toremorの旅手帳

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【乗車時間6時間超】飯田線を普通列車で全線走破する

全線走破に約7時間かかる飯田線

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飯田線に使用される213系も置き換えが決定している。

飯田線は、長野県にある辰野駅から愛知県の豊橋駅までの195.7kmを結ぶ路線です。

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飯田線の走行区間。Wikipediaパブリックドメインより引用。

ものすごく長い路線というわけではありませんが、なんと約200kmの間に94駅もの駅が存在します。

また、山地を縫うように走るので高速走行ができず、普通列車を乗り通すと約7時間かかるのです…

 

今回は中央本線岡谷駅から飯田線直通の普通列車に乗車し、愛知県の豊橋駅に向かいます!

 

 

岡谷から豊橋行き普通列車に乗車!

意外と利用者の多い岡谷ー伊那市間

9時半を過ぎたころ、本日の主役、313系が登場。

この車両、東海道線から飯田線までどんな路線でも見られる汎用性の高い車両です。

今日はずっとこの車両に乗り続けます。

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本日の主役、313系。

この運用の始発駅は上諏訪で、のんびりと岡谷までやって来ます(すでにここに20分くらいかかってる)。

乗車時間7時間というのは始発の上諏訪駅~豊橋駅までの所要時間です。

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「豊橋行き」の案内表示。

筆者は行程の関係で岡谷駅から乗り湯谷温泉駅で一度下車しますが、それでも乗車時間はぶっ通しで5時間超。

普通列車で乗り換えなしで5時間というのはあまり経験がありません。

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普通列車は岡谷から南側へ、辰野経由で飯田線に入る。ウィキペディアコモンズより引用。

はじめ(辰野駅まで)は飯田線ではなく、中央線の旧メインルートを走行します。

岡谷ー辰野までの中央線の区間を走行する列車は、ほとんどが飯田線に直通するので、事実上飯田線の路線のような扱いを受けています。

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辰野駅からはいよいよJR東海に入り、ここから正式に飯田線に入ります。

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飯田線の起点駅、辰野駅。ここで下車する客も多いが、車内は意外と混雑していた。

飯田線に入ると駅間距離がぐっと短くなります。

飯田線も元は私鉄で、4社の路線をくっつけったもので駅間距離が短いことも、うなずけます。

 

駅は住宅街の中にある感じで、乗り降りが多く地域輸送として定着している雰囲気があります。

少なくともこの区間は秘境路線という雰囲気はありません。

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北殿駅(だったような…)。無人駅の割に各駅ごとに乗り降りが多いので車掌さんはきっぷの回収や販売に大忙し…

駅間が短く、利用者もそこそこいて、大体無人駅……

というと車掌さんは短時間の間にきっぷの販売に回収、ドア扱い(ドアを開けたり閉めたりする操作)をすることになります。

 

運転士側(先頭)からドア扱いをしたり(車内できっぷを売った後に最後部に戻る時間的ゆとりがないため)、ホームを駆け足で行ったり来たり(きっぷを回収したあとすぐにドアを閉めなければならないため)する姿は飯田線ならでは…

 

飯田線の車掌さんは全国で最も体力のいる車掌さんかもしれません。

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伊那松島駅で車両交換。

途中伊那松島駅で列車のすれ違いをして、ほどなく伊那北駅、伊那市駅に到着。

この近辺は伊那市の中心的なエリアで多くのお客さんがこれらの駅で降りていきます。

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駅本屋の屋根が特徴的な伊那北駅。

JR最急勾配、40‰に挑む

伊那市駅を出てしばらくすると、沢渡ー赤木駅間に存在する現在のJRで最も勾配のきつい区間を通ります。

碓氷線の66.7‰が廃止されて日本のJR線内一位の座に就きました。

 

