標高日本一の松本空港
海沿いや平野部に立地するイメージが強い空港ですが、山々に囲まれた長野県松本市に日本で最も標高の高い空港があります。
標高はなんと657.5m。
海外にはもっと標高の高い空港もあるものの、スカイツリーの頂上よりも高い場所に位置しています。
高所かつ山々に囲まれる独特の地形、そこから生じる予想できない風向の影響で、松本空港は「日本一着陸が難しい」とも言われています。
今回はそんな松本空港はどのようなところなのか、ご紹介します!
- 標高日本一の松本空港
- 周囲を山に囲まれた独特な地形
- 着陸時に頼れるシステムが利用できない
- 背景が「山」、異色の離陸風景
- こじんまりとした旅客ターミナル
- 滑走路のすぐ近くを散歩できる!
- 無料駐車場も完備、利用客も増加中
周囲を山に囲まれた独特な地形
松本空港(愛称:信州まつもと空港)は松本盆地の中央部に位置しており、周囲を標高1500~2500m程度の山々に囲まれています。
少し空から(と言ってもgoogle earthですけど!)見てみます。
素人が見てもなんか着陸しづらそう…
もう少し近づいて空港の形を見ます。
2000mの長さで1本の滑走路が南北に延びますが、ターニングパッドと呼ばれる飛行機が方向転換するスペースも設置されていません。
離陸する際、旅客機は滑走路の端まで行って限られたスペースで「クルン」と自力でターン、一気に加速して飛び立ちます。
この滑走路は1994年に長さが1500mから2000mに伸び、ジェット機が離着陸できるようになりました。
通常1500mの長さの滑走路があればジェット機の離着陸も問題ないのですが、この空港は標高が高く「空気が薄い」ため、エンジンの出力などの関係でこの距離をとらないとジェット化できなかったのです。
着陸時に頼れるシステムが利用できない
「日本一難しい」と言われる松本空港の着陸ですが、その要因の1つに「計器着陸装置」が設置されていないことが挙げられます。
計器着陸装置(けいきちゃくりくそうち、英語: Instrument Landing System、ILS)とは、着陸進入する航空機に対して、空港・飛行場付近の地上施設から指向性誘導電波を発射し、視界不良時にも安全に滑走路上まで誘導する計器進入システム。(Wikipedia)
あまり筆者は航空業界に詳しいわけではありませんが、簡単にこの「計器着陸装置」の機能を見てみます。
この装置が電波で滑走路への侵入方向や高さ、距離など航空機側へ伝えることで、航空機側はそれに沿って着陸することができるようになります。
状況によりますが、現在では航空機側と空港側の設備が充実していれば自動的に着陸することもできます。
一方で松本空港は、ジェット機の離着陸に対応している国内の空港の中で唯一、計器着陸装置が設置されていません。
松本空港にこの装置を設置しても山々に遮られ、使用できないようです。
そのためこの空港に着陸する場合、事実上パイロットの目視・手動のみで着陸しなければなりません。
なおかつ松本盆地は高い山々に囲まれて、実際の空港周辺の風向が予想しづらい(ビル風のイメージ)ので、さらに着陸(離陸)が難しくなります。
滑走路が南北にありながら、実際に東西から強い風が吹くケースもあり、予想以上に困難な空港なのかもしれません。
背景が「山」、異色の離陸風景
筆者の出身はもともと東京なので、空港と言えば「羽田空港」のイメージが強いですが、松本空港では高い山々をバックに航空機を見られる、ある意味貴重な体験ができます。
松本空港の旅客ターミナル3階には展望デッキがあり、休日の航空機の出発・到着時には家族連れなどの見物客の姿が見られます。
ちょうど筆者が展望デッキに上がると新千歳空港行き(?)の便が離陸していきました。
松本空港を発着とする航空会社はすべてFDA(フジドリームエアラインズ)で、エンブラエルのE170とE175という機種で運航されています。
