toremorの旅手帳

鉄道と旅行と温泉と。大学生の放浪の様子をご覧ください。

2020年、当ブログの最も読まれた記事は?

今年もご覧いただきありがとうございました!

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EF63の運転台。皆様も2020年の運転お疲れ様でした!

弊ブログは開設2年ちょっとですが、本格的に投稿し始めたのは今年になってからでして、こんな時期ですが以前より多くの方にご覧いただけるようになりました。

 

世間的には「人との繋がりが薄れがち」といわれた年でしたが、コメントをくださったり、記事を見て実際に訪れてくださったりと、ご覧いただいている方とのつながりを感じることができる1年でした。

おかげさまで筆者は今年、大変嬉しく書かせていただきました。

本当にありがとうございます。

 

引き続き、体力と時間が続く限り投稿していきたいと思います!

よろしくお願いいたします。

 

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2020年に入ってから多くのアクセスをいただいた。12月には累計6万pvを突破した。

今年、最も読まれた記事は?

今年最もご覧いただいた3記事をランキング形式でご紹介!筆者の率直な感想とその内容を見ていきます。ジャカジャン!

第3位「【乗車時間6時間超】飯田線を普通列車で全線走破する」

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飯田線の豊橋駅周辺の線路は名鉄と共用している。

ほぇ~これはですね、単に飯田線に全線乗車した時の乗車記なんですが、ありがたいことに鉄道コムさんでランキング第3位をいただいたんですよ…

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鉄道コムで3位をいただいた。ここまでくると1位をとってみたい気もしてくる。

いわゆる「バズった」タイプの記事でして、数日間でドカーンっとアクセスいただいた感じです。

 

飯田線は秘境駅区間だけではなくて、途中の風景も素晴らしいものがあります。

そして利用客も思ったよりも多く、住民に愛されている鉄道だと感じましたね~!

飯田線の車窓は意外と変化に富むので、乗車時間の割に苦痛さはなく、大変楽しい旅となりました!

 

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第2位「【貴重】651系特急「草津」、3列グリーン車に座る」

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651系の3列シート。「これぞグリーン車!」という充実した体験ができます!

意外や意外、確かに最初のアクセスも良かったんですが、検索から多くの方にお読みいただいている記事です。

 

JR東日本の3列グリーン車というと、最近は減少傾向で651系のほか、E653系、E655系「和」、E261系「サフィール踊り子」がありますが、JR東日本で純粋に「普通のグリーン車3列シート」の形状をしているのは651系だけかも。

 

651系は廃車も出てますし、国鉄車でないにしても老朽化していますから、乗車できるときに乗っておきたい車両です。

 

座ってみるとその快適性が良く分かります。

やっぱり今でも「タキシードボディーの凄いヤツ」です!

 

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第1位「【元グリーン個室が現役】長野電鉄スノーモンキーの見どころ2選」

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元グリーン個室をたった1000円で貸切ることができる。

この記事はもともと最初に「バズった」記事で、鉄道コムのほか小さなGoogle砲もいただいた上、現在まで連続してご覧いただいています。

 

これには筆者も納得……

私事ですが乗車したのは「卒論提出直後」。

大変だった卒論が終わったことよりも、正直初めての「バズり」を経験したことの方が嬉しかったのをよく覚えています(笑)

 

長野電鉄の特急「スノーモンキー」では、もともと成田エクスプレスとして使用していた車両が使われていて、現役当時からほとんど改造されていない「グリーン個室」を1室1000円という低価格で体験することができます。

 

筆者は一人で利用しましたが、少人数のグループ旅行にもおすすめです。

人気になってほしいですがあまり知られたくない、スノーモンキーの個室です!

 

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番外編:ホテルのレビュー記事のアクセスが増加

筆者は時々ホテルのレビュー記事や温泉、観光案内の記事も書いていますが、gotoトラベルがスタートしてからホテルのレビュー記事をご覧いただく機会が増えました。

 

特に最近ご覧いただいているのはビジネスホテル「ドーミーイン」のレビュー記事。

秋田方面に鉄道旅行をした際に利用した時のレビューで、これがメインだったわけでないのですが、ドーミーインが好きになるきっかけとなりました。

 

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gotoトラベル、現在は一時的に停止していますが、今後再開された際に備えてちょっとずつ宿泊施設のレビュー記事のラインナップを増やしていけたらと思います。

 

現在でもgotoトラベルキャンペーン以外に、自治体が地元住民向けに独自に割引を行うキャンペーンが数多く行われています。

 

こんな時期だからこそ「地元近くの泊ったことのないホテル」に泊まってみるのもありかもしれません。

逆に言えば「こんな時期でもなければできない発見」ができるチャンスが、意外と身近なところに転がっている可能性もあるのです。

 

来年はどんな旅になるでしょうか?

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185系はたびたび中央本線や篠ノ井線にも乗り入れていた。

今年もあと数時間…いろいろと失ったものに目が行きがちですが、例えば遠くに行けない代わりに地元の良さを再発見したり、オンラインで色々なことができるようになったり、と得たものも多かった年だったのではないかな~と思います。

 

来年の鉄道業界、まずはおそらく一大ニュースになるであろう185系の定期列車引退。

国鉄時代を知っていいる車両がまた一つ消えることになります。

185系、窓が開きますから今の時代に合っているような気がしますが、さすがに老朽化にはかなわないようです。

 

ムーンライトながらの運行も廃止されるという噂がありますし、徐々に鉄道旅の形態も変わっていくかもしれません。

 

暗いニュースがある一方で、通勤列車も特急列車も新車が続々登場しており、より快適で新しい楽しみ方ができるようになっているのも事実です。

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今年デビューを果たした「サフィール踊り子」。筆者はまだ試運転時しか見たことがないので是非乗車したいと思っている。

旅客需要が低下して寂しい部分もありますが、鉄道の貨物輸送が注目されたり、新幹線に荷物用の車両を作る計画が出たりと、「鉄道」に求められる役割は多くまだまだ捨てたものではありません。

 

上田電鉄では台風によって流された鉄道橋の復旧工事が進められていて、全線復旧へのカウントダウンが進んでいます!

住民の鉄道への思いも熱いのですが、上田市独自の方法で鉄道を守ろうとする取り組みはこれからの地方鉄道の存続のヒントになるかもしれません。

 

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来年は筆者も学生最後の年(にしたいです!)となりますが、今できることを楽しみ尽くしていきたいと思います。

 

2020年、色々な変化に対応してこられた皆様、本当にお疲れ様でした。

2021年の旅も発車時刻が近づいております。

それでは皆さん、良いお年を~!

 

 

 

 

 

高山まで結ぶはずだった?壮大な北アルプス横断計画【松本電鉄上高地線の謎②】

松本電鉄が「盲腸線」となっている謎

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ターミナル駅「新島々駅」は中途半端な位置にある。

前回、高額鉄道としてご紹介した「松本電鉄上高地線」

「上高地線」といっても上高地まではつながっていませんし、終着の「新島々駅」は「島々」という地名にもありません。

 

上高地線は中途半端な位置に終着駅があり、上高地などに行く人は終着駅でバスに乗り換える必要があります。

この路線もいわば盲腸線です。

 

今回は終着の新島々駅から先、かつて線路が続いていた跡を辿って「島々駅跡」を目指します。

そしてこの路線が建設された背景にある、壮大な計画を見ていきます!

 

前回↓

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上高地線に乗車!

