままなので、乗車するとものすごい「東急感」があります。

f:id:toremor:20200719221408j:plain

f:id:toremor:20200719221508j:plain

かつての東急をご存知の方はこの座席でピンとくるのではないだろうか。下之郷駅には「湯たんぽ」こと東急5200系も留置されている。

 

意外な路線も五島に救われた

東急の開発の陰で、五島はふるさと信州の鉄道も支えていました。

 

上田電鉄だけでなく当時私鉄だった現在の飯山線も、五島慶太の支援で廃線を免れた歴史があります。

飯山線は五島の支援の後、国有化され現在に至ります。

f:id:toremor:20200719222041j:plain

飯山線も私鉄時代に五島の支援で助けられた。写真は森宮野原駅に停車中のキハ110形おいこっと編成。

他にも上田周辺が凶作の際にも、東急で人材を雇って学生の就職を支援したという話もあります。

故郷想いの人物だったんですね~

 

五島慶太が支援した上田電鉄は、現在では地域住民に支えられて復旧工事が進み、2021年度春の開業を目指しています。

 

当ブログでは、上田電鉄の今後の益々の発展をお祈りしております!

 

※ブロガーバトンを渡していただいた方、まことにありがとうございました!

これからも続けられるよう、頑張ってまいりますので今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

【貴重】651系特急「草津」、3列グリーン車に座る

「格」が違う!?651系のグリーン車で上野へ

f:id:toremor:20200711202149j:plain

グリーン車趣味が加速した筆者が、是非乗ってみたかった651系のグリーン車。

今や特にJR東日本では、「3列グリーン車」は豪華で貴重なものとなりました。

 

今回は651系の特急「草津」のグリーン車で、かつては多くの特急が発着していた上野駅の地平ホームへ向かいます!

 

 

今のJR東日本の基本はグリーン車も4列

f:id:toremor:20200711224806j:plain

最近のJR東日本の標準的なグリーン車は4列。これは特急「あずさ」「かいじ」などに使用されるE353系のグリーン車。。

最近のJR東日本の特急列車の標準的なグリーン車は、普通車と同様の4列シートが標準です。

一部からは「ぼったくりグリーン車」と揶揄されていますが、その代わりJR東日本のグリーン料金は他社よりも低く設定されています。

(個人的には筆者が特急「あずさ」のグリーン車の混雑具合を見ても、4列の方が利用実態に見合っているような気もします…)

 

それに対して、651系のグリーン車はゆったり3列のシートを採用をしているのが特徴です。

 

座り心地はいかに…?

f:id:toremor:20200711202221j:plain

651系のグリーン車のつくりはかなりしっかりとしている。

気になるシートピッチ(座席の前後間隔)は意外と国鉄時代と変わらずの1160mm。

標準的な広さなんですが、若干狭く見えます。

 

これは座席自体が大型になっているため、そう見えるというだけみたい…

 

座席のヘッド部分ぐらいまでモケット張りになっていて、座ると包み込まれるような気分になります。

新幹線のグリーン車の感覚とよく似ています。

 

座席テーブルは前の座席の後ろに設置されていて、ひじ掛け部分には机はありません。

取り出してみると結構微妙な位置で、お弁当とかは食べづらいかもしれません。

f:id:toremor:20200711202250j:plain

座席テーブル。

フットレストは固定されていて、靴を脱いでひっくり返すタイプ。

短足な筆者なので参考になるか分かりませんが、ちょうどいい感じです。

f:id:toremor:20200711202204j:plain

フットレスト。

各座席に読書灯もついています。

f:id:toremor:20200711202304j:plain

f:id:toremor:20200711202607j:plain

スイッチのon/offを切り替えることができる。

窓は大型で、上野方面に向かうときは偶数番の席に座ると眺望が良好です。

f:id:toremor:20200711225604j:plain

大型の窓も登場当時は斬新だったのかもしれない。

細かい部分ですけど、LED表示器もどことなくなんといいますか、JR初期の雰囲気が漂います。

f:id:toremor:20200711225345j:plain

651系のLED表示器。

こちらは公衆電話のスペースだったところでしょうか…

「途中トンネル、山間部等使えない区間がございます」なんていう放送もいつの間にか消えてしまいました。

f:id:toremor:20200712102122j:plain

公衆電話のスペースの跡?

ドアもまたJR初期っぽい(?)感じ…

このような鉄道のデザインも流行がありますよね~

f:id:toremor:20200712102404j:plain

651系のドア。

洗面台を見ても、国鉄時代の古めかしいものから新しくしていこうという意気込みが感じられます…

特にトイレ周りは新型車両になるにつれて大幅に改良されていく印象があります。

f:id:toremor:20200712102730j:plain

651系の洗面台。

そもそも651系は常磐線の速達タイプの特急「スーパーひたち」として使われていた車両。

651系のグリーン車は登場から3回程度リニューアルされていて、現在の形になっています。

f:id:toremor:20200712102925j:plain

高崎線系統の651系は現在は直流化され7両編成。グリーン車もついている。

以前の座席はオーディオサービスがあって、液晶テレビがついていたのだとか…

グリーン車の座席に座って待っていると、「スーパーひたちレディー」がヘッドホンとコーヒーと持ってやってきて、ひざ掛けのサービスもあったらしい…

もはやビジネスクラスですね~

 

登場当時のキャッチフレーズは「タキシードボディーのすごいやつ」

f:id:toremor:20200711202124j:plain

渋川駅に入線する651系。

そもそも651系は、JR東日本が随分と力を込めて製造した車両です。

見た目も現在では普通な感じがしますが、国鉄型の車両だらけだった時代にこのデザインは斬新であったはずです。

 

タキシードボディーと呼ばれた外装ですが、特急「草津」に転用する際にオレンジ色の線が引かれました(それ以外はほぼ変わっていません…)。

f:id:toremor:20200711230154j:plain

高崎線系統に転属した際にオレンジ色の帯が追加された。行先表示器は幕式。

設計最高速度はなんと160km/h。

当時スーパー特急と呼ばれる計画(新幹線程度の規格で路線を整備し、線路幅はそのままにして高速で走行するというもの)が流行っていたため、それを見据えて開発されたとの噂があります。

