toremorの旅手帳

鉄道と旅行と温泉と。大学生の放浪の様子をご覧ください。

【3月末運転再開】全線復旧間近の上田電鉄に乗る!

台風被害を受けた上田電鉄

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城下駅で折り返す上田電鉄。この先上田駅までの間の千曲川橋梁の工事が進められている。

2019年の台風19号で橋梁が流失した上田電鉄

当初は「存続が危うい」という声もありましたが、橋梁をなおし、全線で復旧することになりました。

 

そしていよいよ2021年3月28日、上田電鉄は全線での運転を再開する見通しです。

今回は全線復旧直前の上田電鉄に乗車します!

 

台風被害後に利用者数は大幅減

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台風で流失した千曲川橋梁。昨年撮影。

上田電鉄は今年度の利用客数が昨年度から14%ほど落ち込む深刻な状況となっています。

 

台風被害によって橋梁の一部が流失した上田電鉄では、上田ー城下間(一駅の区間)で不通となり、バスによる代行輸送が行われています。

 

不通となっている区間は市街地が広がっているため、道路の混雑が激しい区間を代行バスが通らなくてはならず、バスによる所要時間の増加は避けられません。

被災前の通常ダイヤから最大で20分以上も所要時間が増えているのが現状です。

 

代行バスによる所要時間の増加・乗り換えの影響と、感染症拡大のよる利用者数の減少が重なったため利用者数増加から一転、苦しい状況になったと考えられます。

 

全線復旧はこの状況を脱するために最も大切な取り組みの一つなのです。

 

一致団結した「復旧」への想い

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車内の中吊り広告にも存続のプロジェクトが掲げられている。

実は何回も存続の危機を迎えている「別所線」。

筆者もあまり感情移入的な物語は好きではありませんが、別所線の存続への想いは上田電鉄、住民、自治体全てから感じられます。

 

台風で流失した千曲川橋梁の所有権を「上田市」に移すことで「交付税」を使って迅速に橋梁の工事を行ったり、車内や駅にメッセージを貼ったり、保存車両を城下駅の使わないホームで展示したりと、色々とアイデアを出し合って存続への機運を高めました。

 

台風以前から、「将来の高齢化社会を見据えて公共交通機関を利用して残そう」とする取り組みを、上田市が中心となってやっていたことも良い影響を与えていたのかもしれません。

 

利用者も運営者も主体的に存続に向けて団結している姿勢は、今後の公共交通機関の在り方を考える上でも一つのモデルケースになり得ると思います。

 

www.toremor.work

 

上田電鉄別所線に乗車する

上田電鉄別所線、「赤い橋」の今

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7月に訪れた際に撮影した別所線のホーム。現在は立ち入ることができない。

上田電鉄別所線の上田駅は、高架の1面1線の駅となっています。

前回訪問時はホームが広場として公開されていましたが、運転再開の準備のためか、現在は立ち入ることはできません。

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ホームの入口はふさがれているが、きっぷうりばは営業中。グッズ類も販売されている。

入口には運転再開のポスターや代行バスの案内などが貼られています。

きっぷうりばは通常営業をしていて、グッズ類の販売も行っています。

今月売られていた「千曲川橋梁復興記念タオル」はもうすでに売り切れているようです。

 

代行バスは上田駅温泉口から出発します。

一つ先の城下駅までが不通区間で、バスで約7~8分かかります。

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上田駅温泉口から出発する代行バス。

城下駅に別所温泉からの列車が入線する時間に合わせてこのバスは出るので、折り返し列車の城下駅出発時刻よりだいぶ早めに出発します。

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別所線別所温泉方面の時刻表。https://www.uedadentetsu.com/timetable/timetable_besshosen.htmlより。

途中で千曲川を渡ります。

道路の橋から「千曲川橋梁」の様子を見ることができ、7月と比べると橋が復旧していることが分かります。

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上:2020年7月。

下:2021年2月。

流失部分が再建されている。

増水期は工事が中断され、昨年11月から引き続き再開されました。

工事はほぼ最終段階に入っているようです。本当にあと少し!

 

代行バスは途中で住宅街に入り、上田駅の一つお隣の「城下駅」に到着です。

一時的にターミナル駅となっているこの駅には駅員がきっぷの販売や案内を行っています。

おそらくこの光景も全線復旧とともに姿を消すことになると思います。

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城下駅に臨時で設置されている詰所。この駅で列車からすべての人が降りる光景もあ地少し。

臨時で設置されている車止めが印象的です。

このカーブの先に、あの赤い千曲川橋梁があります。

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臨時で設置されている車止め。その先にカーブがあり、赤い橋が見えている。

反対側に回ってパシャリ。

バスがついてから出発まで時間があるので、こんな感じにブラブラできるのです。

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駅の奥に臨時の車止めが見える。

この駅にも熱いメッセージが貼られています。

メッセージを読んでいると、利用者側も運営者側も応援を贈りあっているような、温かい感じが伝わってきます。

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駅に貼られているメッセージ。

利用者促進の取り組みを見る

列車が出発するとしばらく住宅街を走っていきます。

休日だからか、地元の方が多く乗られています。

 

上田電鉄では「乗って残そう」を合言葉に、台風前から利用者を促進する取り組みが行われています。

途中駅にもその取り組みの一部が現れています。

 

こちらは大学前駅。

長野大学の前に駅があるのですが、駅前はパークアンドライドの駐車場になっています。

利用料金は無料で、しっかりとした広さがあり使い勝手が良さそうです。

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大学前駅のパークアンドライド駐車場。この規模の無料駐車スペースは魅力がある。

地方私鉄のパークアンドライドって、この規模の駐車スペースが確保できなかったり駐車場が駅から離れていたりしますが、この駅は駅の目の前にスペースがあります。

 

駐車場は最初砂利だったようですが、現在ではコンクリートで舗装されています。

このような細かな設備投資が意外と利用客に効果がある気がします。

 

下之郷駅で下車

急勾配や急カーブを繰り返して、下之郷駅に着きました。

下之郷駅は日中、対向列車と行き違いをする拠点駅で、車両基地もあります。

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手前の線路に着目すると、急な勾配であることが分かる。

かつてはこの駅から「西丸子線」という路線が分岐していました。

当時(上田丸子電鉄)のホームは現在でも残されています。

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上田丸子電鉄下之郷駅。廃線跡は留置線となっている。

上田電鉄の前身の時代、最盛期には別所線に加えて青木線、丸子線、西丸子線、真田傍陽(さなだそえひ)線が走っており、広大な路線網を有していました。

養蚕が盛んな地域だった頃の名残ですね~

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上田城の堀の下には真田傍陽線の廃線跡があり、ホームも保存されている。

青木線や丸子線は、峠を越えて松本まで結ぶという壮大な計画がありましたが、着工されることはありませんでした。

 

ところで、この駅の最寄りには生島足島(いくしまたるしま)神社という変わった名前の神社があります。

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「いくしまたるしま」と読む。神の名前からとっている。

国弊中社だったとのことで、真ん中のランク(?)の神社らしいですが、「真田昌幸などの武将が神領を寄進し社殿を再建」「武田信玄直筆の書が残る」などかなり大事にされていたようです。

 

筆者は神社について詳しくないので雑で申し訳ありませんが、何とも不思議な境内になっています。まるで堀に囲まれたお城みたい…

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お堀のような境内があるが、これは全国的にも貴重らしい。

この池の中にある神社の造りは、なんと日本最古の形式なんだそうです。

この真ん中にある島に内殿があり、その土間がご神体とのこと。

 