FDAが所有する航空機は機体ごとにE653系のように色が違いまして、「今日は何色が見られるのか」楽しみにできます。今回はブルー。
カラーバリエーションが充実しているのは楽しいですよね~
滑走路の半分くらいで離陸している感じです。
続きまして次に福岡便となる航空機が到着。
福岡空港からの折り返し運用(?)みたいです…
着陸時間が早まってしまい、着陸風景は見逃してしまいました。
早着が基本的にない鉄道を趣味の中心にしていると「早まる」という発想が薄れてしまいます。
到着して30分くらいで福岡便として出発するようです。
出発ロビーには保安検査場に続々と人が集まってきました。
乗客の方が乗り込むと出発です。
トーイングカーに押されましてバックしていきます。
そして今度は自力で滑走路へ。
南側から飛ぶようです。
空港というと滑走路まで平行している通路を進むものだと思っていましたが、こういう小さな空港では滑走路をそのまま走って端まで移動することが多いのだとか。
端の方でくるっと向きを変えて、滑走路を猛加速します。
大きな空港のように段階的に速度を上げるのではなく、ほぼいきなり300km/h近くまで加速しているように見えました。
まるで体操選手が「ゆか」の演技をやっているような動きです。
こじんまりとした旅客ターミナル
旅客ターミナルはなんとも三角屋根が特徴的な建物です。
入ると正面に出発ロビーに向かうエスカレーターがあります。
これが三角屋根のちょうど真下の部分です。
一階には小さな売店と手荷物検査場があります。
基本的に1会社の飛行機(JALとコードシェアしていますが)しか来ませんので、至ってシンプルです。
二階に上がりますと、保安検査場と売店、レストランがあります。
保安検査場横にはなぜか木彫りの鉄道車両が置かれています。
この写真では分かりませんが、それぞれに鉄道車両の説明が書かれていて、大変細かい内容まで書かれておりまして、なかなかに愛を感じます。
隣にはちゃんと航空機の方も飾られていました。
ありましたね~JASって…こんなデザインのJALも乗った記憶があります。
電光掲示板は新しいもので、パタパタしたりしません。
この時期は13:00の時点であと1便しかないようです。
松本空港は現在福岡便2往復、新千歳便1往復、神戸便1往復が設定され、季節運航で丘珠便や伊丹便も運航されています。
保安検査場内は座席も多く設置され、ゆったりと待つことができそうです。
保安検査場の反対側は売店とレストランです。
レストランに関してはこのお店しか空港近くにはありません。
レストラン城下町では蕎麦のほか、こんな感じの古典的カツカレーもいただけます。
滑走路のすぐ近くを散歩できる!
さて、旅客ターミナルを出まして周辺を散策します。
松本空港の周辺は信州スカイパークという運動公園として整備されています。
滑走路の近くにも通路があり、離発着時は 迫力ある景色を見ることができそうです。
自転車も借りることができるので、サイクリングも楽しめます。
ちょうど旅客ターミナルの反対側には小さく松本空港の滑走路が再現されています。
子供の頃来ていれば、自分が飛行機になり切って「ブーン」と言っていたに違いありません。
ちなみに滑走路の標示が黄色なのは 、降雪時の視界を考えてのことらしいです。
無料駐車場も完備、利用客も増加中
一時は定期旅客便消滅の危機にあった松本空港も、最近では神戸便が就航するなど利用客も右肩上がりに回復し始めています。
何よりも魅力なのは駐車場が無料で使用できることです。
以前は満車になることもありましたが、第二駐車場も整備されたので改善されてきています。
アクセスは松本駅からバスに乗るのが一般的ですが、最寄り駅は篠ノ井線村井駅で、徒歩46分です。
物好きな方は挑戦してみてください!
なかなかに個性的な地方空港ですが、長野県にある日本一空に近い玄関口をご紹介しました。
筆者はまだこの空港をエアラインとして利用したことはありませんが、晴れていれば北アルプスの絶景を空から見られること間違いない無し!
機会があったら利用してみてください!