toremorの旅手帳

鉄道と旅行と温泉と。大学生の放浪の様子をご覧ください。

【全席指定】新型SR1系で快適移動、しなの鉄道「軽井沢リゾート3号」乗車記

しなの鉄道SR1系は中古車ではなく完全新造

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しなの鉄道に導入されたSR1系。完全な新造車として製造された。

国鉄時代に製造された車両で埋め尽くされていたしなの鉄道。

それを逆手にとって、しなの鉄道は様々な経営戦略を行ってきた会社です。

 

www.toremor.work

 

「3セクの成功例の一つ」として紹介されることも多いですが、ついに2020年に新車「SR1系」を導入し、7月からSR1系で運行される有料の快速列車の運行を開始しました。

 

今回は土休日に運行される「軽井沢リゾート3号」で軽井沢から長野まで向かいます!

 

 

「軽井沢リゾート号」とは?

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軽井沢駅に停車中の特別快速「軽井沢リゾート3号」長野行き(左)。115系の初代長野色の普通列車(右)も停車中。

しなの鉄道では7月から、SR1系を使用した座席指定制の有料快速の運行を開始しました。

土休日と平日で設定される列車が異なります。

 

土休日には「軽井沢リゾート号」として軽井沢ー妙高高原(1号・4号)、軽井沢ー長野間(2号・3号)の2パターンが設定されています。

こちらは観光需要を拾うために、上り・下り列車ともに始発駅を9時台、16時台に出発するダイヤになっています。

 

一方平日は、主に長野ー上田間で「しなのサンライズ」「しなのサンセット」として運行しています。

こちらはライナー列車のような側面が強く、朝夕のラッシュ時にダイヤが設定されています。

 

東京の私鉄、京王ライナーに近い位置付けかもしれません…

 

予約の仕方と乗車方法

「軽井沢リゾート号」に乗車するためには座席指定券(500円)を購入する必要があります

発売期間は利用月の1か月前の1日~当日で、WEBサイトのほか、軽井沢、小諸、上田、戸倉、長野の各駅か車内で購入することができます。

 

平日の「しなのサンライズ」「しなのサンセット」では長野駅での発売がなかったり、いろいろと複雑なので、WEB予約をした方が便利かもしれません。

  

WEB予約にはクレジットカードが必要です。

スマートフォンからの場合、しなの鉄道の公式サイトから「SR1しなの鉄道有料快速」のボタンをクリックして…

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しなの鉄道の公式サイト(スマホ版)。

【平日】【土休日】の選択と枚数を選択して…

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出発駅と到着駅をポチリ…

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続いて、「プラン選択」を押して、プランを選択します。

土休日の「軽井沢リゾート号」では軽食プラン(サンドウィッチのようなもの)が設定されていて、このプランを購入する場合は1週間前までに予約する必要があります。(座席のみを利用する場合は当日まで予約できます

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シートマップから予約することもできます。これは嬉しい。

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シートマップを見ながら予約できる。

あとはクレジットカードの情報を入力して完了です。

当日は、きっぷを受け取る必要はなく、高速バスのようにそのまま乗車すればOK。

 

新車「SR1系」を観察!

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湘南色の115系と並ぶSR1系。普通列車としても使用される。

SR1系はJR東日本E129系(通称:ハムエッグ)をベースとして設計されています。

確かに前面も側面も形は同じです。 

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SR1系とほぼ同形式のE129系。

外観は青を基調としたデザインで、帯は千曲川の流れをイメージしたものとなっています。結構格好いい~

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水色の帯は千曲川をイメージしたもの。

車内に入ります。

一般的には珍しくない押しボタン式のドアですが、しなの鉄道では初導入!

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ドアの開閉は押しボタン式。しなの鉄道では初導入。

しなの鉄道の主力車両115系は、最近は換気のために自動でドアが開きますが、基本的に「手で開ける」仕様でした。

 

LEDによる案内表示が千鳥配置されていて、乗務員室の裏には大型の液晶モニターが設置され、沿線の観光案内や車内の注意などが流されています。

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ミュージックホーンや「信濃の国」の乗降促進メロディーも搭載されていて、なかなか豪華です。

 

座席はデュアルシートで、有料快速の運用の時はクロスシート、普通の運用の時はロングシートになります。

最近はやりのやつですね~

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クロスシートとして配置されているSR1系。

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ロングシートとして配置されているSR1系。

窓は意外と眺望がよく、観光列車としても遜色ありません。

紫外線カットガラスでカーテンを省略しているので、日が当たると厳しいかも…

各ブロックの最前列以外に座れば窓からの眺望が楽しめそうです。

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床も落ち着いた木目調で、よく見ると壁面も木目調。

優等列車での使用が意識されたデザインなのでしょうか。

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床面も壁面も木目調。

クロスシート時のシートピッチは結構広い感じがします。

ただし、構造上の問題で窓側の座席は足元が延ばせず、リクライニング機構もありません。

座面はE129系より少し硬い気がします。

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毎度おなじみ短足な筆者が足を延ばした状態。シートピッチは広めだが、窓側の座席に座ると前が当たってしまう。

軽食プランでない普通のシートでは、テーブルはありませんが人数分のコンセント、ドリンクホルダーがついています。

4人グループの場合は向かい合わせにすることもできます。

隣の席との間にひじ掛けはなく、小田急ロマンスカーのシートのような形状です。

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人数分のコンセントとドリンクホルダーが設置されている。隣の座席との仕切りとなるひじ掛けは設置されておらず、「ロマンスシート」状態となっている。

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軽食プランを選択するとテーブル席に座ることになる。

車内にはフリーWi-Fiが飛んでいて、快適に過ごすことができます。

115系ではついていても利用できなかった、トイレも完備

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実際乗ってみますと(普段115系に乗っているときと比較すると)圧倒的に乗り心地が改善されています。当たり前ですけどちょっと感動…

 