奥には歌舞伎に使われた館も残っています。

思ったより興味深いところでした。

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歌舞伎に使われた館。

終点、別所温泉へ

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下之郷駅に停車していた試運転列車。

下之郷駅から再び上田電鉄に乗車し、終点まで向かいます。

徐々にですが坂を上ってきていることが後面展望をすると分かります。

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別所線はのどかな田園風景の中を走る。

 


八木沢駅に到着。

ピンボケですがなかなか味のある駅で、ミュージックビデオの撮影なんかに使われたこともあるようです。

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八木沢駅。

坂を登り切ると別所温泉駅に到着です。

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別所温泉駅に到着。向かいの保存車両は「丸窓電車」と呼ばれたかつてこの路線を走行していた車両。

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別所温泉駅に到着。

先ほどから乗車してきたこの車両ですが、丸い窓がデザインされています。

この丸い窓、かつて上田電鉄(当時は上田温泉電軌)が所有していた「丸窓電車」の車両のデザインをイメージしたものです。

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先ほどから乗車している車両。

「丸窓電車」はなんと1両も解体されず、全てが保存車両となっています。

別所温泉駅にも展示されています。

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「丸窓電車」の愛称で親しまれた旧型車両。側面の丸い窓にご注目。

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上:「丸窓電車」の車内の様子。

下:現在の丸窓デザインの車内の様子。

確かに雰囲気は現在でも受け継がれていますね~

こんな感じで丸窓から丸窓電車を覗くこともできます。

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丸窓から丸窓電車を覗く!

別所温泉駅は以前にもご紹介しましたが、大変味のある駅です。

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水色を基調とした華やかなデザインの駅舎である。

夜に訪れるとまた違った駅舎の良さを感じることもできます。

再塗装されているので古さや陳腐さは感じませんし、おしゃれな感じがあります。

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夜の別所温泉駅。

この駅からは温泉街だけでなく、北向観音などの神社仏閣へ歩いていくことができます。

この一帯は「信州の鎌倉」と呼ばれ、ちょっと大人な旅をするのにふさわしい場所です。

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別所温泉の駅前。落ち着いた雰囲気の街並みが迎えてくれる。

落ち着いたころに別所線に乗って静かに大人な旅をするのも、おすすめですよ~

 

 

 

【国鉄末期とJR初期】185系と215系を乗り継ぐ中央線の旅

2021年のダイヤ改正で注目される185系と215系

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松本駅に入線する臨時特急「はまかいじ」。

2021年のダイヤ改正では、JR東日本の定期列車として走る最後の国鉄型特急車両、185系の定期運用が消滅することが発表されています。

もともと東海道線の特急「踊り子」に使用されていた185系は、かつて特急「あずさ」に使用されていた257系にバトンを渡しつつある状況です。

 

また、東海道系統の通勤ライナーは特急に格上げされ、「ライナー」用の車両として開発された全車2階建ての215系も運用が無くなります。

 

一見中央線系統に関係なさそうな車両ですが、数年前までは中央線でどちらの車両も走っていて、休日にはこの2形式を中央線内で乗り換えることもできました。

 

今回は、実際に185系と215系を乗り継いで松本から新宿まで移動した2018年のある夏の休日をご紹介します…!

 

 

185系が中央線・篠ノ井線を疾走!臨時特急「はまかいじ」

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松本駅に停車中の臨時特急「はまかいじ」。

2019年の1月まで、松本ー八王子ー横浜間には臨時特急「はまかいじ」の運転がありました。

停車駅は松本を出ると、塩尻、岡谷、下諏訪、上諏訪、茅野、富士見、小淵沢、韮崎、甲府、石和温泉、山梨市、塩山、勝沼ぶどう郷、大月、八王子と、八王子から横浜線に入って、橋本、町田、新横浜、横浜でした。

ほぼ急行列車並みの停車駅で、「かいじ」という名前が付きながら長野県の松本まで走っていたんですね~。

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松本駅にも休日には臨時列車が多く走っていた。現在では松本駅で「横浜」の文字が見られることもなくなった。

臨時列車ではありましたがほぼ毎週末運転されていたので、当時は特に珍しさはなく鉄道ファンの姿もまばらでした。

使用車両は185系の6両編成、全車普通車でした。

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松本駅の留置線に停車中の185系。

「はまかいじ」に乗る

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松本駅からはまかいじに乗車。

では実際に松本駅から乗車していきます。

松本駅に飾られているこの提灯…「松本ぼんぼん」という、道路を封鎖して踊りながらパレードする大きなお祭りに際して飾られているものです。

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特急「はまかいじ」の行先表示。

当然の如く幕式の行先表示ですが、やっぱりこう行先が「くるくる」と表示されるまでの時間がとても夢がありますね~

 

当時ブログを書くなんて微塵も思っていなかったので、テキトーな写真が多いですが車内の様子を見ていきます。

 

なんというか空気が185系という感じ。

個人的には国鉄型特急車両の車内の雰囲気とはちょっと違う、この車両オリジナルの雰囲気がある気がします。

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185系の車内。ブラインドとカーテンの両方が設置されているのは珍しいのではないか。

少々マニアックな話をしますと、座席はR55型という国鉄車両のリニューアルではおなじみの座席が配置されています。

まだまだ座席の下に足が延ばせる時代になるのは先のことで、「ムーンライトながら」などでこのシートに苦しめられた方も少なくないかもしれません。

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座席はR55型。

遅延して出発したため、松本駅を出た途端に猛加速。

鉄道唱歌のオルゴールと肉声放送でしたが、だんだんと唸るモーター音で放送が聞こえなくなります。

ほぼトップスピードのMT54の爆音モーター音は篠ノ井線でも堪能できました。

 

 

 

当時は多分単純に「185系に乗車した記録が欲しかった」若造でしたので、こんな感じで窓が開くところがあるとか、戸袋窓があるとかで満足していた気がします。

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窓が開いたり、戸袋窓があることもこの車両の特徴である。

車両の号数がプレートで入っていたり、水色の表示板で「自由席」と表記されているのも、現在では貴重なものになりました。

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伊豆方面の広告が旅情を誘う。

途中駅で189系の臨時特急「あずさ」とすれ違いました。

中央本線方面も数年前まで国鉄車両はそこそこ臨時で残っていたんですね~

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189系「あずさ」と交換。

何を思ったのか指定席ではなく、自由席に乗ってしまったので「はまかいじ」と印字されたきっぷは筆者のきっぷ入れに保存されていません。

もったいない感じがありますが、その後小淵沢までの自由席という存在が貴重なものになりましたので、これで良かったのかも…?

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当時使用したきっぷ。

何故か洗面所の写真を撮って、小淵沢駅で下車しました。

小淵沢駅から、また臨時列車に乗り換えです。

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185系の洗面台。

おまけ:長野車両センターで185系の運転席を楽しむ

余談ですがその後少しずつ185系の廃車が進み、長野車両センター公開時には解体前の先頭車両の中に入ることができました。

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すでに国鉄特急のシンボルマークが外されているが、幕は「踊り子」の表示になっていた。

車内は電気が通っていませんでしたが、運転席に入ることができました。

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185系解体前の運転席と車内。

なんだか廃車にするのはもったいないな~と感じるレベルで、最後まで綺麗に使われていた様子が読み取れます。

その後この車両は重機の餌に…

215系で走る中央線最後の長距離普通列車「ホリデー快速ビューやまなし」

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良く見ると先頭にDDLの文字が書かれている。

ホリデー快速ビューやまなしは、山梨県の小淵沢から新宿までを結ぶ長距離の快速列車です。

「かいじ」より長い区間を走行する列車で、登山客や観光客には特急料金なしで乗れることから人気でした。

 

ご存知の方も多いかもしれませんが、215系は着席通勤が流行っていた時代に、オール2階建て車両で座席定員を増やした車両です。

「▶▶◣」と書かれた先頭のデザイン、DDL(Double Decker Linerの略称)の文字をかたどったものです。

 