 

ちなみに先代の特急「スーパーあずさ」に使用されていたE351系(登場も651系とだいたい同時期)も設計最高速度は160km/hでした。

これも同じ理由らしいですが、真相はわかりません。

f:id:toremor:20200711230426j:plain

特急「スーパーあずさ」に使われていたE351系。振り子式で設計最高速度は160km/h、現実にはオーバースペック気味だった。

車両の外見やスペックはさることながら、先ほど述べた「スーパーひたちレディー」による豪華なグリーン車サービスもあったわけですから、相当気合が入った車両だったことがうかがえます。

 

特急「草津」は上野駅地平ホーム発着

特急「草津」は上野ー長野原草津口間を平日は一日2往復、休日は3往復しています。

観光地で言えば草津温泉や伊香保温泉へ向かう列車です。

f:id:toremor:20200712104911j:plain

f:id:toremor:20200712104942j:plain

伊香保温泉は渋川駅からバスでアクセス可能。バスの本数も多く意外と公共交通機関で行きやすい。

筆者は伊香保温泉最寄りの渋川から高崎や熊谷、大宮などを通って上野駅へ。

尾久から上野にかけて、いまや貴重な185系と2回もすれ違うサプライズで浮かれていました。

 

意外かもしれませんが、JRの上野駅って線路名称上は東北新幹線と東北線しか乗り入れていないんですよね~あんなに線路があるのに…

 

特急「草津」の上野発着便は地平ホーム(頭端式ホーム)に止まります。

上野駅地平ホーム、かつては寝台特急や寝台急行のターミナルとして使われた往年のホームでしたが、現在では「特急草津」はここを発着する数少ない特急となりました。

f:id:toremor:20200712103600j:plain

上野駅に到着した特急「草津」。

 ついでにブルートレイン末期に寝台特急用のホームとして使われた13番線を見物。

f:id:toremor:20200712105158j:plain

寝台特急が発着していた上野駅13番線。

JR東日本の豪華寝台列車「トランスイート四季島」はこのホームから発着しますが、実際には13.5番線(?)から乗り込むようです。

ここ、荷物積み下ろし用のホームだった場所です。

f:id:toremor:20200712105352j:plain

f:id:toremor:20200712105412j:plain

上野駅13.5番線、四季島専用ホームへはゲートを通って向かう。通常は立ち入りできない。

 13番線をよく見るとプラットホームのデザインが凝っていることが分かります…晩年は特別なホームとして使われることが多かったのです。

f:id:toremor:20200712105539j:plain

上野駅13番線、ホーム床のデザイン。

個人的には、別に集団就職した世代でもないんですけど、もともと地元が東京の方だったこともあり、愛着のあるターミナル駅です。

やっぱり「上野は俺らの心の駅」ですね~

f:id:toremor:20200712105705j:plain

f:id:toremor:20200712105807j:plain

上野駅は東京近辺でもっとも「終着駅」らしさが残っている駅かもしれない。



 

 

北陸新幹線開業で東京ー直江津間は本当に「遠くなった」のか

北陸新幹線開業の明暗?

f:id:toremor:20200702222250j:plain

2015年3月に金沢延伸開業が達成された、北陸新幹線。

東京ー金沢間の最速は2時間28分と、1日がかりで移動していた時代と比較すれば圧倒的に所要時間が短縮されました。

 

金沢の観光ブームに沸く一方、新潟県上越市周辺では「北陸新幹線開業後、以前より東京からの所要時間が伸びたのではないか」という指摘があり、密かに話題になりました。

f:id:toremor:20200702224558j:plain

直江津駅とハムエッグ。

上越・直江津周辺は、ある意味で新規路線の開業による「振り回された」歴史の積み重ねがあります。

新幹線開業から5年、以前と比較して現在の東京ー直江津間は便利になったのか、不便になったのか見ていきます。

 

 

上野ー直江津間4時間、在来線特急「あさま」の時代

f:id:toremor:20200702222404j:plain

特急「あさま」に使用された189系。

1997年の北陸新幹線長野開業以前は、在来線の特急「あさま」の一部が長野駅を経由し、直江津駅まで乗り入れていました。

他にもいろいろ走っていましたが今回は割愛。

 

「在来線で4時間」で直江津まで…意外と早かったんですね~

よく考えれば、横川ー軽井沢間や長野以北の単線区間を除けばボトルネックはありません。

 

ちなみに長野から直江津までは、特急「あさま」で所要時間が1時間15分程度だったようで、こちらも意外と距離があります。現在でも新幹線では約2駅ほど離れています。

 

「長野新幹線」と「ほくほく線」の開業

北陸新幹線と信越本線を乗り継ぐルート

f:id:toremor:20200702222549j:plain

黒姫駅に残る「妙高」の表示板。特急「みのり」から快速、普通「妙高」へと格下げされた。末期の妙高号は189系で運転された。

1997年に北陸新幹線が長野駅まで開業し、在来線特急「あさま」が廃止されました。

この時、長野から新潟方面に向かう優等列車の整理が行われ、長野ー直江津ー新潟間に特急「みのり」が設定されました。(長野ー新潟間は2往復)

 

東京から長野まで新幹線で約1時間30分、長野から直江津までも約1時間30分で、

乗り換え時間を含めないと東京ー直江津間は約3時間まで短縮されました。

上越新幹線とほくほく線を乗り継ぐルート

f:id:toremor:20200702222946j:plain

f:id:toremor:20200702223012j:plain

ほくほく線の十日町駅。列車走行位置もわかる。

一方この時、ほぼ同時に犀潟ー十日町の新規短絡路線「ほくほく線」が開業。

上越新幹線と接続して越後湯沢から直江津を経て金沢方面へ向かう特急「はくたか」の運行が開始されました。

この記事をご覧の皆様ならご存知かもしれませんが、「ほくほく線」はかなりの高規格路線であり、特急「はくたか」は最高速度160km/hでこの区間を走行します。

 

上越新幹線と特急はくたかを乗り継ぐと、東京ー直江津間は2時間少々

 