ちなみに40‰という勾配は民鉄に目を向けるとそこまで珍しい数字ではなく、例えば東京メトロ副都心線東新宿ー新宿三丁目駅間にも同じ勾配があります。

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沢渡ー赤木間のJR最急勾配地点。

ひねくれている筆者、「これもっと手前から緩やかな坂にできるのでは?」と思ってしまいますが、現状大丈夫なのでこれでいいのかもしれません。

流石の313系もちょっと音が鈍くなる程度には、頑張って登っている感じはあります。

 

大体の地点はここです。

 

途中駒ヶ根駅で乗り降りがあり、ここからは駒ケ岳を眺めながら進みます。

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この区間は駒ケ岳が美しく見える。

反対側には伊那谷が見えています。
こちらも雰囲気のいい車窓です。

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天竜川のつくった伊那谷を登ったり降りたりしながら進む。

この区間は斜面を等高線上に走っていくので、途中で小さな川を跨ぐ区間に入ると…

ものすごいカーブになり、短編成の飯田線でも後ろの車両から先頭が見えます…

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田切駅付近の急カーブ。

アトラクションとしては楽しいですが、致命的に速度が遅い…なるほど乗車時間も長くなるわけです!

 

「これでは鉄道の持つ高速性が…」という方もいそうですが、伊那谷周辺は「高速移動手段は中央道か中央道を走る高速バス、地域間輸送は飯田線」といった使われ方をしているので、現在は特に問題はない気がします。

 

むかし、飯田駅まで「こまがね」という新宿方面からの急行が走っていましたが、高速バスの台頭でなくなってしまいました…

リニアが通ればだいぶ早くなるものの、果たしてリニアで飯田に来る人はどれだけいるのか…今後の行方が気になります。

 

ほどなくして飯田駅に到着。

反対側に停車しているのはJR東日本の211系です。

こんなところまでこの車両は侵略しているのか…

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飯田駅に停車中の211系。

飯田駅を過ぎると乗客が減っていき、天竜峡駅で観光客はドッと降りてしまいます。

飯田市街地はあんなに開けていたのに、ここからは急に絶壁に…

天竜峡へは天竜峡駅から歩いていくことができます。

 

秘境駅に渡らずの鉄橋…飯田線の人気スポット

ここから先は秘境駅の連続する区間ですが、普通列車の本数は2~3時間に1本、多い時は1時間に1本とそこまで少ないというわけではありません。

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天竜峡駅から天竜峡までは目と鼻の先。

ここから先の乗客は物好きなマニアックな方々の精鋭部隊。

私も左に右に前にウロウロしながら飯田線を楽しみます。

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天竜川を渡っていざ秘境区間へ。

ここで秘境駅ランキングトップ15にランクインした飯田線の駅をご紹介。

(※牛山氏のホームページ(TOP50)を参考にしています。)

 

まずは秘境駅ランキング6位、田本駅。

トンネルを抜けた先にある駅で、駅から集落へは、けもの道を20分歩くしかないそうです。

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断崖絶壁にホームだけある田本駅。

車窓はというとトンネルと橋梁と絶壁が繰り返されるので、大変楽しい感じ。

秘境駅を巡る観光列車が走るのは、秘境駅の散策以外にも車窓の楽しさがあるのかもしれません。

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よく車窓を見てみると、旧線の鉄橋が残されている部分を見つけたりできます。

先人の苦労がうかがえますね…

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続いて秘境駅ランキング14位、為栗(してぐり)駅。

ダムが建設される前までは集落があったものの、建設後に水位が上昇、大半の集落は水没してしまったそう。

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為栗駅。降りる客も乗る客もいなかった。

またまた秘境駅ランキング11位、中井侍(なかいさむらい)駅。

平仮名で書くと「みなとみらい」とよく似ていますが、こちらは軽自動車でもアクセス困難と言われています。

長野県最南部の駅で、駅前にはなんと茶畑が…

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中井侍駅。田本駅同様、絶壁に位置する。眼下には茶畑が…

そして最後に秘境駅ランキング第3位、小和田駅。

意外や意外、かつて交換設備があった形跡がある駅でした。

保線用の引き込み線もあります。

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小和田駅。駅自体はそこまで秘境とは思えないが…

駅周辺には何もなく、小和田の集落は無人になり、外部からのアクセスはほぼ不可能。

こちらもダム建設で水没し対岸に渡れなくなったようで、かつてはそれなりに使われていたようです。

 

