toremorの旅手帳

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高額運賃と噂の地方私鉄に乗車する…【松本電鉄上高地線の謎①】

松本駅に乗り入れる地方私鉄「上高地線」

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松本電鉄上高地線。かつて新島々駅よりはるか先、高山まで通じる計画であった。

松本駅と新島々駅の14.4kmを結ぶ「松本電鉄上高地線」

「上高地」という名前がついている割には「上高地」までは行かず、島々の集落からは程遠い場所に終点の「新島々駅」があるという少し変わった路線です。

 

この時点でなんだか訳ありな気がしますが…

今回はそんな「謎」の多い上高地線に乗車していきます!

 

 

地元でも「高額」と噂される気になる上高地線の運賃は?

駅の案内では「松本電鉄上高地線」とありますが、現在は「アルピコ交通」が上高地線を所有しています。

松本電気鉄道が2007年に経営破綻、その後の経営再建で統合などを行い「アルピコ交通」と社名を変え、現在に至ります。

 

経営破綻をするくらいには上高地線の乗車人員は減少傾向ですが、近年では少し増加傾向になっています。

「アルピコ交通」は「松本鉄道上高地線」と公称していますがこの呼び方は定着しておらず、駅の案内では「松本電鉄上高地線」「上高地線」と呼ばれています。

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上高地線の時刻表と運賃表。日中は40分間隔で運転されるが、なかなかの高額運賃である。

経営的に苦しいからか、運賃が非常に高額なことが特徴です。

14km先の終点の新島々駅まで乗車すると、なんと710円!

初乗りはそうでもないですが特に後半の伸びが素晴らしい…

 

同じ距離で比較すると、東京近辺の高額鉄道として知られる北総線の~14km580円(~17km630円)と比較してもはるかに高い運賃体系です。

 

筆者はこの路線の沿線にお住いの中学生や高校生に話を聞いたことがありますが…

「とても高くて乗れない」「遠いけれど大糸線を利用している」「車か自転車しか使わないので乗ったことがない」とあまり利用されていない様子でした。

多分これがリアルな声なんですよね~

 

筆者は1日乗車券を購入しましたが、こちらは1420円。

新島々駅と松本駅を往復すれば元が取れます。

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上高地線の1日乗車券。

上高地線に乗車する!

松本駅から上高地線のホームに進みます。

松本駅では大糸線と上高地線は離れたホームから発着します。

これは大糸線がかつて「信濃鉄道」だった頃の名残ですね~要は私鉄のホームなのです。

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上高地線は跨線橋を渡った先、7番線から発着する。

上高地線はかつて、国鉄線からの直通列車も運行された実績がありますが、現在は直接線路はつながっていないようです。

 

車両は京王井の頭線の旧3000形の中間車を改造したものが使わています。

東京近辺にお住いの方なら懐かしいと感じるかもしれません。

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上高地線3000系電車。

京王が車両を改造したうえで譲渡するシステムだったので、地方私鉄にとても人気があったのですが、最近では全国的には老朽化で少しずつ数が減ってきている車両です。

 

基本的にワンマン運転の2両編成で、各車両の真ん中のドアから乗り一番前のドアから降ります。

内装は現役時代とそこまで違いはありませんが、モニターや運賃箱が設置されています。

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3000系の車内と網棚の上に設置される観光用の案内モニター。トレインビジョンではない。

先頭部分の機器類を見ていると、座席下のヒーターの名残があります。

なんとも器用な改造だな~と思いますね。

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運賃箱の隣の機器の下には座席のヒーターの跡が残っている。

車内はなんとWi-Fi完備!

