世界初のハイブリッド気動車キハE200形
近年急速に普及し始めている「ハイブリッド気動車」。
先日量産化が決定したJR東海の新型車両HC85系も、このハイブリッド気動車にあたります。
ハイブリッド気動車とは、鉄道車両に蓄電池とエンジンおよび発電機を搭載したもので、エンジンで発電機を回し電気に変え、余った電気を蓄電池が回収して再利用する仕組みになっています。
今回はこの「ハイブリッド気動車」、世界初の営業車両である小海線のキハE200形に乗車します!
前回↓
実は稀少!たった3両の製造で終わったキハE200形
世界初のハイブリッド車両として開発されたキハE200形は、小淵沢ー小諸を結ぶ小海線のみで運用されています。
この車両はJR東日本に3両しかいない希少車種で、小海線の中でも珍しい車両となっています。
在籍している3両のうち、2両が基本的に運用に入りますが、多客時に運転される臨時普通列車「八ヶ岳高原号」で走行することもあります。
車体には「HYBRID」の文字、HB-E300形と連結可能
外観は青と黄色を基調とした先進的(?)なデザインで、車体側面に「HYBRID TRAIN」と書かれています。
停車時はアイドリングストップしているのでとても静かで、電車のような感じです。
この車両は、基本的な機構が同じである「リゾートビューふるさと」に使用されるHB-E300形と連結することができ、実際に連結して走行した実績もあります。
JR東日本のハイブリッド車両は「HYBRID」という文字をやたらと強調する節があって、この後に登場したHB-E300形の側面にも書かれています。
この車両の形式は「キハ」ですが、この後に登場したハイブリッド車両は「HB-」を頭につけるようになったため、ハイブリッド車両のなかで唯一「キハ」を名乗る車両でもあります。
JR東日本がハイブリッド気動車の開発に乗り出したのは2003年。
試作車としてキヤ991形という車両が開発され、そのノウハウを受けてキハE200形が作られました。
このキハE200形も「営業列車としてお客さんを乗せつつ実験する車両」として位置づけられていて、実際に長期にわたる試験が行われていました。
3両しか製造されなかった理由も、試験車両としての側面が強かったからなのかもしれません。
デッドスペースが多い変わった車内
車内を見ていきます。
ロングシートと1+2のボックスシートが並ぶスタイルです。
小海線の主力車両キハ110形と同じような構成ですが、車内は少し広い印象があります。
車両の中央部には機器のスペースがあります。
車内が空いていればいいですが、この周辺は混雑時に少し窮屈に感じました。
座席は青を基調とするデザインで、座り心地は首都圏のE231系と余り変わりはありません。
個人的にはキハ110系より広く感じ、思ったよりは快適です。
続いて連結部分を見てみます。
運転室は半室になっていて、佐久平駅周辺の混雑する区間ではこの解放された方の半室にもお客さんが立っていました。
運賃表の下にLED案内表示器が設置されているのが特徴的です。
なんかこう、登場した時代がそうなのかもしれませんが、微妙に古い機器と新しい機器が混じっている感じがあります。
「世界初」ということもあり、この車両は鉄道友の会からローレール賞をもらっています。
ドアも特徴的で、車外は黄色ですが車内も黄色で塗られています。
そして足元にご注目……
微妙に段差があるのです。
バリアフリーを意識しているらしいのですが、とても微妙な広さで低くなっているので(筆者は走行中この隙間に足をとられてコケました(笑))お気をつけください。
トイレの近くには、この車両が今どうやって動いているかを表示するモニターがあります。
モニターが暗いですが、「赤い矢印」にご注目。
駅の出発時にこのモニターを見てみると良くわかります。
実際は走行音でも分かるので、どの段階でエンジンが起動するのかぜひリスニングしてみてください!
