toremorの旅手帳

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【宇高航路代替?】現在でも可能!高松ー宇野間をフェリーで移動する

さようなら宇高航路…

本州ー四国間を移動する手段として長らく運航されていた、岡山県の宇野港と香川県の高松港を結ぶ「宇高航路」。

瀬戸大橋が建設される前は青函連絡船や関門連絡船と並び、「鉄道連絡線」としての役割を担っていました。


車も鉄道も通ることができる瀬戸大橋が開業すると、民間のフェリーも含めて「宇高航路」は縮小傾向に転じます。

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寝台特急「サンライズ瀬戸」も朝に瀬戸大橋を通過する。

しかし、コスト面でフェリーが瀬戸大橋に勝っていたり、瀬戸大橋が何らかの事情で通行規制となったときの代替輸送など、フェリーには一部の需要がありました。

 結局、瀬戸大橋開業後約30年間宇高航路は存続していましたが、高速道路の値下げなどの影響により2019年に廃止されました。

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現在の本州ー四国間の鉄道輸送のメイン、快速マリンライナー。瀬戸大橋を走行する。

また一つかつての景色が消えてしまった感じがありますが、実は現在でも高松港~宇野港までフェリーで移動できるのです。

 

今回は瀬戸大橋を使わずに船で四国から本州へ、高松駅から宇野駅まで移動してみます!

 

 

「島」を経由すれば移動できる!

はじめから余談ですが、高松駅には「宇高連絡船」で提供されていたうどんの味を再現した、「連絡船うどん」というお店があります。

正直「本物の讃岐うどん」という印象はありませんが、やみつきになるだしの味とファストフードとして(?)のうどん文化を味わうことができます。

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高松駅構内にある「連絡船うどん」。麺は駅前の「めりけんや」と同じものを使用しているらしい。素朴な味が癖になる感じでこれはこれで美味!

宇高航路は廃止されてしまいましたが、現在でも島を経由すれば高松から宇野まで移動することができます。

今回は「直島」を経由するルートを選択しましたが、小豆島経由で高松から宇野へ行くルートもあります。

 

さて、高松駅から高松港まで移動します。

現在高松駅は近代的な建物となり、駅前は再開発されています。駅前から高松港のフェリー乗り場までは通路が整備されており、大きな道も立体交差で越えていくことができます。

 

ちなみにかつての高松駅はもっと海側まで伸びていて、青函連絡船のように車両も船で運べたようです。

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1980年代の高松駅は現在よりもずっと海側まで線路が続いていた。

歩いて10分くらいでしょうか、結構距離はある感じですが、高低差のある所はエスカレーターもあるので体感的には辛くありません。

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高松駅から高松港までは徒歩10分程度。近代的な通路を進む。

まず、「直島行き」の船の乗り場を目指します。

直島まではフェリーと高速艇が運航されていて、それぞれ乗り場が違うので注意が必要です。

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フェリー乗り場まで通路は続いている。

フェリーのきっぷうりばは、行先の島ごとに分かれています。

自動券売機もありますが、不思議と大抵の観光客は窓口で買いたがる傾向にあるようです。

直島・宮浦港行きの運航会社は四国汽船です。

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フェリーのきっぷうりば。

行先ごとに分かれている券売機は最近鉄道では見なくなってきましたが、フェリーは現在でも行先ごとに券売機が分かれていることが多い気がします。

 

筆者はなぜか鉄道も短距離フェリーも出発ギリギリになる悪い癖があります…ああもう乗船始めてるし!

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直島行きフェリーに乗り込む。

高松港→直島へ移動

筆者は「船で高松から宇野に向かう」ことが主目的で乗船しましたが、日曜日ということもあってこのような目的で乗っている乗客はおそらく私だけ。

 

「直島」というと一般的には「アートの島」として知られ(こういう瀬戸内の観光開発はすごく上手いなぁって思います)、私どもの年代でもちらほら「行ったことがある」と耳にします。

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高松港はフェリーが何本も就航していて、ひっきりなしに船がやってくる。

高松港を出港すると四国フェリー系列の小豆島ー高松のフェリーがやって来ました。

ちょうど車内で「〽島の乙女の唄声を~乗せて行く行く小豆島丸~」と四国フェリーの社歌が流れている頃でしょうか。

 

四国フェリーは出発時と到着時に社歌を車内で流すんですよね~宇高航路を2019年の最後まで運航していた会社です。

 

さて乗船している船を軽くご紹介。

運航中に乗客が立ち入れるのは客室と展望デッキの2フロアです。

残念ながらうどん屋はありません…

 

船内は広々、テラス席が◎

まずは客室です。

整然とシートが並んでいますが、ソファーでくつろげるグループ向けの場所もありました。

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シートはリクライニングしないが、足元は広く快適。

さすが観光客を呼び込んでいるだけあって車内は明るく綺麗です。

船内には現在地を示すモニターがあります。

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船内には現在地を表示するモニターがある。

高松ー直島・宮浦港まではフェリーで約50分程度です。

展望デッキに上がってみます。

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テラス席があり、この区画は利用者に人気があるようだ。

展望デッキにはテラス席があり、ここは利用者にかなり人気があります。

女性グループを中心に客層が若いのがこの船の特徴です。

 