新島々駅の先、島々駅跡に向かう

さて、新村駅から先、新島々駅方面はのどかな田園風景が広がります。

とちゅう段丘を登ったり降りたりしながら進みます。

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車窓からはのどかな田園風景が広がり、山が迫ってくると新島々駅に到着する。

新島々駅の手前にはこんな看板が…

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中部縦貫道(高速道路)の建設促進の看板。

これは何かというと、松本から高山、そして福井に通じる高速道路の計画で、松本周辺では「安房トンネル」だけが開通しています。

この看板の手前側が用地になっているようですが、開通はあと何十年先か分かりません。

 

終着の新島々駅に到着。

片方は留置線として使われているようで、基本的に片方のホームにしか営業列車は入りません。

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新島々駅に到着。

バスターミナルこそ大きいですが、終着駅にしてはずいぶんとこじんまりとしたホームです。

 

新島々バスターミナルは、上高地や乗鞍・白骨温泉方面のバスの乗り換え地として、本来ならば夏季は賑わいを見せます。

今年は便数も少なく、なおかつ今はオフシーズンなので乗鞍のスキー場などに行く限られたバスしか発着しません。

 

上高地も乗鞍の山頂付近も、マイカー規制がされているので公共交通機関でこれらの地へ行くためにはここでの乗り換えがほぼ必須になります。

 

新島々駅の先、「島々駅」までの廃線跡を歩く

ところでホームの先、新島々駅より高山側を覗くと、線路に終着駅の雰囲気はなく「まだまだ先もありますよー」と言っている感じがあります。

これはあやしい。

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新島々駅の先にはまだまだ線路が続いている。

怪しいので、この線路の先まで行ってみましょう。

新島々駅の先、かつて約1.5kmの島々駅まで線路がつながっていたのですが、利用者数の減少と土砂崩れの影響で廃線になりました。

 

100mくらいでしょうか、新島々駅から先続いていて、時々中途半端な架線柱の更新を見ることができます。なんだこれは…

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新島々駅の先の線路は留置線として使われていたこともあるらしい。

途中から線路がはがされていて、農道のようにつながっています。

これは間違いなく廃線跡の雰囲気。

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しばらく廃線跡が続く。

しばらく連続して廃線跡が見られます。

架線柱が電柱と思われる木造の柱がいたるところに残っています。

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架線柱か電柱の跡?

途中では、ここが廃線跡であることを決定づける大きな遺構が見られます。

鉄橋の跡です…

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鉄橋の跡も残る。

しかし、一区画だけ完全に跡形もない部分があります。

この部分が土砂崩れの被害を受けた場所と思われます。

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一区画だけ線路の跡の雰囲気がないが、ここが土砂崩れの跡だと考えられる。

かつての終点、島々駅の跡に近づくと廃線跡は不明瞭になります。

線路跡が国道158号に転用されているためです。

 

かつて駅舎があったと思われる場所に到着。

確かに不自然に空き地があります。

道路が線路とホームの跡で、空き地は駅舎と駅前の広場の跡と考えられます。

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かつて駅舎があったと思われる空き地が駅舎跡、道路がホーム跡である。駅舎があったころの写真にも左手の「山麓島々館」が写っているのでほぼこの場所で間違いないだろう。

「山麓島々館」と書かれた建物には面影が残ります。

看板に注目すると、かつてのホーム側に(今では道路と平行に)看板が並んでいます。

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道路と平行に掲げられている看板。

空き地の反対側は、当時のメインルートだった国道158号の旧道に面しています。

そちら側にも看板があり、当時ここに「島々駅」があったことが分かります。

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当時の駅前通り側にある看板。「しましま」駅と書いてある。

看板に書かれている観光地までの所要時間は現在の所要時間の約2倍…

改良が進んだことが分かりますね~

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現在の主要観光地までの所要時間。

駅の向かいにはかつてバスの転換所があった跡がそのまま残っています。

この駅前のスペースが狭い(新島々駅にバスターミナルを作った方が広いし便利だった)ことも、当駅が廃止された理由の一つのようです。

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バスの待合所も残っているが、新島々駅のバスターミナルより圧倒的に狭い。

かつてのターミナルにしても狭い島々駅。

この集落は「島々」ではなく「前淵」という別の集落です。

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かつて商店が並んでいた気配があるが、現在はほぼ閉店している。

島々という地名は、かつて上高地までのアクセスとして使われていた「徳本峠(とくごうとうげ)」の麓にある集落の名前ですが、そのブランドから名前を取って「島々駅」と名付けたとかなんとか…

 

新島々駅の前にはかつての島々駅の駅舎を、一部元の部品を使用して再現されていますが、こちらも廃墟状態で取り壊されるという噂もあります。

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新島々駅の前にある島々駅を再現した建築物。かつて観光案内所として使われたそうだが、現在は全く使用されていない。もったいない。

「盲腸線」の謎

上高地線はもともと松本ー高山を結ぶ計画だった

そもそもなぜ「新島々」や「島々」駅という中途半端な場所に終着駅があるのでしょうか。

これは結果的に「松本から高山までの鉄道の一部」が開業しているからなのです。

 

大正11年の鉄道敷設法に記された予定線の第59号には…

「長野県松本ヨリ岐阜県高山ニ至ル鉄道」

と記されています。

 

これはおおまかに松本から島々を経て平湯へ、そして高山へと至る、現在の国道158号に沿って北アルプスを横断するルートを通ることになります。

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新島々駅と島々駅、建設予定だった「龍島」の位置関係。

筑摩鉄道は大正5年に松本ー龍島間の免許を得て、大正10年に新村駅まで、大正11年には島々駅まで開業しています。

龍島とは、それこそ「島々」集落の向かい側にあるエリアで、近くに当時の上高地の玄関口(徳本峠の入口)がありますから、なんとなく許可される理由も分かります。

 

「島々ー龍島間は建設費の増大や利用が見込めなかったので、とりあえず島々まで開業した」という説が濃厚で、確かに島々より先は地形が急峻なので理解できます。

 

一方別のルートで建設しようとした動きもありました。

松本の南側、木曽地域の「開田村誌」には、建設が進まない松本ー高山の路線の代わりに、中央線木曽福島駅と高山本線久々野駅を結ぶ「信飛鉄道」というこれまた大胆な代替案を提唱したそうですが、残念ながら却下された旨が書かれています。

 

しかし、その後も建設が進むことはなく、現在に至ります。

出ては消える延伸計画と立ちはだかる壁

延伸計画①「信富鉄道」

1984年に開業した国鉄神岡線と、松本電鉄上高地線を繋げて松本から富山まで直通させるという計画です。

 

厳密には初期の松本ー高山間のルートを変更して、平湯から現在の新穂高温泉を経由して神岡に至るという代替案と、その後神岡線開業時に住民によって起こされた運動と、2回検討されましたが、どちらも計画として動くことはありませんでした。

 

現在は国鉄神岡線も、その後に受け継がれた第三セクターも廃止されてしまいましたが、「奥飛騨温泉口」駅で「まぼろしの信飛鉄道」としてこの計画が紹介されています。

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旧国鉄神岡線から受け継いだ神岡鉄道神岡線。Kone from jawp - ja:file:神岡鉄道KM-100形.jpg on jawp, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1420444による
延伸計画②「上高地登山鉄道」

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上高地河童橋付近の撮影スポット。筆者はシーズン最後(11月)の午後が空いていておすすめである。

これは近年まで松本市内で提案されていたもので、国道の安房トンネル建設以前に深刻だった渋滞を解消するため、上高地の手前にある沢渡(さわんど・マイカーできた人が専用のバスに乗り換える拠点)から上高地まで直線的なトンネルを作って鉄道を走られるという計画でした。

 

ところがこの計画、実現しても新島々駅ー沢渡間でバスや車に乗り換えなければなりません。

 

