toremorの旅手帳

鉄道と旅行と温泉と。大学生の放浪の様子をご覧ください。

豪華な建物で朝食を…松本丸の内ホテルに宿泊

松本城近くの豪華な建物の謎

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松本城の前に立派な擬洋風建築は「丸の内ホテル」のレストラン。

お土産屋さんが並ぶ松本城の目の前の通りで、ひと際目を引くこの大きな西洋風の建築…

筆者は松本に住んでいますが、この建物の中はいったいどうなっているのか前々から気になっておりました。

 

そこでgotoトラベルキャンペーン(少し言葉に懐かしさを感じますが…)を使って、一人この建物を持つ松本丸の内ホテルに試しに泊まってみることにしました……。

 

 

落ち着いた内装の客室

松本の「丸の内ホテル」もお城の近くにあり、松本城から約100mほどに位置しています。

入口は松本城の正面から続く大名町通りより、一本入ったところにあります。

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丸の内ホテルのエントランスは通りから一本それた場所にある。

ホテルのマークはお城をイメージしているのでしょうか。

訪問時はgotoトラベルで安くなっていたせいか、筆者は「普通のビジネスホテルかな~」と思っていましたが、エントランスからあふれる高級感に少し戸惑いながら進みます。

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ホテルのフロント。写真右奥の白い扉で先ほどの擬洋風建築の建物とつながっている。

予約していた部屋は4階にあるようです。

エレベーターを出ると階数の書いてある鏡があります。

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エレベーターを降りて客室へ。

廊下は高級ホテルにありがちで、意外と暗いのでご注意を。

雰囲気は良いのですが、欲を言えばもう少し明るくしてほしいな~と庶民は思ってしまいます。

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部屋の中は意外と明るい。

今回は標準的な一人用の「スタンダードセミダブル」というお部屋です。

ブラウンを基調とした落ちついた感じですね~。

デスクやチェアーも木製でなかなか良いアクセントになっています。

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部屋に設置されているデスク。鏡を倒すと大きなテーブルとして使用できる。

これがそうなのかは分かりませんが、松本では「松本民芸家具」という和洋風の家具が一つの工芸品になっています。

元から松本近辺は木材加工が得意だった歴史がありまして、意外と知られていませんがギターの生産量も日本一です。

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広々としたセミダブルベッド。

ベッドはセミダブルベッド。

トイレもバスも最近の高級ホテルという感じで、使いやすそうです。

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バス、トイレともに清潔感がある。

枕もとにコンセントもあり、便利な造りになっています。

空気清浄機もありました。

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枕もとにはコンセントがある。

写真は撮り忘れましたが、Wi-Fiのほか有線のLANケーブルも備品として置かれていました。

ホテルのWi-Fiって時々接続がおかしくなるので、個人的にはホテルではLANケーブルでつなぐ方が好きです。

 

訪問時はgotoトラベルキャンペーンをやっておりましたので、地域共通クーポンを使って夕飯と散策に出かけます。 

夜の松本城を散策

「密をさけて」とか「ずらし旅」などが叫ばれていますが、地元から「こんなのどうですか?」というご提案。

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夜の松本城はライトアップされる。

これがこれからの新定番「夜の松本城」

平日ということもあり、ご覧のように空いております。

 

天守へは上がれないこの時間ですが…

夜の松本城はライトアップされ、松本城の「黒」がより一層映えるのです。

風がなければこうして逆さ松本城が…

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風吹いてないのに…

逆さ松本j…

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…!

逆さ松本城を堪能できます。

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逆さに映る松本城を楽しむことができる。

余りにも夜遅いとライトアップが消えてしまいますが、その時はその時の美しさがあるります。

 

松本で暮れてしまってもがっかりせずに、一度お城に行ってみることをお勧めします!

「かつ玄」本店で夕食!

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かつ玄本店は松本城近くにある。

松本では蕎麦を食べる以外にも、グルメがたくさんあります。

そのうち今回ご紹介するのは老舗のとんかつ屋さんです。

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店内は木製製品でまとめられている。椅子はかつて、松本深志高校で使用されていたものらしい。

松本城から歩いて5分強、「かつ玄」本店で夕食をいただきます。

お茶と季節の品3品がお通しのように出てきます。

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お通し?のようなシステム。

とんかつ四味定食を注文。

1250円ととんかつ屋にしてはリーズナブルな価格設定です。

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とんかつ四味定食(1250円)。一部好みの種類を選択できるが、冬季のカキフライは絶品なのでおすすめ。

信州の豚を使ったメニューもあり、観光で「土地のもの」を召し上がりたい方も十分楽しめると思います。

 

筆者は地域共通クーポンを使ったので250円のお支払い…。

食べ物にこのクーポンを使うとかなりお得感がある気がします。

 

元銀行だった豪華な朝食会場

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丸の内ホテルのレストラン棟となっている。

さて、 ようやく本題ですが丸の内ホテルに繋がっているこの豪華な建物…。

朝にはホテルの朝食会場になります。

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中も豪華な造りになっている。

なんというかワンランク上の朝を迎えた感じがあります。

ピアノもあって、パーティー会場として使われることもあるようです。

 

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ピアノも置かれている。

朝食は半分バイキングのような形式。

サラダとか飲み物、デザートは確かセルフサービスでした。

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朝食は品数が豊富。特に前日に注文しておいたフレンチトーストが美味でした。

この建物は朝食会場として使われていますが、 午後からはレストランやカフェとしても使っているようです。

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午後は大きな通りの入口も空いている。

宿泊しなくてもこの建物に入ることはできるみたいです!

この朝食会場からトイレに向かう通路には何やら堅牢なドアが…

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やたらと堅牢なドアの正体は…

この建物、1937年に建てられた旧第一勧業銀行松本支店を改装したものだそうで、この扉は当時のまま残されているようです。

松本市街地は太平洋戦争で焼けていないため、こういう建物を今でもちらほらと見ることができるのです。

意外と多い松本の擬洋風建築たち

ここで少し、松本市街地周辺に残る「擬洋風建築」を見ていきます。

「擬洋風建築」とは、幕末から明治にかけて、文明開化の時代に大工が西洋の建築に似せて建てた建物のことです。

先ほどの丸の内ホテルのレストラン棟もこちらにあたります。

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再程紹介したこちらの建物も擬洋風建築とされている。

松本周辺に見られる擬洋風建築は、大工が東京近辺に建てられていた西洋建築を見て、見よう見まねで造ったそう。

 

筆者は建築に詳しくないので、間違っていたら申し訳ありませんが、こちらも見よう見まねでそれらしい建築物をご紹介します。

どれもこの松本丸の内ホテルから徒歩圏内です。

 

代表格は2019年に国宝に指定された、旧開智学校です。

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旧開智学校は擬洋風建築の代表格と言える。

これは但し書きもありまして、擬洋風建築で間違いないと思います。

館内も綺麗に保存されており、入場料を払えば見学することができます。

 

次はこちら、銭湯「塩井の湯」です。

筆者が松本市内の銭湯の中で最も好きなこちらの銭湯も擬洋風建築と思われます。

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銭湯「塩井の湯」。

「塩類鉱泉」とありますが井戸を沸かした銭湯で、常連さんや番頭さんも優しく、身も心も温まる良いところです。

 

続いてこちらは病院…。

もともとは産婦人科だったらしいのですが、なんとお医者さんが独自に設計し地元の大工が作ったという話もあります。

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宮島耳鼻咽喉科。

松本城から少し東にそれた「上土町」と呼ばれる地域には擬洋風建築と思われる建物が数多く見られます。

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上土町周辺に見られる西洋風の建物。

松本というとお城や中町通り、縄手通りなどの城下町と湧水巡りが一般的ですが、擬洋風建築を探しながら歩くのも、視点としては面白いのではないかと思います。

 

ほかにも旧制松本高校跡(あがたの森公園)などにも古くからの建築が残されており、建築物にご興味がある方は意外と楽しめるかもしれません。

 

機会がございましたら是非、松本近辺を建築物に注目しながら歩いてみるのはいかがでしょう…?