後方の展望もできます。

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写真左手の島はおそらく女木島という島です。

遠く彼方に高松の市街地をのぞむことができますね。

 

ぼーっと景色を眺めていたのですが、何やら大きなタンカーが前を横切っていきます。

写真では伝わりづらいですがかなりの迫力…

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タンカーと交差する。

船ってこんな至近距離で大型船と交差するんですね~

CAPE TSUBAKIという船でした。

 

タンカーに見とれていると急旋回して直島・宮浦港に入港です。

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急旋回して宮浦港に入港する。

意外と小回りが利くんですね~毎回どうしてあんなにぴったり港に着けるのか、船にあまり詳しくない筆者は不思議でなりません。

 

 

直島行のフェリーなので、乗客も車もここで一旦降りなければなりません。

マニアックな人ばかりだと思っていたら、案外一般的なお客さんが多く驚きまがら下船しています…

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車両甲板から下船する。

船自体はそのまま宇野行きになり、車と人が出払ったら宇野行きの改札(?)を開始します。

実際純粋に宇野まで移動したい場合は、この間に宮浦港のきっぷうりばで宇野行きのきっぷを買えば、先ほどまで乗っていた船に乗り込むことはできると思います。

 

直島は観光地化されている

港側には高松から来た車より多くの車が待機していました。

本数も宇野ー直島間の方が多くの便の設定があります。

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宇野行の車の待機列は意外と長い。

筆者はこのまま乗り込んでも良かったのですが、少し島で観光をする予定を立てていました。

普通のブログ記事でしたらここからがメインでしょうが、この記事ではサクッと流して岡山県側に渡ります。

 

主に美術品と美術館やそれに類する建物が観光名所のようです。

こちらはI♡湯と書かれた銭湯。

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宮浦港裏にある銭湯を改造した入浴施設。入浴料600円を超えるのは驚きだが、美術館の入館だと思えばいいのかもしれない。

こちらは景観の観点から建物ほぼすべてが地下にある地中美術館です。

ここはなかなか面白かったですよ~現在は予約制です。

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地中美術館は入場時間が決まっている予約制となっている。館内は撮影禁止。

そして普段松本で見かける草間彌生氏の作品が島内には展示されています。

なんだか新鮮ですが、観光パンフレットで確かに見覚えがある風景です。

 

1枚目は「黄色いカボチャにもっと接近したかったのですが、バスが出るのでここが限界でした」という写真です。

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草間彌生氏の作品を海辺で見るのは新鮮だった。

直島→宇野港へ移動

直島ー宇野間は高松ー直島よりもずっと距離が近く、フェリーでも20分程度でついてしまいます。

ここで、直島から高松、宇野までのそれぞれの運賃を見てみます。

  • 直島ー高松間…520円
  • 直島ー宇野間…300円

高松から宇野まで合計で820円です。

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高松港から宇野港まで合計で820円となる。



ちなみに高松ー岡山間で瀬戸大橋を渡り鉄道を利用した場合と、このフェリーと鉄道を併用した場合を比較すると…

  • 鉄道利用(瀬戸大橋経由)…1550円
  • フェリー+宇野線…1410円

と、フェリーで移動した方が現在でも安くなります。

所要時間は、たとえ直島で下船してすぐに乗船しても乗り換え含めて1時間くらいフェリーの方が遅くなります。

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宇野行のフェリーに乗船。

到着した船は直島港までの船と同じものでした。

時間帯の関係で人は少なく、今度はテラス席に陣取りました。

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テラス席からの眺望は素晴らしい。

潮風にあたりながら瀬戸内海を眺めるのは、至福のひと時です。

出港してすぐ、宇野港が見えてきます。

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実は正面一帯にかつては線路が伸びていた。

この写真に写っている正面、大きな建物もありますがこの辺一帯はかつて線路が伸びていました。

宇野駅周辺の1980年代を見てみるとよくわかります…

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1980年、宇野駅周辺の航空写真。写真左側の船が発着しているところで、現在のフェリーも発着している。

あっという間に宇野港に到着。

隣には小豆島からのフェリーが止まっています。

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宇野港に入港。

 

宇野港に残る連絡船の面影

かつて、寝台特急「瀬戸」の終着駅でもあった宇野駅は広大な敷地がありましたが、現在はとてもこじんまりとした1面2線の頭端式ホームしかありません。

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宇野駅のホームは現在、こじんまりとしたホームになっている。

広大な敷地跡は再開発されるか空き地になっていて、今ではほとんど面影がありませんが、駐車場の脇に1か所だけ連絡船当時の遺構が残されています。

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連絡船の遺構。但し書きもついている。

遠くから見る方が構造が分かるので反対側に回ります。

すると…

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連絡船の遺構の姿がはっきりとわかる。

再開発が進む宇野駅周辺にひっそりと佇む連絡船の遺構…なかなか哀愁が漂います。

「宇野駅から連絡船に向けてお客さんの席確保のダッシュがあった」話を知る構造物はここにはもうほとんどないのはないでしょうか。

どうやら保存会の方が保存しているようで、ひっそりと愛を感じますね~

 

現在では輸送手段としての「宇高航路」は終わってしまいますが、かつての栄光を想いながら跡を辿ってみるのもなかなか良いものです。