「特別快速」軽井沢リゾート3号は元信越本線を快走

有料の快速は自動放送で「特別快速」と案内されます。

「特別快速」の名の通り、停車駅は結構絞られている印象。

 

全線複線、元信越本線であるというだけあって、かなり安定して走行します。

大体80km/hほどで走行し特段飛ばす感じはありませんが、通過駅がたくさんあるので疾走感を楽しめます。

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SR1系の運転台。

軽井沢リゾート3号の停車駅は軽井沢を出ると、中軽井沢、上田、戸倉、長野のみです。

軽井沢ー長野間の所要時間は65分、在来線特急「あさま」+15分くらい。

停車駅も「あさま」と似ていますが、小諸駅は通過します。

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小海線との接続駅で特急「あさま」の停車駅でもあった小諸駅は通過してしまう。

篠ノ井線との接続駅、篠ノ井駅も有料快速の全列車が通過します。

(出来れば軽井沢リゾート3号が篠ノ井駅に停車してくれると、1本前の特急しなのに乗れるんだけどな~)

 

※軽井沢リゾート号は列車によってだいぶ停車駅が違うので、事前に乗車する列車の停車駅に注意する必要があります。

www.shinanorailway.co.jp

まとめ

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手前は今年5周年を迎えた観光列車「ろくもん」。SR1系とともにしなの鉄道の顔と呼べる車両である。

しなの鉄道の新型車両「SR1系」はデュアルシート(ロングシートとクロスシートを転換できる)を装備した快適な車両で、省エネ、低コスト化以外にも乗り心地の面で大幅に改善されました。

 

SR1系を用いた軽井沢リゾート号は、停車駅を絞った特別快速として運行され、元信越本線らしい疾走感を味わうことができます。

 

一マニアからすればまだまだ国鉄時代の車両が残ってほしいですけれど、この新車も完成度の高い車両でこれからが注目です。

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しなの鉄道の115系の座席。未更新で残っているものはしなの鉄道においても少ないので、独特の国鉄色の座席に座れるうちに座っておきたい。

 

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【駅ビルもあった】中央本線かつてのメインルート、辰野駅を探索

中央本線の「旧メインルート」

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東京から塩尻を通って名古屋へ向かう中央線。

 

長野県内の岡谷駅から先はルートが二つに分かれます。

①塩嶺トンネルを抜けみどり湖駅を通り塩尻に向かう新線

 

②辰野駅を通る大八廻り(旧ルート)

 

 

現在では中央本線のほとんどの特急列車、普通列車は①の新ルートで走行します。

今回はかつてのメインルート「大八廻り」の主要駅、辰野駅の魅力をご紹介。

 

 

「大八廻り」の特急停車駅、辰野駅

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大八廻りは「だいはちまわり」と呼び、中央本線の旧メインルートだった路線です。

上の地図を見ると分かるように、かなり遠回りなルートです。

 

中央本線のルートを計画する際に、木曽谷経由(現在の中央線)と伊那谷経由(現在の中央道)の2つの案があり、木曽谷経由に決定しました。

ところが、当時の鉄道局長であった「伊藤大八」が、自らの出身地である伊那谷に中央線を通そうとしたという説があり、これが大八廻りと呼ばれる所以です。

 

これを「我田引鉄のはしり」と紹介する人と、「建設当時の技術では塩嶺トンネル(現在のメインルート、トンネル長さ5994m)は掘れなかった」と紹介する人がいます。

 

個人的には後者の方だと思います(事実、塩嶺トンネルの建設工事は難工事だった)が、どちらの要素もあったのかもしれません。

 

話が遠回りしているので元に戻します。

大八廻りの主要駅は、飯田線と中央線が乗り入れている辰野駅です。

特急「あずさ」急行「アルプス」「こまがね」などの優等列車も停車していました。

 

JR化されてからは飯田線がJR東海、中央東線がJR東日本の管轄になったので、両社の境界駅となっています(正確にはどこかの場内信号機が境界だとかなんとか)。

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辰野駅を出発して左手に飯田線が分かれ、右手に進むと中央東線の塩尻駅方面へ向かう。

 

長大ホームと貨物用の着発線が残る

先ほどもご紹介した通り、優等列車の停車駅であった辰野駅はホームが長めに造られています。

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長大ホームに停車する大八廻りの中央東線の普通列車と飯田線の普通列車。

現在では定期特急列車の停車はなく急行列車も廃止されているので、主に2~3両の普通列車のみの発着となっています。

 

12と書かれた停車位置目標もあります…特急「あずさ」もこの辺りまで来ていたのでしょうか。

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「12」と書かれた停車位置目標。

旅客用ホームは0~3番線が使われています。

飯田線からの列車の交換と塩尻方面の中央東線が同時に停車することもあるので、ホームの長さは余らせていますが、容量は現在でも役に立っています。

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辰野駅の旅客用ホーム。

旅客用ホームではない側に目を向けると、そこそこの大きさの貨物用着発線があります。

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貨物列車の着発線。現在は使用しないが側線も含めて9番線まである。

2009年まで根岸駅から灯油やガソリンの貨物輸送があったらしいですが、それ以降は貨物列車は発着していないようです。

 

ところで、辰野駅の時刻表を見てみます。

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当駅からJR東海とJR東日本が分かれる。

辰野から岡谷方面は、飯田線からの直通列車が多数運行されているので本数は多め、一方塩尻方面は非常に本数が少なくなっています。

辰野→塩尻の移動をする際、時間帯によっては岡谷駅まで南下し塩嶺トンネルで塩尻に向かった方が早い時もあります。

 

飯田線方面はというと、本数も(この周辺にしては)多いですが諏訪周辺から伊那市付近までの区間利用が多いため、列車内も混雑する傾向にあります。

 

辰野駅にはかつて駅ビルが存在した!

