toremorの旅手帳

鉄道と旅行と温泉と。大学生の放浪の様子をご覧ください。

【9/1より無料化】上田と松本の短絡ルート、三才山トンネルが便利

三才山トンネルが無料化されました

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最後の夜となった8/31の三才山トンネル料金所。

上田市と松本市を結ぶ三才山トンネル有料道路は2020年9月1日より無料化されました。

長野県の中信地方と東信地方を結ぶ、盆地と盆地を結ぶ地方都市間の移動に便利な道路です。

 

今回は、このトンネルの有料道路最終日の様子や、利便性、周辺地域の魅力について見ていきます!

 

 

三才山トンネル最終日の夜

三才山トンネルに近づく道路では表示板で無料開放の宣伝をしていました。

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無料化の宣伝をする表示板。

2020年8月31日、有料道路最後の日となった三才山トンネル料金所。

「ありがとうございました」の横断幕が張られ、名残惜しい雨(?)となりました。

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三才山トンネル料金所、最後の夜。

ETCが非対応の有料道路でしたので、係員の方に小銭や通行券を直接渡していたんですよね~

安く移動できるようになるのは大変うれしいですが、無料化と同時に、この光景は見られなくなってしまうのはどこか寂しい気分にもなります。

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最後まで人の手で通行料金を徴収していた。

管理事務所はしばらく通行券(回数券)の払い戻しのため営業するようですが、隣接するトイレ、駐車場は無料化と同時に閉鎖されるようです。

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三才山トンネル料金所のトイレと管理事務所。トイレは8/31を持って閉鎖された。

かつてはトンネルの手前にあるセブンイレブンで(松本側にも上田側にも存在)回数券をばら売りしていて、通行料の1割引きで通行券を購入することができました。

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三才山トンネル、普通車用の通行券。これを購入するか直接現金で支払っていた。

そのため、このトンネル周辺のセブンイレブンはお客さんも多めでした。

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松本市側のセブンイレブン。回数券のばら売りが販売されていた。

 

三才山トンネルの利便性

三才山トンネルの利便性はどれほどのものなのでしょうか?

松本駅から上田駅までの移動を例に比較していきます。

 

高速道路を利用すると遠回り

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高速道路を利用すると大型車も通行できるが、遠回りでコストも時間もかかる。

高速道路を利用して松本駅から上田駅まで移動すると、山地を迂回するようなルートになるため、長野市近辺までの遠回りを強いられます。

 

普通車で1900円、所要時間は約1時間31分です。

 

ちなみに松本駅から上田駅まで、鉄道で移動する場合は松本→(篠ノ井線・信越線)→長野→(北陸新幹線)→上田と移動するのが最短です。

こちらも最短で1時間30分くらいで、新幹線を利用しても所要時間はあまり変わりません。

 

かつての無料最速ルート、青木峠越えは酷道が連続

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青木峠越えは国道であるが、酷道でもある。

 

三才山トンネルが開通する前はこちらのルートが最短ルートでした。

国道143号線と、名前こそ「国道」を名乗っていますが大型車は通行できず、途中からセンターラインもありません。

 

明治時代に開通した歴史ある国道ですが、もともと馬車の通行を考慮して高低差を少なくした結果、等高線を縫うようなルートとなっているため、急カーブが連続します。

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国道143号線は途中で酷道区間がある。舗装されているが路面状態は悪く、センターラインもない。

明治時代に開通した当時のトンネルが今も使用され、国道最古のトンネル「明通トンネル」や、同じく明治時代開通の片側交互通行のトンネル「会吉トンネル」は、趣がありますが通行はしづらいのが現状です。

 

松本駅から上田駅までの所要時間は1時間25分です。

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会吉トンネルは片側交互通行。手掘りのトンネルを現在でも使用している。

ちなみにこちらのルート、かつて存在した松本市内の路面電車「松本電気鉄道浅間線」と、上田温泉電軌青木線(現在の上田電鉄)を直通させ、松本ー上田間に鉄道を通すという夢物語までありました。

 

 

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美ケ原越えは標高差700m超、現在通行止め

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美ケ原越えは長い峠道が連続し、時間がかかる。

「美ケ原」というとビーナスラインなどのドライブコースとして有名ですが、こちらのルートは華々しいルートの裏側にある酷道です。

武石峠という峠を越えますが、こちらは標高1340m。

松本盆地からは標高差約700mを駆け上がり、上田盆地へ降ります。

こちらも武石峠より上田側でセンターラインがなく、路面状態も悪いです。

 

現在は災害復旧工事のため、当分の間通行止めとなっています。

松本駅から上田駅までの所要時間は1時間43分です。

 

三才山トンネルは短絡ルートとして開通

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三才山トンネルは直線的なトンネルで大型車も通行できる。

三才山トンネルは全区間2車線で、1976年開通。

大型車も通行でき直線的なトンネルで快適に走行することができます。

 

以前まで普通車で500円→510円→520円ほど通行料金がかかる有料道路でしたが、9/1より無料化されました。


松本駅から上田駅までの所要時間は1時間11分です。

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三才山トンネルは松本市と上田市を直接結ぶトンネル。2車線道路。

三才山トンネルは温泉地と温泉地を結んでいる

三才山トンネルの松本側にも上田側にも、雰囲気の良い温泉があります。

まずは松本市側。

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1300年の歴史を持つ浅間温泉。旅館も日帰り入浴施設も存在。

透明ですがほんの少し硫黄の香りがする浅間温泉

飲泉もでき、胃腸に効くとのことです。

松本市街地からも至近で、バスでもアクセスが可能です。

 

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当ブログでは2つの施設をご紹介していますが、旅館ならこちら、日帰り入浴施設ならこちらとどちらもおすすめNo.1となっています。

他にも複数の日帰り可能な施設、旅館もあります。

 

一方の上田側、こちらも味わい深い温泉があります。

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国民保養温泉地に指定されている鹿教湯温泉。

国民保養温泉地に選ばれた鹿教湯(かけゆ)温泉をはじめ、ディープで個性豊かな丸子温泉郷があります。

 

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 リゾート地的な温泉ではありませんが、古き良き温泉街の面影を現在でもとどめています。

 

三才山トンネルにお越しの際はぜひ立ち寄ってみてください!