このことからわかるように、「上越新幹線と特急はくたか」を乗り継いだ方が早かった訳です。

f:id:toremor:20200702223209j:plain

「スーパー特急」として160km/hで走行した実績を持つ、681系2000番台。元はくたか編成。

そのため、東京から長野経由で直江津方面へ向かう行き方はマイナーになり、特急みのりは快速へと格下げされてしまいます。

 

また、新幹線開業以前から長野県と新潟県の県境付近(妙高高原駅近辺)の利用客が少ないため、本数も少なかったのです。

このことは、現在に至るまで上越の鉄道事情を苦しめる一因になっています。

f:id:toremor:20200702223443j:plain

妙高高原駅に停車中のしなの鉄道115系。

f:id:toremor:20200702223544j:plain

妙高高原駅に停車中のえちごトキめき鉄道妙高はねうまラインの車両。

北陸新幹線開業で状況は一変

意外と便利な上越妙高駅

f:id:toremor:20200702223657j:plain

上越妙高駅。それほど大きくはないが、乗り継ぎ客は多く見られる。

2015年に北陸新幹線が金沢まで延伸された際に、上越妙高駅が設置され、在来線特急「はくたか」は廃止されました。

上越妙高駅は元信越本線の脇野田駅というローカル駅でしたが、移転してなんと新幹線駅に格上げ…

 

東京ー直江津間は北陸新幹線で上越妙高駅まで行き、上越妙高駅からえちごトキめき鉄道に乗り換えて直江津へ行くルートが一般的になりました。

 

東京ー直江津間の所要時間はトータルで2時間30分程度と、はくたか時代よりは遅くなりましたが、増加した時間は15分くらいのものです。

 

基本的に上越妙高駅では新幹線と直江津方面の普通列車、あるいは新潟まで運行される特急「しらゆき」との接続がうまく取れているダイヤになっていて、特に使いづらいという印象はありません。

 

しかしどうやら時間帯によっては、新潟から柏崎などを通って上越妙高まで向かう特急しらゆきと北陸新幹線の接続が50分近くなることもあるようで、これはかなりのネックになりそうです。

f:id:toremor:20200702223821j:plain

上越妙高駅に停車中のE653系特急「しらゆき」編成。この編成の歴史もなかなか壮絶だが、それはまた別のお話である。

一方、特急「はくたか」が通らなくなったほくほく線では、日本最速の快速「超快速スノーラビット」を運行しこれに対抗(?)しています。

3セクの「えちごトキめき鉄道」と3セクの「北越急行ほくほく線」が競合している形になります。

 

越後湯沢からのほくほく線最速の「超快速」を利用すると、東京ー直江津間の所要時間は北陸新幹線経由でも上越新幹線経由でも変わらなくなります。

f:id:toremor:20200702224033j:plain

直江津駅にくる特急は大幅に少なくなったが、今でも多くの種類の鉄道車両が見られる。車両の種類を見ても東西境界駅の面影はありそうだ。

以前は停車駅を絞った超快速が複数本運転されていましたが、近年は「超快速」と名がついても停車駅が増加傾向で、速達タイプの超快速は1日1本にとどまっています。

 

直江津方面の直通需要より、周辺の需要を拾った方が効果的なのかもしれません。

元も子もありませんが、そもそも東京ー直江津間を移動する需要もそこまで大きくないのかも…?

 

まとめ

f:id:toremor:20200702224308j:plain

直江津駅に残る「はくたか」の乗車位置目標。

かつては特急街道としてにぎわった直江津周辺は新幹線開業後、鉄道路線として「微妙な位置」になってしまい、現在では3セク同士が競合するエリアとなりました。

北陸新幹線開業後不便になったというイメージが先行しがちな一方、意外と接続も良く、所要時間もあまり変化はありません。

 

3セク化された元信越本線のえちごトキめき鉄道も経営難がささやかれていますが、観光列車なども運行されていて人気があります。

 

上越周辺は鉄道激動の時代を生き抜いた地域と言えるかもしれません。

今後も期待したいですね~

f:id:toremor:20200702224415j:plain

直江津駅には今でもかつての賑わいを彷彿とさせるものが残っているので、探すとなかなか面白い。

 

トワイライトエクスプレスも再現か!?駅直結の鉄道展示施設「糸魚川ジオパル」が凄い

糸魚川駅の鉄道展示はなかなか豪華

f:id:toremor:20200627215233j:plain

北陸新幹線が開業し、寝台列車や在来線特急が姿を消した糸魚川駅。

しかしながら、リニューアルした駅に直結した「糸魚川ステーションジオパル」では、沿線に関連する貴重な展示品やジオラマを無料で眺めることができます。

 

今年、新たな展示の目玉となりそうなのは「トワイライトエクスプレス」の再現車両。

車体そのものの保存は叶いませんでしたが、細部に至るまでの熱意ある再現を近日お目にかかれるかもしれません。

 

 

長大ホームが往年の活躍を思わせる糸魚川駅

f:id:toremor:20200627220615j:plain

糸魚川駅在来線のホーム。非常に長いが基本的に1両の普通列車しか来ない。

現在の糸魚川駅の在来線ホームには、元北陸本線のえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの列車が1時間に1本程度、大糸線が2時間に1本程度発着しています。

f:id:toremor:20200627220211j:plain

えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン(旧北陸本線)の普通列車。

f:id:toremor:20200627220200j:plain

大糸線に使用されるキハ120形。

新幹線が開業する前は、これでもかというほどの種類の特急が発着していましたが、現在では糸魚川駅を通過あるいは停車する在来線特急は1本もありません

 