改札から出まして振り返ってみると、何やら駅ビルのような看板がついています。

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辰野駅の外観。2階があったらしい。

リュシオール…

「これは何だ」と思い調べてみたところ、中央東線の新ルートが完成して、辰野駅に特急の停車がなくなる見返りとして建設された駅ビルだったようです。

 

建物に近づいてみると、確かに階段で上に登れるようになっていた痕跡があります。

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このシャッターの裏に階段があると思われる。

看板にはVideo Rental TACとありますね~

建物の大きさとしてはさらに複数の店舗があった感じがあります。

 

当然というと失礼ですけれど、この駅ビルの店舗も長くは持つはずもなく……

現在では全く営業していません…。

 

辰野駅と発車メロディー

県内を知る方であれば一般的に「辰野といえば蛍でしょ!」と言われますが、発車メロディーなどに詳しい、いわゆる「音鉄」と呼ばれる方には発車メロディーで有名な駅です。

 

今や貴重(?)になりつつあるサウンドファクトリー製の発車メロディーが現役で、SF10-31やSF10-12(For Tomorrow)という曲が使われています。

接近放送も珍しいものが使用されているとのことで、18きっぷシーズンに収録されている方を見かけてことがあります。

 

実は発車メロディーを取り扱うボタンを押すスイッチをつくる工場が辰野にあるようです。

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分かる人には分かるスイッチかもしれない。

この春日電機さんはパトライトなんかもつくっているようです。

交通関係のスイッチに強いのかな…? 

まとめ

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中央東線大八廻り、小野~塩尻間で東塩尻信号場跡を通過中~

定期優等列車が停車しなくなった辰野駅。

辰野駅に最後に特急列車が入線したのは、確か数年前に189系で運転された木曽あずさ号だったのではないでしょうか。

JR東日本と東海を直通する臨時特急で、新宿から南木曽までのロングラン列車でした。

 

優等列車が停車しなくなり設備は余らせ気味になっても、飯田線との接続駅という機能は健在で現在でも賑わいを見せることもあります。

 

辰野駅から塩尻駅にかけての本数の少ない区間には、最近密かに人気の東塩尻駅という廃駅もあります。

 

www.toremor.work

 

マニアックでディープな中央線の大八廻り、機会があったら是非一度ご乗車になってはいかがですか~?

 

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【未成線】国鉄時代に計画された中津川線の痕跡を探す

「未成線」を歩いて探索!

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国鉄中津川線の鉄道用地が現在も残る。

計画はされても誕生することのなかった路線、「未成線」

かつて国鉄時代に、長野県の飯田駅と岐阜県の中津川駅を結ぶ鉄道路線の計画がありました。

 

結局開通することはありませんでしたが、着工区間の遺構を現在でも見ることができます。

 

 

幻の鉄道路線「中津川線」

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国鉄中津川線のルート。かなり大まかなルートなので駅やトンネル位置は正確な位置ではない場合がある。

飯田と中津川を結ぶ計画だった中津川線

貨物輸送にも対応し、全線電化する予定で建設が進められました。

着工当時(1960年代後半)は飯田線は電化済み、中央西線も電化予定だったので、最初から電化する計画だったみたいです。 

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日本鉄道建設公団のB線(地方幹線)として一部区間は工事が進められましたが、平行する中央道の恵那山トンネルが開通したこともあり、計画は頓挫。

建設用地は日本国有鉄道清算事業財団に譲渡され、現在に至ります。

 

中津川線は、B線として計画された中では、鉄道として開業することがなかった唯一の路線ということになります。

 

飯田から中津川を通って名古屋方面へ直通する鉄道路線……

不思議な話ですが、計画が頓挫してから約半世紀、このルート自体は結果的にリニア中央新幹線が開業すれば、成し遂げられることになります。

中津川市側のトンネルは先進坑のみ、しかし…

まず、中津川市側の痕跡を探します。

中津川の市街から中央道に平行して離れること約8km、クアリゾート湯舟沢という施設にやってきました。

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神坂駅の建設予定地に立つクアリゾート湯舟沢。

この施設、中津川線の神坂(みさか)駅の建設予定地に建てられたものです。

怪しい痕跡はないかと、プールや温泉に向かう親子連れを横目に見つつ調査開始。

 

駐車場の脇を見ると、真っすぐに伸びる砂利道があります。怪しい。

列車が来そうなところに車が列になって止まっています!

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手前の砂利道が怪しい。

これだけではよくわからないので、この砂利道を施設側に歩いていきます。

すると…砂利道の延長からすこし下がったところに、基礎っぽいコンクリートが現れます。

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規則的に並ぶコンクリートの基礎(?)

このコンクリートは約10mくらいの一定間隔で並んでいて、一部は石で目立たないようにオブジェ(?)のようになっています。

 

続いてクアリゾート湯舟沢の裏手を覗いてみると…

これが神坂トンネルの先進坑と言われている建造物です。 

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神坂トンネルの先進坑と言われる穴。

実際のトンネルとなる場所はどこなのかは分かりませんが、この付近から神坂トンネルに入り、昼神温泉方面へと延びる予定でした。

 

真っすぐに伸びる盛土と未完成の橋脚

続いて中央道飯田山本IC近くのバイパスにやってきました。

整備された区間の端に、直線的に伸びる盛土を発見。

まさに鉄道用地という感じです。

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真っすぐに伸びる盛土区間。

こちらの区間は一部歩道のような造りになっていて、草も刈られ歩きやすくなっています。

幅は単線しかありませんが1960年代後半に着工しているだけあって、真っすぐで平坦な印象。

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遊歩道(?)沿いには1970年に建造されたことがわかる鉄道設備がある。

残されている部分はおそらく一つも踏切はなく、立体交差になっています。

 

数100m歩くと歩道は途切れ、下の住宅道路に降ろされます。

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遊歩道の終点。写真左手に降りる階段がある。

降ろされた場所はどうやら未完成の橋梁のようです。

茂みにも橋脚が一つ。

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未完成の橋梁。小さな沢と道路を跨ぐだけなので大きくはないが、迫力がある。