 

 

糸魚川駅でトワイライトエクスプレスの再現車両を見る

トワイライトエクスプレス再現車両が一般公開

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新潟県の糸魚川駅には、駅直結の鉄道展示施設「糸魚川ジオパル」があります。

キハ52の静態保存やプラレールやNゲージ、HOゲージのジオラマなど見ごたえのある展示が特徴です。

 

糸魚川ジオパルの新たな目玉、トワイライトエクスプレスの再現車両は公開が延期されていましたが、8/9から一般に公開されました。

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キハ52の隣に再現

糸魚川ジオパルの入ってすぐ、かつて大糸線で活躍していたキハ52の隣に再現車両が展示されています。

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キハ52の隣に再現された車両。

展望スイートは台車より上を再現しています。

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台車部分は写真が貼ってあります~割とこれでもいいかも。

 ヘッドマークは本物なのでしょうか、ほぼ完全に再現されています。

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ヘッドマークは本物さながらの輝きがある。

ホームに上がってみます。

糸魚川の木材がふんだんに使用されていて、こちらはかなりおしゃれ。

駅名標もデザインされています。

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トワイライトエクスプレスの外観を見ていきます。

1車両分の長さで再現したわけではないので、外観は違和感を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。

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このホーム上に立っているマネキン、これはトワイライトエクスプレスの乗務員の制服が着せられています。

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制服の展示。

さて、側面をジロジロ見ていきます。

食堂車と展望スイートを切って張り付けたみたいな形状をしています。

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二つの車両を狭い範囲で再現している.

窓ガラスは張られていません。

24系客車にしては窓が……と思いましたが、そういえば、サシ481からの改造だったんですよね~

 

したがって側面は481系っぽい印象が強くなっています。

窓下にはおなじみのデザインも見られます。

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もともと糸魚川の大火の復興の意味で製作されたので、材質は糸魚川の木材を使って再現しています。

質感は違うかもしれませんが、方向幕やプレートなど、こだわりが随所に見られます。

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部品は細部からこだわりが感じられる。

車内の再現が素晴らしい

外観は再現の都合で実物と異なる部分がありますが、内部の再現には本物の調度品を使っています。

車内は土足厳禁で、ホーム手前に下駄箱があります。

 

手前側では展望スイートの展望部分が再現されています。

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座席は本物を使用。

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座席からの眺望。

絨毯の色は違った色だったかもしれませんが、かなり正確に作られています。

座席も机もカーテンもおそらく本物。

本物はちょうどカメラ位置にベッドがありました… 

 

振り向いて反対側には食堂車が再現されています。

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入った瞬間に声が出るほど再現度が高い。

これはすごい…

本物の食堂車に来た気分です。

金の網棚にシャンデリア、この辺の部品はすべて本物です。

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この再現車両はちょっと工夫がされていて、窓から夕方の糸魚川周辺の車窓をプロジェクターで流しています。

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日本海の夕日を見ながらディナー…筆者も体験したかった…

座席は座ることもできます。

席は本物ではないような気がしますが、現役当時もこんな形だったと思います。

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座席に座るとウキウキ…食事が出てきそうな気分。

メニュー表も再現されて置かれていますが、食事の内容は載っていませんでした。

 

今ではできないかもしれませんが、ここで食堂車のメニューを再現して食べたら最高かもしれません。

 

入館料・公開時間

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方向幕や他の調度品の展示もある。JR浴衣も健在!

トワイライトエクスプレスの再現車両は駅直結の糸魚川ジオパルの中にあります。

  • 入館料:無料
  • 再現車両展示時間:10:00~15:00

 

トワイライトエクスプレスの再現車両以外にも…

  • キハ52の静態保存
  • プラレールのジオラマ
  • HOゲージのジオラマ(運転可)
  • Nゲージのジオラマ(運転可)
  • その他模型の展示
  • 方向幕や駅名標の展示

 

など、豪華な展示が無料で見られます(運転には別途料金が必要)。

 

スタッフの方に伺うと、ファンの方から譲り受けた模型や部品なども数多く展示されているとのことです。

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他の展示も博物館級に充実している。

もはや博物館…

入場料無料で良いのか、不安になるくらいの展示がありますので、糸魚川に訪れた際はぜひご覧になってみてください!

 

 

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 鉄道コム

 

甲信地域最大の貨物ターミナル、南松本駅を観察

意外と規模の大きい貨物駅

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7:31、EF64国鉄色の重連が牽引する四日市行きの定期貨物列車が南松本駅を出発する。

松本駅から塩尻方面へ一駅南下、南松本駅は甲信地区最大の貨物ターミナルとなっています。

主に石油輸送と一部コンテナ輸送が行われていますが、関東方面や名古屋方面、四日市駅との間で、合わせて一日10往復程度(?)の定期列車の運行があります。

 

長野県の石油輸送は、古いデータですが8割が貨物のシェアなんだとか。

(なるほどガソリンが高いわけだ…)

 

また、中央線名物EF64重連の貨物列車も当駅では多く見られます。

が、筆者はあまり貨物について詳しくはないのと、撮る方は初心者なので今回はざっくり、雰囲気だけでもお楽しみいただければと……

 

 