座席定員は増えたものの、ドア数が2しかないので乗降に時間がかかり、活躍の場が縮小傾向に。

最近ではもっぱら東海道線の通勤ライナーと、この中央本線のホリデー快速ビューやまなしにしか使われませんでした。

 

ただこの車両、この「ホリデー快速ビューやまなし」にはずいぶんと向いている車両でした。

山梨県から(特に大月から)はごった返すくらいの客を乗せますが、基本的に八王子や新宿近辺まで降車する客は少数。

人の流れがある程度固定化されているので、乗降に時間がかかるというデメリットもそこまで問題になりませんでした。

ホリデー快速ビューやまなしのグリーン車に乗る

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小淵沢駅から乗車する215系ホリデー快速ビューやまなし号。小淵沢駅からも多くの乗車があるが、座席にはずいぶんと余裕があった。

小淵沢駅からは当駅始発の臨時列車「ホリデー快速ビューやまなし」に乗車します。

この列車に使われる車両は、オール2階建て車両の215系です。

 

今考えれば中央本線に東海道線系統の車両がバンバン走っている面白い時期でしたね~。

 筆者は終点まで乗るので、ゆとりのグリーン車に乗車します。

この列車、自由席は主に大月近辺からの観光客、指定席は観光客と18きっぱーで混雑しますが、グリーン車は価格が高く特急料金とあまり変わらないので、物好きしか使わない傾向にあり、普段から空いていました。

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2階席から見下ろす景色は中央線ではなかなか味わえない。

2階席にはちらほらお客さんが乗っていましたが、1階席は0人……。

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215系グリーン車の1階席。

215系には1階席、2階席ともに網棚がないという特徴があります。

そこまで遠距離の移動をするコンセプトで造られていないので、問題はなかったのだと思います。

どことなくJR初期っぽさがにじみ出ていますね~

 

ドア付近に来てみると、普通列車のグリーン車である感じがとても良く分かります。

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普通列車のグリーン車に書かれている案内表示がこの車両にも貼られている。

 車端部には平屋席も設けられていて、他にお客さんがいなければ個室気分を味わうことができます。

こちらには網棚があるので、大きな荷物があるときはこちらの方が便利かも…

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車端部は平屋席となっている。

この列車、10両編成なんですがモーターが先頭2両と後部2両に偏って配置させているため、発車時には客車のように強めのショックを受けます。

これが215系の醍醐味だったんですよね~

 

途中まで2階席で景色を眺めていました。

普段見慣れない位置から見るのでなかなか楽しかったですね~

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韮崎付近の車窓。

甲府を過ぎ、途中の甲斐大和で特急列車を先に通します。

確か新宿まで1本しか抜かれなかった記憶があります…

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甲斐大和駅で特急列車の通過待ち。

その後も山梨県内を淡々と走行していきます。

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個人的にはこの列車の見どころは東京に入ってからもあると思います。

普段、大月以西から立川以東へ直通する普通列車はこの列車のほかにはなく、かつて走っていた中央本線の長距離普通列車の面影を最後に残した存在ともいえます。

 

中央線の長距離普通列車は、新宿を出ると立川(古くはこの駅も通過)、八王子まで止まりませんでしたが、同区間はこの列車も三鷹、立川、八王子にしか止まりません。

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立川より東を走行する215系は、長距離普通列車の面影が残る。座席はR61型で211系のグリーン車と同形式。

そうこうしているうちに終点、新宿に到着です。

ホームはずいぶんと逸れて、山手貨物線方面へ。

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終点新宿に到着。

向かいには今は無きスーパービュー踊り子の姿が……

JR初期の面々が顔を合わせました。

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反対ホームにはスーパービュー踊り子が到着。

居場所に苦労しながら山手線での運用実績もあるという215系。

今度のダイヤ改正で本当に居場所がなくなってしまうかもしれませんが、思い出としてとどめておこうと思います。

 

そして185系、良くここまで残ったな~と思いますが、最後まで活躍を遠くから見守りたいですね~

豪華な建物で朝食を…松本丸の内ホテルに宿泊

松本城近くの豪華な建物の謎

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松本城の前に立派な擬洋風建築は「丸の内ホテル」のレストラン。

お土産屋さんが並ぶ松本城の目の前の通りで、ひと際目を引くこの大きな西洋風の建築…

筆者は松本に住んでいますが、この建物の中はいったいどうなっているのか前々から気になっておりました。

 

そこでgotoトラベルキャンペーン(少し言葉に懐かしさを感じますが…)を使って、一人この建物を持つ松本丸の内ホテルに試しに泊まってみることにしました……。

 

 

落ち着いた内装の客室

松本の「丸の内ホテル」もお城の近くにあり、松本城から約100mほどに位置しています。

入口は松本城の正面から続く大名町通りより、一本入ったところにあります。

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丸の内ホテルのエントランスは通りから一本それた場所にある。

ホテルのマークはお城をイメージしているのでしょうか。

訪問時はgotoトラベルで安くなっていたせいか、筆者は「普通のビジネスホテルかな~」と思っていましたが、エントランスからあふれる高級感に少し戸惑いながら進みます。

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ホテルのフロント。写真右奥の白い扉で先ほどの擬洋風建築の建物とつながっている。

予約していた部屋は4階にあるようです。

エレベーターを出ると階数の書いてある鏡があります。

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エレベーターを降りて客室へ。

廊下は高級ホテルにありがちで、意外と暗いのでご注意を。

雰囲気は良いのですが、欲を言えばもう少し明るくしてほしいな~と庶民は思ってしまいます。

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部屋の中は意外と明るい。

今回は標準的な一人用の「スタンダードセミダブル」というお部屋です。

ブラウンを基調とした落ちついた感じですね~。

デスクやチェアーも木製でなかなか良いアクセントになっています。

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部屋に設置されているデスク。鏡を倒すと大きなテーブルとして使用できる。

これがそうなのかは分かりませんが、松本では「松本民芸家具」という和洋風の家具が一つの工芸品になっています。

元から松本近辺は木材加工が得意だった歴史がありまして、意外と知られていませんがギターの生産量も日本一です。

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広々としたセミダブルベッド。

ベッドはセミダブルベッド。

トイレもバスも最近の高級ホテルという感じで、使いやすそうです。

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バス、トイレともに清潔感がある。

枕もとにコンセントもあり、便利な造りになっています。

空気清浄機もありました。

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枕もとにはコンセントがある。

写真は撮り忘れましたが、Wi-Fiのほか有線のLANケーブルも備品として置かれていました。

ホテルのWi-Fiって時々接続がおかしくなるので、個人的にはホテルではLANケーブルでつなぐ方が好きです。

 

訪問時はgotoトラベルキャンペーンをやっておりましたので、地域共通クーポンを使って夕飯と散策に出かけます。 

夜の松本城を散策

「密をさけて」とか「ずらし旅」などが叫ばれていますが、地元から「こんなのどうですか?」というご提案。

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夜の松本城はライトアップされる。

これがこれからの新定番「夜の松本城」

平日ということもあり、ご覧のように空いております。

 

天守へは上がれないこの時間ですが…

夜の松本城はライトアップされ、松本城の「黒」がより一層映えるのです。

風がなければこうして逆さ松本城が…

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風吹いてないのに…

逆さ松本j…

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…!

逆さ松本城を堪能できます。

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逆さに映る松本城を楽しむことができる。

余りにも夜遅いとライトアップが消えてしまいますが、その時はその時の美しさがあるります。

 

松本で暮れてしまってもがっかりせずに、一度お城に行ってみることをお勧めします!

「かつ玄」本店で夕食!