長大ホームに停車する1両の車両…寂しい部分もありますが、東京駅から約2時間で糸魚川まで到達できるというメリットは大きいですね…仕方ない部分もあります。

f:id:toremor:20200627215022j:plain

f:id:toremor:20200627215009j:plain

糸魚川駅は新幹線が停車するようになった。1時間に1本程度の本数がある。

豪華な展示、駅直結の「糸魚川ジオパル」

f:id:toremor:20200627215100j:plain

ジオパルの入口。

糸魚川といえば「ヒスイ」という宝石で有名な街で、日本海の海岸に出れば一般人でもヒスイの石ころを拾うことができます。観光もこれを目玉にしていて、石好きに優しい雰囲気がありますが、一方で鉄道マニアにも優しい部分があります。

f:id:toremor:20200627221028j:plain

糸魚川でとれるヒスイの原石。一般人はこの大きさのものを手にすることは難しい。

 鉄道マニア必見なのは、糸魚川駅の1階にある「糸魚川ジオパル」という施設です。

入場料が無料なのにも関わらず、かなり豪華な展示がされています。

 

トワイライトエクスプレスの再現車両は近日公開

いまだ公開されていませんが、北陸本線を駆け抜けた往年の豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」の食堂車とA寝台個室スイートを再現した車両がこちらの施設で見られるようになるそうです。

 

一説にはトワイライトエクスプレスの車体ごと保存する予定だったらしいのですが、それは叶わず…

 

その代わり調度品はできる限り現物を集め、方向幕は製造元に頼んで精密に作り上げ、車体は糸魚川の木材を使って再現したとのこと。

これは糸魚川で大火があったことの復興の意味もあるようです。

f:id:toremor:20200627215113j:plain

f:id:toremor:20200627215137j:plain

f:id:toremor:20200627215125j:plain

現在は「近日公開」となっているが、いつ頃お目にかかれるだろうか。

この再現車両は、東京の六本木ヒルズで行われていた「特別展 天空ノ鉄道物語」で公開されていたもので、終了後は糸魚川まで運びジオパルで展示することになりました。

 

当初の予定では今年のゴールデンウィーク頃にお披露目される予定でしたが、最近の情勢からか、未だに公開はされていません。

1ファンとしては、非常に待ち遠しいですがゆっくり待ちたいと思います。

 

キハ52を待合室として開放、ジオラマ完備

f:id:toremor:20200627215207j:plain


ところで、ジオパルの魅力はこれだけではありません。

入口ではなんとキハ52がきれいに静態保存され、内部を待合室として開放しています。

 途中で途切れるように見えますが、1両そのまま残っています。

f:id:toremor:20200627220138j:plain

f:id:toremor:20200627220151j:plain

f:id:toremor:20200627220126j:plain

f:id:toremor:20200627215221j:plain

内装、外装ともに博物館並みに美しい。

このキハ52は大糸線南小谷―糸魚川間の非電化区間(JR西日本管轄)で走行していたもので、内装もほぼ現役当時もまま残されています。

現在の大糸北線を走るキハ120と比べると非常に豪華でうらやましい……

f:id:toremor:20200627215032j:plain

f:id:toremor:20200627215047j:plain

現在の大糸北線で使用されるキハ120は低コスト車両。座席は指で押すと簡単に底に到達してしまう。長時間の着席は厳しい。


これだけでも博物館級のものですが、奥には大きなジオラマとプラレールが……

ジオラマは2つあり、片方は子供向け(?)、片方は大人向けにつくられているみたいです。

f:id:toremor:20200627215246j:plain

プラレールの展示。

f:id:toremor:20200627215932j:plain

f:id:toremor:20200627215508j:plain

f:id:toremor:20200627215943j:plain

広大なジオラマを堪能で切る。

追加で料金を払えば、カメラ付きの車両を運転できるようですが、接続列車の都合で断念……また訪問したいですね~

f:id:toremor:20200627215851j:plain

模型もずいぶんと揃えられていて驚きです。

これはかなりお金かかってますよ…(笑) 

f:id:toremor:20200627222736j:plain

f:id:toremor:20200627215457j:plain

模型のコレクションの数々(一部)。

一区画にはサボや駅名標もきれいに保存されています。

愛のある並べ方だな~

f:id:toremor:20200627220045j:plain

サボもきれいに並べられている。

まとめ

f:id:toremor:20200627215150j:plain

往年の列車をお目にかかれなくなった寂しい糸魚川駅ですが、心の中で…というよりは「糸魚川ジオパル」の中で走り続けているので、鉄道好きで糸魚川に来られたならぜひ訪れてみてください。

 

余談ですが、糸魚川近辺に来られたなら、一度海岸に出てみることをお勧めします。

砂浜ではなくて小石が広がる海岸なので、波の音も景色も違うんですよ~

f:id:toremor:20200627214928j:plain

f:id:toremor:20200627214942j:plain

f:id:toremor:20200627214956j:plain

糸魚川駅から徒歩30分程度でヒスイ海岸へ。えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインはこの近くに新駅を設置予定。


 

 

 

 

【特等和室】太平洋フェリー「いしかり」名古屋→仙台乗船記

「時間をかける」という贅沢

f:id:toremor:20200619211326j:plain

今回ご紹介するのは、なんと長距離フェリー

名古屋から仙台まで、飛行機を使えば1時間少々のところ、約22時間をかけてゆったりとしたひと時を楽しみます。

 

普段、鉄道旅が多い筆者ですが今回はプレミアムな船旅を。

こういう旅行は学生の次は老後かも…という焦りから(?)、今回は船の前面展望を個室から満喫できる太平洋フェリーの「特等和室」を用意!

 

乗船時は閑散期だったので、追加料金なく部屋を独り占め。

学生が一人で、黙々と騒いでいた様子をご覧いただきます!

 

 

名古屋駅から名古屋港まではバスでアクセス

f:id:toremor:20200619211821j:plain

名鉄バスセンターから名古屋港まではバスが便利。太平洋フェリーも名鉄グループの一つ。

名古屋駅から金城ふ頭手前の名古屋港まで、一番便利なのは名鉄バスセンターから名古屋港まで直通するバスです。

 

太平洋フェリーの名古屋ー仙台間は隔日の運航なので、このバスも隔日の運行です。

フェリー運航日以外はアクセスするバスも運休します。

(※現在はコロナのため運休しています)

 

港まで30分~40分くらいでしょうか、結構距離がありますが段々と海が近づくに連れて気分も上がります。

f:id:toremor:20200619211809j:plain

いざフェリー「いしかり」に乗船!