南松本駅は石油の輸送量が多い

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今でこそ甲信地区最大の貨物ターミナルとなった南松本駅ですが、もともと戦時中に軍需工場の輸送駅として開業しました。

 

そもそも車扱(専用の貨車を使って1両単位で貸切って輸送する方法:現在では石油などの輸送がこれにあたる)の駅として開業したため、コンテナを扱うエリアでは近年まで改良工事が重ねられていました。

 

1970年には17本の専用線が発着していましたが、現在はわずかとなりました。

しかし2003年には交通新聞社の貨物取扱量、「車扱い」で全国5位にランクイン。

現在も石油の輸送が盛んです。

 

本線の西側に1本、篠ノ井線に平行する形で公共線が伸びており、そこからジャパンオイルネットワーク、日本オイルターミナルへ至る専用線が分岐、現在でも使用されています。

 

 

以前は岡谷酸素や太平洋セメント、タケヤみその専用線などで2000年代までは発着があったようですが、現在は廃止されています。

 

跨線橋からターミナルを俯瞰

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南松本駅を俯瞰。写真右手奥がコンテナのターミナルとなっている。

南松本駅南方の跨線橋にやってきました。

この位置からですとやや貨物ターミナルを俯瞰できます。

写真右奥にコンテナホームがあり、2面2線の構造です。

 

もう少し本線の近くまで移動します。

南北に長く、規模も意外と大きい…

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跨線橋より北側(松本方面)をのぞむ。

跨線橋より南側をのぞむと、一番右手(西側)に一本線路が伸びていることが分かります。

これが公共線で、日本オイルターミナル松本営業所などへ延びる専用線へとつながっています。

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跨線橋より南側(塩尻方面)をのぞむ。

因みにこの跨線橋の下には宮田前踏切という踏切があるのですが、貨物の入れ替え作業をするたびにこの踏切を閉じなければならないので、地元では「開かずの踏切」として有名です。

 

こんなところにもあったのか…開かずの踏切…

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宮田前踏切。踏切両サイドに交差点があるため、危険でもある。アンダーパスを通す計画がある。

北側にはコンテナのターミナルが存在

駅の北東側ではコンテナの取扱をしています。

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南松本駅北東側ではコンテナがきれいに並ぶ。

こちらは規模が小さいですが近年も改良が加えられ、まだまだ現役です。

遠くに篠ノ井線の本線が見えます。

朝の時間は頻繁に行き交いますが、塩尻―松本間は地方には珍しい「黒字路線」です。

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コンテナのターミナルから南側をのぞむ。

留置されているのは中央本線の貨物の主力車両、EF64EH200です。

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専用線の跡を探る

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1973年の航空写真と現在の位置関係。

専用線は駅の南側に広がっていましたが、一部は北側にも伸びていました。

まずは旅客駅の南松本駅付近を観察。

ちょうど、四日市へ向かう貨物列車が出ていきました。

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西側にある旅客駅は1面2線のシンプルな駅ですが、近年宅地開発の影響か利用者数は増加傾向にあります。

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旅客駅は一番西側に存在する。1面2線。

駅の正面へ回ります。

こちらもシンプルな造りです。

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南松本駅の駅舎。

駅の裏側にはこちらにもEF64が重連で止まっています。

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 さて、南松本駅から北に進むと、何やら怪しい線路跡が…

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本線から分岐し道路を渡る廃線跡。

振り返った先はなんと…

ラーメン屋……

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ラーメン屋へ続く廃線跡。

これは「ラーメン屋に小麦を運ぶ専用線」ではなく、日穀製粉へと延びる専用線の跡です。

google mapで俯瞰しても、弧を描く線路跡がなんとなく追えますよね~

 

ちょうど東京インテリアの南をかすめて、左上へ専用線は続いていました。

1997年あたりまで使われていたらしいです。

 

先ほどの空中写真

を見るとラーメン屋の奥で分岐していたことが分かります。

 

そして今度は跨線橋のあたりまで戻ります。

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跨線橋西端から北(上の写真)と南(下の写真)を見る。このあたりも専用線があったのだろうか。

さてもう少し南側へ進むと変わった形の踏切があります。

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手前には遮断器のない踏切があるが、奥には遮断器のある踏切がある。

お…これは…

おそらくかつてここに縦に踏切が2つ並んでいて、手前側が廃止されたもののようです。

この廃線らしきところを覗いてみると…

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デンカセメントの専用線だったと思われる路線。廃線となっている。

 これは推測ですが、おそらく上り線側から分岐しているようです。

状態はほぼそのまま残っています。

 

少し北側(南松本駅側)へ向かい、南部公園という公園から南方をのぞむと…

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一番左奥が先ほどの専用線跡。分岐線をさらに分岐してデンカセメントの専用線に入る。

南松本駅に近いほど線路の状態は良さそうです…

そして駅側に進むと架線も張られていて、こちらは現役のよう。

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架線も張られ、整備もされている。

奥には構内入換用(貨車を切り離して移動させるときに使用する)機関車として活躍するHD300も止まっています。

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入換用機関車HD300.