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かつ玄本店は松本城近くにある。

松本では蕎麦を食べる以外にも、グルメがたくさんあります。

そのうち今回ご紹介するのは老舗のとんかつ屋さんです。

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店内は木製製品でまとめられている。椅子はかつて、松本深志高校で使用されていたものらしい。

松本城から歩いて5分強、「かつ玄」本店で夕食をいただきます。

お茶と季節の品3品がお通しのように出てきます。

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お通し?のようなシステム。

とんかつ四味定食を注文。

1250円ととんかつ屋にしてはリーズナブルな価格設定です。

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とんかつ四味定食(1250円)。一部好みの種類を選択できるが、冬季のカキフライは絶品なのでおすすめ。

信州の豚を使ったメニューもあり、観光で「土地のもの」を召し上がりたい方も十分楽しめると思います。

 

筆者は地域共通クーポンを使ったので250円のお支払い…。

食べ物にこのクーポンを使うとかなりお得感がある気がします。

 

元銀行だった豪華な朝食会場

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丸の内ホテルのレストラン棟となっている。

さて、 ようやく本題ですが丸の内ホテルに繋がっているこの豪華な建物…。

朝にはホテルの朝食会場になります。

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中も豪華な造りになっている。

なんというかワンランク上の朝を迎えた感じがあります。

ピアノもあって、パーティー会場として使われることもあるようです。

 

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ピアノも置かれている。

朝食は半分バイキングのような形式。

サラダとか飲み物、デザートは確かセルフサービスでした。

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朝食は品数が豊富。特に前日に注文しておいたフレンチトーストが美味でした。

この建物は朝食会場として使われていますが、 午後からはレストランやカフェとしても使っているようです。

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午後は大きな通りの入口も空いている。

宿泊しなくてもこの建物に入ることはできるみたいです!

この朝食会場からトイレに向かう通路には何やら堅牢なドアが…

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やたらと堅牢なドアの正体は…

この建物、1937年に建てられた旧第一勧業銀行松本支店を改装したものだそうで、この扉は当時のまま残されているようです。

松本市街地は太平洋戦争で焼けていないため、こういう建物を今でもちらほらと見ることができるのです。

意外と多い松本の擬洋風建築たち

ここで少し、松本市街地周辺に残る「擬洋風建築」を見ていきます。

「擬洋風建築」とは、幕末から明治にかけて、文明開化の時代に大工が西洋の建築に似せて建てた建物のことです。

先ほどの丸の内ホテルのレストラン棟もこちらにあたります。

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再程紹介したこちらの建物も擬洋風建築とされている。

松本周辺に見られる擬洋風建築は、大工が東京近辺に建てられていた西洋建築を見て、見よう見まねで造ったそう。

 

筆者は建築に詳しくないので、間違っていたら申し訳ありませんが、こちらも見よう見まねでそれらしい建築物をご紹介します。

どれもこの松本丸の内ホテルから徒歩圏内です。

 

代表格は2019年に国宝に指定された、旧開智学校です。

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旧開智学校は擬洋風建築の代表格と言える。

これは但し書きもありまして、擬洋風建築で間違いないと思います。

館内も綺麗に保存されており、入場料を払えば見学することができます。

 

次はこちら、銭湯「塩井の湯」です。

筆者が松本市内の銭湯の中で最も好きなこちらの銭湯も擬洋風建築と思われます。

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銭湯「塩井の湯」。

「塩類鉱泉」とありますが井戸を沸かした銭湯で、常連さんや番頭さんも優しく、身も心も温まる良いところです。

 

続いてこちらは病院…。

もともとは産婦人科だったらしいのですが、なんとお医者さんが独自に設計し地元の大工が作ったという話もあります。

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宮島耳鼻咽喉科。

松本城から少し東にそれた「上土町」と呼ばれる地域には擬洋風建築と思われる建物が数多く見られます。

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上土町周辺に見られる西洋風の建物。

松本というとお城や中町通り、縄手通りなどの城下町と湧水巡りが一般的ですが、擬洋風建築を探しながら歩くのも、視点としては面白いのではないかと思います。

 

ほかにも旧制松本高校跡(あがたの森公園)などにも古くからの建築が残されており、建築物にご興味がある方は意外と楽しめるかもしれません。

 

機会がございましたら是非、松本近辺を建築物に注目しながら歩いてみるのはいかがでしょう…?

ハイブリッド気動車のパイオニア、キハE200形に乗車【信州周遊旅②】

世界初のハイブリッド気動車キハE200形

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世界初のハイブリッド車両キハE200形。

近年急速に普及し始めている「ハイブリッド気動車」

先日量産化が決定したJR東海の新型車両HC85系も、このハイブリッド気動車にあたります。

 

ハイブリッド気動車とは、鉄道車両に蓄電池とエンジンおよび発電機を搭載したもので、エンジンで発電機を回し電気に変え、余った電気を蓄電池が回収して再利用する仕組みになっています。

 

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CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=98073125

今回はこの「ハイブリッド気動車」、世界初の営業車両である小海線のキハE200形に乗車します!

 

前回↓

www.toremor.work

 

 

 

実は稀少!たった3両の製造で終わったキハE200形

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小海線の普通列車に使用されるキハE200形。

世界初のハイブリッド車両として開発されたキハE200形は、小淵沢ー小諸を結ぶ小海線のみで運用されています。

 

この車両はJR東日本に3両しかいない希少車種で、小海線の中でも珍しい車両となっています。

在籍している3両のうち、2両が基本的に運用に入りますが、多客時に運転される臨時普通列車「八ヶ岳高原号」で走行することもあります。

車体には「HYBRID」の文字、HB-E300形と連結可能

外観は青と黄色を基調とした先進的(?)なデザインで、車体側面に「HYBRID TRAIN」と書かれています。

停車時はアイドリングストップしているのでとても静かで、電車のような感じです。

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車体側面には「HYBRID TRAIN」の文字。

この車両は、基本的な機構が同じである「リゾートビューふるさと」に使用されるHB-E300形と連結することができ、実際に連結して走行した実績もあります。

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リゾートビューふるさとに使用されているHB-E300形。

 JR東日本のハイブリッド車両は「HYBRID」という文字をやたらと強調する節があって、この後に登場したHB-E300形の側面にも書かれています。

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形式が「キハ」ではじまるハイブリッド車両はこの形式しか存在しない。

この車両の形式は「キハ」ですが、この後に登場したハイブリッド車両は「HB-」を頭につけるようになったため、ハイブリッド車両のなかで唯一「キハ」を名乗る車両でもあります。

 

JR東日本がハイブリッド気動車の開発に乗り出したのは2003年。

試作車としてキヤ991形という車両が開発され、そのノウハウを受けてキハE200形が作られました。

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ハイブリッド気動車としての試験を終えたキヤ991形は晩年、エンジンと発電機を燃料電池に載せ替えて、燃料電池とのハイブリッド車両クモヤE995形に改造された。

このキハE200形も「営業列車としてお客さんを乗せつつ実験する車両」として位置づけられていて、実際に長期にわたる試験が行われていました。

3両しか製造されなかった理由も、試験車両としての側面が強かったからなのかもしれません。

 

デッドスペースが多い変わった車内

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キハE200形の車内。つり革も最新のものが使われている。

車内を見ていきます。

ロングシートと1+2のボックスシートが並ぶスタイルです。

小海線の主力車両キハ110形と同じような構成ですが、車内は少し広い印象があります。

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車両中央部には機器スペースがある。

車両の中央部には機器のスペースがあります。

車内が空いていればいいですが、この周辺は混雑時に少し窮屈に感じました。

 