そこで提案されたのが、「新島々駅から大深度地下で上高地までトンネルでつなぐ」というもの。

計画には「環境にやさしい」とか「のんびり汽車旅」などど記述されていますが、果たしてどうなのか……

 

その後安房トンネルが開通上高地へ向かう新釜トンネルの開通などで国道の渋滞が解消、当初の目的は渋滞解消だったので下火になっていきました。

www.kamikouchi.info

 

おまけ「国道158号と中部縦貫道」

鉄道はほとんど計画が頓挫していますが、同区間を結ぶ高速道路「中部縦貫道」が、一応計画がされています。

松本ー高山間の国道は交通量が多いのにも関わらず「酷道」で、幾たびもの改良がなされてきましたが、現在でも難所です。

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国道158号には大型バスのすれ違いに苦戦するほどの狭いトンネルや、ダムの天端を走る道路が存在する。

2020年現在、松本から島々の手前「波田IC」までの建設が整備計画に入り建設が進む予定です。

一方それ以外の区間は建設のめどが立たず、現道を改良して対応する可能性もあります。

www.pref.nagano.lg.jp

なぜ計画は頓挫するのか…

建設が進まなかったのは、言うまでもなく地形が急峻であったことに加え、大変もろい地質で建設が困難であるからです。

地質図というどんな地質が広がっているのかを示す地図を見ると…

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「松本から高山に至る鉄道」の建設予定地周辺には活断層や活火山、温泉による変質が連続する大変危険で脆い地質となっている。

 

黒で強調している部分が、計画路線に平行する国道(白線)の近くにある活断層です。

この辺りには活断層の中でも大きなものが通っていて、近くでは温泉も湧出しています。地層がグサグサなんですよ…

そして長野県と岐阜県の県境、現在の安房トンネルには活火山が聳えています。

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当然活発な地殻の運動があることの恩恵もあるわけで、温泉を楽しむことができるのもその一例。写真は上高地手前にある秘湯「坂巻温泉」の露天風呂。

トンネルは地質が固ければ固い方が建設しやすいので、こういう「グサグサ」の地帯にトンネルを通すのはものすごく難しいのです。

なおかつ火山のガスの危険とも隣り合わせ…北アルプスの高い山々の存在よりも、地質上の理由の方が大きいような気がします。

 

現に安房トンネル採掘の際は、火山のガスが噴き出し、作業員4人が立ったまま亡くなるという大惨事になったことがありました。

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建設される予定だった安房峠道路の橋脚。水蒸気爆発事故でこの橋脚は使われなくなり、現在の新ルートに変更になっている。

道路も早く改善してほしいですが、今後もいくつもの困難が待っていると思われます。

 

まとめ

以上、松本電鉄上高地線のご紹介でした。

1回目は高額鉄道、2回目は盲腸線の謎という2つの側面を見ていきました。

 

こういう地方路線って廃止されがちですが、現在でも運行されているという点でも面白いですね~

最近では利用者もわずかですが増加傾向にあります。

今後上高地線がどのような変貌を遂げるのか期待して、このシリーズを閉めようと思います。

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松本駅に到着する復刻塗装の車両。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高額運賃と噂の地方私鉄に乗車する…【松本電鉄上高地線の謎①】

松本駅に乗り入れる地方私鉄「上高地線」

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松本電鉄上高地線。かつて新島々駅よりはるか先、高山まで通じる計画であった。

松本駅と新島々駅の14.4kmを結ぶ「松本電鉄上高地線」

「上高地」という名前がついている割には「上高地」までは行かず、島々の集落からは程遠い場所に終点の「新島々駅」があるという少し変わった路線です。

 

この時点でなんだか訳ありな気がしますが…

今回はそんな「謎」の多い上高地線に乗車していきます!

 

 

地元でも「高額」と噂される気になる上高地線の運賃は?

駅の案内では「松本電鉄上高地線」とありますが、現在は「アルピコ交通」が上高地線を所有しています。

松本電気鉄道が2007年に経営破綻、その後の経営再建で統合などを行い「アルピコ交通」と社名を変え、現在に至ります。

 

経営破綻をするくらいには上高地線の乗車人員は減少傾向ですが、近年では少し増加傾向になっています。

「アルピコ交通」は「松本鉄道上高地線」と公称していますがこの呼び方は定着しておらず、駅の案内では「松本電鉄上高地線」「上高地線」と呼ばれています。

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上高地線の時刻表と運賃表。日中は40分間隔で運転されるが、なかなかの高額運賃である。

経営的に苦しいからか、運賃が非常に高額なことが特徴です。

14km先の終点の新島々駅まで乗車すると、なんと710円!

初乗りはそうでもないですが特に後半の伸びが素晴らしい…

 

同じ距離で比較すると、東京近辺の高額鉄道として知られる北総線の~14km580円(~17km630円)と比較してもはるかに高い運賃体系です。

 

筆者はこの路線の沿線にお住いの中学生や高校生に話を聞いたことがありますが…

「とても高くて乗れない」「遠いけれど大糸線を利用している」「車か自転車しか使わないので乗ったことがない」とあまり利用されていない様子でした。

多分これがリアルな声なんですよね~

 

筆者は1日乗車券を購入しましたが、こちらは1420円。

新島々駅と松本駅を往復すれば元が取れます。

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上高地線の1日乗車券。

上高地線に乗車する!

松本駅から上高地線のホームに進みます。

松本駅では大糸線と上高地線は離れたホームから発着します。

これは大糸線がかつて「信濃鉄道」だった頃の名残ですね~要は私鉄のホームなのです。

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上高地線は跨線橋を渡った先、7番線から発着する。

上高地線はかつて、国鉄線からの直通列車も運行された実績がありますが、現在は直接線路はつながっていないようです。

 

車両は京王井の頭線の旧3000形の中間車を改造したものが使わています。

東京近辺にお住いの方なら懐かしいと感じるかもしれません。

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上高地線3000系電車。

京王が車両を改造したうえで譲渡するシステムだったので、地方私鉄にとても人気があったのですが、最近では全国的には老朽化で少しずつ数が減ってきている車両です。

 

基本的にワンマン運転の2両編成で、各車両の真ん中のドアから乗り一番前のドアから降ります。

内装は現役時代とそこまで違いはありませんが、モニターや運賃箱が設置されています。

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3000系の車内と網棚の上に設置される観光用の案内モニター。トレインビジョンではない。

先頭部分の機器類を見ていると、座席下のヒーターの名残があります。

なんとも器用な改造だな~と思いますね。

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運賃箱の隣の機器の下には座席のヒーターの跡が残っている。

車内はなんとWi-Fi完備!