ハイブリッド気動車のパイオニア、キハE200形に乗車【信州周遊旅②】

世界初のハイブリッド気動車キハE200形

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世界初のハイブリッド車両キハE200形。

近年急速に普及し始めている「ハイブリッド気動車」

先日量産化が決定したJR東海の新型車両HC85系も、このハイブリッド気動車にあたります。

 

ハイブリッド気動車とは、鉄道車両に蓄電池とエンジンおよび発電機を搭載したもので、エンジンで発電機を回し電気に変え、余った電気を蓄電池が回収して再利用する仕組みになっています。

 

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CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=98073125

今回はこの「ハイブリッド気動車」、世界初の営業車両である小海線のキハE200形に乗車します!

 

前回↓

www.toremor.work

 

 

 

実は稀少!たった3両の製造で終わったキハE200形

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小海線の普通列車に使用されるキハE200形。

世界初のハイブリッド車両として開発されたキハE200形は、小淵沢ー小諸を結ぶ小海線のみで運用されています。

 

この車両はJR東日本に3両しかいない希少車種で、小海線の中でも珍しい車両となっています。

在籍している3両のうち、2両が基本的に運用に入りますが、多客時に運転される臨時普通列車「八ヶ岳高原号」で走行することもあります。

車体には「HYBRID」の文字、HB-E300形と連結可能

外観は青と黄色を基調とした先進的(?)なデザインで、車体側面に「HYBRID TRAIN」と書かれています。

停車時はアイドリングストップしているのでとても静かで、電車のような感じです。

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車体側面には「HYBRID TRAIN」の文字。

この車両は、基本的な機構が同じである「リゾートビューふるさと」に使用されるHB-E300形と連結することができ、実際に連結して走行した実績もあります。

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リゾートビューふるさとに使用されているHB-E300形。

 JR東日本のハイブリッド車両は「HYBRID」という文字をやたらと強調する節があって、この後に登場したHB-E300形の側面にも書かれています。

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形式が「キハ」ではじまるハイブリッド車両はこの形式しか存在しない。

この車両の形式は「キハ」ですが、この後に登場したハイブリッド車両は「HB-」を頭につけるようになったため、ハイブリッド車両のなかで唯一「キハ」を名乗る車両でもあります。

 

JR東日本がハイブリッド気動車の開発に乗り出したのは2003年。

試作車としてキヤ991形という車両が開発され、そのノウハウを受けてキハE200形が作られました。

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ハイブリッド気動車としての試験を終えたキヤ991形は晩年、エンジンと発電機を燃料電池に載せ替えて、燃料電池とのハイブリッド車両クモヤE995形に改造された。

このキハE200形も「営業列車としてお客さんを乗せつつ実験する車両」として位置づけられていて、実際に長期にわたる試験が行われていました。

3両しか製造されなかった理由も、試験車両としての側面が強かったからなのかもしれません。

 

デッドスペースが多い変わった車内

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キハE200形の車内。つり革も最新のものが使われている。

車内を見ていきます。

ロングシートと1+2のボックスシートが並ぶスタイルです。

小海線の主力車両キハ110形と同じような構成ですが、車内は少し広い印象があります。

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車両中央部には機器スペースがある。

車両の中央部には機器のスペースがあります。

車内が空いていればいいですが、この周辺は混雑時に少し窮屈に感じました。

 

座席は青を基調とするデザインで、座り心地は首都圏のE231系と余り変わりはありません。

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ボックスシート。

個人的にはキハ110系より広く感じ、思ったよりは快適です。

続いて連結部分を見てみます。

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連結部分。

運転室は半室になっていて、佐久平駅周辺の混雑する区間ではこの解放された方の半室にもお客さんが立っていました。

 

運賃表の下にLED案内表示器が設置されているのが特徴的です。

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LED表示器では時々「世界初のハイブリッド車両」であるという案内がされる。駅ごとに乗り心地を聞かれます。

なんかこう、登場した時代がそうなのかもしれませんが、微妙に古い機器と新しい機器が混じっている感じがあります。

「世界初」ということもあり、この車両は鉄道友の会からローレール賞をもらっています。

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ローレール賞も受賞している。

ドアも特徴的で、車外は黄色ですが車内も黄色で塗られています。

そして足元にご注目……

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ドアは黄色で塗られている。

微妙に段差があるのです。

バリアフリーを意識しているらしいのですが、とても微妙な広さで低くなっているので(筆者は走行中この隙間に足をとられてコケました(笑))お気をつけください。

 

トイレの近くには、この車両が今どうやって動いているかを表示するモニターがあります。

モニターが暗いですが、「赤い矢印」にご注目。

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まずは最初バッテリーを使って走り出し…

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次にエンジンで回した発電機の動力を受けて走る。

駅の出発時にこのモニターを見てみると良くわかります。

実際は走行音でも分かるので、どの段階でエンジンが起動するのかぜひリスニングしてみてください!

ハイブリッド車両で小海線を冬を堪能

 キハE200形が小海線の全区間を走行する時間を狙いまして、小諸駅12:02発の普通列車小淵沢行きに乗車します。(毎回この運用に入るかどうかは定かではありません)

 

小諸駅から新幹線の乗り換え駅である佐久平を通り、中込駅までの区間は、小海線で最も混雑する区間です。

地元の方の足として使われていて、どの時間でもそこそこの混雑があります。

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中込駅までは利用者が多く、この区間までの区間列車も運行される。

中込駅には車両基地があり、小海線の車両はすべてこの小海線営業所の所属です。

奥には観光列車HIGH RAIL 1375もいます。

給油の設備もありますね~

 

ここから先は八ヶ岳方面に向かってどんどん山を登っていきます。

中込駅を過ぎたあたりからは、後方展望をすると前に雄大な浅間山の景色を望むことができます。

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後方展望をすると浅間山が広がる。

 しばらく進むと、小海線の名前の由来となった「小海駅」につきます。

こちらも運行の拠点となっている駅ですが、中込駅よりは利用者が少ない印象です。

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たいていのお客さんは小海駅周辺で降りてしまう。

車内が空いてきたところで、小諸駅で購入した桜餅を。
小諸駅隣にはカフェがあって、テイクアウトで様々なスイーツを買うことができます。

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小海駅隣のカフェで購入した桜餅。期間限定。

キハE200形は窓が広いので車窓も楽しむことができます。

小海線は千曲川の上流部に向かって進みます。

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大きな窓から車窓を楽しむことができる。

段々と標高を上げ、高原地帯へと入っていきます。

夏は涼しくて良いのですが…

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この川は汚染されているのではなく、凍っている。

なんと日当たりが良い川でも凍ってしまうほどの寒さなのです。

この周辺の川上村はレタスの生産量日本一で、長野県で唯一、埼玉県と接する自治体です。

意外や意外、長野県は埼玉県のお隣なんですよ~

 

信濃川上駅を過ぎると、いよいよ野辺山が近づいてきます。

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八ヶ岳が近づいてくる。

街が見えてくるとJR最高の標高をもつ駅、野辺山駅に到着です。

実際は立山黒部アルペンルートの室堂駅の方が標高は高いので、良く見ると「日本最高」ではなくちゃんと「JR最高」と書いてあります。

一般の方からすると小海線の終点のようなイメージがあるかもしれませんが、途中駅の一つです。

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野辺山駅に到着。

ここから先は、夏なら観光客が多く利用する区間です。

冬の八ヶ岳が広がります。

正直言えば夏より見た目が綺麗な感じで、小海線の車窓はオフシーズンも楽しめると思います。

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冬の八ヶ岳は美しい。

野辺山ー清里間には有名なJR鉄道最高地点(1375m)があります。

神社もつくられていて、一つの観光スポットになっています。

 