座席は青を基調とするデザインで、座り心地は首都圏のE231系と余り変わりはありません。

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ボックスシート。

個人的にはキハ110系より広く感じ、思ったよりは快適です。

続いて連結部分を見てみます。

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連結部分。

運転室は半室になっていて、佐久平駅周辺の混雑する区間ではこの解放された方の半室にもお客さんが立っていました。

 

運賃表の下にLED案内表示器が設置されているのが特徴的です。

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LED表示器では時々「世界初のハイブリッド車両」であるという案内がされる。駅ごとに乗り心地を聞かれます。

なんかこう、登場した時代がそうなのかもしれませんが、微妙に古い機器と新しい機器が混じっている感じがあります。

「世界初」ということもあり、この車両は鉄道友の会からローレール賞をもらっています。

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ローレール賞も受賞している。

ドアも特徴的で、車外は黄色ですが車内も黄色で塗られています。

そして足元にご注目……

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ドアは黄色で塗られている。

微妙に段差があるのです。

バリアフリーを意識しているらしいのですが、とても微妙な広さで低くなっているので(筆者は走行中この隙間に足をとられてコケました(笑))お気をつけください。

 

トイレの近くには、この車両が今どうやって動いているかを表示するモニターがあります。

モニターが暗いですが、「赤い矢印」にご注目。

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まずは最初バッテリーを使って走り出し…

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次にエンジンで回した発電機の動力を受けて走る。

駅の出発時にこのモニターを見てみると良くわかります。

実際は走行音でも分かるので、どの段階でエンジンが起動するのかぜひリスニングしてみてください!

ハイブリッド車両で小海線を冬を堪能

 キハE200形が小海線の全区間を走行する時間を狙いまして、小諸駅12:02発の普通列車小淵沢行きに乗車します。(毎回この運用に入るかどうかは定かではありません)

 

小諸駅から新幹線の乗り換え駅である佐久平を通り、中込駅までの区間は、小海線で最も混雑する区間です。

地元の方の足として使われていて、どの時間でもそこそこの混雑があります。

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中込駅までは利用者が多く、この区間までの区間列車も運行される。

中込駅には車両基地があり、小海線の車両はすべてこの小海線営業所の所属です。

奥には観光列車HIGH RAIL 1375もいます。

給油の設備もありますね~

 

ここから先は八ヶ岳方面に向かってどんどん山を登っていきます。

中込駅を過ぎたあたりからは、後方展望をすると前に雄大な浅間山の景色を望むことができます。

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後方展望をすると浅間山が広がる。

 しばらく進むと、小海線の名前の由来となった「小海駅」につきます。

こちらも運行の拠点となっている駅ですが、中込駅よりは利用者が少ない印象です。

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たいていのお客さんは小海駅周辺で降りてしまう。

車内が空いてきたところで、小諸駅で購入した桜餅を。
小諸駅隣にはカフェがあって、テイクアウトで様々なスイーツを買うことができます。

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小海駅隣のカフェで購入した桜餅。期間限定。

キハE200形は窓が広いので車窓も楽しむことができます。

小海線は千曲川の上流部に向かって進みます。

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大きな窓から車窓を楽しむことができる。

段々と標高を上げ、高原地帯へと入っていきます。

夏は涼しくて良いのですが…

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この川は汚染されているのではなく、凍っている。

なんと日当たりが良い川でも凍ってしまうほどの寒さなのです。

この周辺の川上村はレタスの生産量日本一で、長野県で唯一、埼玉県と接する自治体です。

意外や意外、長野県は埼玉県のお隣なんですよ~

 

信濃川上駅を過ぎると、いよいよ野辺山が近づいてきます。

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八ヶ岳が近づいてくる。

街が見えてくるとJR最高の標高をもつ駅、野辺山駅に到着です。

実際は立山黒部アルペンルートの室堂駅の方が標高は高いので、良く見ると「日本最高」ではなくちゃんと「JR最高」と書いてあります。

一般の方からすると小海線の終点のようなイメージがあるかもしれませんが、途中駅の一つです。

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野辺山駅に到着。

ここから先は、夏なら観光客が多く利用する区間です。

冬の八ヶ岳が広がります。

正直言えば夏より見た目が綺麗な感じで、小海線の車窓はオフシーズンも楽しめると思います。

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冬の八ヶ岳は美しい。

野辺山ー清里間には有名なJR鉄道最高地点(1375m)があります。

神社もつくられていて、一つの観光スポットになっています。

 

良く勘違いされるのですが、ご神体は車輪ではなく石に埋め込まれたレールです。

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鉄道最高地点神社。

但し書きには「二つの車輪のように夫婦が仲良く」とありますが、穿った見方で見れば1067mmの線路幅くらいの距離感が大事なのかもしれません。

 

さておきまして清里駅で対向列車との行き違いです。

右手が主力車両のキハ110。

並ぶとキハE200形も近未来感があります。

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清里駅で交換。

鉄道最高地点から先、小淵沢駅まではずっと下りなので、ほとんどモーターと重力だけで動いていきます。

エンジンの音は全然聞こえないので、ものすごく車内は静かです。

遠くに富士山を眺めつつ、最後の名所「小淵沢大カーブ」に差し掛かります。

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小淵沢駅付近のカーブは撮影地としても有名。

車窓からは雄大な八ヶ岳が見え、最後まで絶景を楽しむことができます。

ふりかって見ると、何やら怪しい色をしたE257系が…

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!?

踊り子用のE257系の長野疎開回送だったようです。

本当に到着間近まで車窓を眺めていい思い出ができました。

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小淵沢に到着。

小海線の歴史を振り返れば、SL走ってたり電車+客車+ディーゼル機関車で走ってみたりと個性的な列車が多いですが、このキハE200形もまたその一員として、今後も活躍しそうです。

 

リニューアルされた小淵沢駅には改札外に展望台があり、ここからの景色は大変綺麗です。

晴れていれば富士山を望むこともできますよ~

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小淵沢駅の展望台はとても景色が良い。

おまけ:小淵沢駅「丸政」の「カレー黄そば」が美味

完全におまけなんですが、小淵沢駅の立ち食い蕎麦「丸政」(駅弁「元気甲斐などで有名)では、そばやうどんのほかに中華麺の「黄そば」を頼むことができます。

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丸政さんの「カレー黄そば」は個人的一大名物。

筆者おすすめの一品は「カレー黄そば(400円)」。

和風だしにカレーをかけ中華そばを入れるという何とも国際的なメニューですが、何とも病みつきになる、中毒性の高い味。

観光客の方が「山賊そば」をオーダーしている傍ら、私はこの駅に来ると毎回このメニューを食べています……

 

皆様もぜひ一度ご賞味あれ!

信州ワンデーパス+しなの鉄道で長野県を1周する【信州周遊旅①】

お得なきっぷ「信州ワンデーパス」

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信州ワンデーパス。エリア内が1日乗り放題となる。

「信州ワンデーパス」長野県周辺のエリア内の鉄道が1日乗り放題になるという、お得なきっぷです。

指定席券売機(主に紫色)の画面、「おトクなきっぷ」から購入することができます。

 

基本的に通年で販売しており、料金は2680円で乗車当日でも購入可能です。

ちなみに、この料金は大糸線の松本ー南小谷駅間の往復と同じ料金となっています。

 

今回はこの「信州ワンデーパス」としなの鉄道を使って、ぐるりと長野県の東側を1周していきます!

