toremorの旅手帳

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【鉄道と地学】東海道線「丹那トンネル」をS字に曲げた理由

1934年、今から85年前に当時日本で最長の複線トンネルが開通しました。

「丹那トンネル」です。

 

丹那トンネルには、最初は直線でトンネルを通そうとしたのに、

曲げて作られた部分があります。それはなぜなのか。

 

東海道線の所要時間短縮に、威信をかけて作られたドラマには、

今を生きる我々が「想定しなければならない」問題が隠されています。

 

 丹那トンネルとは?

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グーグルマップ俯瞰。手前が現東海道線ルート、奥が旧東海道線ルート(御殿場線)。手前の赤い部分が丹那トンネル。

丹那トンネルは、東海道線熱海ー函南間を通る長大なトンネルです。

総延長7804m。昭和9年にして最初から「複線」で建設されました。

現在でもルートの違いで30分程度の時間短縮が得られます。

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旧東海道線ルートが分岐する沼津駅は木造の屋根である。

体感的にはこのトンネル越えると、「東京エリアに来たな~」って感じです。

結構この区間の普通列車は混んでるんですよね…

 

大体はまっすぐに作られているのですが…

 

トンネルをS字に曲げた理由

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大雑把に赤い部分が「丹那断層」。矢印は動いた向き。断層は線ではなくて面。無数の小さな傷からつくられている。

実は、工事の途中に断層ができてしまったのです。

え?

断層ができた?

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つまり「地震が起きた」ってことです。

 

地震は簡単に言えば地面がバキっと割れて、

エネルギーの一部が地面に伝わると揺れるものです。

 

震源付近は震度6~7相当。

マグニチュード7.3相当の「直下型地震」です。

この地震は「北伊豆地震」という災害になっています。

 

そのバキッといってしまった痕がこの「断層」です。

 

これがなんと左右方向2.5mもずれちゃいました!

トンネルがつながらなくなってしまったので「S字」に曲げて、

無理やりつなげたのです。

 

このほかにも数々の断層やもろい地質が、

丹那トンネルを難工事にさせてしまいます。

 

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この辺りは「スポンジ」のような地層をつくる、「火山」が多いので

(周辺には富士山、箱根もあります!)

大量の地下水を蓄えていたのです。

 

そこに断層が何本も…断層のある所は何回も地層が動くので、

とてももろくなっています。

 

そのためトンネルでは、たびたび水の流出事故が起こり、

現在でも地下水は出続けています。

 

実際に乗っても曲がってるのがわかるのか?

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何度か乗りましたが、筆者わかりませんでした。

ビデオ回しても真っ暗でよくわからない!

 

列車もあまり減速せず通過するので、実際はまっすぐのように感じます。

(何度か改良工事がされているそう)

 

 

新丹那トンネルはまっすぐ!?

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新丹那トンネルは、この地震の後につくられましたのでまっすぐなんです。

 

でも…

活断層の中を新幹線が突っ切っているという事実は変わりません。

 

なぜルートを変更することなくつくられたかというと、

「その断層が動くのは今まで700~1000年周期だったから、しばらくは大丈夫じゃね?」

という発想があったからです。

 

何らかの原因で断層がその周期とずれて動いたらどうするのか?

現在は北伊豆地震の時に比べて人口も多いはずです。

考えるだけでも恐ろしいですよね…

 

総括

このように、「地質を考えないで鉄道を開発した」事例はまだまだたくさんあります。

今までたまたま大丈夫なだけのかもしれません。

 

ただ怖がるだけでは開発もできませんし、

大事故も防がなくてはならないのです。

 

どうやってこの災害の多い国で開発すればよいのか?

目をそらさず考えることが「日本の鉄道は安全」というブランド力を上げることに

つながるのではないでしょうか?

 

鉄道と地学シリーズについて

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断層によって地層が「グチャグチャ」になった痕。筆者が実習中に見たもので、これは丹那断層のものではありません!

このコーナーは「かけだし地学専攻」の筆者が、身近な鉄道と地質にまつわる話を紹介していう!というものです。

 

なるべく専門用語は使わずに説明していくつもりですが、分かりづらい表現があったらコメントなどでお知らせください。