良く勘違いされるのですが、ご神体は車輪ではなく石に埋め込まれたレールです。

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鉄道最高地点神社。

但し書きには「二つの車輪のように夫婦が仲良く」とありますが、穿った見方で見れば1067mmの線路幅くらいの距離感が大事なのかもしれません。

 

さておきまして清里駅で対向列車との行き違いです。

右手が主力車両のキハ110。

並ぶとキハE200形も近未来感があります。

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清里駅で交換。

鉄道最高地点から先、小淵沢駅まではずっと下りなので、ほとんどモーターと重力だけで動いていきます。

エンジンの音は全然聞こえないので、ものすごく車内は静かです。

遠くに富士山を眺めつつ、最後の名所「小淵沢大カーブ」に差し掛かります。

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小淵沢駅付近のカーブは撮影地としても有名。

車窓からは雄大な八ヶ岳が見え、最後まで絶景を楽しむことができます。

ふりかって見ると、何やら怪しい色をしたE257系が…

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!?

踊り子用のE257系の長野疎開回送だったようです。

本当に到着間近まで車窓を眺めていい思い出ができました。

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小淵沢に到着。

小海線の歴史を振り返れば、SL走ってたり電車+客車+ディーゼル機関車で走ってみたりと個性的な列車が多いですが、このキハE200形もまたその一員として、今後も活躍しそうです。

 

リニューアルされた小淵沢駅には改札外に展望台があり、ここからの景色は大変綺麗です。

晴れていれば富士山を望むこともできますよ~

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小淵沢駅の展望台はとても景色が良い。

おまけ:小淵沢駅「丸政」の「カレー黄そば」が美味

完全におまけなんですが、小淵沢駅の立ち食い蕎麦「丸政」(駅弁「元気甲斐などで有名)では、そばやうどんのほかに中華麺の「黄そば」を頼むことができます。

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丸政さんの「カレー黄そば」は個人的一大名物。

筆者おすすめの一品は「カレー黄そば(400円)」。

和風だしにカレーをかけ中華そばを入れるという何とも国際的なメニューですが、何とも病みつきになる、中毒性の高い味。

観光客の方が「山賊そば」をオーダーしている傍ら、私はこの駅に来ると毎回このメニューを食べています……

 

皆様もぜひ一度ご賞味あれ!

信州ワンデーパス+しなの鉄道で長野県を1周する【信州周遊旅①】

お得なきっぷ「信州ワンデーパス」

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信州ワンデーパス。エリア内が1日乗り放題となる。

「信州ワンデーパス」長野県周辺のエリア内の鉄道が1日乗り放題になるという、お得なきっぷです。

指定席券売機(主に紫色)の画面、「おトクなきっぷ」から購入することができます。

 

基本的に通年で販売しており、料金は2680円で乗車当日でも購入可能です。

ちなみに、この料金は大糸線の松本ー南小谷駅間の往復と同じ料金となっています。

 

今回はこの「信州ワンデーパス」としなの鉄道を使って、ぐるりと長野県の東側を1周していきます!

 

 

かつて「循環列車」が通ったルートを辿る

循環列車とは、出発地と目的地を一直線で結ぶのではなく、あちこちをぐるっと一周して再び出発した地に戻ってくる列車のことです。

今でいえば「山手線」もその一部にあたりますが、国鉄時代にはもっと長距離の普通列車や急行列車がいくつか見られました。

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循環急行「のべやま」に使用された車両と同形式のキハ58。小海線は非電化のため全区間気動車で運転された。

Mitsuki-2368 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7543358による

長野県にもかつて循環列車が走っていた時期がありました。

長野ー篠ノ井ー小諸ー小淵沢ー松本ー篠ノ井ー長野(篠ノ井ー長野間は重複)というルートで、左右両方向の周りで急行列車「のべやま」「すわ」が運転された実績があります。

 

さて、今回はその循環急行列車が通ったルートを(だいたい)踏襲して、松本から松本までの1周ルートで移動していきます!

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信州ワンデーパスを使う今回の大まかなルート。

信州ワンデーパスで長野県を一周!

※今回の行程では鉄道に乗りっぱなしですが、もう少し時間にゆとりをつけて周辺を観光するとさらに楽しい旅になると思います!

①松本10:07→篠ノ井10:50:ワイドビューしなの3号長野行(383系)

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特急しなのに使用される383系。松本ー長野間の区間利用客も多い。

今回は松本を出発地点に設定しました。

まずは383系特急「ワイドビューしなの」で篠ノ井駅まで移動します。

 

松本ー篠ノ井~長野間を特急で移動するには「信州しなの回数券」が便利です。

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信州しなの回数券。方向は関係なく塩尻~松本~明科ー篠ノ井~長野までの特急に1回使用できる。定価は4枚2080円(1枚あたり520円!)とこの時点で破格である。

主要駅の金券ショップで1枚550円~600円前後で買うことができ、この区間の空いている指定席と自由席に乗ることができます。

新幹線の乗り継ぎ割引より安く特急が使える、便利なきっぷです。

このきっぷも信州ワンデーパスと併用できます。

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383系には普通車にもフットレストが備えられている。

383系は普通車にもフットレストがついていてとても快適です。

車齢も25年越えと結構経っていますけれど、あまり古さを感じさせません。

最近希少になりつつある初期型のGTO-VVVFインバーター音を楽しむのには最適(一般の方にはうるさいだけかもしれませんが)な乗り物です!

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遠くに壁のように聳える山々は北アルプス。

松本出発後、進行方向左手には犀川と北アルプスの山々が広がります。

 

ちょうど大糸線から見える安曇野の景色の遠望となっていて、篠ノ井線の松本ー明科間と大糸線の松本ー穂高間は、約4kmほど離れながらも並行して走っています。

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大糸線と篠ノ井線は離れているものの並行して走っている。田沢駅ー豊科駅間も4.2kmしか離れていない。

篠ノ井線の方が線形が良く駅数も少ないので早く着くことができ、地元の方の中には、篠ノ井線を「大糸快速線」のように使って田沢駅や明科駅で降りるという使い方をする人も見受けられます。

安曇野の有名な観光地「大王わさび農場」も実は穂高駅より明科駅の方が近いのです。

 

明科から先、篠ノ井線は長いトンネルに入りますが、この周辺には旧線の跡が遊歩道として整備されていて歩いて楽しむことができます。

 

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トンネルを抜け、途中坂北駅で対向列車の待ち合わせ。

篠ノ井線松本以北はほとんどが単線なので、頻繁に行き違いが行われます。

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坂北駅にて対向列車の待ち合わせ。

さらにもう一本、冠着トンネルを抜けると、有名な姨捨の景色が広がります。

特急しなのは観光用の列車ではないので、姨捨駅周辺で速度を落としてくれることはありません。

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姨捨駅周辺の雪景色が目の前に広がる。ここは日本三大車窓の一つに数えられている。

個人的には姨捨駅を通過した後、姨捨公園を過ぎたあたりが車窓のベストポイントだと思っています。

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方向を変えながら善光寺平へと降りていく。桑ノ原信号場を通過中。

 

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ゆっくりと山に沿うように列車は下っていきます。

善光寺平に降りてしなの鉄道線と合流すると、篠ノ井駅に到着です。

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しなの鉄道線(旧信越本線)の線路と合流。

②篠ノ井10:55→戸倉11:08:しなの鉄道普通列車戸倉行(115系)