流石のアルピコ交通、高速バスを運行しているだけあってこういう設備には強いんですね~

こういうサービスはJRの普通列車でも普及させてほしいと個人的には思います。

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Wi-Fi完備。

途中しばらくは住宅街の中を走行します。

駅間距離もとても短いのでバスに乗っているような感覚です。

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住宅街を抜けていく。

途中の北新(きたにい)・松本大学前で大半の人が降りていきました。

ハイシーズンは上高地までの観光客がメインですが、オフシーズンなので地元利用が多い印象。

沿線には中学・高校や大学があるので、平日は通学客の利用が上高地線のメインなのかもしれません…

新村駅で途中下車

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新村駅。なかなか味のあるホームである。

時間的には復路に寄ったのですが、途中新村(にいむら)駅で下車してみました。

新村駅は車庫のある比較的大きな駅で、松本電鉄の前身である筑摩鉄道の本社がありました。

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駅前に残る筑摩鉄道の社章。

構内には貨物用のホームと思われる部分が残っています。

木造の詰所も残っていてなかなかに昭和の雰囲気が残っていますね。

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木造の詰所と貨物ホームの跡。

車庫を覗いてみると何やら軽トラを改造したと思われる個性的な保線車両が…

大正時代にアメリカから輸入されたED301電気機関車(もともと大糸線の前身信濃鉄道向けに導入され、各所で活躍の後松本電鉄へ…2007年から除籍され静態保存されている)も見られます。

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軽トラを保線用に改造した「迷列車」に大正生まれの電気機関車、木造貨車も残っている。

「青ガエル」こと元東急5000系や「国鉄電車の祖」元デ968(現ハニフ1)も保存されていましたが、それぞれ赤城高原、鉄道博物館に移設されています。

上高地線自体、1921年開業とかなり歴史の深い路線なので、価値の高いものも残っていたのかもしれません。

 

夕方に訪れたので転轍機標識が光り始めて雰囲気が良くなってきました。

鉄道の分岐器がどちらの方向に繋がっているかを示している標識で、ローカル線ではしばしば見かけられます。

 

この「S」のマークは「スプリングポイント」の意味で、分岐する方向が基本的に固定されているタイプのものです。

分岐していない方向から列車が来た場合、列車自身がポイントを押して一時的に反対方向に切り替わりますが、一定時間が経つと、ばねを使って元の方向に戻ります。

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発条転轍機標識が印象的な新村駅。

 新村駅は上り列車と下り列車が行き違いを行う駅になっています。

基本的に左側通行で、分岐の向きが決まっているのでこういう分岐器が使われているのですね~

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左側からは奥に松本方面の列車、右側からは手前に新島々駅方面の列車が発車する。

2017年まで開業当時の旧駅舎が残存していたそうですが、現在は新しい駅舎に変わっています。

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新村駅の新駅舎。筑摩鉄道時代の案内図のレプリカも展示されている。かつては松本から浅間温泉まで路面電車が運行されていたが、現在はバス転換されている。

 

この地図、見づらいですが松本から浅間温泉まで結んでいた路線が書いてあります。

当時は「松本電鉄浅間線」という路面電車が走っていたのです。

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浅間温泉駅の跡には案内板が書かれている。軌道跡は道路に転用され、現在ではバス転換されている。

この「浅間線」も壮大な計画が持ち上がったことがありまして、峠を越えて現在の上田電鉄、廃止された「青木線」と直通して上田までつなげるという……

当時の鉄道の計画は夢があって、実現可能性は置いておいて楽しいものがあります。

 

新村駅近くには筑摩鉄道の創始者である「上條信」のモニュメントが置かれています。

現在のアルピコグループの始まりはこの人からといっても過言ではありません。

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筑摩鉄道の創始者「上條信」のモニュメント。

 

次回予告

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松本電鉄は自前の除雪車も所持している。

今回は年末スペシャル…ということで連載でお送りします。

 

さて、次回は松本電鉄の終点、新島々駅へ向かいます。

「新」の文字があるだけあって、かつては新島々駅の先には島々駅が存在していました。

 

廃線区間を追うとともに、「なぜこんな中途半端」な駅で鉄道が終わっているのか、背後にある壮大な計画とその真相に迫ります!

そして出ては消えていったこれまた壮大な延伸計画についても見ていきます!

 

18きっぷも利用可!リゾートビューふるさとのマニアックな見どころ

リゾートビューふるさとで大糸線を満喫

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リゾートビューふるさとは現在、ゆるキャラのアルクマのラッピングがされている。

快速リゾートビューふるさとは、主に土休日に長野―松本ー南小谷間を運行する観光列車です。

冬になるとこの観光列車、「オフシーズン」のイメージが強いですが、快適な車内から大きな窓を通じて雪景色を堪能できる魅力があります。

 

もちろん快速列車なので、指定席券を追加で購入すれば18きっぷも利用できます。

 

ちなみに筆者は長野県在住のマニアということで、地元ならでは、マニアならではの見どころもご紹介!
今回はリゾートビューふるさとに乗車して大糸線の冬景色を見に行きます。

 

 

やたらと遠回りの観光列車「リゾートビューふるさと」

リゾートビューふるさとは片道・全線の所要時間は4時間超と、意外と乗車時間の長い観光列車です。

運行経路は長野から信越本線、篠ノ井線、大糸線を経由して南小谷駅へと至るというもので、途中松本駅で進行方向が変わります。

地図で運行経路を見てみると、ものすごい遠回りをしていることが分かります。

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快速リゾートビューふるさとの運行経路。かなり遠回り。

地域間の速達性はほとんどなく、観光に特化した列車なんですね~

 

長野から白馬方面への移動はマイカー・高速バスが主流で、長野から白馬までの所要時間は1時間少々です。

移動だけ考えればこの方が便利…


長野ー白馬間にはかつて鉄道を通す計画があり、「善光寺白馬電鉄」として部分的に開業していましたがダムの建設により廃止になりました。

ちなみにこの善光寺白馬電鉄の路線に「電車」が通ったことは一度もなく、現在でも運送会社として社名が残っています。

 

アルクマラッピングになったリゾートビューふるさとに乗車!

話をもとに戻しまして、快速リゾートビューふるさとをじっくりと観察します。

使用車両はHB-300系

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リゾートビューふるさとに使用されるHB-300系。

快速リゾートビューふるさとに使用される車両はHB-300系というハイブリッド気動車です。

エンジンの動力で発電機を回し、蓄電池の電気と発電機の電気を合わせて車両を動かす、という駆動システムなので「ハイブリッド」なんだそう。

 

リゾートビューふるさとの運行経路はすべて電化されていますが、気動車での運転となっています。

これは飯山線方面への臨時観光列車の運行が想定されているためで、実際に十日町までの運航実績があります。

 

このHB-300系は羽越線の「きらきらうえつ」の後継「海里」や、リゾートしらかみ橅編成、青池編成に使用されている車両と同系列です。

ただしリゾートビューふるさとは2両編成で、個室などの設備はありません。

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同じ系列、HB-300系リゾートしらかみ橅編成。

確かに外形はほとんど同じですね~

 

塗装はリゾートビューふるさとオリジナルのものになっており、現在は四季とアルクマのデザインのラッピングがされています。

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車両側面にはラッピングがされている。

 

まるでグリーン車?ゆったりシートピッチの快適な車内

よく「乗り得列車」と評される快速リゾートビューふるさとですが、その理由は車内の座席にあります。

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リゾートビューふるさとの車内。

4列シートが整然と並ぶ車内ですが、シートピッチは1200mmと新幹線のグリーン車並みの広さとなっています。

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快速列車ながらシートピッチ1200mmを確保している。

座席からテーブルを取り出すとその広さが良く分かりまして、前の座席のテーブルを取り出しても手が届かない…

そのため座席横から小さなテーブルを出せるようになっています。

ちなみに両方のテーブルを出しても干渉しません。

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座席横からもテーブルが出せる。

ただ難点もありまして、シートピッチは広くても座席の座面の面積が小さいんですよ…

多分この部分でシートピッチを稼いでいるのですが、それならシートピッチを多少狭くしても座面を広げてほしかったな~と個人的には思います。

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座面が小さく深く腰掛けるのは難しい。

しかしながら総じて快速列車の指定席としてはとても快適だと思います。

追加530円ですからね~

 

リゾートビューふるさとの先頭部分は1号車、2号車ともに展望スペースになっています。

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リゾートビューふるさとの展望スペース。

現在は中止していますが、確か民話だか何だかを朗読する地元の方のイベントとかも、このスペースを使って行われます。

 

基本的にこのスペースが人でごった返すことはないので、景色が気になったらこの展望スペースに移動するのがおすすめの楽しみ方です。

 