手持ちのカメラがあまり望遠向きではなかったので、見づらいですが、「久米川橋りよう」と記されています。

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久米川橋りょう、昭和44年建造のようである。

橋を渡った先にも盛土区間が続いていますが、こちらは荒れ放題。

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久米川橋りょうを渡ってすぐの盛土区間。この先に二ツ山トンネルの遺構があるらしいが、荒れていて訪問時は雨天であったので断念。

盛土の脇を降りまして、周辺を歩いてみると国鉄時代の境界杭、引照標もありました。

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境界標と引照標も健在。

事前の情報によるとこの先に二ツ山トンネルの中津川側の入口があるようですが、今回は雨も降っていたので断念…

 

二ツ山トンネルは反対側(飯田側)の入口から見ることにします。

 

中津川線最大の痕跡を見る

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伊那谷の脇を駆け抜ける予定だった中津川線。

飯田側の二ツ山トンネル出口周辺は、現在最も中津川線の痕跡が分かるエリアです。

田園風景の中に真っすぐな盛土が続きます。

実際に鉄道が通っていれば、伊那谷の先に南アルプスが見える眺望良好な区間だったと思われます。

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盛土上から見られる景色。晴れていれば奥の南アルプスの山々も綺麗に見えるかもしれない。

こちらの盛土の上も、飯田山本IC付近よりは茂っていますが草刈りがされていて、容易に歩くことができます。

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比較的歩きやすいが、汚れても良い服装でいかないと大変なことになります!

この盛土区間の中間地点には、少しだけ幅が広がった場所があります。

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伊那中村駅の建設予定地。周辺に比べて幅が広くなっている。

これは「伊那山本駅」の建設予定地と言われています。

駅周辺も住宅と田畑が広がります。

 

少し盛土を降りてみるといかにもという感じの高架があり、これはただの堤防ではないと、鉄道を知らない方でも気づけるかもしれません。

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山の近くまで歩いてみます。

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何やらトンネルの入口が見られる。

山の際には二ツ山トンネルの飯田寄りの入口が見られます。

先は真っ暗で、もしかするとこのトンネル内部でカーブがある可能性があります。

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二ツ山トンネル、飯田側の入口。

土地柄、普段狭小トンネルばかり見ている筆者からすると「大きいなぁ~」という印象。

初めから電化する予定でつくられていましたから、断面も大きくなっています。

 

トンネル内部はボーリングコア(調査をする際に地盤を確かめるために穴を掘ったときの試料)のようなものが置かれています…こんなところにあったら使えなくなりそう…

というか使わないのか…

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なんとなく、鉄道が来そうな雰囲気がある。

 

盛土とトンネルの遺構が残る中津川線。

これだけコンクリートの塊が残ると「負の遺産」として捉えがちですが…

 

中津川線の工事によって湧出した温泉によって、昼神温泉という新たな温泉地が誕生。

現在では長野県南部随一の温泉地にまで発展しました。

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昼神温泉は中津川線建設工事の時に湧出した新しい温泉。いわゆる美肌の湯で、ヌルヌルとした肌触りが特徴的な温泉である。

ついに数年後(?)にはこの計画路線に平行したリニア中央新幹線が開通する予定です。

幻の中津川線のDNA(?)は、現在や未来の観光地や鉄道をつくる原動力になっているのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

台風から1年、上田電鉄の現在はどうなっているのか?

「赤い橋」が流された上田電鉄

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上田電鉄千曲川橋梁。

昨年の台風19号の被害を受け、千曲川橋梁の一部が流されてしまった上田電鉄

現在はどうなっているのでしょうか?

取材班(一人)は現場に向かいました……

 

 

現在も上田ー城下間で代行バスによる運行が続く

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一部流失した千曲川橋梁。

上田電鉄は上田ー別所温泉間を約30分で結ぶローカル線です。

昨年の台風19号で、上田電鉄の上田ー城下間にかかる「千曲川橋梁」の一部が流失してしまいました。

現在では堤防の工事と合わせて、橋梁の復旧作業が続けられています。

 

そのため上田駅と橋を渡ってすぐの城下駅の間の路線は、事実上の休止状態となっていて、すべての列車は城下駅発着となり、城下駅から上田駅まで代行バスに乗り換えとなります。

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「丸窓電車」の愛称で親しまれた上田電鉄の車両。なんと現役引退後すべての車両が解体されずに保存されている。

上田電鉄上田駅の現在

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列車の来ない上田電鉄上田駅のプラットホームは、広場として公開されている。

列車しばらく来ることのない上田電鉄の上田駅は、広場として開放されています。

記念撮影ができるパネルや復旧工事の様子などが展示されていて、わずかながら観光客の姿もありました。

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上田駅ホームには復旧工事の状況が展示されている。

そして筆者の目に留まったのはこの鉄道警戒標識

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ホーム先端にある鉄道警戒標識。「台風」の文字がある。

当時のものなのでしょうか、「警戒:台風」の文字でホーム端に取り付けられています。

現在進行形で「台風の復旧工事をしている」という想いをひしひしと感じます。

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上田電鉄上田駅。

上田駅のきっぷ売り場は営業しているようで、券売機も使えるようです。

 

さて、鉄道代行バスは上田駅の温泉口から出発します。

代行バス乗り場に移動すると、そこには想像以上の列が…

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代行バス乗り場は列になっていた。

写真にはありませんが、筆者の背後にもほぼ同じくらいの長さの列がありました。

訪れたのは休日の昼下がりでしたが、代行バスは満席、立ち客もかなりいる感じでした。

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代行バスは通常の路線バスの車両が使われる。

代行バスは、別所温泉からやってきた列車が城下駅に着く時間に合わせて上田駅を出発します。

本来であれば城下駅に到着する列車がそのまま上田駅に到着し、折り返しで運用に入ります。

したがって現状では、普段の上田駅の出発時間より相当前倒しで代行バスに乗車する必要があります

 

仕方ないですけどね~

 