先ほどから見ている専用線跡、改めてgoogle mapでみても、良く分かります。

 

 

まとめ

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通勤時間帯は長野地区の313系も4両編成。

甲信地域最大の貨物ターミナル、南松本駅。

 

かつては専用線が張り巡らされていたようですが、現在では多くの場所が商業施設や宅地開発で消えてしまいました。

しかし部分的に取り残されている一角もあり、往年の活躍を垣間見ることができます。

 

ただ、かつて車扱駅として栄えた南松本駅だからこそ、現在の形で存続できているのかもしれません。

1970年代に比べれば賑わいは失っているかもしれませんが、現在でも当駅を通る貨物による石油輸送が長野県の大きなシェアを占めています。

 

今後も時代に適合したターミナルとして生き残ってほしいですね~

 

あと、南松本駅前のイイダヤ軒の駅そば、美味しいので是非ご賞味あれ~

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南松本駅前イイダヤ軒「冷やしおろしそば(470円)」。出汁が効いていて夏場でも喉を通りやすい。

 

【8/11運転再開】木曽の山奥に鉄道網?赤沢森林鉄道に乗車

木曽の谷には真木茂り…

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木曽の山奥を走る赤沢森林鉄道。

「木曽路はすべて山の中にある」と言われますが、かつてその山の奥地に鉄道網が敷かれていました。

 

長野県木曽地域は林業で栄えた地域です。

張り巡らされた路線は森林鉄道と呼ばれ、切り出した木材を中央西線の駅まで運ぶ目的で建設されました。

 

見づらいですが、1951年の地図を見てみます。

下の画面上部にある川に沿って何やら太い線と枝分かれする実線があります。

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上松の地形図。画面上部に太い線が描かれているが、これは上松駅から分岐する木曽森林鉄道の路線。

そのような線がいたるところにありますが、これはすべて森林鉄道だったのです。

現在では森林鉄道のほんの一部が観光路線として残っています。

今回は、豪雨災害や感染症の影響で長らく運休していた観光用の「赤沢森林鉄道」が再開したので、ご紹介いたします。

 

 

トロッコ列車で森林浴を楽しむ

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森林鉄道が走る地は、長野県上松駅から車で30分(かなり山奥!)、赤沢自然休養林の中にあります。

木曽森林鉄道赤沢線の廃線跡を利用して、観光用のトロッコ列車が走っています。

 

林野庁が森林セラピー基地に指定した赤沢自然休養林は、観光客だけではなく文字通りセラピーに来る人もいます。

 

森林セラピー、意外にも科学的根拠に基づいたちゃんとした領域のようで、全国大会の第一回もこの赤沢自然休養林で行われたのだとか。

道中にも研究施設などがあり、森林セラピー分野の先駆け的な存在なのかもしれません。

 

話をもとに戻しまして、駐車場から少し登ったところに森林鉄道の入口があります。

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赤沢森林鉄道が発着する駅。

走行ルートは片道約1kmの往復コース。

アトラクションのようにチケットを購入して、出発を待ちます。

 

往復900円、折り返し地点からの乗車はできず、往復のみの販売です。

チケットは木製のコースターサイズで、持ち帰ることができます。

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こちらが乗車券。

訪れた8/11は繁忙期のようで30分間隔で往復しているので、そこまで待ち時間は長くありません。

乗車駅には森林鉄道現役時代の蒸気機関車(静態保存)や、他のディーゼル機関車が留置されています。

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留置されている機関車。

観光向けに整備されているので、現役のころの簡易軌道のように「命の保証は致しません」と告げられることもなく、ワクワクとした気分で乗車。

 

訪れた際はあまり運転再開初日ということもあり、そこまで認知されていなかったからなのかガラガラ…

「密だったら撤退しよう」と思っていましたが杞憂だったようです。

 

機関車1両、客車5両の編成で客車一人につき1名の乗務員が乗車しています。豪華!

客車は木曽五木と呼ばれる周辺でとれる木の名前が書かれています。

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赤沢森林鉄道の客車。トロッコ列車感覚で乗車できる。

線路は幅762mmのナローゲージ。

軽便鉄道などで見られた特殊狭軌線です。 

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座席は2+1の転換クロスシート。

折り返し駅で進行方向が変わるからでしょうか、手で座席の背もたれ部分を倒すことができます。 

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座席は転換クロスシート。

せっかくなので機関車の排気を嗅ぎたい筆者は一番先頭へ。

森林セラピーで新鮮な空気を吸いたい方は一番後方をおすすめします。

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客車の先頭へ…

機関車は小型ですがディーゼルエンジンのようです。

運転台は横向き、スイッチャーのような形。

機関車に牽引されて出発、森林を縫うように走ります。

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林の中を縫うように走る。

車窓もなかなかの見ごたえ、さすが森林セラピー基地というだけあります(森林セラピーと言いたいだけかもしれない)。

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清流に沿って森林鉄道は走る。

途中で観光用の自動放送が良質なスピーカーから聞こえてきます。

真面目なアトラクションといったところでしょうか。 

折り返し駅では「機回し」も

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折り返しとなる丸山渡停車場。左手は機回し線。

10分くらい経過すると、折り返し地点に到着。

ダイヤでは停車時間5分で折り返します。

マニアとしては復路の運転方式が気になるところ。

 

推進運転か!?と思っていましたが、隣の機回し線を駆使して、なんとものの3分で反対側へ機関車を付け替えます。

かなりのスピード芸、職人技を感じ驚きました。

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機回しは素早く行われる。

復路は後方展望を楽しみながらまったりと。

気温は30℃いかないくらいでしたが、川沿いで山奥、標高も若干高いので体感的には涼しいです。

あっという間の25分、乗車した駅に戻ってきました。

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後方展望も素晴らしい。

駅には待合室があって、これはおそらく森林鉄道現役時代の客車だと思われます。

もちろん内部も入ることができます…かなり狭い。

中山道の宿場町、奈良井宿にもほぼ同形式の客車が展示されています。

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待合室は森林鉄道の客車を利用している。

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奈良井宿に展示されている森林鉄道の車両。

森林鉄道のユニークな車両も現存

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資料館の内部の様子。

森林鉄道の乗車駅の隣には記念館があり、木材を運搬していた当時の写真や標識などが展示されています。

 

こちらは理髪車

洗面台やスチーマーなども客車についていたそうです。

現地で作業されていた方は街に出ることもなく生活していたわけですが、故郷や恋人に会いに行く前にこの理髪車を利用したとかなんとか。

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理髪車。

 作業の見回り用の簡易的なモーターカーもあります。

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小型のモーターカー。

こちらはなんとお召し車両(?)