かつての循環急行「のべやま」や「すわ」は長野まで往復しますが、今回は行程の関係で篠ノ井からそのまましなの鉄道(旧信越本線)へと乗り換えます。

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しなの鉄道では信州ワンデーパスを利用することはできない。

ここから先しなの鉄道では信州ワンデーパスは使用できません。

小諸駅まで別途きっぷを用意して、軽井沢方面の小諸駅まで進みます。

 

ちなみに信州ワンデーパスでは別途特急券を購入すれば長野ー軽井沢間の北陸新幹線を利用できます。

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115系しなの鉄道色。

やって来たのは「しなの鉄道色」の115系

車内は更新されていますが、往年の雰囲気は残っています。

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115系の車内。戸倉駅にて。

しなの鉄道では国鉄時代の塗装をはじめとした、様々なバリエーションの色の115系に乗ることができますが、いつまでこの状態が続くのかは分かりません。

乗れるうちにたくさん乗っておきたい車両ですね~

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しなの鉄道には様々な塗装の115系が存在する。新型車両の置き換えも始まっており、115系を楽しめる期間もそろそろ終わりが近づいている。妙高高原駅にて別日撮影。

篠ノ井駅を出ると千曲川橋梁を渡ります。

窓を大きく開けたいところですが、意外とお客さんも乗っているし寒いし…またの機会にします。

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千曲川橋梁を渡る。

長野から戸倉までの区間列車に乗車しましたが、比較的良い接続で軽井沢方面へと乗り継ぐことができます。

③戸倉11:11→小諸11:47:しなの鉄道普通列車軽井沢行(SR1系)

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しなの鉄道の新型車両、SR1系。

戸倉から先、軽井沢方面の列車はSR1系です。

115系の後継として導入されましたが、使い方としては169系の後継(?)として、座席指定の快速列車や間合いの普通列車の運用に入っています。

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車内は2列シートが線路に対して平行なロングシートとして並んでいる。

有料の座席指定快速の時は進行方向に座席が向き、そうでないときは基本はロングシートに変わるという、東京近辺の鉄道に多く見られる仕組みのシートを採用しています。

基本的にはJR東日本E129系の構造を踏襲していますが、座席とデザインだけは異なっています。

 

有料の座席指定快速は平日は「通勤ライナー」のような列車、休日は観光客向けの「軽井沢リゾート号」として運転されます。

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2両編成で走っていたので意外と車内は混雑気味。

未だに新車の香りが残っていました。

 

途中の坂城駅では静態保存されている169系を観察。

3両編成まるまる1本が展示されており、幕は「通勤快速」を出していました。

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坂城駅では169系が状態良く静態保存されている。ボランティアの方が定期的に清掃しているらしい。通勤快速幕が出ていた。

車両こそ変わりましたが、ちょっとお金をかけて座っていく列車という概念はSR1系にも受け継がれています。

 

浅間山が綺麗に見えてくると、いよいよ小諸駅に到着です。

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美しい浅間山の風景が見えてくると、小諸に到着する。

次回予告

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小諸駅のホーム屋根は独特な形をしている。

小諸駅からは小海線に乗り換え、オフシーズンならではの絶景をながめつつ八ヶ岳の山越えをします。

 

そして乗車するのは日本でたった3両しかいない、世界初のハイブリット気動車

果たしてその乗り味は…?

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小海線に乗り換える。前面にはHYBRIDの文字。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【着陸が日本一困難?】山々に囲まれた信州まつもと空港を観察

標高日本一の松本空港

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海沿いや平野部に立地するイメージが強い空港ですが、山々に囲まれた長野県松本市に日本で最も標高の高い空港があります。

 

標高はなんと657.5m。

海外にはもっと標高の高い空港もあるものの、スカイツリーの頂上よりも高い場所に位置しています。

 

高所かつ山々に囲まれる独特の地形、そこから生じる予想できない風向の影響で、松本空港は「日本一着陸が難しい」とも言われています。

今回はそんな松本空港はどのようなところなのか、ご紹介します!

 

 

周囲を山に囲まれた独特な地形

松本空港(愛称:信州まつもと空港)は松本盆地の中央部に位置しており、周囲を標高1500~2500m程度の山々に囲まれています。

少し空から(と言ってもgoogle earthですけど!)見てみます。

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松本空港の立地。南側の湖は諏訪湖、西側(左)は北~中央アルプス、東側(右)は美ケ原などの標高の高い山が連なる。

素人が見てもなんか着陸しづらそう…

もう少し近づいて空港の形を見ます。

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松本空港の滑走路。1本しかなく、ターニングパッドも設置されていない。

2000mの長さで1本の滑走路が南北に延びますが、ターニングパッドと呼ばれる飛行機が方向転換するスペースも設置されていません。

離陸する際、旅客機は滑走路の端まで行って限られたスペースで「クルン」と自力でターン、一気に加速して飛び立ちます。

 

この滑走路は1994年に長さが1500mから2000mに伸び、ジェット機が離着陸できるようになりました。

 

通常1500mの長さの滑走路があればジェット機の離着陸も問題ないのですが、この空港は標高が高く「空気が薄い」ため、エンジンの出力などの関係でこの距離をとらないとジェット化できなかったのです。

着陸時に頼れるシステムが利用できない

「日本一難しい」と言われる松本空港の着陸ですが、その要因の1つに「計器着陸装置」が設置されていないことが挙げられます。

 

計器着陸装置(けいきちゃくりくそうち、英語Instrument Landing SystemILS)とは、着陸進入する航空機に対して、空港飛行場付近の地上施設から指向性誘導電波を発射し、視界不良時にも安全に滑走路上まで誘導する計器進入システム。(Wikipedia)

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空港に設置される計器着陸装置

投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1899635による

あまり筆者は航空業界に詳しいわけではありませんが、簡単にこの「計器着陸装置」の機能を見てみます。

この装置が電波で滑走路への侵入方向や高さ、距離など航空機側へ伝えることで、航空機側はそれに沿って着陸することができるようになります。

 

状況によりますが、現在では航空機側と空港側の設備が充実していれば自動的に着陸することもできます。

 

一方で松本空港は、ジェット機の離着陸に対応している国内の空港の中で唯一、計器着陸装置が設置されていません。

松本空港にこの装置を設置しても山々に遮られ、使用できないようです。

そのためこの空港に着陸する場合、事実上パイロットの目視・手動のみで着陸しなければなりません。

 

なおかつ松本盆地は高い山々に囲まれて、実際の空港周辺の風向が予想しづらい(ビル風のイメージ)ので、さらに着陸(離陸)が難しくなります。

滑走路が南北にありながら、実際に東西から強い風が吹くケースもあり、予想以上に困難な空港なのかもしれません。

背景が「山」、異色の離陸風景

筆者の出身はもともと東京なので、空港と言えば「羽田空港」のイメージが強いですが、松本空港では高い山々をバックに航空機を見られる、ある意味貴重な体験ができます。

 

松本空港の旅客ターミナル3階には展望デッキがあり、休日の航空機の出発・到着時には家族連れなどの見物客の姿が見られます。

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離陸風景を見ようと人が集まる。

ちょうど筆者が展望デッキに上がると新千歳空港行き(?)の便が離陸していきました。

松本空港を発着とする航空会社はすべてFDA(フジドリームエアラインズ)で、エンブラエルのE170とE175という機種で運航されています。

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滑走路の北側から南側に向かって離陸する新千歳空港行き。

FDAが所有する航空機は機体ごとにE653系のように色が違いまして、「今日は何色が見られるのか」楽しみにできます。今回はブルー。

カラーバリエーションが充実しているのは楽しいですよね~

 

滑走路の半分くらいで離陸している感じです。

 