 

 

かつて「循環列車」が通ったルートを辿る

循環列車とは、出発地と目的地を一直線で結ぶのではなく、あちこちをぐるっと一周して再び出発した地に戻ってくる列車のことです。

今でいえば「山手線」もその一部にあたりますが、国鉄時代にはもっと長距離の普通列車や急行列車がいくつか見られました。

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循環急行「のべやま」に使用された車両と同形式のキハ58。小海線は非電化のため全区間気動車で運転された。

Mitsuki-2368 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7543358による

長野県にもかつて循環列車が走っていた時期がありました。

長野ー篠ノ井ー小諸ー小淵沢ー松本ー篠ノ井ー長野(篠ノ井ー長野間は重複)というルートで、左右両方向の周りで急行列車「のべやま」「すわ」が運転された実績があります。

 

さて、今回はその循環急行列車が通ったルートを(だいたい)踏襲して、松本から松本までの1周ルートで移動していきます!

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信州ワンデーパスを使う今回の大まかなルート。

信州ワンデーパスで長野県を一周!

※今回の行程では鉄道に乗りっぱなしですが、もう少し時間にゆとりをつけて周辺を観光するとさらに楽しい旅になると思います!

①松本10:07→篠ノ井10:50:ワイドビューしなの3号長野行(383系)

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特急しなのに使用される383系。松本ー長野間の区間利用客も多い。

今回は松本を出発地点に設定しました。

まずは383系特急「ワイドビューしなの」で篠ノ井駅まで移動します。

 

松本ー篠ノ井~長野間を特急で移動するには「信州しなの回数券」が便利です。

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信州しなの回数券。方向は関係なく塩尻~松本~明科ー篠ノ井~長野までの特急に1回使用できる。定価は4枚2080円(1枚あたり520円!)とこの時点で破格である。

主要駅の金券ショップで1枚550円~600円前後で買うことができ、この区間の空いている指定席と自由席に乗ることができます。

新幹線の乗り継ぎ割引より安く特急が使える、便利なきっぷです。

このきっぷも信州ワンデーパスと併用できます。

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383系には普通車にもフットレストが備えられている。

383系は普通車にもフットレストがついていてとても快適です。

車齢も25年越えと結構経っていますけれど、あまり古さを感じさせません。

最近希少になりつつある初期型のGTO-VVVFインバーター音を楽しむのには最適(一般の方にはうるさいだけかもしれませんが)な乗り物です!

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遠くに壁のように聳える山々は北アルプス。

松本出発後、進行方向左手には犀川と北アルプスの山々が広がります。

 

ちょうど大糸線から見える安曇野の景色の遠望となっていて、篠ノ井線の松本ー明科間と大糸線の松本ー穂高間は、約4kmほど離れながらも並行して走っています。

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大糸線と篠ノ井線は離れているものの並行して走っている。田沢駅ー豊科駅間も4.2kmしか離れていない。

篠ノ井線の方が線形が良く駅数も少ないので早く着くことができ、地元の方の中には、篠ノ井線を「大糸快速線」のように使って田沢駅や明科駅で降りるという使い方をする人も見受けられます。

安曇野の有名な観光地「大王わさび農場」も実は穂高駅より明科駅の方が近いのです。

 

明科から先、篠ノ井線は長いトンネルに入りますが、この周辺には旧線の跡が遊歩道として整備されていて歩いて楽しむことができます。

 

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トンネルを抜け、途中坂北駅で対向列車の待ち合わせ。

篠ノ井線松本以北はほとんどが単線なので、頻繁に行き違いが行われます。

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坂北駅にて対向列車の待ち合わせ。

さらにもう一本、冠着トンネルを抜けると、有名な姨捨の景色が広がります。

特急しなのは観光用の列車ではないので、姨捨駅周辺で速度を落としてくれることはありません。

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姨捨駅周辺の雪景色が目の前に広がる。ここは日本三大車窓の一つに数えられている。

個人的には姨捨駅を通過した後、姨捨公園を過ぎたあたりが車窓のベストポイントだと思っています。

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方向を変えながら善光寺平へと降りていく。桑ノ原信号場を通過中。

 

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ゆっくりと山に沿うように列車は下っていきます。

善光寺平に降りてしなの鉄道線と合流すると、篠ノ井駅に到着です。

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しなの鉄道線(旧信越本線)の線路と合流。

②篠ノ井10:55→戸倉11:08:しなの鉄道普通列車戸倉行(115系)

かつての循環急行「のべやま」や「すわ」は長野まで往復しますが、今回は行程の関係で篠ノ井からそのまましなの鉄道(旧信越本線)へと乗り換えます。

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しなの鉄道では信州ワンデーパスを利用することはできない。

ここから先しなの鉄道では信州ワンデーパスは使用できません。

小諸駅まで別途きっぷを用意して、軽井沢方面の小諸駅まで進みます。

 

ちなみに信州ワンデーパスでは別途特急券を購入すれば長野ー軽井沢間の北陸新幹線を利用できます。

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115系しなの鉄道色。

やって来たのは「しなの鉄道色」の115系

車内は更新されていますが、往年の雰囲気は残っています。

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115系の車内。戸倉駅にて。

しなの鉄道では国鉄時代の塗装をはじめとした、様々なバリエーションの色の115系に乗ることができますが、いつまでこの状態が続くのかは分かりません。

乗れるうちにたくさん乗っておきたい車両ですね~

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しなの鉄道には様々な塗装の115系が存在する。新型車両の置き換えも始まっており、115系を楽しめる期間もそろそろ終わりが近づいている。妙高高原駅にて別日撮影。

篠ノ井駅を出ると千曲川橋梁を渡ります。

窓を大きく開けたいところですが、意外とお客さんも乗っているし寒いし…またの機会にします。

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千曲川橋梁を渡る。

長野から戸倉までの区間列車に乗車しましたが、比較的良い接続で軽井沢方面へと乗り継ぐことができます。

③戸倉11:11→小諸11:47:しなの鉄道普通列車軽井沢行(SR1系)

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しなの鉄道の新型車両、SR1系。

戸倉から先、軽井沢方面の列車はSR1系です。

115系の後継として導入されましたが、使い方としては169系の後継(?)として、座席指定の快速列車や間合いの普通列車の運用に入っています。

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車内は2列シートが線路に対して平行なロングシートとして並んでいる。

有料の座席指定快速の時は進行方向に座席が向き、そうでないときは基本はロングシートに変わるという、東京近辺の鉄道に多く見られる仕組みのシートを採用しています。

基本的にはJR東日本E129系の構造を踏襲していますが、座席とデザインだけは異なっています。

 

有料の座席指定快速は平日は「通勤ライナー」のような列車、休日は観光客向けの「軽井沢リゾート号」として運転されます。

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2両編成で走っていたので意外と車内は混雑気味。

未だに新車の香りが残っていました。

 

途中の坂城駅では静態保存されている169系を観察。

3両編成まるまる1本が展示されており、幕は「通勤快速」を出していました。

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坂城駅では169系が状態良く静態保存されている。ボランティアの方が定期的に清掃しているらしい。通勤快速幕が出ていた。

車両こそ変わりましたが、ちょっとお金をかけて座っていく列車という概念はSR1系にも受け継がれています。

 

浅間山が綺麗に見えてくると、いよいよ小諸駅に到着です。

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美しい浅間山の風景が見えてくると、小諸に到着する。

次回予告

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小諸駅のホーム屋根は独特な形をしている。

小諸駅からは小海線に乗り換え、オフシーズンならではの絶景をながめつつ八ヶ岳の山越えをします。

 

そして乗車するのは日本でたった3両しかいない、世界初のハイブリット気動車

果たしてその乗り味は…?

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小海線に乗り換える。前面にはHYBRIDの文字。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【着陸が日本一困難?】山々に囲まれた信州まつもと空港を観察

標高日本一の松本空港

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海沿いや平野部に立地するイメージが強い空港ですが、山々に囲まれた長野県松本市に日本で最も標高の高い空港があります。

 

標高はなんと657.5m。

海外にはもっと標高の高い空港もあるものの、スカイツリーの頂上よりも高い場所に位置しています。

 

高所かつ山々に囲まれる独特の地形、そこから生じる予想できない風向の影響で、松本空港は「日本一着陸が難しい」とも言われています。

今回はそんな松本空港はどのようなところなのか、ご紹介します!