バスに揺られて10分もしないうちに城下駅に到着。

城下駅では臨時の切符販売所が設けられ、こちらでもきっぷの販売をしています。

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城下駅はバスからの乗り換えの乗客で賑わう。

突然ターミナル駅の役割を背負った城下駅、列車の到着とバスの乗り換えが重なると、かなりの人数になります。

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城下駅に停車中の上田電鉄1000系。当駅が臨時のターミナル駅になっている。

 

「赤い橋」の現在を眺める

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千曲川橋梁の流失箇所には近づくことはできない。

一方、流されてしまった千曲川橋梁を眺めてみます。

赤色のトラス橋、1924年開通の歴史ある橋梁です。

 

当時の地方私鉄の橋梁は、国鉄からの払い下げたり、海外製のいわば「お古」の橋梁をかけることが多かったのですが、なんとこの橋は上田温泉電軌(上田電鉄の前身)の独自設計で新造。

 

立派な橋だっただけに流失は残念でしたが、廃線にならず、復旧(というよりは一部新造?)が決定しただけでも嬉しいですね。

 

ニュースでたびたび報じられた鉄道橋の途切れた箇所は、立ち入り禁止で見学もできません。

最も城下駅寄りの一つのトラス(?)が流されてしまったことが分かります。

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千曲川橋梁を下流側に向かって眺める。右端が流失部分。

では反対側に回ってみましょう。

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台風被害の復旧のスローガンは"ONE NAGANO"

近づくとこのトラス橋、結構迫力があります。

かなり重厚な造りで、歴史を感じますね~

 

おお、東急建設も関わっていますね~流石…

後に述べますが上田電鉄は東急系列の鉄道会社です。

 

地域に愛され続ける上田電鉄

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別所温泉駅や上田駅には寄せ書きや折り鶴が飾られている。

上田駅にもその反対の終点、別所温泉駅も寄せ書きやメッセージ、折り鶴が飾られています。

かなり地域住民に愛されているという雰囲気が、一度行っただけでも感じとることができます。

 

事実、上田電鉄の早期復旧のために5万人の署名や3000万を超える寄付が集まり、これを見た上田市も補助金を出すことを決めました。

上田電鉄の千曲川橋梁を上田市が所有する形をとることで、交付税を復旧費用に充てられるようにする、という斬新なアイデアで復旧費用を賄っています。

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別所温泉駅は美しい景観の残る駅舎である。

余談ですが上田市は公共交通機関への投資が熱心で、市が補助金を出してバスの上限運賃を設けたりして、利用の促進をしています。

これはこれからの高齢化社会を見据えたもののようです。

 

地域住民の熱意が自治体を動かし、鉄道を早期復旧させる決断に至った今回のケースは、「公共交通機関としての鉄道の今後のあり方」を考える上でも一つのモデルになるかもしれません。

 

おまけ:長野県と東急創始者の意外な関係【#GoTo慶太キャンペーン】

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先日、Twitterで「go to トラベルキャンペーン」にあやかりまして、一部で#GoTo慶太キャンペーンなるハッシュタグが広がりました。

 

五島慶太とは東急の創始者であり、「渋谷」という町の初代の大家さんともいうべき実業家です。

実はこの方、長野県の出身

 

 

上田電鉄は東急グループ

五島慶太の出身地は長野県青木村で、上田電鉄の前身、上田温泉電軌青木線の沿線が実家でした(現在は青木線は廃止)。

青木線沿線の名湯、田沢温泉は五島慶太ゆかりの旅館も現存しています。

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青木村には五島慶太の資料館が最近オープンしました。

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青木村に今年6月に完成した、五島慶太未来創造館。入場無料。

かつてこの地域では生糸の生産が盛んで、また沿線に温泉地があったことで、上田電鉄の路線がいくつもありました。

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上田電鉄下之郷駅にはかつての路線の分岐の跡が残る。

ところが全国の地方私鉄の例に漏れず、需要の低下から現在は別所線のみになっています。

 

 

上田電鉄は1958年から東急の系列会社となり、現在へ至ります。

今では車両も東急の中古車両を使っています…おかげで車両のvvvf化も達成。

車両内装もほとんど東急時代のままなので、乗車するとものすごい「東急感」があります。

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かつての東急をご存知の方はこの座席でピンとくるのではないだろうか。下之郷駅には「湯たんぽ」こと東急5200系も留置されている。

 

意外な路線も五島に救われた

東急の開発の陰で、五島はふるさと信州の鉄道も支えていました。

 

上田電鉄だけでなく当時私鉄だった現在の飯山線も、五島慶太の支援で廃線を免れた歴史があります。

飯山線は五島の支援の後、国有化され現在に至ります。

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飯山線も私鉄時代に五島の支援で助けられた。写真は森宮野原駅に停車中のキハ110形おいこっと編成。

他にも上田周辺が凶作の際にも、東急で人材を雇って学生の就職を支援したという話もあります。

故郷想いの人物だったんですね~

 

五島慶太が支援した上田電鉄は、現在では地域住民に支えられて復旧工事が進み、2021年度春の開業を目指しています。

 

当ブログでは、上田電鉄の今後の益々の発展をお祈りしております!

 

※ブロガーバトンを渡していただいた方、まことにありがとうございました!

これからも続けられるよう、頑張ってまいりますので今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

【貴重】651系特急「草津」、3列グリーン車に座る

「格」が違う!?651系のグリーン車で上野へ

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グリーン車趣味が加速した筆者が、是非乗ってみたかった651系のグリーン車。

今や特にJR東日本では、「3列グリーン車」は豪華で貴重なものとなりました。

 

今回は651系の特急「草津」のグリーン車で、かつては多くの特急が発着していた上野駅の地平ホームへ向かいます!