フェリー乗り場の雰囲気は空港によく似ています(本来は逆ですけど)!

f:id:toremor:20200619211835j:plain

f:id:toremor:20200619211847j:plain

名古屋港のカウンターで乗船手続きをする。

乗船手続きを済ませ、きっぷを受け取ります。

あぁ…チケットっていうのかな…?

鉄道のきっぷとは違ってフードコートの食券みたいな感じです。

 

今回は個室を利用するので、チケットと同時にカードキーも受けとります。

ホテルのチェックインのような手続きを済ませ、いざ乗船。

f:id:toremor:20200619211721j:plain

f:id:toremor:20200619211130j:plain

船に乗り込むとそこには驚きの空間が!

ほえぇ…なんだこれは…

フェリーというよりはクルーズ船に近い内装です。

筆者も何回かフェリーには乗ったことがあるのですが、こんなに凝った内装は初めてでした。

f:id:toremor:20200619211305j:plain

フェリー内部の案内図。乗客は5デッキ~7デッキの間を動くことができる。

このフェリーの運航中に人間がウロウロできるのは5デッキ~7デッキの3階分。

今回予約した特等和室は7デッキ、最上階にあります。

 

ホテルの廊下みたいな通路を進み、特等和室に入ります。

f:id:toremor:20200619211914j:plain

船の前面展望を楽しめる「特等和室」

特等和室は船の正面に位置しています。

障子越しに窓があって、船の進む方向の景色が楽しめるのです。

f:id:toremor:20200619211116j:plain

障子の先は船の先頭部分。

室内はほぼ旅館の和室と遜色ありません。

和室なのでベッドではなく、布団を敷きます。

定員は3名なので布団は3つおかれています。

f:id:toremor:20200619210955j:plain

f:id:toremor:20200619211926j:plain

特等和室は旅館の一室のよう。

綺麗なバス・トイレに広々収納、冷蔵庫も完備。

f:id:toremor:20200619211104j:plain

f:id:toremor:20200619211050j:plain

f:id:toremor:20200619211038j:plain

f:id:toremor:20200619211008j:plain

f:id:toremor:20200619211023j:plain

ユニットバス、収納、冷蔵庫も完備。

ルームウェアもあります。

なかなか良いデザインで、着心地もいい感じです。

f:id:toremor:20200619211317j:plain

ルームウェアはこんな感じ。

翌朝になってブラインドを開けると、水平線が広がっていました!

(横から見ても水平線は広がってみえるか…)

f:id:toremor:20200619211800j:plain

f:id:toremor:20200619211804j:plain

特等和室から見える眺めは最高。

船内を観察!

快適な5デッキの大浴場

5デッキは大浴場とお土産コーナー、S寝台とB寝台があります。

B寝台というと鉄分多めの筆者は、あんなものやこんなものを想像しますが綺麗なカプセルホテルのような造りをしているようです。

 

大浴場は当然ながらオーシャンビュー。

露天風呂はありませんが、大きな内風呂の浴槽が2つ。

f:id:toremor:20200619211244j:plain

f:id:toremor:20200619211518j:plain

大浴場も設置されている。

よく考えれば、大きな浴槽で身体を伸ばせる移動手段は、フェリーくらいしかありません。

ただ波があると、船の揺れによる波と普段の湯舟の波が合わさって、何とも言えない気持ち悪さがありますので、酔いやすい方はやめておいた方がいいのかも……

 

広々とした更衣室で洗面台の数も豊富です。

f:id:toremor:20200619211338j:plain

洗面台の数が多いのは、女性陣にも嬉しいのではないだろうか。

 

 

お風呂上りには新幹線でおなじみのあのアイスもいただけるみたいです。

f:id:toremor:20200619213611j:plain

有名なシンカンセンスゴクカタイアイスも売られている。

6デッキはレストランとカフェ、シアタールームも完備

f:id:toremor:20200619211142j:plain

ピアノが置かれている6デッキはクルーズ船のような雰囲気。

6デッキにはレストランやカフェ、シアタールームやカラオケルームなどの娯楽施設が並びます。

 

3月中でしたがもうすでにコロナ対策として、シアタールームやカラオケルームは閉鎖されていましたが、ホームページからは結構な広さのシアターを有していることが伝わります。

www.taiheiyo-ferry.co.jp

 

レストランは通常バイキングのようですが現在は夕食1000円、朝食500円、昼食800円の2種類を選択できる定食になっています。

f:id:toremor:20200619214531j:plain

f:id:toremor:20200619214542j:plain

f:id:toremor:20200619214551j:plain

夜、朝、昼の各定食。2つの中から選ぶことができる。

夕食時には乗船時にご一緒した方にお酒をごちそうになりました。

一期一会を楽しむのも一人旅の醍醐味の一つです。

f:id:toremor:20200619211508j:plain

レストランの内部。

レストランも当然オーシャンビューで、落ち着いた雰囲気です。

食事は美味でコストパフォーマンスとしてはかなり高い気がしますが、量が多いので小食の方はカフェで軽食をいただくのがいいかもしれません。

 

カフェでコーヒーブレイクをとるのも良かったですよ~

オリジナルデザインのクッキーもついてきました。

結構クッキーがおいしい…

f:id:toremor:20200619211407j:plain

f:id:toremor:20200619211419j:plain

カフェでコーヒーブレイク。

7デッキからは外に出て大海原を体感できる

7デッキは特等や1等客室のほか、2等というサンライズエクスプレスのノビノビ座席に近い大部屋、海原を展望できる甲板があります。

 

太平洋フェリーでは夜間も甲板へ立ち入ることができ、名古屋出港時には夜景を、仙台港入港前にはすれ違いを見ることができます。

f:id:toremor:20200619211735j:plain

f:id:toremor:20200619211748j:plain

f:id:toremor:20200619214945j:plain

名古屋港出港時の夜景。「赤いキリン」も美しい。

f:id:toremor:20200619211433j:plain

f:id:toremor:20200619211542j:plain

甲板から後方の風景と「きそ」とのすれ違い。

良いですよね~無心に海原を見つめるのって…

フェリーに乗船すると電波も通じずやることがなくなるので、ゆったりとした時間を強制的に楽しむというのか、究極の暇というのか、これがまた醍醐味です。

f:id:toremor:20200619212131j:plain

部屋に戻って昼寝をしたり、カフェで間食をとったりしていると、意外とあっという間に目的地に着いてしまうものなんですよね~不思議。

 