松本―白馬間の車窓の見どころ

さて、だいぶ前置きが長くなりましたが、筆者は松本―白馬間で往復する日程を組みました。

 

座席は松本→南小谷間は進行方向左側、反対方向は右側の席に乗車すると見どころが多く、おすすめです。

しかし反対側の座席になっても、展望スペースは自由に使えますし、特に気にすることはないと思います。

 

※今回は松本から白馬にかけて観光用とマニア用の見どころをごちゃまぜにご紹介しています。

 

梓川を渡る

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筆者は夕暮れの梓川の方がおすすめである。復路に撮影。

島高松ー梓橋間では梓川を渡ります。

これは長野方面では進行方向右側、南小谷方面では左側に見える景色です。

 

梓川は上高地近辺(写真右手ので山が低く谷になっているところから流れています)を流れこの近辺に至り、犀川と合流して長野市方面へ、最終的には千曲川と合流して信濃川として新潟方面へ流れます。

 

特急「あずさ」の名前の元となっていますが、実際に「梓川を渡るあずさ」は大糸線直通の列車しかありません。

 

一日市場駅の駅名標

快速リゾートビューふるさとは途中「一日市場駅」を通過します。

復路ですと確か行き違いで停車しますが、この駅には国鉄時代の駅名標を駅舎側に移設して現在でも使われています。

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一日市場駅の駅名標。

新しい駅名標はホーム上に設置されていますが、こうして国鉄時代のを綺麗に残してくれるのは嬉しいですね~

 

安曇野の田園風景と北アルプス

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安曇野の田園風景。往路に撮影。

まず、豊科駅までの間に進行方向左側に広がるのが、「安曇野」の田園風景です。

特に「何もありません」が、大きな窓から北アルプスのふもとに広がる「安曇野」の典型的な風景を見ることができます。

 

列車が走っている近辺は主に稲作が行われていて、皆さんのイメージが強いリンゴとかの栽培はもっと北アルプスのふもとの方で行われています。

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北アルプスと田園風景はしばらく続く。

この写真の右よりの一番高い山(の奥の方!)が常念岳という山で、この辺りでは一番のランドマーク的な山となっています。

 

山頂近辺を登っているときと思われる写真がこちら…ブレててガスってますけど!

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常念岳に登ったわかかれし頃に撮影した写真。

筆者はあまり自力で登る山登りが好きではないのでやる気のない写真ですが、晴れていれば景色は綺麗でなんだと思います。

割と初心者でも登れる山らしいですが、標高は2857mあります。もう登るのはいいかな。

 

穂高駅の長時間停車

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穂高駅に停車中のリゾートビューふるさと。

穂高駅では長時間停車中に穂高神社に参拝に行くことができます。

指定券を駅員に見せることで誰でも途中下車することが認められています。

 

観光コースとしては当駅停車中に穂高神社に参拝することができ、感染症拡大以前は巫女さんによる案内が行われていました。

穂高神社は交通安全を祈願する方が多く訪れ、車で車両ごと参拝することもできます。

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穂高神社。穂高駅から徒歩5分。

夏シーズンはこの駅で臨時特急しなの81号白馬行きに抜かれます。

しなのも穂高駅に停車するので、別途特急券を買えば先回りすることもできます。

 

安曇追分駅に残る池田鉄道のホーム跡?

この駅は、現在のダイヤでリゾートビューふるさと復路で運転停車します。

「かつて」といっても約80年ほど前ですが、安曇追分駅から私鉄の「池田鉄道」が分岐していました。

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安曇追分駅にはかつてのホーム跡が現存する。これは池田鉄道のものか、貨物扱いのホームかは現状ではわからない。

駅構内ではホーム跡と思われるコンクリートの建造物が残されています。

駅舎側にももう一本線路があったようですね~

 

安曇追分駅から東側に、高瀬川という川を越えた対岸「池田町」の方まで伸びる路線でした。

池田町は現在では大雪渓酒造という酒造メーカーがあることで有名です。

 

現在でもホーム跡が残る部分があり、廃線探訪をして楽しむこともできます。

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池田鉄道、終着の北池田駅のホーム跡。線路跡よりホーム跡の方が残っている箇所が多い変わった廃線跡である。

 

北アルプスの前面展望と高瀬川

穂高駅から信濃大町駅まで、特に信濃常盤駅付近の松本方面の前面(後面)展望がおすすめです。

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信濃常盤駅付近を走行中の快速リゾートビューふるさと。八ヶ岳も見えている。

南側の中央アルプスや左手には遠く八ヶ岳をのぞむこともできます。

前面・後面展望はこの近辺が一番おすすめかもしれません。

特におすすめなのは復路の前面展望で、信濃大町駅を出たら前面を見に行くと夕暮れの景色を楽しめますよ~

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高瀬川を渡る。

南大町駅の松本側の手前で高瀬川を渡ります。

信濃大町まで来るとだいぶ雪景色に変わっていきますね~。

 

高瀬川はなんと穂高のあたりまで南下し、犀川と合流、長野市方面に抜けて新潟に向かいます。

ここまで大糸線はゆっくりと上り坂を進んでいるのです。

 

往路の行程では減速運転してくれるので、天気が良ければ白馬方面の北アルプスが見渡せます。

上流側には、案内放送でもあるように葛温泉という熱めの名湯があります。

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川からも湯気が出る葛温泉周辺。
海ノ口駅周辺

海ノ口駅は木崎湖のほとりに位置する駅で、アニメの聖地にもなったことのある駅です。

この近辺は湖のすぐそばを通るので迫力のある景色が続きます。

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湖のすぐ近くを走行する。

快速リゾートビューふるさとは海ノ口駅に運転停車しかしませんが、普通列車に乗ってこの駅で降りるのもお勧めです。

大糸線で一番雰囲気が良い駅だと個人的には思います。

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海ノ口駅は夏も冬も美しい。

海ノ口駅ー簗場駅間の展望もなかなか良いので、車内で案内はされませんがおすすめです。

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前方に木崎湖が見える。
ヤナバスキー場前駅跡

昨年度廃止されたヤナバスキー場前駅を見ることができます。

一瞬で通り過ぎるので、南小谷方面なら簗場駅を出たら進行方向右側に注目してみてください。

 

現在ではホームは撤去されていて、夏の方が発見しやすいと思います。

 

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佐野坂峠

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佐野坂峠の頂上付近。北側へ降りれば白馬の市街地へと入る。

大糸線、実は簗場ー南神城間に峠越えの区間がありまして、分水嶺になっています。

どちらの水系も日本海に注ぐのですが、佐野坂峠より南側は新潟市(信濃川)へ、佐野坂峠より北側は糸魚川へ流れます。

 

この近辺はなかなか水の流れが難しいですね~

白馬側の麓には糸魚川方面へ注ぐ姫川の源流があります。

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姫川の源流は遊歩道が整備されている。

 まとめ

想像以上に長くなってしまいましたが、リゾートビューふるさとから見える大糸線の景色をご紹介しました。

単に乗ってしまうと飽きる区間でもありますので色々と車窓をチェックしてみてくださいね~

 

ちなみに筆者はリゾートビューふるさとの往路で白馬で乗車し、日帰り入浴を楽しんだあと、復路のリゾートビューふるさとに乗車しました。

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白馬駅から徒歩10分、日帰り入浴施設「みみずくの湯」。源泉かけ流しのアルカリの強いお湯を楽しめる。名物の温泉うどんは食塩を使わず温泉を使って仕上げたうどんで、コシが強い。

アルクマラッピングもいつまで続くのか分かりません~

気になる方はお早めにどうぞ!