続きまして次に福岡便となる航空機が到着。

福岡空港からの折り返し運用(?)みたいです…

 

着陸時間が早まってしまい、着陸風景は見逃してしまいました。

早着が基本的にない鉄道を趣味の中心にしていると「早まる」という発想が薄れてしまいます。

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給油作業中の福岡便。

到着して30分くらいで福岡便として出発するようです。

出発ロビーには保安検査場に続々と人が集まってきました。

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保安検査場に集まる乗客の皆さん。

乗客の方が乗り込むと出発です。

トーイングカーに押されましてバックしていきます。

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トーイングカーに押されて後退する福岡便。

そして今度は自力で滑走路へ。

南側から飛ぶようです。

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滑走路の南側の端へ移動する。

空港というと滑走路まで平行している通路を進むものだと思っていましたが、こういう小さな空港では滑走路をそのまま走って端まで移動することが多いのだとか。

 

端の方でくるっと向きを変えて、滑走路を猛加速します。

大きな空港のように段階的に速度を上げるのではなく、ほぼいきなり300km/h近くまで加速しているように見えました。

まるで体操選手が「ゆか」の演技をやっているような動きです。

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端まで行った飛行機は向きを変え、離陸していく。

こじんまりとした旅客ターミナル

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信州まつもと空港の旅客ターミナル。小さな新幹線駅くらいのスケールである。

旅客ターミナルはなんとも三角屋根が特徴的な建物です。

入ると正面に出発ロビーに向かうエスカレーターがあります。

これが三角屋根のちょうど真下の部分です。

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大きな天窓の下がエスカレーターとなっている。

一階には小さな売店と手荷物検査場があります。

基本的に1会社の飛行機(JALとコードシェアしていますが)しか来ませんので、至ってシンプルです。

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「井上」とは松本のご当地百貨店であるが、ここではお土産類が売られている。小さいながら品ぞろえは良い。手荷物検査場はFDAの窓口しか見当たらない。

二階に上がりますと、保安検査場と売店、レストランがあります。

保安検査場横にはなぜか木彫りの鉄道車両が置かれています。

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保安検査場の横にはなぜか鉄道車両の木造模型が飾られている。

この写真では分かりませんが、それぞれに鉄道車両の説明が書かれていて、大変細かい内容まで書かれておりまして、なかなかに愛を感じます。

 

隣にはちゃんと航空機の方も飾られていました。

ありましたね~JASって…こんなデザインのJALも乗った記憶があります。

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航空機の模型の展示もある。

電光掲示板は新しいもので、パタパタしたりしません。

この時期は13:00の時点であと1便しかないようです。

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寂しい出発案内。

松本空港は現在福岡便2往復、新千歳便1往復、神戸便1往復が設定され、季節運航で丘珠便や伊丹便も運航されています。

 

保安検査場内は座席も多く設置され、ゆったりと待つことができそうです。

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保安検査場内の様子を窓越しで見る。

保安検査場の反対側は売店とレストランです。

レストランに関してはこのお店しか空港近くにはありません。

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売店とレストラン。

レストラン城下町では蕎麦のほか、こんな感じの古典的カツカレーもいただけます。

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カツカレー。こんな感じの深皿カレーも最近はあまり見られない。ボリューム満点。

 

滑走路のすぐ近くを散歩できる!

さて、旅客ターミナルを出まして周辺を散策します。

松本空港の周辺は信州スカイパークという運動公園として整備されています。

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広大な敷地は公園として利用されている。

滑走路の近くにも通路があり、離発着時は 迫力ある景色を見ることができそうです。

自転車も借りることができるので、サイクリングも楽しめます。

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滑走路のすぐそばを歩くことができる。

ちょうど旅客ターミナルの反対側には小さく松本空港の滑走路が再現されています。

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滑走路の横に再現される小さな滑走路。

子供の頃来ていれば、自分が飛行機になり切って「ブーン」と言っていたに違いありません。

ちなみに滑走路の標示が黄色なのは 、降雪時の視界を考えてのことらしいです。

 

無料駐車場も完備、利用客も増加中

一時は定期旅客便消滅の危機にあった松本空港も、最近では神戸便が就航するなど利用客も右肩上がりに回復し始めています。

 

何よりも魅力なのは駐車場が無料で使用できることです。

 

 

以前は満車になることもありましたが、第二駐車場も整備されたので改善されてきています。

 

アクセスは松本駅からバスに乗るのが一般的ですが、最寄り駅は篠ノ井線村井駅で、徒歩46分です。

物好きな方は挑戦してみてください!

  なかなかに個性的な地方空港ですが、長野県にある日本一空に近い玄関口をご紹介しました。

筆者はまだこの空港をエアラインとして利用したことはありませんが、晴れていれば北アルプスの絶景を空から見られること間違いない無し!

機会があったら利用してみてください!

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筆者は自転車で訪れたが、松本駅からゆっくり走って1時間少々かかる。空港に自転車置き場はないので注意!

 

 

2020年、当ブログの最も読まれた記事は?

今年もご覧いただきありがとうございました!

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EF63の運転台。皆様も2020年の運転お疲れ様でした!

弊ブログは開設2年ちょっとですが、本格的に投稿し始めたのは今年になってからでして、こんな時期ですが以前より多くの方にご覧いただけるようになりました。

 

世間的には「人との繋がりが薄れがち」といわれた年でしたが、コメントをくださったり、記事を見て実際に訪れてくださったりと、ご覧いただいている方とのつながりを感じることができる1年でした。

おかげさまで筆者は今年、大変嬉しく書かせていただきました。

本当にありがとうございます。

 

引き続き、体力と時間が続く限り投稿していきたいと思います!

よろしくお願いいたします。

 

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2020年に入ってから多くのアクセスをいただいた。12月には累計6万pvを突破した。

今年、最も読まれた記事は?

今年最もご覧いただいた3記事をランキング形式でご紹介!筆者の率直な感想とその内容を見ていきます。ジャカジャン!

第3位「【乗車時間6時間超】飯田線を普通列車で全線走破する」

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飯田線の豊橋駅周辺の線路は名鉄と共用している。

ほぇ~これはですね、単に飯田線に全線乗車した時の乗車記なんですが、ありがたいことに鉄道コムさんでランキング第3位をいただいたんですよ…

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鉄道コムで3位をいただいた。ここまでくると1位をとってみたい気もしてくる。

いわゆる「バズった」タイプの記事でして、数日間でドカーンっとアクセスいただいた感じです。

 

飯田線は秘境駅区間だけではなくて、途中の風景も素晴らしいものがあります。

そして利用客も思ったよりも多く、住民に愛されている鉄道だと感じましたね~!

飯田線の車窓は意外と変化に富むので、乗車時間の割に苦痛さはなく、大変楽しい旅となりました!

 

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第2位「【貴重】651系特急「草津」、3列グリーン車に座る」

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651系の3列シート。「これぞグリーン車!」という充実した体験ができます!

意外や意外、確かに最初のアクセスも良かったんですが、検索から多くの方にお読みいただいている記事です。

 

JR東日本の3列グリーン車というと、最近は減少傾向で651系のほか、E653系、E655系「和」、E261系「サフィール踊り子」がありますが、JR東日本で純粋に「普通のグリーン車3列シート」の形状をしているのは651系だけかも。

 

651系は廃車も出てますし、国鉄車でないにしても老朽化していますから、乗車できるときに乗っておきたい車両です。

 

座ってみるとその快適性が良く分かります。

やっぱり今でも「タキシードボディーの凄いヤツ」です!

