解体回避!関電トンエルトロリーバス最後の1台
かつて長野県大町市の扇沢から黒部ダムを結んでいた、トロリーバス。
多くの方に愛された扇沢ー黒部ダム間のトロリーバスは2018年に廃止され、現在では電気バスが同じルートを走っています。
大町市は当初、費用の問題から当時使用していたトロリーバスの車両ををすべて解体する予定でした。
ところが、保存の声が高まり、解体されずに残った最後の1台をクラウドファンディングをした結果、目標額を上回る資金が集まりました。
クラウドファンディングの開始から3日間で目標であった180万円を突破、その後も資金が集まり保存のほか、維持管理費も捻出できる見通しとなりました。
今回は現役で黒部のトンネルを駆け抜けた、トロリーバスの最後の休日を見ていきます。
鉄道とバスのハイブリッド、トロリーバス
トロリーバスとは、バスと電車の中間のような乗り物で、パンタグラフがついています。
架線がついていてそこから給電し、ゴムタイヤで走行します。
扇沢―黒部ダム間は「公道」を走行することはありませんのでナンバープレートはついていません。
走行機器類も鉄道とバスを半々で装備している感じです。
こちらの車両は、最近の鉄道車両に幅広く使われるVVVFインバータも搭載しています。
この路線はいわゆる「無軌条電車」という扱いだったので、この車両を運転するには電車の免許と大型二種免許の2つが必要です。
これはトロリーバスのデメリットの一つで、運転士の育成に手間がかかるんですよね~
トロリーバスに乗車!
信濃大町駅からバスで40分、松本・長野市内から車で1時間の扇沢駅が出発点です。
電車の駅というよりはアトラクション乗り場のようなシステムで、バスの準備が整うと改札がはじまります。
訪問時はこの扇沢―黒部ダム間をトロリーバスが走行する最後の休日でした。人がいっぱい。カウントダウンの看板も出ています。
通常時も結構混んでますが、団体のゲートが別にあるのでバスツアーなどで来られた方はすんなりと乗車することができます。
車両の側面のデザイン、下に黒い線が4本あります。
そう、これは黒部第四ダム(一般的に黒部ダムと呼ばれる大きなダム)の「くろよん」を表しているんですよ~
扇沢駅を出るとすぐにヘアピンカーブがあり、急勾配を登っていきます。
普通の鉄の車輪ではないのであっさりと登り切り、トンネルに入ります。
車内の造りはバスに近いです。
しかし走行音はバスというより電車ですね~初期のVVVFインバータの音がバスの車内に響き渡る、不思議な感じ。
全線にわたって単線です。横幅は1台分しかありません。
この車両が走行する関電トンネルは、難工事を乗り越えたことで有名です。
小説・映画の「黒部の太陽」はこのトンネルが舞台になっています。
建設途中「破砕帯」と呼ばれる、断層の活動でもろくなったボロボロの岩(実際は砂のような手触り)に差し掛かり、そこからトンネルが崩れたり、水が大量に噴き出したりして多くの方が亡くなりました。
そんなトンネルを家族旅行から校外学習やら旅行やら実習やらで、何回も快適なバス(?)で移動できたのもこの工事のおかげです…帰りは大体寝てしまいますけど…
途中、列車(?)交換のための信号場があります。
トロリーバスは大体7台と8台が一気に走っていて、この信号場で交換するみたいです。
特殊な閉塞方式で走っているらしいのですが、その辺は疎いので触れません!
黒部ダム駅に到着。
地下鉄の駅を彷彿とさせる雰囲気です。
黒部ダム駅には「ありがとうトロバス」として歴代の車両が紹介されていました。
黒部ダムはシーズン最後なので観光放流はありません。
ただ、雪景色もなかなか味わいがありますよ~
立山黒部アルペンルートはラストシーズンも美しい
立山黒部アルペンルートはこのトロリーバスだけでなく、ケーブルカーやロープウェイを乗り継ぐ観光ルートです。
富山県側にもトロリーバスが走っていて、こちらは現在日本唯一のものです。
筆者はロープウェイを登り切った大観峰(2316m)や、立山の中腹の室堂(2450m)から眺める景色がおすすめです。
特に冬がおすすめで、黒部ダムの観光放流がない代わりに雪山を気軽に眺めることができます。
ラストシーズン、麓で雪がなくても観光ルートは雪の中。
スニーカーで行くと大惨事になるので、ラストシーズンはスノーシューズで!(体験談)
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