開業当時のホーム屋根が現存していた川岸駅
中央本線にはみどり湖経由の新線が開業する前、別のルートが使われていました。
「大八廻り」と呼ばれる、岡谷から辰野を経て善知鳥峠というなだらかな峠を越えて塩尻へと向かう、少し遠回りなルートです。
川岸駅はこの「大八廻り」の途中に存在するこじんまりとした駅です。
開業当時の雰囲気をそのまま残していることから、映画のロケなどにも使われました。
しかし2020年9月に老朽化のため、ホーム屋根と待合室を建て替えることになりました。
今回は隠れた美しい駅、「川岸駅」の魅力と工事前最後の姿をお届けします!
川岸駅は「大八廻り」の途中駅
岡谷から先、中央本線は長大トンネルを進むみどり湖駅経由の現在のメインルートと、辰野駅を経由する旧メインルートに分岐します。
川岸駅は岡谷駅の一つ隣の駅ですが、メインルートだった頃も特急列車もが止まらなかった、いわゆるローカル線の小さな駅です。
特急列車だけではなく、現在の中央本線の普通列車のほとんども長大トンネルを通る新ルートを走行するようになったため、旧メインルートは廃れて……
と言いたいところですが、辰野駅という途中駅が飯田線との接続駅となっているため、意外と多くの列車がこの川岸駅にやって来ます。
ほとんどの列車が辰野から飯田線に直通しするため、川岸駅はJR東日本の駅であるのにも関わらず、大多数はJR東海の車両が発着します。
駅の表示板などはJR東日本っぽいけれど、車両はJR東海…なんとも不思議な光景かもしれません。
天竜川のほとり、木造の屋根
川岸駅は1面2線のこじんまりとした駅です。
駅本屋から跨線橋を渡って島式ホームへと至る構造になっています。
天竜川の脇にあって木造の屋根の雰囲気の良い感じですが、ちょっと串刺しの架線柱が残念…
かつてはおそらく跨線橋はなく、構内踏切のような何かでわたっていたのではないかと考えられます。
ホーム側には「左右指差確認」と書かれている看板があって、ここを降りて直接駅舎へ向かっていたのかもしれません。
跨線橋を降りてみると「おお、これは古い」と思わせる造りです。
見上げると骨組みの美しさがうかがえます。
柱と屋根を支える接合部分、こういう造りの駅はなかなか少なくなってきています。
上諏訪方面のホームからも天竜川をのぞむことができます。
生まれ育った駅ではないけれど、何だろうこの落ち着く感じは……
屋根があるのはおそらく1~2両分で、ホームの端から屋根を見てみると…
おお、こちらも絵になる見た目ですね~
日が当たるからなのか、一番端の柱が一番ダメージを受けているようにも見えました。
待合室の雰囲気も良い
ホーム中央部にある待合室。
簡素な造りのようですが細部まで見るとこちらもかなり前から存在しているような雰囲気があります。
なんとサッシが木のまま!
中に入ると、長めのベンチが4つつけられています。
もちろんこちらのベンチも木造。
座ってみるとこれまた良い風景。
空想の世界で色々な物語を描けそうな気がします。
こんな雰囲気なら永遠に待てる…と言いたいところですが、直に木なので結構お尻が痛くなるのが難しいところ。
ふと見上げるとなんと照明がLED化されています…変なところ近代化してますね~
この待合室も今後建て替えの予定なので、お越しになる場合はお早めをおすすめします。
駅舎も観察!
一度ホームを出まして、駅舎の方を見てみます。
こちらは今のところ建て替えの予定はないようです。
駅前の丸ポストにも目が行きますが、花も植えられていていいですね~
こういう無人駅であっても花が植えられていると華やかに見える感じがあります。
中に入ると、有人駅だった頃から多分窓口を埋めただけ…のような造りになっています。
この駅が無人化されたのは1984年とずいぶん前。
それ以来、住民の方に支えられてこの駅は綺麗に保たれているようです。
旧窓口付近には駅ノートが設置されていました。
筆者もメッセージを残しましたが、美しい絵をお描きになっている方もちらほら。
パトロールの方が定期的に見てくださっているようで、活動報告なども記載されていました。
遠くからきた方、18きっぷでたまたま降りられた方、地元の方など多くの人々に愛されていることが伝わってきます。
比較的中規模な駅舎ですが、入口の隣にもゲートが…
かつて荷物扱いもあったのかもしれません。
屋根工事は9月9日から、待合室は21年1月から
良い味を醸し出している川岸駅ですが、2020年9月から順次建て替え工事を行うようで、現在のホーム屋根は約1世紀の活躍に幕を下ろすことになります。
残念ですが「この駅はまだ維持管理し続けていく」という考えの現れだと、ポジティブに受け取る必要もあるかもしれません。
なんとなく心が落ち着く川岸駅の魅力、通りかかった際にちょっと感じてみてはいかかでしょうか?
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