 

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第1位「【元グリーン個室が現役】長野電鉄スノーモンキーの見どころ2選」

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元グリーン個室をたった1000円で貸切ることができる。

この記事はもともと最初に「バズった」記事で、鉄道コムのほか小さなGoogle砲もいただいた上、現在まで連続してご覧いただいています。

 

これには筆者も納得……

私事ですが乗車したのは「卒論提出直後」。

大変だった卒論が終わったことよりも、正直初めての「バズり」を経験したことの方が嬉しかったのをよく覚えています(笑)

 

長野電鉄の特急「スノーモンキー」では、もともと成田エクスプレスとして使用していた車両が使われていて、現役当時からほとんど改造されていない「グリーン個室」を1室1000円という低価格で体験することができます。

 

筆者は一人で利用しましたが、少人数のグループ旅行にもおすすめです。

人気になってほしいですがあまり知られたくない、スノーモンキーの個室です!

 

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番外編:ホテルのレビュー記事のアクセスが増加

筆者は時々ホテルのレビュー記事や温泉、観光案内の記事も書いていますが、gotoトラベルがスタートしてからホテルのレビュー記事をご覧いただく機会が増えました。

 

特に最近ご覧いただいているのはビジネスホテル「ドーミーイン」のレビュー記事。

秋田方面に鉄道旅行をした際に利用した時のレビューで、これがメインだったわけでないのですが、ドーミーインが好きになるきっかけとなりました。

 

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gotoトラベル、現在は一時的に停止していますが、今後再開された際に備えてちょっとずつ宿泊施設のレビュー記事のラインナップを増やしていけたらと思います。

 

現在でもgotoトラベルキャンペーン以外に、自治体が地元住民向けに独自に割引を行うキャンペーンが数多く行われています。

 

こんな時期だからこそ「地元近くの泊ったことのないホテル」に泊まってみるのもありかもしれません。

逆に言えば「こんな時期でもなければできない発見」ができるチャンスが、意外と身近なところに転がっている可能性もあるのです。

 

来年はどんな旅になるでしょうか?

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185系はたびたび中央本線や篠ノ井線にも乗り入れていた。

今年もあと数時間…いろいろと失ったものに目が行きがちですが、例えば遠くに行けない代わりに地元の良さを再発見したり、オンラインで色々なことができるようになったり、と得たものも多かった年だったのではないかな~と思います。

 

来年の鉄道業界、まずはおそらく一大ニュースになるであろう185系の定期列車引退。

国鉄時代を知っていいる車両がまた一つ消えることになります。

185系、窓が開きますから今の時代に合っているような気がしますが、さすがに老朽化にはかなわないようです。

 

ムーンライトながらの運行も廃止されるという噂がありますし、徐々に鉄道旅の形態も変わっていくかもしれません。

 

暗いニュースがある一方で、通勤列車も特急列車も新車が続々登場しており、より快適で新しい楽しみ方ができるようになっているのも事実です。

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今年デビューを果たした「サフィール踊り子」。筆者はまだ試運転時しか見たことがないので是非乗車したいと思っている。

旅客需要が低下して寂しい部分もありますが、鉄道の貨物輸送が注目されたり、新幹線に荷物用の車両を作る計画が出たりと、「鉄道」に求められる役割は多くまだまだ捨てたものではありません。

 

上田電鉄では台風によって流された鉄道橋の復旧工事が進められていて、全線復旧へのカウントダウンが進んでいます!

住民の鉄道への思いも熱いのですが、上田市独自の方法で鉄道を守ろうとする取り組みはこれからの地方鉄道の存続のヒントになるかもしれません。

 

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来年は筆者も学生最後の年(にしたいです!)となりますが、今できることを楽しみ尽くしていきたいと思います。

 

2020年、色々な変化に対応してこられた皆様、本当にお疲れ様でした。

2021年の旅も発車時刻が近づいております。

それでは皆さん、良いお年を~!

 

 

 

 

 

高山まで結ぶはずだった?壮大な北アルプス横断計画【松本電鉄上高地線の謎②】

松本電鉄が「盲腸線」となっている謎

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ターミナル駅「新島々駅」は中途半端な位置にある。

前回、高額鉄道としてご紹介した「松本電鉄上高地線」

「上高地線」といっても上高地まではつながっていませんし、終着の「新島々駅」は「島々」という地名にもありません。

 

上高地線は中途半端な位置に終着駅があり、上高地などに行く人は終着駅でバスに乗り換える必要があります。

この路線もいわば盲腸線です。

 

今回は終着の新島々駅から先、かつて線路が続いていた跡を辿って「島々駅跡」を目指します。

そしてこの路線が建設された背景にある、壮大な計画を見ていきます!

 

前回↓

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上高地線に乗車!

新島々駅の先、島々駅跡に向かう

さて、新村駅から先、新島々駅方面はのどかな田園風景が広がります。

とちゅう段丘を登ったり降りたりしながら進みます。

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車窓からはのどかな田園風景が広がり、山が迫ってくると新島々駅に到着する。

新島々駅の手前にはこんな看板が…

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中部縦貫道(高速道路)の建設促進の看板。

これは何かというと、松本から高山、そして福井に通じる高速道路の計画で、松本周辺では「安房トンネル」だけが開通しています。

この看板の手前側が用地になっているようですが、開通はあと何十年先か分かりません。

 

終着の新島々駅に到着。

片方は留置線として使われているようで、基本的に片方のホームにしか営業列車は入りません。

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新島々駅に到着。

バスターミナルこそ大きいですが、終着駅にしてはずいぶんとこじんまりとしたホームです。

 

新島々バスターミナルは、上高地や乗鞍・白骨温泉方面のバスの乗り換え地として、本来ならば夏季は賑わいを見せます。

今年は便数も少なく、なおかつ今はオフシーズンなので乗鞍のスキー場などに行く限られたバスしか発着しません。

 

上高地も乗鞍の山頂付近も、マイカー規制がされているので公共交通機関でこれらの地へ行くためにはここでの乗り換えがほぼ必須になります。

 

新島々駅の先、「島々駅」までの廃線跡を歩く

ところでホームの先、新島々駅より高山側を覗くと、線路に終着駅の雰囲気はなく「まだまだ先もありますよー」と言っている感じがあります。

これはあやしい。

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新島々駅の先にはまだまだ線路が続いている。

怪しいので、この線路の先まで行ってみましょう。

新島々駅の先、かつて約1.5kmの島々駅まで線路がつながっていたのですが、利用者数の減少と土砂崩れの影響で廃線になりました。

 

100mくらいでしょうか、新島々駅から先続いていて、時々中途半端な架線柱の更新を見ることができます。なんだこれは…

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新島々駅の先の線路は留置線として使われていたこともあるらしい。

途中から線路がはがされていて、農道のようにつながっています。

これは間違いなく廃線跡の雰囲気。

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しばらく廃線跡が続く。

しばらく連続して廃線跡が見られます。

架線柱が電柱と思われる木造の柱がいたるところに残っています。

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架線柱か電柱の跡?