昭和32年に皇太子陛下(当時)が上松駅からこの赤沢の地まで、森林鉄道のこの客車で移動したらしい。

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貴賓車もそこまで広くはない。

これが最初簡単にお見せした蒸気機関車「ボールドウィン号」です。

アメリカから輸入した機関車で、大正5年から昭和35年まで運行されたものです。

経費削減とやらで、燃料を石炭から木片に変えていた時期があるらしく、煙突に火の粉回収装置がついているのが特徴です。 

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蒸気機関車ボールドウィン号。

山中至るところに残る森林鉄道の橋脚

さて、赤沢自然休養林までのアクセス道路沿いの景色を注意してみてみると、あちらこちらで橋脚が残っています。

 

広い場所で車を止めて近づくと、意外と堅牢な石造りの橋脚が見えます。

こんなところに本当に鉄道を通したんですね……

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木曽森林鉄道の跡と考えられる橋脚。

 木曽地域の中でも上松駅周辺はもっとも森林鉄道が発達したエリアで、最盛期には総延長400kmを越えていたようです。

この近辺の森林鉄道は1975年あたりの末期まで走っていたので、比較的状態が良く残っているのかもしれません。

まとめ

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木曽の林業を支えた産業遺産ともいうべき森林鉄道。

今でも木曽の山奥を縫うように走った面影が残り、また保存もされています。

 

豪雨被害などを乗り越えて先日運転を再開した赤沢森林鉄道は、マニアだけでなく家族連れでも、アトラクションとして楽しめると思います。

 

最近は密かに北海道の簡易軌道をはじめとして、日本の産業を支えたかつての鉄道が注目を集めています。

整備や保存には手間もお金もかかりますが、このような小さな鉄道の痕跡が、改めて文化的な価値の高いものとして日の目を見るのかもしれません。

 

 

 

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【全席指定】新型SR1系で快適移動、しなの鉄道「軽井沢リゾート3号」乗車記

しなの鉄道SR1系は中古車ではなく完全新造

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しなの鉄道に導入されたSR1系。完全な新造車として製造された。

国鉄時代に製造された車両で埋め尽くされていたしなの鉄道。

それを逆手にとって、しなの鉄道は様々な経営戦略を行ってきた会社です。

 

www.toremor.work

 

「3セクの成功例の一つ」として紹介されることも多いですが、ついに2020年に新車「SR1系」を導入し、7月からSR1系で運行される有料の快速列車の運行を開始しました。

 

今回は土休日に運行される「軽井沢リゾート3号」で軽井沢から長野まで向かいます!

 

 

「軽井沢リゾート号」とは?

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軽井沢駅に停車中の特別快速「軽井沢リゾート3号」長野行き(左)。115系の初代長野色の普通列車(右)も停車中。

しなの鉄道では7月から、SR1系を使用した座席指定制の有料快速の運行を開始しました。

土休日と平日で設定される列車が異なります。

 

土休日には「軽井沢リゾート号」として軽井沢ー妙高高原(1号・4号)、軽井沢ー長野間(2号・3号)の2パターンが設定されています。

こちらは観光需要を拾うために、上り・下り列車ともに始発駅を9時台、16時台に出発するダイヤになっています。

 

一方平日は、主に長野ー上田間で「しなのサンライズ」「しなのサンセット」として運行しています。

こちらはライナー列車のような側面が強く、朝夕のラッシュ時にダイヤが設定されています。

 

東京の私鉄、京王ライナーに近い位置付けかもしれません…

 

予約の仕方と乗車方法

「軽井沢リゾート号」に乗車するためには座席指定券(500円)を購入する必要があります

発売期間は利用月の1か月前の1日~当日で、WEBサイトのほか、軽井沢、小諸、上田、戸倉、長野の各駅か車内で購入することができます。

 

平日の「しなのサンライズ」「しなのサンセット」では長野駅での発売がなかったり、いろいろと複雑なので、WEB予約をした方が便利かもしれません。

  

WEB予約にはクレジットカードが必要です。

スマートフォンからの場合、しなの鉄道の公式サイトから「SR1しなの鉄道有料快速」のボタンをクリックして…

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しなの鉄道の公式サイト(スマホ版)。

【平日】【土休日】の選択と枚数を選択して…

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出発駅と到着駅をポチリ…

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続いて、「プラン選択」を押して、プランを選択します。

土休日の「軽井沢リゾート号」では軽食プラン(サンドウィッチのようなもの)が設定されていて、このプランを購入する場合は1週間前までに予約する必要があります。(座席のみを利用する場合は当日まで予約できます

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シートマップから予約することもできます。これは嬉しい。

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シートマップを見ながら予約できる。

あとはクレジットカードの情報を入力して完了です。

当日は、きっぷを受け取る必要はなく、高速バスのようにそのまま乗車すればOK。

 

新車「SR1系」を観察!

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湘南色の115系と並ぶSR1系。普通列車としても使用される。

SR1系はJR東日本E129系(通称:ハムエッグ)をベースとして設計されています。

確かに前面も側面も形は同じです。 

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SR1系とほぼ同形式のE129系。

外観は青を基調としたデザインで、帯は千曲川の流れをイメージしたものとなっています。結構格好いい~

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水色の帯は千曲川をイメージしたもの。

車内に入ります。

一般的には珍しくない押しボタン式のドアですが、しなの鉄道では初導入!