福島沿岸では、おそらく現在の公共交通機関で唯一、福島第一原発の全貌をフェリーから見ることができます。

f:id:toremor:20200619211530j:plain

f:id:toremor:20200619211713j:plain

f:id:toremor:20200619211717j:plain

福島沿岸では第一原発を遠望できる。

仙台港に到着、港から歩いてみると…

目的地の仙台港に到着です。

f:id:toremor:20200619211550j:plain

f:id:toremor:20200619211602j:plain

仙台港に着岸。

ロープを結んで、こうやって前面が開いて…

車が行き来できるようになります。

 

この船はそのまま苫小牧まで行くのですが、今回は残念ながら仙台で降ります…なんか寂しい…

名古屋から苫小牧まで乗船する方も、仙台港で一時下船ができるようです。

 

仙台港からは仙台駅や多賀城駅までバスが出るみたいですが、船内で身体がなまってしまったので多賀城駅まで歩くことにしました。

 

しばらくは何もありませんが、多賀城駅付近に名所「末の松山」があります。

百人一首で有名な「契りきな かたみに袖を 絞りつつ 末の松山 浪こさじとは」の末の松山です。

f:id:toremor:20200619211701j:plain

f:id:toremor:20200619211649j:plain

f:id:toremor:20200619211635j:plain

仙石線多賀城駅が最寄りの「末の松山」。

大津波がここを越えることがないように、心変わりをしないことのたとえに用いられてきた「末の松山」。

東日本大震災の津波でも、末の松山は越えなかったそうです。

 

時間の贅沢を味わう船旅…また行きたいですね~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【祝!常磐線全線開通】特急「ひたち」仙台→品川を乗り通す

常磐線は今年9年ぶりに全線開通

f:id:toremor:20200613192945j:plain

2011年3月11日の東日本大震災から鉄路が途絶えていた常磐線。

2020年3月、浪江ー富岡間が復旧・完成し全線がつながりました。

 

復旧と同時に品川ー仙台間を直通する特急「ひたち」の運行が再開・開始しました。

長距離の在来線特急が縮小傾向である中、373.9kmを走破するJR東日本の最長在来線特急が誕生し、注目を集めています。

 

今回は仙台→品川間を走る「特急ひたち14号」をご紹介します!

f:id:toremor:20200613192310j:plain

 

 

仙台駅の表示板に「品川」行き

特急ひたちは、主にいわきー品川間を結ぶ常磐線の速達型特急列車です。

一日3往復だけ東北本線、常磐線、上野東京ラインを経由して仙台から品川まで運行される列車があります。

f:id:toremor:20200613192834j:plain

仙台駅の表示板に「品川」の文字が。

仙台駅の常磐線方面の行先表示器には「品川」行きの文字が光っています。

東北新幹線でも東京駅までしか行きませんから、「新幹線より遠くまで行く列車」ということになります。

在来線の駅で遠く離れた行先を見るとドキドキしますよね~

 

仙台から東京方面に向かう場合は時間や本数、料金面を考えても東北新幹線を使うのが一般的です。

ただし東北新幹線と走行ルートが異なるので、競合関係ではありません。

f:id:toremor:20200613192922j:plain

常磐線の沿線を紹介したポスター。仙台駅にて。

E657系の車内を観察

f:id:toremor:20200613192933j:plain

仙台駅に停車中のE657系。

特急ひたちに使用される車両はE657系

常磐線は直流電化された区間と交流電化された区間の両方があるので、E657系は交直流電車になっています。

 

普段東京近辺で見慣れている車両が仙台にいるのはちょっと不思議な感じ。

 

ちょこっと車内をご紹介。

普通車、グリーン車とも2+2の最近のJR東日本の標準的なつくりになっています。

f:id:toremor:20200613192258j:plain

E657系の普通車の車内。

普段E353系のあずさに乗りなれている筆者はほぼ色違いだな~という印象を持ちました。

足元も普通車で十分広々としています。

f:id:toremor:20200613192621j:plain

足元は広々している。

普通車でもコンセントは1席1つ、ついています。

ただコンセントの場所は前の座席下についているE353系と異なり、E657系はひじ掛け部分についています。

(E353系ですとリクライニングのスイッチがついている部分が、コンセントになっています。その代わりE657系は以前のようなリクライニングボタンのスタイルです。)

 

個人的にはひじ掛けについていた方が座席を回転させても使えるので良いような気がしますが、パソコンの電源を繋げたら邪魔になるかもしれません。

f:id:toremor:20200613192635j:plain

f:id:toremor:20200613192648j:plain

コンセントはひじ掛けについている。

常磐線全線の車窓を眺める

仙台から福島沿岸へ

仙台駅を出発し、ひたち号特有のチャイムが流れるとしばらくは東北本線を走行。

岩沼駅からは常磐線に入り、太平洋側へ進みます。 

f:id:toremor:20200613200702j:plain

岩沼駅。ここから東北本線と常磐線が分かれる。

しばらく走ると震災後にルート変更された区間に入ります。

浜吉田ー新地間は震災前より内陸に線路や駅を移転したという経緯があります。

f:id:toremor:20200613192323j:plain

浜吉田ー山下間の新線区間。以前より内陸側を走行している。

残念ながら人の住む拠点を進むルートとはなっておらず、地形に沿った「建設しやすかったルート」がとられている印象。

代行バスの方が便利だったという声もありそうな気がします。

 

ちょっと進みまして原ノ町駅へ。

f:id:toremor:20200613192346j:plain

原ノ町駅に停車中のE531系.