流石のアルピコ交通、高速バスを運行しているだけあってこういう設備には強いんですね~

こういうサービスはJRの普通列車でも普及させてほしいと個人的には思います。

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Wi-Fi完備。

途中しばらくは住宅街の中を走行します。

駅間距離もとても短いのでバスに乗っているような感覚です。

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住宅街を抜けていく。

途中の北新(きたにい)・松本大学前で大半の人が降りていきました。

ハイシーズンは上高地までの観光客がメインですが、オフシーズンなので地元利用が多い印象。

沿線には中学・高校や大学があるので、平日は通学客の利用が上高地線のメインなのかもしれません…

新村駅で途中下車

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新村駅。なかなか味のあるホームである。

時間的には復路に寄ったのですが、途中新村(にいむら)駅で下車してみました。

新村駅は車庫のある比較的大きな駅で、松本電鉄の前身である筑摩鉄道の本社がありました。

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駅前に残る筑摩鉄道の社章。

構内には貨物用のホームと思われる部分が残っています。

木造の詰所も残っていてなかなかに昭和の雰囲気が残っていますね。

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木造の詰所と貨物ホームの跡。

車庫を覗いてみると何やら軽トラを改造したと思われる個性的な保線車両が…

大正時代にアメリカから輸入されたED301電気機関車(もともと大糸線の前身信濃鉄道向けに導入され、各所で活躍の後松本電鉄へ…2007年から除籍され静態保存されている)も見られます。

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軽トラを保線用に改造した「迷列車」に大正生まれの電気機関車、木造貨車も残っている。

「青ガエル」こと元東急5000系や「国鉄電車の祖」元デ968(現ハニフ1)も保存されていましたが、それぞれ赤城高原、鉄道博物館に移設されています。

上高地線自体、1921年開業とかなり歴史の深い路線なので、価値の高いものも残っていたのかもしれません。

 

夕方に訪れたので転轍機標識が光り始めて雰囲気が良くなってきました。

鉄道の分岐器がどちらの方向に繋がっているかを示している標識で、ローカル線ではしばしば見かけられます。

 

この「S」のマークは「スプリングポイント」の意味で、分岐する方向が基本的に固定されているタイプのものです。

分岐していない方向から列車が来た場合、列車自身がポイントを押して一時的に反対方向に切り替わりますが、一定時間が経つと、ばねを使って元の方向に戻ります。

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発条転轍機標識が印象的な新村駅。

 新村駅は上り列車と下り列車が行き違いを行う駅になっています。

基本的に左側通行で、分岐の向きが決まっているのでこういう分岐器が使われているのですね~

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左側からは奥に松本方面の列車、右側からは手前に新島々駅方面の列車が発車する。

2017年まで開業当時の旧駅舎が残存していたそうですが、現在は新しい駅舎に変わっています。

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新村駅の新駅舎。筑摩鉄道時代の案内図のレプリカも展示されている。かつては松本から浅間温泉まで路面電車が運行されていたが、現在はバス転換されている。

 

この地図、見づらいですが松本から浅間温泉まで結んでいた路線が書いてあります。

当時は「松本電鉄浅間線」という路面電車が走っていたのです。

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浅間温泉駅の跡には案内板が書かれている。軌道跡は道路に転用され、現在ではバス転換されている。

この「浅間線」も壮大な計画が持ち上がったことがありまして、峠を越えて現在の上田電鉄、廃止された「青木線」と直通して上田までつなげるという……

当時の鉄道の計画は夢があって、実現可能性は置いておいて楽しいものがあります。

 

新村駅近くには筑摩鉄道の創始者である「上條信」のモニュメントが置かれています。

現在のアルピコグループの始まりはこの人からといっても過言ではありません。

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筑摩鉄道の創始者「上條信」のモニュメント。

 

次回予告

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松本電鉄は自前の除雪車も所持している。

今回は年末スペシャル…ということで連載でお送りします。

 

さて、次回は松本電鉄の終点、新島々駅へ向かいます。

「新」の文字があるだけあって、かつては新島々駅の先には島々駅が存在していました。

 

廃線区間を追うとともに、「なぜこんな中途半端」な駅で鉄道が終わっているのか、背後にある壮大な計画とその真相に迫ります!

そして出ては消えていったこれまた壮大な延伸計画についても見ていきます!