toremorの旅手帳

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【碓氷峠で鉄道を考える①】3セク化された「しなの鉄道」は儲かっている⁉

碓氷峠で鉄道を考える

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長野県歌「信濃の国」では「嘆き給いし碓氷山、穿つ隧道二十六、夢にもこゆる汽車の道」とうたわれる、碓氷峠。

 

北陸新幹線長野開業の前は頻繁に在来線特急が行きかい、

その独特な峠の地形のため急勾配となり、難所として全国に名をはせました。

現在では新幹線が160km/hで越えていきますが、それでも新幹線にとっても難所です。

 

在来線の「碓氷峠越え」区間(横川ー軽井沢間)は廃止されてしまいましたが、今でもその痕跡をたどることができます。

 

碓氷峠周辺では、3セク化や鉄道の保存、廃止など、将来の鉄道を考える材料がたくさんあります。

 

今回は鉄道遺構を…っとめがね橋などの観光地を紹介するのではなく、

実際にかつての在来線や「横川ー軽井沢直行代行バス」を使い、

峠越えをしながら現況を見つめなおして、鉄道はどうあるべきか、考えてみましょう!

 

まず最初は、峠の手前、長野側のローカル線のお話です!

 

 

信越本線は新幹線開業に伴い3セク化

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かつて上野ー長野・直江津間を走行した特急「あさま」に使われた車両の団体列車「ありがとう189系」と、現在の北陸新幹線の車両の並び。軽井沢駅にて。

 

北陸新幹線の開業と同時に、先ほど述べたように信越線の横川ー軽井沢間は廃止され、

軽井沢ー篠ノ井は「しなの鉄道」という第三セクターに移管されました。

ちなみに篠ノ井ー長野間現在でも信越線のままです(特急しなのの乗り入れ関係によるものという説が有力である)。

 

かつて在来線特急で繁栄した信越本線から特急列車は姿を消し、

JR東日本から払い下げられた国鉄型車両の115系が

数少ない乗客を乗せることになりました。

 

沿線人口も減少の一途をたどっています。

ただこの「しなの鉄道」、安定した黒字を出しているのです!

 

「お金をかけられない」からこそ、鉄道ファンを惹き寄せた

信越本線からしなの鉄道になった際には当然資金力もなく、

いわば「お下がり」の国鉄車両は黒と赤のしなの鉄道色にぬられ、

走り続けていました。

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しなの鉄道を走る115系。背後の山は浅間山。

ただ、鉄道にも車検というものがあります。

鉄道の車検を通すには、実は車体の塗装を塗りなおす必要があります。

 

ここで、しなの鉄道は考えました。

「往年の115系の塗装に塗りなおせば、鉄道ファンが来るのではないか?」

 

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しなの鉄道は所有する115系を国鉄時代の様々な塗装に変更し、鉄道ファンを惹き寄せる。

しなの鉄道色に塗っても、湘南色に塗っても、

どうせ塗らないと車検は通せないので、あまり経費は変わりません。

 

だんだんと全国の路線で115系が廃車になってしまう一方、

「資金力がないので車両を置き換えられなかった」しなの鉄道は、

いつのまにか「国鉄車両の115系が現役で最前線で活躍する珍しい路線」になっていたのです。

 

多くの編成を国鉄時代の塗装に変更すれば、

鉄道ファンは「手軽に往年の国鉄時代を感じられる」わけですから、

人が集まらないはずがありません。

 

こうしてお金をかけず人を呼び込むことに成功したのです。

 

「あさま」と所要時間が同じノンストップ快速列車

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しなの鉄道の快速列車。115系の堂々とした快速幕が見られるのも珍しくなった。

しなの鉄道には長野ー上田間のノンストップ快速列車が存在し、

その区間のの所要時間はなんと25分。

在来線特急時代の「あさま」とほぼ所要時間は変わりません。

 

新幹線でも長野ー上田間の所要時間は12分ですから、

十分勝負できる数字です。

 

 

ビジネス利用向けの快速列車ですので観光利用はしにくいですが、

  • 長野→上田…18:29→18:55, 19:31→19:57
  • 上田→長野…7:30→8:00

がその区間でノンストップの快速となります。

 

詳しい方向けに捕捉ですが、この列車はもともと、

「しなのサンライズ」「しなのサンセット」として運行していたものです。

 

日中にも通過駅はこれほどではありませんが、快速列車が運行され、

所要時間は多少短縮されます。

 

地方の3セクですが、もとは国鉄時代の「幹線」。

線路の線形もよく、高速運転できるのです。

 

観光列車「ろくもん」の成功

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観光列車「ろくもん」に使用される115系改造車。九州の鉄道でおなじみの「水戸岡デザイン」。

しなの鉄道では「ろくもん」という観光列車が運行されています。

115系を改装した車両が使われ、観光や食事を楽しめます。

 

インターネットなどで申し込むことができます。

「食事つきプラン」「指定席プラン」が存在し、

食事は運行される便によって内容が異なります。

 

運行ルートは長野と軽井沢を往復するものや、

夜に篠ノ井線まで直通し姨捨の夜景をみるものもあります。

 

食事プランは高級志向。

お値段は1万5000円くらいかかります。

 

「ろくもん」は大河ドラマ「真田丸」ブームがさってもかなりの人気のようです。

www.shinanorailway.co.jp

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「峠のシェルパ」と称されたEF63の奥に115系長野色。今でもこんな光景を見ることができる。軽井沢駅にて。

この「ろくもん」がしなの鉄道のフラッグシップ的存在となり、

国鉄時代の塗装の車両を走らせることで、

観光客と鉄道ファンを同時に集め、ブランド力を上げていく。

 

3セクのビジネスとして本当にすごいと思います。

(事実、多くの3セク会社がしなの鉄道の視察に訪れるそう)

 

ついに新車の投入計画まで!

しなの鉄道は2020年から新車の導入を決定しました。

 

普通列車用の車両と座席指定列車用の車両を開発するようです。

 

3セク化されて自ら新車を投入するのは珍しいことで、

サービスの向上が期待できます。


www.shinanorailway.co.jp

 

115系だって部品もなくなり整備費も嵩んでいきそうですしね。

 

しかし、これは今までの努力による黒字があるからこそ、

できることだろうと思います。

 

しなの鉄道は、確かに「信越本線」のお下がりかもしれないけれど、

逆にそのメリットを生かしたことが成功につながったのかもしれません。

 

それでは次回は「碓氷峠越え」の区間の現在をみていくことにしましょう!