なんと原ノ町駅にも上野口で使われるE531系が見られます。

この辺を走っているE531系、供給過剰のような気がしますが、ワンマン化設備があったり、乗降確認用のカメラがついていたりと、都心を走行する車両とは若干違う部分もあるようです。

 

余談ですがE531系は交直流車両、最高速度130km/h、足回りもE653系に準じた特急仕様というかなりハイスペックな車両です。

もともと、関東地方でつくばエクスプレスに対抗するためにつくられたものなんですよね~

 

続いて最後まで不通だった浪江ー富岡間へ。

 

双葉駅からは以前複線だった区間を単線に、上り線が道路に変わっています。

BRTか何かかと思いましたが、避難用、作業用道路として活用されているようです。

f:id:toremor:20200613192357j:plain

f:id:toremor:20200613192411j:plain

双葉駅からは上り線が道路になっている。

もう少し南下すると福島第一原発が近づきます。

f:id:toremor:20200613192421j:plain

原発周辺は住人の気配がない。

原発が近づくにつれて人の気配はなくなり、トラックのみが行きかう車窓へ変わります。

常磐線側からは建物がちらっと見えますが、全体像を眺めるのは難しいです。

f:id:toremor:20200613204619j:plain

太平洋側から車窓近辺をのぞむと福島第一原発が見える。太平洋フェリーから撮影。

富岡駅を出ると海沿いを走ります~

これは東北新幹線からは見られない景色ですね!

f:id:toremor:20200613192523j:plain

富岡駅を出ると、海沿いを走る。

お腹が空いたので駅弁を!

亘理周辺の郷土料理、はらこめしをいただきます。

f:id:toremor:20200613192431j:plain

f:id:toremor:20200613192444j:plain

f:id:toremor:20200613192458j:plain

f:id:toremor:20200613192510j:plain

炊き込みご飯の上にいくらと鮭がのった料理。かなり美味しい。

仙台駅で購入した「宮城はらこめし」1500円。

値段もしますが味はなかなかで、特に大粒のいくらの醤油漬けは風味も抜群。

鮭も亘理の銀鮭が使われています。

 

美味しかった~

 

いわき駅周辺はちょこまか停車

いわき駅から先はざっくりとご紹介。

湯本駅といえば常磐ハワイアンセンター。

f:id:toremor:20200613192534j:plain

f:id:toremor:20200613192009j:plain

湯本駅といえば、常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)

あれやこれやと改装して、現在でも生き残っているというのが凄いですよね~

そして勿来の関を越えて…

f:id:toremor:20200613192547j:plain

筆者は「なこそ」という読みは駅名から覚えた。

日立駅へ…こちらにはE501系が停車しています。

初期のJR車両も数を減らし、貴重な存在です。

f:id:toremor:20200613192610j:plain

日立駅にはE501系が停車中。

E501系も交直流車両なんですが、現在では不具合が出るとかで交流区間しか走行しません。

昔は加減速時に音階を奏でるという謎仕様だった(シーメンス社のvvvfインバータを使用していました)んですが、機器更新で鳴らなくなりました…残念。

 

水戸からいよいよ都心へ

いっきに飛んで水戸駅へ。

ここでは留置中のEF81 95が見られました。

f:id:toremor:20200613195844j:plain

「スーパーエクスプレスレインボー色」と呼ばれる、大胆なデザイン。

寝台特急北斗星なんかも牽いていたことがあります。

 

偕楽園を数秒観光して、いよいよ都心へ。

f:id:toremor:20200613210708j:plain

偕楽園の一部は車窓から見られる。

取手から先はいわゆる国電区間に入って、複々線になります。

普段中央線沿いを走行する身からすると、ちゃんと緩急分離がされていてうらやましい…

f:id:toremor:20200613192712j:plain

取手から先は複々線。映っているのは東京メトロ千代田線直通用のE233系。

順調に走行して上野駅に到着。

この列車は頭端式の地下ホームに入るのではなく、上野東京ラインへ直通します。

なんかちょっと寂しい……

f:id:toremor:20200613192725j:plain

上野駅地下ホームへ向かう線路。

不思議な感覚ですが、このまま東京、品川方面へ。

東京モノレールに東海道新幹線、田町電車区も見えます。

f:id:toremor:20200613192734j:plain

東京モノレール羽田空港線。日立アルウェーグ式モノレールという日立の技術が使われている。

f:id:toremor:20200613192745j:plain

こちらは隣を走る東海道新幹線。羽田空港アクセス線建設時はどこかでこれを跨がなければならない。切れちゃった…

f:id:toremor:20200613192757j:plain

こちらは田町車両センター。寝台特急サンライズ号に使用される車両も見える。

品川駅に到着

そしてようやく終点の品川駅へ。

f:id:toremor:20200613192810j:plain

品川駅へ到着。

どうしても終点の感じがないので寂しいですが、4時間48分の旅を満喫しました。

長時間の乗車ですが景色の変化に富むのでなかなか楽しめると思います。

 

ずっと乗り続ける客は物好きしかいませんでしたが、区間利用は水戸以北も結構ある感じでした。

特に福島沿岸の地域が、これを機に盛り上がるといいですね~

f:id:toremor:20200613214142j:plain

筆者はこの後、ダイヤ改正の記念に開業したての高輪ゲートウェイ駅へ。

 

JTB時刻表20年6月号

JTB時刻表20年6月号

  • 発売日: 2020/05/25
  • メディア: 雑誌
 

 

鉄道コムへ戻る↓

鉄道コム







 

【名古屋―松本】高速バスvs特急「しなの」を比較検証!

松本→名古屋の競合関係

f:id:toremor:20200606213419j:plain

松本から名古屋までは約200kmあります。

主要な移動手段は中央西線・篠ノ井線の特急「しなの」と高速バスの2つ。

こちらの区間も、中央東線と高速バスほど熾烈な争いではないものの、競合しています。

 

どちらが便利なのか…今回は項目別で「しなの」と高速バスを比較します!