 

 

今のJR東日本の基本はグリーン車も4列

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最近のJR東日本の標準的なグリーン車は4列。これは特急「あずさ」「かいじ」などに使用されるE353系のグリーン車。。

最近のJR東日本の特急列車の標準的なグリーン車は、普通車と同様の4列シートが標準です。

一部からは「ぼったくりグリーン車」と揶揄されていますが、その代わりJR東日本のグリーン料金は他社よりも低く設定されています。

(個人的には筆者が特急「あずさ」のグリーン車の混雑具合を見ても、4列の方が利用実態に見合っているような気もします…)

 

それに対して、651系のグリーン車はゆったり3列のシートを採用をしているのが特徴です。

 

座り心地はいかに…?

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651系のグリーン車のつくりはかなりしっかりとしている。

気になるシートピッチ(座席の前後間隔)は意外と国鉄時代と変わらずの1160mm。

標準的な広さなんですが、若干狭く見えます。

 

これは座席自体が大型になっているため、そう見えるというだけみたい…

 

座席のヘッド部分ぐらいまでモケット張りになっていて、座ると包み込まれるような気分になります。

新幹線のグリーン車の感覚とよく似ています。

 

座席テーブルは前の座席の後ろに設置されていて、ひじ掛け部分には机はありません。

取り出してみると結構微妙な位置で、お弁当とかは食べづらいかもしれません。

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座席テーブル。

フットレストは固定されていて、靴を脱いでひっくり返すタイプ。

短足な筆者なので参考になるか分かりませんが、ちょうどいい感じです。

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フットレスト。

各座席に読書灯もついています。

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スイッチのon/offを切り替えることができる。

窓は大型で、上野方面に向かうときは偶数番の席に座ると眺望が良好です。

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大型の窓も登場当時は斬新だったのかもしれない。

細かい部分ですけど、LED表示器もどことなくなんといいますか、JR初期の雰囲気が漂います。

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651系のLED表示器。

こちらは公衆電話のスペースだったところでしょうか…

「途中トンネル、山間部等使えない区間がございます」なんていう放送もいつの間にか消えてしまいました。

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公衆電話のスペースの跡?

ドアもまたJR初期っぽい(?)感じ…

このような鉄道のデザインも流行がありますよね~

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651系のドア。

洗面台を見ても、国鉄時代の古めかしいものから新しくしていこうという意気込みが感じられます…

特にトイレ周りは新型車両になるにつれて大幅に改良されていく印象があります。

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651系の洗面台。

そもそも651系は常磐線の速達タイプの特急「スーパーひたち」として使われていた車両。

651系のグリーン車は登場から3回程度リニューアルされていて、現在の形になっています。

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高崎線系統の651系は現在は直流化され7両編成。グリーン車もついている。

以前の座席はオーディオサービスがあって、液晶テレビがついていたのだとか…

グリーン車の座席に座って待っていると、「スーパーひたちレディー」がヘッドホンとコーヒーと持ってやってきて、ひざ掛けのサービスもあったらしい…

もはやビジネスクラスですね~

 

登場当時のキャッチフレーズは「タキシードボディーのすごいやつ」

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渋川駅に入線する651系。

そもそも651系は、JR東日本が随分と力を込めて製造した車両です。

見た目も現在では普通な感じがしますが、国鉄型の車両だらけだった時代にこのデザインは斬新であったはずです。

 

タキシードボディーと呼ばれた外装ですが、特急「草津」に転用する際にオレンジ色の線が引かれました(それ以外はほぼ変わっていません…)。

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高崎線系統に転属した際にオレンジ色の帯が追加された。行先表示器は幕式。

設計最高速度はなんと160km/h。

当時スーパー特急と呼ばれる計画(新幹線程度の規格で路線を整備し、線路幅はそのままにして高速で走行するというもの)が流行っていたため、それを見据えて開発されたとの噂があります。

 

ちなみに先代の特急「スーパーあずさ」に使用されていたE351系(登場も651系とだいたい同時期)も設計最高速度は160km/hでした。

これも同じ理由らしいですが、真相はわかりません。

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特急「スーパーあずさ」に使われていたE351系。振り子式で設計最高速度は160km/h、現実にはオーバースペック気味だった。

車両の外見やスペックはさることながら、先ほど述べた「スーパーひたちレディー」による豪華なグリーン車サービスもあったわけですから、相当気合が入った車両だったことがうかがえます。

 

特急「草津」は上野駅地平ホーム発着

特急「草津」は上野ー長野原草津口間を平日は一日2往復、休日は3往復しています。

観光地で言えば草津温泉や伊香保温泉へ向かう列車です。

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伊香保温泉は渋川駅からバスでアクセス可能。バスの本数も多く意外と公共交通機関で行きやすい。

筆者は伊香保温泉最寄りの渋川から高崎や熊谷、大宮などを通って上野駅へ。

尾久から上野にかけて、いまや貴重な185系と2回もすれ違うサプライズで浮かれていました。

 

意外かもしれませんが、JRの上野駅って線路名称上は東北新幹線と東北線しか乗り入れていないんですよね~あんなに線路があるのに…

 

特急「草津」の上野発着便は地平ホーム(頭端式ホーム)に止まります。

上野駅地平ホーム、かつては寝台特急や寝台急行のターミナルとして使われた往年のホームでしたが、現在では「特急草津」はここを発着する数少ない特急となりました。

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上野駅に到着した特急「草津」。

 ついでにブルートレイン末期に寝台特急用のホームとして使われた13番線を見物。

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寝台特急が発着していた上野駅13番線。

JR東日本の豪華寝台列車「トランスイート四季島」はこのホームから発着しますが、実際には13.5番線(?)から乗り込むようです。

ここ、荷物積み下ろし用のホームだった場所です。

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上野駅13.5番線、四季島専用ホームへはゲートを通って向かう。通常は立ち入りできない。

 13番線をよく見るとプラットホームのデザインが凝っていることが分かります…晩年は特別なホームとして使われることが多かったのです。

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上野駅13番線、ホーム床のデザイン。

個人的には、別に集団就職した世代でもないんですけど、もともと地元が東京の方だったこともあり、愛着のあるターミナル駅です。

やっぱり「上野は俺らの心の駅」ですね~

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上野駅は東京近辺でもっとも「終着駅」らしさが残っている駅かもしれない。



 

 

北陸新幹線開業で東京ー直江津間は本当に「遠くなった」のか

北陸新幹線開業の明暗?