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姨捨駅だけではない!?2連続スイッチバックの篠ノ井線普通列車に乗車

姨捨駅のスイッチバックは有名だが…

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姨捨駅は観光名所になっていて、四季島も停車する。

篠ノ井線では急勾配に位置する姨捨駅周辺でスイッチバック(※)をすることで有名です。

列車が途中で方向転換をしたり、駅からは日本三大車窓の一つに数えられた景色を眺められたりと、観光客にも楽しめる駅になっています。

 

(※)「スイッチバック」とは鉄道が急勾配を登るための運転形式で、途中で進路方向を変えながら、「ジグザク」に登っていくというものです(道路のヘアピンカーブや踊り場のある階段のようなもの)。

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勾配区間の「スイッチバック」と呼ばれる運転形式。

 

実は、篠ノ井線にはもう一箇所スイッチバックを行う区間があるのです。

今回は「2回スイッチバックを行う」という篠ノ井線普通列車に乗車してみます!

 

姨捨駅でスイッチバックを楽しむ

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松本駅13:29発の普通列車に乗車。

筆者の行程の都合で、今回は松本13:29発の普通列車長野行きに乗車し、松本から姨捨を経て長野へ向かいます。

 

篠ノ井線、昼の2両編成の普通列車は長野方面・松本方面問わず混雑していて、立ち客も出るんですよね~

しかもほとんどが長野まで乗車するので座席が空かない…

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篠ノ井線の普通列車に充当されるE127系ワンマン列車。

愚痴はさておいて、姨捨駅のスイッチバックはご覧のようなつくりになっています。

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姨捨駅のスイッチバックの構造。長野方面の普通列車は番号順に列車が移動する。

姨捨駅に停車しない列車はスイッチバックをせずに1→7の順に通過することができ、例えば特急「しなの」はスイッチバックすることなく当駅を通過します。

 

今回は後方展望でスイッチバックの動きを見ていきます。

普通列車で松本方面(山の上)から姨捨駅にやってくると、まずはそのまま姨捨駅のホームに入線します。

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1を走行中。左手に引き上げ線が見える。

分岐器を超えて、姨捨駅ホームに入る線路へと渡ります。

まだ方向転換はしていません。

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3の位置を走行中。一番左が通過線、真ん中が松本方面、この列車は長野方面の線路。

ホームについて乗客を降ろします。

「姨捨駅ではスイッチバック運転を…」などと観光用の自動放送が流れ、事前に列車が反対方向へ動くことについて案内がなされます。

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姨捨駅に停車中のE127系、松本方面の普通列車。

しばらくすると出発信号が「注意」の現示に変わり、進行方向と逆向きに発車。

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注意信号に変わったら反対方向へ出発。乗務員は後方の車両から運転している。

篠ノ井線では、運転席を入れ替えることなくそのままバックで引き上げ線へと入っていきます。

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4→5の位置を走行。ここまでバックで運転する。

引き上げ線に入ると間もなく本来の進行方向であった信号が青に変わり進みます。

姨捨駅を後に、これが1回目のスイッチバックです。

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写真右上が姨捨駅。

ここまではほぼすべての普通列車が行っているので、姨捨駅に停車する列車ならどれでも体験することができます。

 姨捨駅は「日本三大車窓」に選ばれるだけありまして、結構な景色が広がります。

昼も夜も、四季折々いい雰囲気なので、ぜひ~

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姨捨駅からの景色。昼も夜も楽しめる。

姨捨駅周辺は鉄道の撮影地としても人気があり、駅から徒歩圏内で列車を撮影することができますよ~

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もう一つのスイッチバック「桑ノ原信号場」

この普通列車は姨捨駅を去り、どんどん善光寺平へと下っていきます。

途中で速度を落とし始め、何やら引き上げ線が見えてきました。

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普通列車は徐行しはじめ、左手にはまた引き上げ線が見えてくる。

ここが2か所目のスイッチバック、「桑ノ原信号場」です。

実は一部の普通列車はここの信号場で列車の行き違いをするのです。

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桑ノ原信号場の概略図。

列車は分岐器を渡ってまず山側の引き上げ線に入っていきます。

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山側の引き上げ線に入る普通列車。

信号場の盆地側には「銀河鉄道桑ノ原」と書かれた、新駅設置委員会の看板がありますが、新駅設置の話は1度も聞いたことはありません。

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新駅設置委員会の看板。

 

特に「また逆に動きます」という放送はなく、信号が開通するとすぐさま進行方向と逆向きに進み、今度は盆地側の引き上げ線に入ります。

この時も乗務員は後方の車両から運転し、運転台を交換することはありません。

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4→5の位置を走行中。進行方向と逆向きに運転。

ここの位置に着くと、「列車の行き違いを行います。しばらくお待ちください」と放送が入ります。

この信号場も、姨捨ほどにはないにせよ結構な標高のようです…

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数分ほどの停車時間があります。

善光寺平はすっかり雪景色で、写真を撮っている人も多くいました。

しばらく待っていると…

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信号待ち。

松本方面の特急しなのが通過していきました。

これで元の進行方向に戻ります。

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7の位置を走行中。

普通列車は元の線路へと戻りどんどんと坂を下って、稲荷山駅へと向かいます。

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写真右手の高まりが桑ノ原信号場。

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車窓左手が桑ノ原信号場の山側の引き上げ線。別日撮影。

以上、2回スイッチバックをする篠ノ井線の普通列車をご紹介しました。

どちらのスイッチバックも稲荷山―姨捨間の急勾配を通過するためにつくられたもので、両駅の間は約8km、標高差は200mもあります。

 

桑ノ原信号場は貨物列車の行き違いだけでなく、日中では数本の定期の普通列車が停車することがあります。

姨捨のスイッチバックを経験したい方、桑ノ原信号場に停車する列車を選ぶと、2度美味しい旅になりますよ~

 

 

 

【新幹線の秘境駅】安中榛名駅をじっくり観察する

山奥に突如現れる新幹線駅

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高崎―金沢間で開業している北陸新幹線ですが、高崎の一つお隣の山の中に「秘境駅」と称される新幹線の駅があります。

 

その名は「安中榛名(あんなかはるな)駅」。

平均乗車人員は北陸新幹線でワースト1位、JR東日本の新幹線駅でもワースト2位とトップクラスの利用者の少なさとなっています。

 

今回は安中榛名駅の全貌とその駅の周辺はどうなっているのか、見ていきます!

 

 

安中榛名駅を観察!

安中榛名駅にやってまいりました。

 

当駅までの所要時間は北陸新幹線「あさま」号で、東京駅から約1時間です。

しかし、「あさま」でも当駅を通過する列車が多く設定されるほど利用客は少なく、1日に停車する新幹線は12本しかありません。

(参考にならないかもしれませんが飯田線天竜峡駅、天竜峡方面の列車の本数と同じです)

 

落ち葉の吹き込むホーム

北陸新幹線によく見られる2面2線の小さな駅ですが、ホームドアは完備され、ホームの端までの屋根はあるようです。

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安中榛名駅は2面2線で、待避線はない。

印象的なのは季節柄ですがホームに吹き込んでいる落ち葉…

どことなくローカル線の駅のような雰囲気があります。

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ホームには落ち葉が吹き込んでいる。

東京方面に停車するあさま号が入ってきました。

停車している新幹線を見ると、この駅は結構カーブがきつい駅であることが分かります。

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安中榛名駅に停車中のE7系F3編成。

またこの駅は斜面の中腹に立っており、東京方面側は崖になっています。

崖の方には軽トラが停車中…ホームの端では新幹線車両と軽トラの並びを撮ることができました!

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軽トラと新幹線の並びは貴重?