途中では、ここが廃線跡であることを決定づける大きな遺構が見られます。

鉄橋の跡です…

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鉄橋の跡も残る。

しかし、一区画だけ完全に跡形もない部分があります。

この部分が土砂崩れの被害を受けた場所と思われます。

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一区画だけ線路の跡の雰囲気がないが、ここが土砂崩れの跡だと考えられる。

かつての終点、島々駅の跡に近づくと廃線跡は不明瞭になります。

線路跡が国道158号に転用されているためです。

 

かつて駅舎があったと思われる場所に到着。

確かに不自然に空き地があります。

道路が線路とホームの跡で、空き地は駅舎と駅前の広場の跡と考えられます。

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かつて駅舎があったと思われる空き地が駅舎跡、道路がホーム跡である。駅舎があったころの写真にも左手の「山麓島々館」が写っているのでほぼこの場所で間違いないだろう。

「山麓島々館」と書かれた建物には面影が残ります。

看板に注目すると、かつてのホーム側に(今では道路と平行に)看板が並んでいます。

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道路と平行に掲げられている看板。

空き地の反対側は、当時のメインルートだった国道158号の旧道に面しています。

そちら側にも看板があり、当時ここに「島々駅」があったことが分かります。

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当時の駅前通り側にある看板。「しましま」駅と書いてある。

看板に書かれている観光地までの所要時間は現在の所要時間の約2倍…

改良が進んだことが分かりますね~

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現在の主要観光地までの所要時間。

駅の向かいにはかつてバスの転換所があった跡がそのまま残っています。

この駅前のスペースが狭い(新島々駅にバスターミナルを作った方が広いし便利だった)ことも、当駅が廃止された理由の一つのようです。

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バスの待合所も残っているが、新島々駅のバスターミナルより圧倒的に狭い。

かつてのターミナルにしても狭い島々駅。

この集落は「島々」ではなく「前淵」という別の集落です。

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かつて商店が並んでいた気配があるが、現在はほぼ閉店している。

島々という地名は、かつて上高地までのアクセスとして使われていた「徳本峠(とくごうとうげ)」の麓にある集落の名前ですが、そのブランドから名前を取って「島々駅」と名付けたとかなんとか…

 

新島々駅の前にはかつての島々駅の駅舎を、一部元の部品を使用して再現されていますが、こちらも廃墟状態で取り壊されるという噂もあります。

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新島々駅の前にある島々駅を再現した建築物。かつて観光案内所として使われたそうだが、現在は全く使用されていない。もったいない。

「盲腸線」の謎

上高地線はもともと松本ー高山を結ぶ計画だった

そもそもなぜ「新島々」や「島々」駅という中途半端な場所に終着駅があるのでしょうか。

これは結果的に「松本から高山までの鉄道の一部」が開業しているからなのです。

 

大正11年の鉄道敷設法に記された予定線の第59号には…

「長野県松本ヨリ岐阜県高山ニ至ル鉄道」

と記されています。

 

これはおおまかに松本から島々を経て平湯へ、そして高山へと至る、現在の国道158号に沿って北アルプスを横断するルートを通ることになります。

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新島々駅と島々駅、建設予定だった「龍島」の位置関係。

筑摩鉄道は大正5年に松本ー龍島間の免許を得て、大正10年に新村駅まで、大正11年には島々駅まで開業しています。

龍島とは、それこそ「島々」集落の向かい側にあるエリアで、近くに当時の上高地の玄関口(徳本峠の入口)がありますから、なんとなく許可される理由も分かります。

 

「島々ー龍島間は建設費の増大や利用が見込めなかったので、とりあえず島々まで開業した」という説が濃厚で、確かに島々より先は地形が急峻なので理解できます。

 

一方別のルートで建設しようとした動きもありました。

松本の南側、木曽地域の「開田村誌」には、建設が進まない松本ー高山の路線の代わりに、中央線木曽福島駅と高山本線久々野駅を結ぶ「信飛鉄道」というこれまた大胆な代替案を提唱したそうですが、残念ながら却下された旨が書かれています。

 

しかし、その後も建設が進むことはなく、現在に至ります。

出ては消える延伸計画と立ちはだかる壁

延伸計画①「信富鉄道」

1984年に開業した国鉄神岡線と、松本電鉄上高地線を繋げて松本から富山まで直通させるという計画です。

 

厳密には初期の松本ー高山間のルートを変更して、平湯から現在の新穂高温泉を経由して神岡に至るという代替案と、その後神岡線開業時に住民によって起こされた運動と、2回検討されましたが、どちらも計画として動くことはありませんでした。

 

現在は国鉄神岡線も、その後に受け継がれた第三セクターも廃止されてしまいましたが、「奥飛騨温泉口」駅で「まぼろしの信飛鉄道」としてこの計画が紹介されています。

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旧国鉄神岡線から受け継いだ神岡鉄道神岡線。Kone from jawp - ja:file:神岡鉄道KM-100形.jpg on jawp, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1420444による
延伸計画②「上高地登山鉄道」

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上高地河童橋付近の撮影スポット。筆者はシーズン最後(11月)の午後が空いていておすすめである。

これは近年まで松本市内で提案されていたもので、国道の安房トンネル建設以前に深刻だった渋滞を解消するため、上高地の手前にある沢渡(さわんど・マイカーできた人が専用のバスに乗り換える拠点)から上高地まで直線的なトンネルを作って鉄道を走られるという計画でした。

 

ところがこの計画、実現しても新島々駅ー沢渡間でバスや車に乗り換えなければなりません。

 

そこで提案されたのが、「新島々駅から大深度地下で上高地までトンネルでつなぐ」というもの。

計画には「環境にやさしい」とか「のんびり汽車旅」などど記述されていますが、果たしてどうなのか……

 

その後安房トンネルが開通上高地へ向かう新釜トンネルの開通などで国道の渋滞が解消、当初の目的は渋滞解消だったので下火になっていきました。

www.kamikouchi.info

 

おまけ「国道158号と中部縦貫道」

鉄道はほとんど計画が頓挫していますが、同区間を結ぶ高速道路「中部縦貫道」が、一応計画がされています。

松本ー高山間の国道は交通量が多いのにも関わらず「酷道」で、幾たびもの改良がなされてきましたが、現在でも難所です。

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国道158号には大型バスのすれ違いに苦戦するほどの狭いトンネルや、ダムの天端を走る道路が存在する。

2020年現在、松本から島々の手前「波田IC」までの建設が整備計画に入り建設が進む予定です。

一方それ以外の区間は建設のめどが立たず、現道を改良して対応する可能性もあります。

www.pref.nagano.lg.jp

なぜ計画は頓挫するのか…

建設が進まなかったのは、言うまでもなく地形が急峻であったことに加え、大変もろい地質で建設が困難であるからです。

地質図というどんな地質が広がっているのかを示す地図を見ると…

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「松本から高山に至る鉄道」の建設予定地周辺には活断層や活火山、温泉による変質が連続する大変危険で脆い地質となっている。

 

黒で強調している部分が、計画路線に平行する国道(白線)の近くにある活断層です。

この辺りには活断層の中でも大きなものが通っていて、近くでは温泉も湧出しています。地層がグサグサなんですよ…

そして長野県と岐阜県の県境、現在の安房トンネルには活火山が聳えています。

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当然活発な地殻の運動があることの恩恵もあるわけで、温泉を楽しむことができるのもその一例。写真は上高地手前にある秘湯「坂巻温泉」の露天風呂。

トンネルは地質が固ければ固い方が建設しやすいので、こういう「グサグサ」の地帯にトンネルを通すのはものすごく難しいのです。

なおかつ火山のガスの危険とも隣り合わせ…北アルプスの高い山々の存在よりも、地質上の理由の方が大きいような気がします。

 

現に安房トンネル採掘の際は、火山のガスが噴き出し、作業員4人が立ったまま亡くなるという大惨事になったことがありました。

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建設される予定だった安房峠道路の橋脚。水蒸気爆発事故でこの橋脚は使われなくなり、現在の新ルートに変更になっている。

道路も早く改善してほしいですが、今後もいくつもの困難が待っていると思われます。

 

まとめ

以上、松本電鉄上高地線のご紹介でした。

1回目は高額鉄道、2回目は盲腸線の謎という2つの側面を見ていきました。

 

こういう地方路線って廃止されがちですが、現在でも運行されているという点でも面白いですね~

最近では利用者もわずかですが増加傾向にあります。

今後上高地線がどのような変貌を遂げるのか期待して、このシリーズを閉めようと思います。

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松本駅に到着する復刻塗装の車両。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高額運賃と噂の地方私鉄に乗車する…【松本電鉄上高地線の謎①】

松本駅に乗り入れる地方私鉄「上高地線」

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松本電鉄上高地線。かつて新島々駅よりはるか先、高山まで通じる計画であった。

松本駅と新島々駅の14.4kmを結ぶ「松本電鉄上高地線」

「上高地」という名前がついている割には「上高地」までは行かず、島々の集落からは程遠い場所に終点の「新島々駅」があるという少し変わった路線です。

 

この時点でなんだか訳ありな気がしますが…

今回はそんな「謎」の多い上高地線に乗車していきます!