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ドアの開閉は押しボタン式。しなの鉄道では初導入。

しなの鉄道の主力車両115系は、最近は換気のために自動でドアが開きますが、基本的に「手で開ける」仕様でした。

 

LEDによる案内表示が千鳥配置されていて、乗務員室の裏には大型の液晶モニターが設置され、沿線の観光案内や車内の注意などが流されています。

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ミュージックホーンや「信濃の国」の乗降促進メロディーも搭載されていて、なかなか豪華です。

 

座席はデュアルシートで、有料快速の運用の時はクロスシート、普通の運用の時はロングシートになります。

最近はやりのやつですね~

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クロスシートとして配置されているSR1系。

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ロングシートとして配置されているSR1系。

窓は意外と眺望がよく、観光列車としても遜色ありません。

紫外線カットガラスでカーテンを省略しているので、日が当たると厳しいかも…

各ブロックの最前列以外に座れば窓からの眺望が楽しめそうです。

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床も落ち着いた木目調で、よく見ると壁面も木目調。

優等列車での使用が意識されたデザインなのでしょうか。

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床面も壁面も木目調。

クロスシート時のシートピッチは結構広い感じがします。

ただし、構造上の問題で窓側の座席は足元が延ばせず、リクライニング機構もありません。

座面はE129系より少し硬い気がします。

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毎度おなじみ短足な筆者が足を延ばした状態。シートピッチは広めだが、窓側の座席に座ると前が当たってしまう。

軽食プランでない普通のシートでは、テーブルはありませんが人数分のコンセント、ドリンクホルダーがついています。

4人グループの場合は向かい合わせにすることもできます。

隣の席との間にひじ掛けはなく、小田急ロマンスカーのシートのような形状です。

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人数分のコンセントとドリンクホルダーが設置されている。隣の座席との仕切りとなるひじ掛けは設置されておらず、「ロマンスシート」状態となっている。

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軽食プランを選択するとテーブル席に座ることになる。

車内にはフリーWi-Fiが飛んでいて、快適に過ごすことができます。

115系ではついていても利用できなかった、トイレも完備

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実際乗ってみますと(普段115系に乗っているときと比較すると)圧倒的に乗り心地が改善されています。当たり前ですけどちょっと感動…

 

「特別快速」軽井沢リゾート3号は元信越本線を快走

有料の快速は自動放送で「特別快速」と案内されます。

「特別快速」の名の通り、停車駅は結構絞られている印象。

 

全線複線、元信越本線であるというだけあって、かなり安定して走行します。

大体80km/hほどで走行し特段飛ばす感じはありませんが、通過駅がたくさんあるので疾走感を楽しめます。

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SR1系の運転台。

軽井沢リゾート3号の停車駅は軽井沢を出ると、中軽井沢、上田、戸倉、長野のみです。

軽井沢ー長野間の所要時間は65分、在来線特急「あさま」+15分くらい。

停車駅も「あさま」と似ていますが、小諸駅は通過します。

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小海線との接続駅で特急「あさま」の停車駅でもあった小諸駅は通過してしまう。

篠ノ井線との接続駅、篠ノ井駅も有料快速の全列車が通過します。

(出来れば軽井沢リゾート3号が篠ノ井駅に停車してくれると、1本前の特急しなのに乗れるんだけどな~)

 

※軽井沢リゾート号は列車によってだいぶ停車駅が違うので、事前に乗車する列車の停車駅に注意する必要があります。

www.shinanorailway.co.jp

まとめ

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手前は今年5周年を迎えた観光列車「ろくもん」。SR1系とともにしなの鉄道の顔と呼べる車両である。

しなの鉄道の新型車両「SR1系」はデュアルシート(ロングシートとクロスシートを転換できる)を装備した快適な車両で、省エネ、低コスト化以外にも乗り心地の面で大幅に改善されました。

 

SR1系を用いた軽井沢リゾート号は、停車駅を絞った特別快速として運行され、元信越本線らしい疾走感を味わうことができます。

 

一マニアからすればまだまだ国鉄時代の車両が残ってほしいですけれど、この新車も完成度の高い車両でこれからが注目です。

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しなの鉄道の115系の座席。未更新で残っているものはしなの鉄道においても少ないので、独特の国鉄色の座席に座れるうちに座っておきたい。

 

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【駅ビルもあった】中央本線かつてのメインルート、辰野駅を探索

中央本線の「旧メインルート」

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東京から塩尻を通って名古屋へ向かう中央線。

 

長野県内の岡谷駅から先はルートが二つに分かれます。

①塩嶺トンネルを抜けみどり湖駅を通り塩尻に向かう新線

 

②辰野駅を通る大八廻り(旧ルート)

 

 

現在では中央本線のほとんどの特急列車、普通列車は①の新ルートで走行します。

今回はかつてのメインルート「大八廻り」の主要駅、辰野駅の魅力をご紹介。

 

 

「大八廻り」の特急停車駅、辰野駅

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大八廻りは「だいはちまわり」と呼び、中央本線の旧メインルートだった路線です。

上の地図を見ると分かるように、かなり遠回りなルートです。

 

中央本線のルートを計画する際に、木曽谷経由(現在の中央線)と伊那谷経由(現在の中央道)の2つの案があり、木曽谷経由に決定しました。

ところが、当時の鉄道局長であった「伊藤大八」が、自らの出身地である伊那谷に中央線を通そうとしたという説があり、これが大八廻りと呼ばれる所以です。

 

これを「我田引鉄のはしり」と紹介する人と、「建設当時の技術では塩嶺トンネル(現在のメインルート、トンネル長さ5994m)は掘れなかった」と紹介する人がいます。

 

個人的には後者の方だと思います(事実、塩嶺トンネルの建設工事は難工事だった)が、どちらの要素もあったのかもしれません。

 

話が遠回りしているので元に戻します。

大八廻りの主要駅は、飯田線と中央線が乗り入れている辰野駅です。

特急「あずさ」急行「アルプス」「こまがね」などの優等列車も停車していました。

 