ハイブリッド車両で小海線を冬を堪能
キハE200形が小海線の全区間を走行する時間を狙いまして、小諸駅12:02発の普通列車小淵沢行きに乗車します。(毎回この運用に入るかどうかは定かではありません)
小諸駅から新幹線の乗り換え駅である佐久平を通り、中込駅までの区間は、小海線で最も混雑する区間です。
地元の方の足として使われていて、どの時間でもそこそこの混雑があります。
中込駅には車両基地があり、小海線の車両はすべてこの小海線営業所の所属です。
奥には観光列車HIGH RAIL 1375もいます。
給油の設備もありますね~
ここから先は八ヶ岳方面に向かってどんどん山を登っていきます。
中込駅を過ぎたあたりからは、後方展望をすると前に雄大な浅間山の景色を望むことができます。
しばらく進むと、小海線の名前の由来となった「小海駅」につきます。
こちらも運行の拠点となっている駅ですが、中込駅よりは利用者が少ない印象です。
車内が空いてきたところで、小諸駅で購入した桜餅を。
小諸駅隣にはカフェがあって、テイクアウトで様々なスイーツを買うことができます。
キハE200形は窓が広いので車窓も楽しむことができます。
小海線は千曲川の上流部に向かって進みます。
段々と標高を上げ、高原地帯へと入っていきます。
夏は涼しくて良いのですが…
なんと日当たりが良い川でも凍ってしまうほどの寒さなのです。
この周辺の川上村はレタスの生産量日本一で、長野県で唯一、埼玉県と接する自治体です。
意外や意外、長野県は埼玉県のお隣なんですよ~
信濃川上駅を過ぎると、いよいよ野辺山が近づいてきます。
街が見えてくるとJR最高の標高をもつ駅、野辺山駅に到着です。
実際は立山黒部アルペンルートの室堂駅の方が標高は高いので、良く見ると「日本最高」ではなくちゃんと「JR最高」と書いてあります。
一般の方からすると小海線の終点のようなイメージがあるかもしれませんが、途中駅の一つです。
ここから先は、夏なら観光客が多く利用する区間です。
冬の八ヶ岳が広がります。
正直言えば夏より見た目が綺麗な感じで、小海線の車窓はオフシーズンも楽しめると思います。
野辺山ー清里間には有名なJR鉄道最高地点(1375m)があります。
神社もつくられていて、一つの観光スポットになっています。
良く勘違いされるのですが、ご神体は車輪ではなく石に埋め込まれたレールです。
但し書きには「二つの車輪のように夫婦が仲良く」とありますが、穿った見方で見れば1067mmの線路幅くらいの距離感が大事なのかもしれません。
さておきまして清里駅で対向列車との行き違いです。
右手が主力車両のキハ110。
並ぶとキハE200形も近未来感があります。
鉄道最高地点から先、小淵沢駅まではずっと下りなので、ほとんどモーターと重力だけで動いていきます。
エンジンの音は全然聞こえないので、ものすごく車内は静かです。
遠くに富士山を眺めつつ、最後の名所「小淵沢大カーブ」に差し掛かります。
車窓からは雄大な八ヶ岳が見え、最後まで絶景を楽しむことができます。
ふりかって見ると、何やら怪しい色をしたE257系が…
踊り子用のE257系の長野疎開回送だったようです。
本当に到着間近まで車窓を眺めていい思い出ができました。
小海線の歴史を振り返れば、SL走ってたり電車+客車+ディーゼル機関車で走ってみたりと個性的な列車が多いですが、このキハE200形もまたその一員として、今後も活躍しそうです。
リニューアルされた小淵沢駅には改札外に展望台があり、ここからの景色は大変綺麗です。
晴れていれば富士山を望むこともできますよ~
おまけ:小淵沢駅「丸政」の「カレー黄そば」が美味
完全におまけなんですが、小淵沢駅の立ち食い蕎麦「丸政」(駅弁「元気甲斐などで有名)では、そばやうどんのほかに中華麺の「黄そば」を頼むことができます。
筆者おすすめの一品は「カレー黄そば(400円)」。
和風だしにカレーをかけ中華そばを入れるという何とも国際的なメニューですが、何とも病みつきになる、中毒性の高い味。
観光客の方が「山賊そば」をオーダーしている傍ら、私はこの駅に来ると毎回このメニューを食べています……
皆様もぜひ一度ご賞味あれ!