 

 

周囲を山に囲まれた独特な地形

松本空港(愛称:信州まつもと空港)は松本盆地の中央部に位置しており、周囲を標高1500~2500m程度の山々に囲まれています。

少し空から(と言ってもgoogle earthですけど!)見てみます。

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松本空港の立地。南側の湖は諏訪湖、西側(左)は北~中央アルプス、東側(右)は美ケ原などの標高の高い山が連なる。

素人が見てもなんか着陸しづらそう…

もう少し近づいて空港の形を見ます。

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松本空港の滑走路。1本しかなく、ターニングパッドも設置されていない。

2000mの長さで1本の滑走路が南北に延びますが、ターニングパッドと呼ばれる飛行機が方向転換するスペースも設置されていません。

離陸する際、旅客機は滑走路の端まで行って限られたスペースで「クルン」と自力でターン、一気に加速して飛び立ちます。

 

この滑走路は1994年に長さが1500mから2000mに伸び、ジェット機が離着陸できるようになりました。

 

通常1500mの長さの滑走路があればジェット機の離着陸も問題ないのですが、この空港は標高が高く「空気が薄い」ため、エンジンの出力などの関係でこの距離をとらないとジェット化できなかったのです。

着陸時に頼れるシステムが利用できない

「日本一難しい」と言われる松本空港の着陸ですが、その要因の1つに「計器着陸装置」が設置されていないことが挙げられます。

 

計器着陸装置(けいきちゃくりくそうち、英語Instrument Landing SystemILS)とは、着陸進入する航空機に対して、空港飛行場付近の地上施設から指向性誘導電波を発射し、視界不良時にも安全に滑走路上まで誘導する計器進入システム。(Wikipedia)

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空港に設置される計器着陸装置

投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1899635による

あまり筆者は航空業界に詳しいわけではありませんが、簡単にこの「計器着陸装置」の機能を見てみます。

この装置が電波で滑走路への侵入方向や高さ、距離など航空機側へ伝えることで、航空機側はそれに沿って着陸することができるようになります。

 

状況によりますが、現在では航空機側と空港側の設備が充実していれば自動的に着陸することもできます。

 

一方で松本空港は、ジェット機の離着陸に対応している国内の空港の中で唯一、計器着陸装置が設置されていません。

松本空港にこの装置を設置しても山々に遮られ、使用できないようです。

そのためこの空港に着陸する場合、事実上パイロットの目視・手動のみで着陸しなければなりません。

 

なおかつ松本盆地は高い山々に囲まれて、実際の空港周辺の風向が予想しづらい(ビル風のイメージ)ので、さらに着陸(離陸)が難しくなります。

滑走路が南北にありながら、実際に東西から強い風が吹くケースもあり、予想以上に困難な空港なのかもしれません。

背景が「山」、異色の離陸風景

筆者の出身はもともと東京なので、空港と言えば「羽田空港」のイメージが強いですが、松本空港では高い山々をバックに航空機を見られる、ある意味貴重な体験ができます。

 

松本空港の旅客ターミナル3階には展望デッキがあり、休日の航空機の出発・到着時には家族連れなどの見物客の姿が見られます。

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離陸風景を見ようと人が集まる。

ちょうど筆者が展望デッキに上がると新千歳空港行き(?)の便が離陸していきました。

松本空港を発着とする航空会社はすべてFDA(フジドリームエアラインズ)で、エンブラエルのE170とE175という機種で運航されています。

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滑走路の北側から南側に向かって離陸する新千歳空港行き。

FDAが所有する航空機は機体ごとにE653系のように色が違いまして、「今日は何色が見られるのか」楽しみにできます。今回はブルー。

カラーバリエーションが充実しているのは楽しいですよね~

 

滑走路の半分くらいで離陸している感じです。

 

続きまして次に福岡便となる航空機が到着。

福岡空港からの折り返し運用(?)みたいです…

 

着陸時間が早まってしまい、着陸風景は見逃してしまいました。

早着が基本的にない鉄道を趣味の中心にしていると「早まる」という発想が薄れてしまいます。

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給油作業中の福岡便。

到着して30分くらいで福岡便として出発するようです。

出発ロビーには保安検査場に続々と人が集まってきました。

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保安検査場に集まる乗客の皆さん。

乗客の方が乗り込むと出発です。

トーイングカーに押されましてバックしていきます。

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トーイングカーに押されて後退する福岡便。

そして今度は自力で滑走路へ。

南側から飛ぶようです。

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滑走路の南側の端へ移動する。

空港というと滑走路まで平行している通路を進むものだと思っていましたが、こういう小さな空港では滑走路をそのまま走って端まで移動することが多いのだとか。

 

端の方でくるっと向きを変えて、滑走路を猛加速します。

大きな空港のように段階的に速度を上げるのではなく、ほぼいきなり300km/h近くまで加速しているように見えました。

まるで体操選手が「ゆか」の演技をやっているような動きです。

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端まで行った飛行機は向きを変え、離陸していく。

こじんまりとした旅客ターミナル

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信州まつもと空港の旅客ターミナル。小さな新幹線駅くらいのスケールである。

旅客ターミナルはなんとも三角屋根が特徴的な建物です。

入ると正面に出発ロビーに向かうエスカレーターがあります。

これが三角屋根のちょうど真下の部分です。

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大きな天窓の下がエスカレーターとなっている。

一階には小さな売店と手荷物検査場があります。

基本的に1会社の飛行機(JALとコードシェアしていますが)しか来ませんので、至ってシンプルです。

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「井上」とは松本のご当地百貨店であるが、ここではお土産類が売られている。小さいながら品ぞろえは良い。手荷物検査場はFDAの窓口しか見当たらない。

二階に上がりますと、保安検査場と売店、レストランがあります。

保安検査場横にはなぜか木彫りの鉄道車両が置かれています。

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保安検査場の横にはなぜか鉄道車両の木造模型が飾られている。

この写真では分かりませんが、それぞれに鉄道車両の説明が書かれていて、大変細かい内容まで書かれておりまして、なかなかに愛を感じます。

 

隣にはちゃんと航空機の方も飾られていました。

ありましたね~JASって…こんなデザインのJALも乗った記憶があります。

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航空機の模型の展示もある。

電光掲示板は新しいもので、パタパタしたりしません。

この時期は13:00の時点であと1便しかないようです。

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寂しい出発案内。

松本空港は現在福岡便2往復、新千歳便1往復、神戸便1往復が設定され、季節運航で丘珠便や伊丹便も運航されています。

 

保安検査場内は座席も多く設置され、ゆったりと待つことができそうです。

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保安検査場内の様子を窓越しで見る。

保安検査場の反対側は売店とレストランです。

レストランに関してはこのお店しか空港近くにはありません。

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売店とレストラン。

レストラン城下町では蕎麦のほか、こんな感じの古典的カツカレーもいただけます。

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カツカレー。こんな感じの深皿カレーも最近はあまり見られない。ボリューム満点。

 

滑走路のすぐ近くを散歩できる!