少し1番線(長野・金沢方面)のホームを散策してみます。

駅名標を見ると英語表記はAnnakaとharunaの間に‐はなく、"Annnakaharuna"になっています。

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安中榛名駅の駅名標。

「榛名」と名前がついていますが、当駅から榛名山にアクセスする路線バスはなく、安中榛名駅からはタクシーで移動するほかありません。

ホームの中ほどに階段とエスカレーターがあります。

長野方面のホームからのエスカレーターはなんと下り専用。

やはり新幹線通勤を意識しているのでしょうか。

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ホームには階段とエスカレーターが設置されている。

 

不可解なスペースの先には…

そして変わっているのがエレベーター乗り場。

表示を見る限りエレベーターは待合室の中に設置されているようです。

何だこのスペースは…

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長野方面のエレベーターは待合室の中にある。

待合室と呼べるほどの座席はありませんが、随分と開放的な造りです。

ベンチもなかなかお金がかかっていそうですねぇ…

座布団は地元の方のご厚意によって設置されているようです。

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待合室は座席数が少ないが、ベンチはかなり豪華。

この待合室、実は吹き抜けになっていて駅本屋とつながっています。

館内は暖かく、全体で空調が効いている豪華な造りです。

 

吹き抜けから眺めてみると、どことなく平成初期っぽい感じのデザインが良い味を出しています。

雰囲気は駅というより、地方空港みたいな感じがあります。

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吹き抜けで駅の入り口とつながっている。空調完備。

前後左右、坂の途中にある立地

では、反対側のホーム、2番線に回ります。

造りは基本的に1番線と同じですが、待合室は普通の造りになっています。

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2番線側のホーム。待合室は普通。

長野方面の先にはトンネルがありますが、ここから軽井沢駅までトンネル、上り勾配が連続します。

 

安中榛名駅を通過する列車はこの区間の上り勾配に備えて、当駅より高崎側から「助走」をつけて走行していますが、当駅に停車する列車は出発後、過酷な加速を強いられることになります。

 

2番線から1番線側を見ると視界が開けています。

2番線側は崖になっているのと対照的で、この駅が斜面の中腹にあることが良く分かります。

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1番線側は視界が開けている。

さて、改札口へ続く通路はというと至ってシンプルですが、車両の形をした案内表示が印象的です。

自動改札は2つしかありませんが、利用実態には見合っているのかもしれません。

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改札へ続く通路。

改札口前には今時珍しい、伝言板がありました。

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改札口前の伝言板。

長野方面のホームから吹き抜けの待合室を経て、エレベーターを降りると改札口の前に出てきます。

化粧室が改札の内側にしかないのは難点ですね…

 

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吹き抜けの待合室からエレベーターを降りると、改札口の前に出る。改札外から見ると構造が分かりやすい。

改札口前の「おぎのや」は周辺唯一の飲食店

改札を出ますと、変わった照明が印象的な売店があります。

釜めしで有名な「おぎのや」と駅レンタカーが並んでいます。

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売店では釜めしのほかにそばやうどん、軽食類が販売されている。

改札前に飲み物の自動販売機は無く、駅周辺にも見当たらないので、飲み物が欲しい場合は改札内の各ホームに1基ずつある自動販売機を使うほかありません。

 

後でご紹介しますが、これ以外の商業施設は駅周辺にはありません。

しかしこの辺りもバブルあたりの雰囲気が今でも漂っていますねぇ…

 

改札外に待合室があり、こちらはwifiも完備。

贅沢なベンチがこちらにも並べられています。

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改札外の待合室。wifi完備。

停車する列車の発車時刻が近づくとこちらに数組のお客さんが入っていきます。

お客さんは時間になると改札口へ…地方空港や港の雰囲気に似ています。

 

この駅はなんとみどりの窓口が現役で稼働していますが、利用客は少なく将来無くなる可能性もありそうです。

 

まるで地方空港?衝撃の駅前風景

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駅の建物を出ますと、目の前には駐車場が広がっています。

閑散とした駅構内とは対照的に、結構な数の車が止まっています。

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駅前には駐車場が広がっている。

平日の昼間に訪れたので、ここに止まっている車の持ち主は、この駅から新幹線通勤をしていらっしゃる方も多いのかもしれません。

しかし、駅の利用者に対してこれだけ多くの車がいるのには納得の理由があります。

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駐車場は基本的に無料で利用することができる。

駐車料金が無料なんですよね~

パークアンドライドのように使うなら、街中に駅が無くても(その方が渋滞が少ないし)良いのかも?

 

ちょっと良さそうな点も見つかったことで、まずは駅の北側を覗きに行きます。

駅入り口の脇に案内のない怪しげな地下道(?)があるので進んでみます。

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駅の反対側へ移動するのはこの通路を渡る必要がある。

先ほども述べたように、安中榛名駅は斜面に位置しているので、反対側は階段を上る必要があります。

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北口(?)。看板も案内もない。

こちら側の出口周辺ですが…

本当に何もありません!

まあこちら側は山側なので開発のしようがないのかもしれませんね~

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駅前にはグラウンドと太陽光パネルしかない。

北側は街灯もほとんどなく、ただの何もない空間でした。

気を取り直して反対側、南側のメインの駅前に戻ります…

 

駅周辺は確かに建物はあまりないですが、道路は整備されています。

ラウンドアバウトの交差点がありますが、これは最近整備されたようです。

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駅前にはラウンドアバウトの交差点がある。

駅前にビジネスホテルやコンビニなどは一切ありません。

少し進むと何やら廃墟めいた建物があります。

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1枚目:デイリーヤマザキ安中榛名店跡。2枚目:コミュニティープラザ。

実はこちらにかつて、デイリーヤマザキがあったそうですが2013年に閉店。

以降駅周辺に商業施設はひとつもないそうです。

こちらのブログを見ると現役だった頃のコンビニの写真があります。

dailyportalz.jp

 

まるでゴーストタウンのようですが、もう少し進むと住宅街が広がっています。

こちらの住宅街はJR東日本が開発したもので「びゅうヴェルジェ 安中榛名」という名前で売り出され、なんと2016年にめでたく完売したらしいです!

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眼下に広がる住宅街はJR東日本が開発したもの。

住宅街を眺めた場所は展望台のようになっています。

オブジェは背景の山の形がデザインになっていておしゃれですね~

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駅正面の道をまっすぐ進むと展望台がある。

新しそうな家が多いのでしばらくは人が住むとは思いますが、団地のように高齢化が進んだらこの街はどうなってしまうのか…怖いところでもあります。

 

駅周辺にはとにかく商業施設がないので、ここにお住まいの方は結局車で安中や磯部の市街に出ないと買い物ができないのだと思います。

そういう点では不便なのではないでしょうかね~

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安中榛名の駅前の道路。徐々に空き地は公園や宅地に変化している。

東京駅から約1時間と、新幹線通勤駅としては立地は良い方であるはずですが、個人的には「地元が新幹線駅だけ作って終わってしまった」感じが否めません。

駅と同時に、地元も協力して街を作っていかないと「新駅」を活かせないのではないかと考えてしまいます。

 

ただ、宅地も完売したようなので需要がないわけではないはずです。

今後どうやってこの駅前が変化を遂げるのか、温かく見守りたい(?)と思います!

 

 

 

かつては終着駅だった!両国駅の臨時ホームでテレワークしてみる

両国駅「幻のホーム」で車内テレワーク!

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両国駅3番線に停車中の成田エクスプレスの車両(E259系)。車内をテレワークスペースとして開放した。

11/27~28にわたって、両国駅の臨時ホームに成田エクスプレスの車両を停車させ、車内をテレワークスペースとして活用するという実証実験が行われました。

 

今回はこの実証実験に参加し、車内でテレワークするメリットやデメリットをご紹介。

またこの臨時ホームから、かつて終着駅だった両国駅の面影を探していきます!