 

 

特急の方が早く目的地に着ける

f:id:toremor:20200606213724j:plain

特急「しなの」。

特急「しなの」の松本―名古屋間の所要時間は約2時間、高速バスの松本バスターミナル―名鉄バスセンターの所要時間は3時間30分です。

 

約1時間30分の差で、早い方は特急「しなの」ということになります。

 

始発、終電や終バスの時間を比較してみます。

※コロナウイルス感染症の拡大防止のため、現在はバスが大幅減便となっていますが、今回はコロナ前のダイヤで比較します。

 

 始発は…

  特急「しなの」 高速バス
名古屋→松本 7:00 7:10
松本→名古屋 7:04 5:30

 

終電、終バスは…

  特急「しなの」 高速バス
名古屋→松本 19:40 20:40
松本→名古屋 20:31 19:30

 

高速バスと特急は、基本的には両者を補完するようなダイヤになっています。

名古屋→松本の移動では、特急の終電が19:40とかなり早い点が残念ですが、特急を逃しても1時間後のバスに乗車できる利便性はなかなか良さそうです。

 

本数は特急「しなの」が約1時間に1本、高速バスは約2時間に1本。

基本的に利便性は特急「しなの」に軍配が上がります。

 

料金は2000円差でバスが勝利、しかし…

高速バスはかなり安く移動できる

先ほど「利便性は特急の方が良い」と言いましたが、価格ではバスに勝ち目があります。

特急「しなの」の通常の運賃+普通車指定席料金と、「繁忙期」の高速バスを比較しても、2000円近く差があります。 

  特急「しなの」 高速バス
料金 6140円 4100円

 

目的地が名古屋以遠の場合は要検討!

f:id:toremor:20200606222344j:plain

東海道新幹線。同時にきっぷを買って乗り継げば「しなの」に乗継割引が適用される。

しかし、特急「しなの」と新幹線のきっぷを同時に購入すると、指定席料金と特急料金があわせて半額になる、というルールがあります(乗継割引)。

 

一方でバスにはそのような制度はありませんので、高速バスを乗り継いでもそれぞれ別料金が加算されます。

目的地によりますが、松本ー名古屋以遠の場合は「高速バスのお得感」が薄れる場合があります。

 

f:id:toremor:20200606213155j:plain

18きっぱー、格安旅行の見方、新快速を駆使すれば名古屋から京都、大阪まではさほど時間はかからない。

正直、18きっぷシーズンでなくても特に関西圏ー松本の場合は、普通列車を乗り継ぐ移動が最安であり、所要時間もバス乗り継ぎよりは早いと思います。

 

意外とバスの車内も快適

f:id:toremor:20200606213535j:plain

名古屋―松本間の名鉄の高速バス。名鉄に乗って名古屋に着くと「松本方面の高速バスは乗り換えです」と案内されるが、その高速バスがこちら。

最近の昼行高速バスの設備は、なかなか良いものです。

トイレ、コンセント完備、座席も広々としています。

 

f:id:toremor:20200606213444j:plain

f:id:toremor:20200606213432j:plain

f:id:toremor:20200606213457j:plain

高速バスの座席は広々(こちらは最前列)。コンセントもついている。

一方の特急「しなの」に使用している383系という車両は誕生から26年。

さすがに鉄道の方が快適ではありますが、コンセントがないのは辛いかもしれません。

f:id:toremor:20200606213648j:plain

f:id:toremor:20200606213406j:plain

特急「しなの」の座席はフットレストもついて快適だが、コンセントはない。

実はルートがだいぶ違う

「競合」と言っておいて最初から何なんですが、実は走行するルートが異なります。

特急「しなの」は塩尻から木曽路を南下する中山道ルートを進み、多治見、千種を通って名古屋へ。

f:id:toremor:20200606215649p:plain

特急「しなの」のルート。

特急「しなの」は木曽路を縫うように駆け抜け、風景もなかなかのものです。

特に紅葉の時期は「絶景のアトラクション」になるのでおすすめです。

f:id:toremor:20200606213712j:plain

冬の木曽路も美しい。

途中では浦島太郎伝説の残る寝覚の床も一瞬見られます。

f:id:toremor:20200606213700j:plain

f:id:toremor:20200606213633j:plain

上松駅付近からは一瞬だけ寝覚の床が見られる。2枚目は同じ橋梁を下から見たもの。

f:id:toremor:20200606221852j:plain

寝覚の床は近づくとこんな感じの観光地。

高速バスは伊那谷を南下して駒ケ根、飯田方面へ進み、中央アルプスをトンネルで越えて、中津川に至ります。

名古屋近辺の市街地もルートが異なり、鉄道ファンの間ではピーチライナーでおなじみの桃花台を通ります。

 

 (地図は実際の走行ルートに近いですが、完全に一致するものではありません)

 

高速バスの景色も引けを取りません。

のんびりとした伊那谷の風景を大きな窓から楽しめます。

f:id:toremor:20200606213510j:plain

伊那谷ののんびりとした風景。

鉄道ファンがバスに乗っても見どころがあります。

f:id:toremor:20200606213522j:plain

恵那山トンネル。長さ8㎞を超える長大トンネルで、建設時は日本一の長さだった。

こちらは恵那山トンネル

中央アルプスを8000m級の長大トンネルで貫いています。

 

このトンネル、飯田と中津川を結ぶはずだった国鉄の未成線「中津川線」の役割を引き受けています。

ここに鉄道があったら…と想像すると面白いかもしれません。

将来的にはこの辺、リニアも通りますからね~

 

お次の見どころは廃線跡、名古屋方面、桃花台バス停を過ぎてすぐの左手からは…

日本初の「新交通システムの廃線」、桃花台新交通ピーチライナーの跡です。

f:id:toremor:20200606213601j:plain

ピーチライナーの高架の断面が高速道路から見える。

名古屋近辺の交通手段って時々、計画段階から迷なものがありますよね…

 

ルートが違うからこそ、景色は鉄道も、バスも違うものが見られます。

 

まとめ

f:id:toremor:20200606223526j:plain

名古屋駅在来線ホームのワンコインきしめん。安くて絶品なのでぜひ食べてみてください!

早くて快適な特急「しなの」と、安くて違った風景のみられる「高速バス」。

単なる移動とすれば特急「しなの」に軍配が上がる気がしますが、どちらの風景も魅力的。

鉄道ファンでもバスの車窓が楽しめます。

 

気が向いたときに乗り比べてみてはいかがでしょうか。