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2015年3月に金沢延伸開業が達成された、北陸新幹線。

東京ー金沢間の最速は2時間28分と、1日がかりで移動していた時代と比較すれば圧倒的に所要時間が短縮されました。

 

金沢の観光ブームに沸く一方、新潟県上越市周辺では「北陸新幹線開業後、以前より東京からの所要時間が伸びたのではないか」という指摘があり、密かに話題になりました。

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直江津駅とハムエッグ。

上越・直江津周辺は、ある意味で新規路線の開業による「振り回された」歴史の積み重ねがあります。

新幹線開業から5年、以前と比較して現在の東京ー直江津間は便利になったのか、不便になったのか見ていきます。

 

 

上野ー直江津間4時間、在来線特急「あさま」の時代

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特急「あさま」に使用された189系。

1997年の北陸新幹線長野開業以前は、在来線の特急「あさま」の一部が長野駅を経由し、直江津駅まで乗り入れていました。

他にもいろいろ走っていましたが今回は割愛。

 

「在来線で4時間」で直江津まで…意外と早かったんですね~

よく考えれば、横川ー軽井沢間や長野以北の単線区間を除けばボトルネックはありません。

 

ちなみに長野から直江津までは、特急「あさま」で所要時間が1時間15分程度だったようで、こちらも意外と距離があります。現在でも新幹線では約2駅ほど離れています。

 

「長野新幹線」と「ほくほく線」の開業

北陸新幹線と信越本線を乗り継ぐルート

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黒姫駅に残る「妙高」の表示板。特急「みのり」から快速、普通「妙高」へと格下げされた。末期の妙高号は189系で運転された。

1997年に北陸新幹線が長野駅まで開業し、在来線特急「あさま」が廃止されました。

この時、長野から新潟方面に向かう優等列車の整理が行われ、長野ー直江津ー新潟間に特急「みのり」が設定されました。(長野ー新潟間は2往復)

 

東京から長野まで新幹線で約1時間30分、長野から直江津までも約1時間30分で、

乗り換え時間を含めないと東京ー直江津間は約3時間まで短縮されました。

上越新幹線とほくほく線を乗り継ぐルート

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ほくほく線の十日町駅。列車走行位置もわかる。

一方この時、ほぼ同時に犀潟ー十日町の新規短絡路線「ほくほく線」が開業。

上越新幹線と接続して越後湯沢から直江津を経て金沢方面へ向かう特急「はくたか」の運行が開始されました。

この記事をご覧の皆様ならご存知かもしれませんが、「ほくほく線」はかなりの高規格路線であり、特急「はくたか」は最高速度160km/hでこの区間を走行します。

 

上越新幹線と特急はくたかを乗り継ぐと、東京ー直江津間は2時間少々

 

このことからわかるように、「上越新幹線と特急はくたか」を乗り継いだ方が早かった訳です。

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「スーパー特急」として160km/hで走行した実績を持つ、681系2000番台。元はくたか編成。

そのため、東京から長野経由で直江津方面へ向かう行き方はマイナーになり、特急みのりは快速へと格下げされてしまいます。

 

また、新幹線開業以前から長野県と新潟県の県境付近(妙高高原駅近辺)の利用客が少ないため、本数も少なかったのです。

このことは、現在に至るまで上越の鉄道事情を苦しめる一因になっています。

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妙高高原駅に停車中のしなの鉄道115系。

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妙高高原駅に停車中のえちごトキめき鉄道妙高はねうまラインの車両。

北陸新幹線開業で状況は一変

意外と便利な上越妙高駅

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上越妙高駅。それほど大きくはないが、乗り継ぎ客は多く見られる。

2015年に北陸新幹線が金沢まで延伸された際に、上越妙高駅が設置され、在来線特急「はくたか」は廃止されました。

上越妙高駅は元信越本線の脇野田駅というローカル駅でしたが、移転してなんと新幹線駅に格上げ…

 

東京ー直江津間は北陸新幹線で上越妙高駅まで行き、上越妙高駅からえちごトキめき鉄道に乗り換えて直江津へ行くルートが一般的になりました。

 

東京ー直江津間の所要時間はトータルで2時間30分程度と、はくたか時代よりは遅くなりましたが、増加した時間は15分くらいのものです。

 

基本的に上越妙高駅では新幹線と直江津方面の普通列車、あるいは新潟まで運行される特急「しらゆき」との接続がうまく取れているダイヤになっていて、特に使いづらいという印象はありません。

 

しかしどうやら時間帯によっては、新潟から柏崎などを通って上越妙高まで向かう特急しらゆきと北陸新幹線の接続が50分近くなることもあるようで、これはかなりのネックになりそうです。

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上越妙高駅に停車中のE653系特急「しらゆき」編成。この編成の歴史もなかなか壮絶だが、それはまた別のお話である。

一方、特急「はくたか」が通らなくなったほくほく線では、日本最速の快速「超快速スノーラビット」を運行しこれに対抗(?)しています。

3セクの「えちごトキめき鉄道」と3セクの「北越急行ほくほく線」が競合している形になります。

 

越後湯沢からのほくほく線最速の「超快速」を利用すると、東京ー直江津間の所要時間は北陸新幹線経由でも上越新幹線経由でも変わらなくなります。

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直江津駅にくる特急は大幅に少なくなったが、今でも多くの種類の鉄道車両が見られる。車両の種類を見ても東西境界駅の面影はありそうだ。

以前は停車駅を絞った超快速が複数本運転されていましたが、近年は「超快速」と名がついても停車駅が増加傾向で、速達タイプの超快速は1日1本にとどまっています。

 

直江津方面の直通需要より、周辺の需要を拾った方が効果的なのかもしれません。

元も子もありませんが、そもそも東京ー直江津間を移動する需要もそこまで大きくないのかも…?