 

 

地元でも「高額」と噂される気になる上高地線の運賃は?

駅の案内では「松本電鉄上高地線」とありますが、現在は「アルピコ交通」が上高地線を所有しています。

松本電気鉄道が2007年に経営破綻、その後の経営再建で統合などを行い「アルピコ交通」と社名を変え、現在に至ります。

 

経営破綻をするくらいには上高地線の乗車人員は減少傾向ですが、近年では少し増加傾向になっています。

「アルピコ交通」は「松本鉄道上高地線」と公称していますがこの呼び方は定着しておらず、駅の案内では「松本電鉄上高地線」「上高地線」と呼ばれています。

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上高地線の時刻表と運賃表。日中は40分間隔で運転されるが、なかなかの高額運賃である。

経営的に苦しいからか、運賃が非常に高額なことが特徴です。

14km先の終点の新島々駅まで乗車すると、なんと710円!

初乗りはそうでもないですが特に後半の伸びが素晴らしい…

 

同じ距離で比較すると、東京近辺の高額鉄道として知られる北総線の~14km580円(~17km630円)と比較してもはるかに高い運賃体系です。

 

筆者はこの路線の沿線にお住いの中学生や高校生に話を聞いたことがありますが…

「とても高くて乗れない」「遠いけれど大糸線を利用している」「車か自転車しか使わないので乗ったことがない」とあまり利用されていない様子でした。

多分これがリアルな声なんですよね~

 

筆者は1日乗車券を購入しましたが、こちらは1420円。

新島々駅と松本駅を往復すれば元が取れます。

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上高地線の1日乗車券。

上高地線に乗車する!

松本駅から上高地線のホームに進みます。

松本駅では大糸線と上高地線は離れたホームから発着します。

これは大糸線がかつて「信濃鉄道」だった頃の名残ですね~要は私鉄のホームなのです。

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上高地線は跨線橋を渡った先、7番線から発着する。

上高地線はかつて、国鉄線からの直通列車も運行された実績がありますが、現在は直接線路はつながっていないようです。

 

車両は京王井の頭線の旧3000形の中間車を改造したものが使わています。

東京近辺にお住いの方なら懐かしいと感じるかもしれません。

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上高地線3000系電車。

京王が車両を改造したうえで譲渡するシステムだったので、地方私鉄にとても人気があったのですが、最近では全国的には老朽化で少しずつ数が減ってきている車両です。

 

基本的にワンマン運転の2両編成で、各車両の真ん中のドアから乗り一番前のドアから降ります。

内装は現役時代とそこまで違いはありませんが、モニターや運賃箱が設置されています。

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3000系の車内と網棚の上に設置される観光用の案内モニター。トレインビジョンではない。

先頭部分の機器類を見ていると、座席下のヒーターの名残があります。

なんとも器用な改造だな~と思いますね。

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運賃箱の隣の機器の下には座席のヒーターの跡が残っている。

車内はなんとWi-Fi完備!

流石のアルピコ交通、高速バスを運行しているだけあってこういう設備には強いんですね~

こういうサービスはJRの普通列車でも普及させてほしいと個人的には思います。

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Wi-Fi完備。

途中しばらくは住宅街の中を走行します。

駅間距離もとても短いのでバスに乗っているような感覚です。

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住宅街を抜けていく。

途中の北新(きたにい)・松本大学前で大半の人が降りていきました。

ハイシーズンは上高地までの観光客がメインですが、オフシーズンなので地元利用が多い印象。

沿線には中学・高校や大学があるので、平日は通学客の利用が上高地線のメインなのかもしれません…

新村駅で途中下車

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新村駅。なかなか味のあるホームである。

時間的には復路に寄ったのですが、途中新村(にいむら)駅で下車してみました。

新村駅は車庫のある比較的大きな駅で、松本電鉄の前身である筑摩鉄道の本社がありました。

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駅前に残る筑摩鉄道の社章。

構内には貨物用のホームと思われる部分が残っています。

木造の詰所も残っていてなかなかに昭和の雰囲気が残っていますね。

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木造の詰所と貨物ホームの跡。

車庫を覗いてみると何やら軽トラを改造したと思われる個性的な保線車両が…

大正時代にアメリカから輸入されたED301電気機関車(もともと大糸線の前身信濃鉄道向けに導入され、各所で活躍の後松本電鉄へ…2007年から除籍され静態保存されている)も見られます。

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軽トラを保線用に改造した「迷列車」に大正生まれの電気機関車、木造貨車も残っている。

「青ガエル」こと元東急5000系や「国鉄電車の祖」元デ968(現ハニフ1)も保存されていましたが、それぞれ赤城高原、鉄道博物館に移設されています。

上高地線自体、1921年開業とかなり歴史の深い路線なので、価値の高いものも残っていたのかもしれません。

 

夕方に訪れたので転轍機標識が光り始めて雰囲気が良くなってきました。

鉄道の分岐器がどちらの方向に繋がっているかを示している標識で、ローカル線ではしばしば見かけられます。

 

この「S」のマークは「スプリングポイント」の意味で、分岐する方向が基本的に固定されているタイプのものです。

分岐していない方向から列車が来た場合、列車自身がポイントを押して一時的に反対方向に切り替わりますが、一定時間が経つと、ばねを使って元の方向に戻ります。

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発条転轍機標識が印象的な新村駅。

 新村駅は上り列車と下り列車が行き違いを行う駅になっています。

基本的に左側通行で、分岐の向きが決まっているのでこういう分岐器が使われているのですね~

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左側からは奥に松本方面の列車、右側からは手前に新島々駅方面の列車が発車する。

2017年まで開業当時の旧駅舎が残存していたそうですが、現在は新しい駅舎に変わっています。

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新村駅の新駅舎。筑摩鉄道時代の案内図のレプリカも展示されている。かつては松本から浅間温泉まで路面電車が運行されていたが、現在はバス転換されている。

 

この地図、見づらいですが松本から浅間温泉まで結んでいた路線が書いてあります。

当時は「松本電鉄浅間線」という路面電車が走っていたのです。

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浅間温泉駅の跡には案内板が書かれている。軌道跡は道路に転用され、現在ではバス転換されている。

この「浅間線」も壮大な計画が持ち上がったことがありまして、峠を越えて現在の上田電鉄、廃止された「青木線」と直通して上田までつなげるという……

当時の鉄道の計画は夢があって、実現可能性は置いておいて楽しいものがあります。

 

新村駅近くには筑摩鉄道の創始者である「上條信」のモニュメントが置かれています。

現在のアルピコグループの始まりはこの人からといっても過言ではありません。

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筑摩鉄道の創始者「上條信」のモニュメント。

 

次回予告

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松本電鉄は自前の除雪車も所持している。

今回は年末スペシャル…ということで連載でお送りします。

 

さて、次回は松本電鉄の終点、新島々駅へ向かいます。

「新」の文字があるだけあって、かつては新島々駅の先には島々駅が存在していました。

 

廃線区間を追うとともに、「なぜこんな中途半端」な駅で鉄道が終わっているのか、背後にある壮大な計画とその真相に迫ります!

そして出ては消えていったこれまた壮大な延伸計画についても見ていきます!