さて、旅客ターミナルを出まして周辺を散策します。

松本空港の周辺は信州スカイパークという運動公園として整備されています。

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広大な敷地は公園として利用されている。

滑走路の近くにも通路があり、離発着時は 迫力ある景色を見ることができそうです。

自転車も借りることができるので、サイクリングも楽しめます。

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滑走路のすぐそばを歩くことができる。

ちょうど旅客ターミナルの反対側には小さく松本空港の滑走路が再現されています。

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滑走路の横に再現される小さな滑走路。

子供の頃来ていれば、自分が飛行機になり切って「ブーン」と言っていたに違いありません。

ちなみに滑走路の標示が黄色なのは 、降雪時の視界を考えてのことらしいです。

 

無料駐車場も完備、利用客も増加中

一時は定期旅客便消滅の危機にあった松本空港も、最近では神戸便が就航するなど利用客も右肩上がりに回復し始めています。

 

何よりも魅力なのは駐車場が無料で使用できることです。

 

 

以前は満車になることもありましたが、第二駐車場も整備されたので改善されてきています。

 

アクセスは松本駅からバスに乗るのが一般的ですが、最寄り駅は篠ノ井線村井駅で、徒歩46分です。

物好きな方は挑戦してみてください!

  なかなかに個性的な地方空港ですが、長野県にある日本一空に近い玄関口をご紹介しました。

筆者はまだこの空港をエアラインとして利用したことはありませんが、晴れていれば北アルプスの絶景を空から見られること間違いない無し!

機会があったら利用してみてください!

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筆者は自転車で訪れたが、松本駅からゆっくり走って1時間少々かかる。空港に自転車置き場はないので注意!

 

 

2020年、当ブログの最も読まれた記事は?

今年もご覧いただきありがとうございました!

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EF63の運転台。皆様も2020年の運転お疲れ様でした!

弊ブログは開設2年ちょっとですが、本格的に投稿し始めたのは今年になってからでして、こんな時期ですが以前より多くの方にご覧いただけるようになりました。

 

世間的には「人との繋がりが薄れがち」といわれた年でしたが、コメントをくださったり、記事を見て実際に訪れてくださったりと、ご覧いただいている方とのつながりを感じることができる1年でした。

おかげさまで筆者は今年、大変嬉しく書かせていただきました。

本当にありがとうございます。

 

引き続き、体力と時間が続く限り投稿していきたいと思います!

よろしくお願いいたします。

 

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2020年に入ってから多くのアクセスをいただいた。12月には累計6万pvを突破した。

今年、最も読まれた記事は?

今年最もご覧いただいた3記事をランキング形式でご紹介!筆者の率直な感想とその内容を見ていきます。ジャカジャン!

第3位「【乗車時間6時間超】飯田線を普通列車で全線走破する」

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飯田線の豊橋駅周辺の線路は名鉄と共用している。

ほぇ~これはですね、単に飯田線に全線乗車した時の乗車記なんですが、ありがたいことに鉄道コムさんでランキング第3位をいただいたんですよ…

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鉄道コムで3位をいただいた。ここまでくると1位をとってみたい気もしてくる。

いわゆる「バズった」タイプの記事でして、数日間でドカーンっとアクセスいただいた感じです。

 

飯田線は秘境駅区間だけではなくて、途中の風景も素晴らしいものがあります。

そして利用客も思ったよりも多く、住民に愛されている鉄道だと感じましたね~!

飯田線の車窓は意外と変化に富むので、乗車時間の割に苦痛さはなく、大変楽しい旅となりました!

 

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第2位「【貴重】651系特急「草津」、3列グリーン車に座る」

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651系の3列シート。「これぞグリーン車!」という充実した体験ができます!

意外や意外、確かに最初のアクセスも良かったんですが、検索から多くの方にお読みいただいている記事です。

 

JR東日本の3列グリーン車というと、最近は減少傾向で651系のほか、E653系、E655系「和」、E261系「サフィール踊り子」がありますが、JR東日本で純粋に「普通のグリーン車3列シート」の形状をしているのは651系だけかも。

 

651系は廃車も出てますし、国鉄車でないにしても老朽化していますから、乗車できるときに乗っておきたい車両です。

 

座ってみるとその快適性が良く分かります。

やっぱり今でも「タキシードボディーの凄いヤツ」です!

 

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第1位「【元グリーン個室が現役】長野電鉄スノーモンキーの見どころ2選」

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元グリーン個室をたった1000円で貸切ることができる。

この記事はもともと最初に「バズった」記事で、鉄道コムのほか小さなGoogle砲もいただいた上、現在まで連続してご覧いただいています。

 

これには筆者も納得……

私事ですが乗車したのは「卒論提出直後」。

大変だった卒論が終わったことよりも、正直初めての「バズり」を経験したことの方が嬉しかったのをよく覚えています(笑)

 

長野電鉄の特急「スノーモンキー」では、もともと成田エクスプレスとして使用していた車両が使われていて、現役当時からほとんど改造されていない「グリーン個室」を1室1000円という低価格で体験することができます。

 

筆者は一人で利用しましたが、少人数のグループ旅行にもおすすめです。

人気になってほしいですがあまり知られたくない、スノーモンキーの個室です!

 

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番外編:ホテルのレビュー記事のアクセスが増加

筆者は時々ホテルのレビュー記事や温泉、観光案内の記事も書いていますが、gotoトラベルがスタートしてからホテルのレビュー記事をご覧いただく機会が増えました。

 

特に最近ご覧いただいているのはビジネスホテル「ドーミーイン」のレビュー記事。

秋田方面に鉄道旅行をした際に利用した時のレビューで、これがメインだったわけでないのですが、ドーミーインが好きになるきっかけとなりました。

 

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gotoトラベル、現在は一時的に停止していますが、今後再開された際に備えてちょっとずつ宿泊施設のレビュー記事のラインナップを増やしていけたらと思います。

 

現在でもgotoトラベルキャンペーン以外に、自治体が地元住民向けに独自に割引を行うキャンペーンが数多く行われています。

 

こんな時期だからこそ「地元近くの泊ったことのないホテル」に泊まってみるのもありかもしれません。

逆に言えば「こんな時期でもなければできない発見」ができるチャンスが、意外と身近なところに転がっている可能性もあるのです。

 

来年はどんな旅になるでしょうか?

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185系はたびたび中央本線や篠ノ井線にも乗り入れていた。

今年もあと数時間…いろいろと失ったものに目が行きがちですが、例えば遠くに行けない代わりに地元の良さを再発見したり、オンラインで色々なことができるようになったり、と得たものも多かった年だったのではないかな~と思います。

 

来年の鉄道業界、まずはおそらく一大ニュースになるであろう185系の定期列車引退。

国鉄時代を知っていいる車両がまた一つ消えることになります。

185系、窓が開きますから今の時代に合っているような気がしますが、さすがに老朽化にはかなわないようです。

 

ムーンライトながらの運行も廃止されるという噂がありますし、徐々に鉄道旅の形態も変わっていくかもしれません。

 

暗いニュースがある一方で、通勤列車も特急列車も新車が続々登場しており、より快適で新しい楽しみ方ができるようになっているのも事実です。

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今年デビューを果たした「サフィール踊り子」。筆者はまだ試運転時しか見たことがないので是非乗車したいと思っている。

旅客需要が低下して寂しい部分もありますが、鉄道の貨物輸送が注目されたり、新幹線に荷物用の車両を作る計画が出たりと、「鉄道」に求められる役割は多くまだまだ捨てたものではありません。

 

上田電鉄では台風によって流された鉄道橋の復旧工事が進められていて、全線復旧へのカウントダウンが進んでいます!

住民の鉄道への思いも熱いのですが、上田市独自の方法で鉄道を守ろうとする取り組みはこれからの地方鉄道の存続のヒントになるかもしれません。

 

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来年は筆者も学生最後の年(にしたいです!)となりますが、今できることを楽しみ尽くしていきたいと思います。

 

2020年、色々な変化に対応してこられた皆様、本当にお疲れ様でした。

2021年の旅も発車時刻が近づいております。

それでは皆さん、良いお年を~!