 

まとめ

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直江津駅に残る「はくたか」の乗車位置目標。

かつては特急街道としてにぎわった直江津周辺は新幹線開業後、鉄道路線として「微妙な位置」になってしまい、現在では3セク同士が競合するエリアとなりました。

北陸新幹線開業後不便になったというイメージが先行しがちな一方、意外と接続も良く、所要時間もあまり変化はありません。

 

3セク化された元信越本線のえちごトキめき鉄道も経営難がささやかれていますが、観光列車なども運行されていて人気があります。

 

上越周辺は鉄道激動の時代を生き抜いた地域と言えるかもしれません。

今後も期待したいですね~

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直江津駅には今でもかつての賑わいを彷彿とさせるものが残っているので、探すとなかなか面白い。

 

トワイライトエクスプレスも再現か!?駅直結の鉄道展示施設「糸魚川ジオパル」が凄い

糸魚川駅の鉄道展示はなかなか豪華

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北陸新幹線が開業し、寝台列車や在来線特急が姿を消した糸魚川駅。

しかしながら、リニューアルした駅に直結した「糸魚川ステーションジオパル」では、沿線に関連する貴重な展示品やジオラマを無料で眺めることができます。

 

今年、新たな展示の目玉となりそうなのは「トワイライトエクスプレス」の再現車両。

車体そのものの保存は叶いませんでしたが、細部に至るまでの熱意ある再現を近日お目にかかれるかもしれません。

 

 

長大ホームが往年の活躍を思わせる糸魚川駅

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糸魚川駅在来線のホーム。非常に長いが基本的に1両の普通列車しか来ない。

現在の糸魚川駅の在来線ホームには、元北陸本線のえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの列車が1時間に1本程度、大糸線が2時間に1本程度発着しています。

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えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン(旧北陸本線)の普通列車。

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大糸線に使用されるキハ120形。

新幹線が開業する前は、これでもかというほどの種類の特急が発着していましたが、現在では糸魚川駅を通過あるいは停車する在来線特急は1本もありません

 

長大ホームに停車する1両の車両…寂しい部分もありますが、東京駅から約2時間で糸魚川まで到達できるというメリットは大きいですね…仕方ない部分もあります。

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糸魚川駅は新幹線が停車するようになった。1時間に1本程度の本数がある。

豪華な展示、駅直結の「糸魚川ジオパル」

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ジオパルの入口。

糸魚川といえば「ヒスイ」という宝石で有名な街で、日本海の海岸に出れば一般人でもヒスイの石ころを拾うことができます。観光もこれを目玉にしていて、石好きに優しい雰囲気がありますが、一方で鉄道マニアにも優しい部分があります。

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糸魚川でとれるヒスイの原石。一般人はこの大きさのものを手にすることは難しい。

 鉄道マニア必見なのは、糸魚川駅の1階にある「糸魚川ジオパル」という施設です。

入場料が無料なのにも関わらず、かなり豪華な展示がされています。

 

トワイライトエクスプレスの再現車両は近日公開

いまだ公開されていませんが、北陸本線を駆け抜けた往年の豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」の食堂車とA寝台個室スイートを再現した車両がこちらの施設で見られるようになるそうです。

 

一説にはトワイライトエクスプレスの車体ごと保存する予定だったらしいのですが、それは叶わず…

 

その代わり調度品はできる限り現物を集め、方向幕は製造元に頼んで精密に作り上げ、車体は糸魚川の木材を使って再現したとのこと。

これは糸魚川で大火があったことの復興の意味もあるようです。

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現在は「近日公開」となっているが、いつ頃お目にかかれるだろうか。

この再現車両は、東京の六本木ヒルズで行われていた「特別展 天空ノ鉄道物語」で公開されていたもので、終了後は糸魚川まで運びジオパルで展示することになりました。

 

当初の予定では今年のゴールデンウィーク頃にお披露目される予定でしたが、最近の情勢からか、未だに公開はされていません。

1ファンとしては、非常に待ち遠しいですがゆっくり待ちたいと思います。

 

キハ52を待合室として開放、ジオラマ完備

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ところで、ジオパルの魅力はこれだけではありません。

入口ではなんとキハ52がきれいに静態保存され、内部を待合室として開放しています。

 途中で途切れるように見えますが、1両そのまま残っています。

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内装、外装ともに博物館並みに美しい。

このキハ52は大糸線南小谷―糸魚川間の非電化区間(JR西日本管轄)で走行していたもので、内装もほぼ現役当時もまま残されています。

現在の大糸北線を走るキハ120と比べると非常に豪華でうらやましい……

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現在の大糸北線で使用されるキハ120は低コスト車両。座席は指で押すと簡単に底に到達してしまう。長時間の着席は厳しい。


これだけでも博物館級のものですが、奥には大きなジオラマとプラレールが……

ジオラマは2つあり、片方は子供向け(?)、片方は大人向けにつくられているみたいです。

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プラレールの展示。

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広大なジオラマを堪能で切る。

追加で料金を払えば、カメラ付きの車両を運転できるようですが、接続列車の都合で断念……また訪問したいですね~

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模型もずいぶんと揃えられていて驚きです。

これはかなりお金かかってますよ…(笑) 

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模型のコレクションの数々(一部)。

一区画にはサボや駅名標もきれいに保存されています。

愛のある並べ方だな~

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サボもきれいに並べられている。

まとめ

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往年の列車をお目にかかれなくなった寂しい糸魚川駅ですが、心の中で…というよりは「糸魚川ジオパル」の中で走り続けているので、鉄道好きで糸魚川に来られたならぜひ訪れてみてください。

 

余談ですが、糸魚川近辺に来られたなら、一度海岸に出てみることをお勧めします。

砂浜ではなくて小石が広がる海岸なので、波の音も景色も違うんですよ~

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糸魚川駅から徒歩30分程度でヒスイ海岸へ。えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインはこの近くに新駅を設置予定。