今回は秘境駅に降りず列車に乗り続けましたが、本数が2時間に1本あるならば途中下車する選択肢もアリかもしれませんね。

飯田線秘境駅号に乗車するのもいいですが、秘境駅に人がごった返すのはちょっと…という方はぜひ普通列車で訪れてみてください~

 

さてさて列車はさらに南下して次の名所「渡らずの鉄橋」へ。

「採掘中のトンネルが崩落したのでルートを迂回させた」というびっくりの理由が裏には隠されています。

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鉄橋の手前に本来通すはずだったトンネルの延長(右)が見える。

このトンネルを抜けると…対岸に行きそうで帰ってくる鉄橋が現れます。

 

この名所が終わってしばらく乗車すると、中部天竜の駅に着きます。

かつて佐久間レールパークという博物館があったことで有名です。

収蔵された車両の大部分は名古屋のリニア鉄道館に移動したようです。

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佐久間レールパークの跡が見られる。

筆者はこの後もう少し乗車し、湯谷温泉駅で下車。

湯谷温泉を堪能してから豊橋へ向かいます。

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湯谷温泉駅は特急「伊那路」も停車する。

駅周辺は味のあるいい感じです。

模型とかにありそう…

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温泉の様子はこちらをどうぞ。

なかなかいいところでしたよ~

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さて、湯谷温泉から先は213系5000番台です。

新型車両の315系の導入によって今後置き換えられることが明らかになり、現在は余命宣告された状態です。

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飯田線に運用される213系5000番台。

広い意味では形式は快速マリンライナーに使用された車両と同じですが、JR東海独自設計となっています。

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213系の座席。

座席はこんな感じで結構快適ですが、2ドア車なのでこのまま豊橋に行くとなると混みそうですよね~

秘境から市街地へ、そして名鉄と線路を共用…

列車は長篠城の隣を進みいよいよ市街地へ…

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飯田線は長篠城の隣を通る。

豊川駅を過ぎると乗客が一気に増えて、もはや地方私鉄という感じ。

しばらく進むとJRっぽくない、何やら怪しい線路が近づいてきます。

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何やら怪しい線路がこちらへ向かっている…

ここからはご存知「名鉄とJRが同じ線路を走る」という非常に変わった区間です。

飯田線がまだ豊川鉄道という私鉄だった頃、愛知電気鉄道(現名鉄)が現在の豊橋駅に乗り入れるために行った計画の名残です。

 

簡単に言うと、「お互い(豊川鉄道・現飯田線と愛知電気鉄道・現名鉄)がそれぞれ単線を豊橋駅に伸ばすより、線路を共用して複線にした方が効率がいいし建設費も抑えられる」という計画のもとにつくられた路線が、現在も使われています…

 

ホームの反対側が他社線というのはなかなか不思議…

名鉄はこの共用区間の駅を通過しますが、豊川以遠から来る日中の普通列車も飯田線・名鉄供用区間にある飯田線の途中駅は通過してしまいます。

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駅を通過する飯田線普通列車の向かいには名鉄の車両…なかなか状況を呑み込めない…

そして問題の供用区間は終点豊橋まで続き、合計6時間30分の旅はようやくゴール。

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JRと名鉄の案内が入り交ざる大変カオスな駅「豊橋駅」。

最後までネタが尽きない飯田線の旅、長時間ながら飽きずに楽しめました。

乗る方の趣味の方、ぜひ一度挑戦してみては!