JR化されてからは飯田線がJR東海、中央東線がJR東日本の管轄になったので、両社の境界駅となっています(正確にはどこかの場内信号機が境界だとかなんとか)。

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辰野駅を出発して左手に飯田線が分かれ、右手に進むと中央東線の塩尻駅方面へ向かう。

 

長大ホームと貨物用の着発線が残る

先ほどもご紹介した通り、優等列車の停車駅であった辰野駅はホームが長めに造られています。

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長大ホームに停車する大八廻りの中央東線の普通列車と飯田線の普通列車。

現在では定期特急列車の停車はなく急行列車も廃止されているので、主に2~3両の普通列車のみの発着となっています。

 

12と書かれた停車位置目標もあります…特急「あずさ」もこの辺りまで来ていたのでしょうか。

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「12」と書かれた停車位置目標。

旅客用ホームは0~3番線が使われています。

飯田線からの列車の交換と塩尻方面の中央東線が同時に停車することもあるので、ホームの長さは余らせていますが、容量は現在でも役に立っています。

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辰野駅の旅客用ホーム。

旅客用ホームではない側に目を向けると、そこそこの大きさの貨物用着発線があります。

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貨物列車の着発線。現在は使用しないが側線も含めて9番線まである。

2009年まで根岸駅から灯油やガソリンの貨物輸送があったらしいですが、それ以降は貨物列車は発着していないようです。

 

ところで、辰野駅の時刻表を見てみます。

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当駅からJR東海とJR東日本が分かれる。

辰野から岡谷方面は、飯田線からの直通列車が多数運行されているので本数は多め、一方塩尻方面は非常に本数が少なくなっています。

辰野→塩尻の移動をする際、時間帯によっては岡谷駅まで南下し塩嶺トンネルで塩尻に向かった方が早い時もあります。

 

飯田線方面はというと、本数も(この周辺にしては)多いですが諏訪周辺から伊那市付近までの区間利用が多いため、列車内も混雑する傾向にあります。

 

辰野駅にはかつて駅ビルが存在した!

改札から出まして振り返ってみると、何やら駅ビルのような看板がついています。

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辰野駅の外観。2階があったらしい。

リュシオール…

「これは何だ」と思い調べてみたところ、中央東線の新ルートが完成して、辰野駅に特急の停車がなくなる見返りとして建設された駅ビルだったようです。

 

建物に近づいてみると、確かに階段で上に登れるようになっていた痕跡があります。

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このシャッターの裏に階段があると思われる。

看板にはVideo Rental TACとありますね~

建物の大きさとしてはさらに複数の店舗があった感じがあります。

 

当然というと失礼ですけれど、この駅ビルの店舗も長くは持つはずもなく……

現在では全く営業していません…。

 

辰野駅と発車メロディー

県内を知る方であれば一般的に「辰野といえば蛍でしょ!」と言われますが、発車メロディーなどに詳しい、いわゆる「音鉄」と呼ばれる方には発車メロディーで有名な駅です。

 

今や貴重(?)になりつつあるサウンドファクトリー製の発車メロディーが現役で、SF10-31やSF10-12(For Tomorrow)という曲が使われています。

接近放送も珍しいものが使用されているとのことで、18きっぷシーズンに収録されている方を見かけてことがあります。

 

実は発車メロディーを取り扱うボタンを押すスイッチをつくる工場が辰野にあるようです。

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分かる人には分かるスイッチかもしれない。

この春日電機さんはパトライトなんかもつくっているようです。

交通関係のスイッチに強いのかな…? 

まとめ

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中央東線大八廻り、小野~塩尻間で東塩尻信号場跡を通過中~

定期優等列車が停車しなくなった辰野駅。

辰野駅に最後に特急列車が入線したのは、確か数年前に189系で運転された木曽あずさ号だったのではないでしょうか。

JR東日本と東海を直通する臨時特急で、新宿から南木曽までのロングラン列車でした。

 

優等列車が停車しなくなり設備は余らせ気味になっても、飯田線との接続駅という機能は健在で現在でも賑わいを見せることもあります。

 

辰野駅から塩尻駅にかけての本数の少ない区間には、最近密かに人気の東塩尻駅という廃駅もあります。

 

www.toremor.work

 

マニアックでディープな中央線の大八廻り、機会があったら是非一度ご乗車になってはいかがですか~?

 

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【未成線】国鉄時代に計画された中津川線の痕跡を探す

「未成線」を歩いて探索!

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国鉄中津川線の鉄道用地が現在も残る。

計画はされても誕生することのなかった路線、「未成線」

かつて国鉄時代に、長野県の飯田駅と岐阜県の中津川駅を結ぶ鉄道路線の計画がありました。

 

結局開通することはありませんでしたが、着工区間の遺構を現在でも見ることができます。

 

 

幻の鉄道路線「中津川線」

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国鉄中津川線のルート。かなり大まかなルートなので駅やトンネル位置は正確な位置ではない場合がある。

飯田と中津川を結ぶ計画だった中津川線

貨物輸送にも対応し、全線電化する予定で建設が進められました。

着工当時(1960年代後半)は飯田線は電化済み、中央西線も電化予定だったので、最初から電化する計画だったみたいです。 

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日本鉄道建設公団のB線(地方幹線)として一部区間は工事が進められましたが、平行する中央道の恵那山トンネルが開通したこともあり、計画は頓挫。

建設用地は日本国有鉄道清算事業財団に譲渡され、現在に至ります。

 

中津川線は、B線として計画された中では、鉄道として開業することがなかった唯一の路線ということになります。

 

飯田から中津川を通って名古屋方面へ直通する鉄道路線……

不思議な話ですが、計画が頓挫してから約半世紀、このルート自体は結果的にリニア中央新幹線が開業すれば、成し遂げられることになります。

中津川市側のトンネルは先進坑のみ、しかし…

まず、中津川市側の痕跡を探します。

中津川の市街から中央道に平行して離れること約8km、クアリゾート湯舟沢という施設にやってきました。

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神坂駅の建設予定地に立つクアリゾート湯舟沢。

この施設、中津川線の神坂(みさか)駅の建設予定地に建てられたものです。

怪しい痕跡はないかと、プールや温泉に向かう親子連れを横目に見つつ調査開始。

 

駐車場の脇を見ると、真っすぐに伸びる砂利道があります。怪しい。

列車が来そうなところに車が列になって止まっています!