 

 

余ったホーム×余った車両の有効活用

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3番線ホームに立ち入ることは、通常ではできない。

両国駅で成田エクスプレスの車両を使ってテレワークをする…

 

一見、確かに「駅にまとまった人数が使えるテレワークスペースができる」というメリットがありますが、どうして両国駅で、成田エクスプレスの車両なのでしょうか?

 

実はこれは運営側(JR側)に事情があります。

 

感染症拡大の影響で成田空港を発着する飛行機が激減、そのあおりを受けた空港のアクセス特急「成田エクスプレス」は日中の便を運休しているため、車両が使われず余り気味です。

 

一方、両国駅には普段使われない臨時ホームがあります。

このホームに日中余っている成田エクスプレスの車両を置いておき車内を開放すれば、空いているホームも余っている車両も有効活用できるという一石二鳥な企画なのです。

 

実際に車内でテレワークしてみる

今回はJRの実証実験として行われた企画ですのでまだお試し段階のものですが、実際に利用して感じたポイントをご紹介します。

 

予約はJR東日本のエキナカに設置されているシェアオフィスの予約サイト、station workから行います。

両国駅の臨時ホーム(詳しくは後でご紹介します!)の通路で受付を済ませ、車内に向かいます。

www.stationwork.jp

 

予約を確保しても座席が決まっているわけではなく、グリーン車も含めて自由に座ることができます。

 

メリット①:Wi-Fiやコンセントが充実

最近になって、ビジネス利用が多いJR東日本の一部の特急列車は基本Wi-Fi完備、コンセントも1人1個が標準となっています。

 

成田エクスプレスの車両もこの例に漏れず、座席の取っ手部分にコンセントがあります。

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普通車の座席のひじ掛けにコンセントがある。

車内のWi-Fiも無料で使用することができ、安定していて使いやすいです。

 

一方机はというと、パソコン1台を置くのがギリギリといったところですがこれも特に使いづらいというわけではありません。

基本的に普通車であれば隣に人が座るということはなかったので、必要なら隣席のテーブルを使っても問題ないかと思います。

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パソコンを机にのせた状態。決して広くはないが不便ではない。

あと何気にですが荷物を収納するスペースが多いので、大きな荷物を持った方でも安心して使うことができるのは大きなメリットかもしれません。

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大きな荷物を持っている方にとって、荷物スペースは重宝するかも。

 

メリット②:座席数が圧倒的に多く使いやすい

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車内は特別な細工がされているわけではなく、普段と変わらない。

JR東日本ではエキナカに主に1人~2人用のブースを設置(公衆電話のボックスのようなイメージです)して、個人向けシェアオフィスを展開しています。

しかし駅に設置されているブースの数は決して多くはなく、一つの駅に数室程度しかありません。

 

一方で今回の実証実験では成田エクスプレス用の車両(E259系)6両編成を丸ごとシェアオフィスとして開放していました。

全席分をシェアスペースとして使われているわけではありませんが、車内の定員は290人、2席分で1スペースとしても約140人の人が利用できることになります。

 

エキナカ(というか駅そのものですが)でここまで収容人数が多ければ、「いつでも利用できる」という利便性の向上が期待できます。

 

デメリット①:個室ではなく、ビジネス以外の利用も多い

エキナカのシェアオフィスと圧倒的に違う点は、「個室ではない」ということです。

同じ値段で個室のシェアオフィスが借りられるなら、個室を使いたくなる気がします。

 

開放型のシェアオフィスでも静かで使いやすければ問題ないとも考えられますが、車両丸ごとビジネスモードの客ばっかりかというと、決してそうではありません。

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利用客は鉄道ファンが最も多かった。

これは土曜だったからかもしれませんが、車内は鉄道ファンのほか、子供連れや物珍しさで休憩するグループ客で賑わう時間もありました。極論すれば鉄道博物館の休憩スペースとして開放している車両みたいな需要も結構あるのです。

 

ビジネスで利用する場合、電話だけならデッキに出れば問題ありませんが、仕事環境として使いやすいかと言われるとちょっと疑問点が残ります。

解決策としては、どの需要にも応えられるように、例えばビジネス利用とそうでない利用で号車を分けてみたりしてもいいのかもしれません。

 

デメリット②:利用客がグリーン車に集中

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座席指定ではないので、時間内であれば自由に車両を移動できる。

先ほども述べたように車内でのテレワークは座席が指定されず、人数しか管理されていません。

どこの席に座っても利用料金は同じなので、1編成6両のうちのグリーン車1両に客が集中していました。

 

今回の利用客のほとんどは鉄道に興味をお持ちの方とお見受けしたので、たまたまなのかもしれません(実際走っている成田エクスプレスのグリーン料金は高い一方、今回は破格でE259系のグリーン車に立ち入ることができるため人が集中したとも考えられます)が、ちょっとねぇ…

 

感染症対策の観点からもグリーン車が密になりやすいシステムなので、例えばグリーン車の料金を高くするとか、もう少し工夫が必要な気がします。

 

鉄道ファンとしては車内のテレワークを楽しめましたが、ビジネス利用として使いやすくするにはまだ改善すべき点が残りそうです。

 

両国駅のターミナル駅としての面影

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臨時ホームへはレッドカーペットが敷かれた通路を進んでいく。通路には両国駅の歴史についての展示がされている。

今回の実証実験で使用された3番線は、両国駅の臨時ホームとなっていて普段は立ち入ることができません。

なぜこんな場所にホームがあるのか―――実はこのホーム、両国駅がターミナル駅だった時代の名残なのです。

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臨時ホームは改修されているが、現在でも古い骨組みが残る。

両国駅は現在、普段1面2線の小さな駅に総武線の各駅停車が来るだけの小さな駅ですが、実ははかつて房総方面のターミナル駅として栄えていました。

 

現在の国技館や江戸東京博物館の敷地は両国駅の跡地に建設されたもので、訪れたことのある方なら分かると思いますが、かなり広大な敷地だったのです。

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現在の両国駅とかつての両国駅(1947年米軍撮影)を比較する。両国駅は1930年頃は渋谷や池袋よりも収入の大きい駅だった。

1932年に総武線の御茶ノ水までの電車線が開業したことで規模は縮小していきますが、房総方面は非電化区間が長い間残っていたため、房総方面の急行の発着駅としてしばらくは賑わっていました。

 

この房総方面の急行列車などの発着に使われていたのが現在の3番線です。

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3番線の錦糸町側から隅田川方面を見ると、右側に分岐する線路が並んでいることが分かる。かつては国技館を含めて右側一帯も両国駅だった。

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3番線の隣にもホームが現存している。

しかし1972年に総武線の複々線化が完了し、総武快速線の地下区間(東京トンネル)も開業。

快速線に両国駅は設置されず通過駅となり、房総方面の急行は全廃、房総方面の列車は大半が東京発着になりました。

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総武快速線のトンネル出口付近にはかつてホームがあった。両国駅は快速線には設置されず、通過することになった。

その後徐々に規模を縮小していき、現在のように各駅停車しか止まらない駅になりましたが、途中駅になってから利用者は増加し現在も賑わいを見せています。

 

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両国駅の駅舎は線路に直交する形で建設されているが、これもターミナル駅だった名残である。駅舎は現在商業施設としてリニューアルされている。

両国駅の臨時ホーム(3番線)は現在でも臨時列車が発着できるようになっていて、時々終着駅としての役割を果たすことがあります。

このほかにもイベントスペースとして解放されることもありますので、もし立ち入る機会があればターミナル駅だった頃の両国駅に想いを馳せてみるのもいいかもしれません。