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手前の砂利道が怪しい。

これだけではよくわからないので、この砂利道を施設側に歩いていきます。

すると…砂利道の延長からすこし下がったところに、基礎っぽいコンクリートが現れます。

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規則的に並ぶコンクリートの基礎(?)

このコンクリートは約10mくらいの一定間隔で並んでいて、一部は石で目立たないようにオブジェ(?)のようになっています。

 

続いてクアリゾート湯舟沢の裏手を覗いてみると…

これが神坂トンネルの先進坑と言われている建造物です。 

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神坂トンネルの先進坑と言われる穴。

実際のトンネルとなる場所はどこなのかは分かりませんが、この付近から神坂トンネルに入り、昼神温泉方面へと延びる予定でした。

 

真っすぐに伸びる盛土と未完成の橋脚

続いて中央道飯田山本IC近くのバイパスにやってきました。

整備された区間の端に、直線的に伸びる盛土を発見。

まさに鉄道用地という感じです。

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真っすぐに伸びる盛土区間。

こちらの区間は一部歩道のような造りになっていて、草も刈られ歩きやすくなっています。

幅は単線しかありませんが1960年代後半に着工しているだけあって、真っすぐで平坦な印象。

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遊歩道(?)沿いには1970年に建造されたことがわかる鉄道設備がある。

残されている部分はおそらく一つも踏切はなく、立体交差になっています。

 

数100m歩くと歩道は途切れ、下の住宅道路に降ろされます。

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遊歩道の終点。写真左手に降りる階段がある。

降ろされた場所はどうやら未完成の橋梁のようです。

茂みにも橋脚が一つ。

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未完成の橋梁。小さな沢と道路を跨ぐだけなので大きくはないが、迫力がある。

手持ちのカメラがあまり望遠向きではなかったので、見づらいですが、「久米川橋りよう」と記されています。

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久米川橋りょう、昭和44年建造のようである。

橋を渡った先にも盛土区間が続いていますが、こちらは荒れ放題。

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久米川橋りょうを渡ってすぐの盛土区間。この先に二ツ山トンネルの遺構があるらしいが、荒れていて訪問時は雨天であったので断念。

盛土の脇を降りまして、周辺を歩いてみると国鉄時代の境界杭、引照標もありました。

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境界標と引照標も健在。

事前の情報によるとこの先に二ツ山トンネルの中津川側の入口があるようですが、今回は雨も降っていたので断念…

 

二ツ山トンネルは反対側(飯田側)の入口から見ることにします。

 

中津川線最大の痕跡を見る

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伊那谷の脇を駆け抜ける予定だった中津川線。

飯田側の二ツ山トンネル出口周辺は、現在最も中津川線の痕跡が分かるエリアです。

田園風景の中に真っすぐな盛土が続きます。

実際に鉄道が通っていれば、伊那谷の先に南アルプスが見える眺望良好な区間だったと思われます。

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盛土上から見られる景色。晴れていれば奥の南アルプスの山々も綺麗に見えるかもしれない。

こちらの盛土の上も、飯田山本IC付近よりは茂っていますが草刈りがされていて、容易に歩くことができます。

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比較的歩きやすいが、汚れても良い服装でいかないと大変なことになります!

この盛土区間の中間地点には、少しだけ幅が広がった場所があります。

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伊那中村駅の建設予定地。周辺に比べて幅が広くなっている。

これは「伊那山本駅」の建設予定地と言われています。

駅周辺も住宅と田畑が広がります。

 

少し盛土を降りてみるといかにもという感じの高架があり、これはただの堤防ではないと、鉄道を知らない方でも気づけるかもしれません。

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山の近くまで歩いてみます。

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何やらトンネルの入口が見られる。

山の際には二ツ山トンネルの飯田寄りの入口が見られます。

先は真っ暗で、もしかするとこのトンネル内部でカーブがある可能性があります。

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二ツ山トンネル、飯田側の入口。

土地柄、普段狭小トンネルばかり見ている筆者からすると「大きいなぁ~」という印象。

初めから電化する予定でつくられていましたから、断面も大きくなっています。

 

トンネル内部はボーリングコア(調査をする際に地盤を確かめるために穴を掘ったときの試料)のようなものが置かれています…こんなところにあったら使えなくなりそう…

というか使わないのか…

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なんとなく、鉄道が来そうな雰囲気がある。

 

盛土とトンネルの遺構が残る中津川線。

これだけコンクリートの塊が残ると「負の遺産」として捉えがちですが…

 

中津川線の工事によって湧出した温泉によって、昼神温泉という新たな温泉地が誕生。

現在では長野県南部随一の温泉地にまで発展しました。

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昼神温泉は中津川線建設工事の時に湧出した新しい温泉。いわゆる美肌の湯で、ヌルヌルとした肌触りが特徴的な温泉である。

ついに数年後(?)にはこの計画路線に平行したリニア中央新幹線が開通する予定です。

幻の中津川線のDNA(?)は、現在や未来の観光地や鉄道をつくる原動力になっているのかもしれません。