山奥に突如現れる新幹線駅
高崎―金沢間で開業している北陸新幹線ですが、高崎の一つお隣の山の中に「秘境駅」と称される新幹線の駅があります。
その名は「安中榛名(あんなかはるな)駅」。
平均乗車人員は北陸新幹線でワースト1位、JR東日本の新幹線駅でもワースト2位とトップクラスの利用者の少なさとなっています。
今回は安中榛名駅の全貌とその駅の周辺はどうなっているのか、見ていきます!
安中榛名駅を観察!
安中榛名駅にやってまいりました。
当駅までの所要時間は北陸新幹線「あさま」号で、東京駅から約1時間です。
しかし、「あさま」でも当駅を通過する列車が多く設定されるほど利用客は少なく、1日に停車する新幹線は12本しかありません。
(参考にならないかもしれませんが飯田線天竜峡駅、天竜峡方面の列車の本数と同じです)
落ち葉の吹き込むホーム
北陸新幹線によく見られる2面2線の小さな駅ですが、ホームドアは完備され、ホームの端までの屋根はあるようです。
印象的なのは季節柄ですがホームに吹き込んでいる落ち葉…
どことなくローカル線の駅のような雰囲気があります。
東京方面に停車するあさま号が入ってきました。
停車している新幹線を見ると、この駅は結構カーブがきつい駅であることが分かります。
またこの駅は斜面の中腹に立っており、東京方面側は崖になっています。
崖の方には軽トラが停車中…ホームの端では新幹線車両と軽トラの並びを撮ることができました!
少し1番線(長野・金沢方面)のホームを散策してみます。
駅名標を見ると英語表記はAnnakaとharunaの間に‐はなく、"Annnakaharuna"になっています。
「榛名」と名前がついていますが、当駅から榛名山にアクセスする路線バスはなく、安中榛名駅からはタクシーで移動するほかありません。
ホームの中ほどに階段とエスカレーターがあります。
長野方面のホームからのエスカレーターはなんと下り専用。
やはり新幹線通勤を意識しているのでしょうか。
不可解なスペースの先には…
そして変わっているのがエレベーター乗り場。
表示を見る限りエレベーターは待合室の中に設置されているようです。
何だこのスペースは…
待合室と呼べるほどの座席はありませんが、随分と開放的な造りです。
ベンチもなかなかお金がかかっていそうですねぇ…
座布団は地元の方のご厚意によって設置されているようです。
この待合室、実は吹き抜けになっていて駅本屋とつながっています。
館内は暖かく、全体で空調が効いている豪華な造りです。
吹き抜けから眺めてみると、どことなく平成初期っぽい感じのデザインが良い味を出しています。
雰囲気は駅というより、地方空港みたいな感じがあります。
前後左右、坂の途中にある立地
では、反対側のホーム、2番線に回ります。
造りは基本的に1番線と同じですが、待合室は普通の造りになっています。
長野方面の先にはトンネルがありますが、ここから軽井沢駅までトンネル、上り勾配が連続します。
安中榛名駅を通過する列車はこの区間の上り勾配に備えて、当駅より高崎側から「助走」をつけて走行していますが、当駅に停車する列車は出発後、過酷な加速を強いられることになります。
2番線から1番線側を見ると視界が開けています。
2番線側は崖になっているのと対照的で、この駅が斜面の中腹にあることが良く分かります。
さて、改札口へ続く通路はというと至ってシンプルですが、車両の形をした案内表示が印象的です。
自動改札は2つしかありませんが、利用実態には見合っているのかもしれません。
改札口前には今時珍しい、伝言板がありました。
長野方面のホームから吹き抜けの待合室を経て、エレベーターを降りると改札口の前に出てきます。
化粧室が改札の内側にしかないのは難点ですね…
改札口前の「おぎのや」は周辺唯一の飲食店
改札を出ますと、変わった照明が印象的な売店があります。
釜めしで有名な「おぎのや」と駅レンタカーが並んでいます。
改札前に飲み物の自動販売機は無く、駅周辺にも見当たらないので、飲み物が欲しい場合は改札内の各ホームに1基ずつある自動販売機を使うほかありません。
後でご紹介しますが、これ以外の商業施設は駅周辺にはありません。
しかしこの辺りもバブルあたりの雰囲気が今でも漂っていますねぇ…
改札外に待合室があり、こちらはwifiも完備。
贅沢なベンチがこちらにも並べられています。
停車する列車の発車時刻が近づくとこちらに数組のお客さんが入っていきます。
お客さんは時間になると改札口へ…地方空港や港の雰囲気に似ています。
この駅はなんとみどりの窓口が現役で稼働していますが、利用客は少なく将来無くなる可能性もありそうです。
まるで地方空港?衝撃の駅前風景
駅の建物を出ますと、目の前には駐車場が広がっています。
閑散とした駅構内とは対照的に、結構な数の車が止まっています。
平日の昼間に訪れたので、ここに止まっている車の持ち主は、この駅から新幹線通勤をしていらっしゃる方も多いのかもしれません。
しかし、駅の利用者に対してこれだけ多くの車がいるのには納得の理由があります。
駐車料金が無料なんですよね~
パークアンドライドのように使うなら、街中に駅が無くても(その方が渋滞が少ないし)良いのかも?
ちょっと良さそうな点も見つかったことで、まずは駅の北側を覗きに行きます。
駅入り口の脇に案内のない怪しげな地下道(?)があるので進んでみます。
先ほども述べたように、安中榛名駅は斜面に位置しているので、反対側は階段を上る必要があります。
こちら側の出口周辺ですが…
本当に何もありません!
まあこちら側は山側なので開発のしようがないのかもしれませんね~
北側は街灯もほとんどなく、ただの何もない空間でした。
気を取り直して反対側、南側のメインの駅前に戻ります…
駅周辺は確かに建物はあまりないですが、道路は整備されています。
ラウンドアバウトの交差点がありますが、これは最近整備されたようです。
駅前にビジネスホテルやコンビニなどは一切ありません。
少し進むと何やら廃墟めいた建物があります。
実はこちらにかつて、デイリーヤマザキがあったそうですが2013年に閉店。
以降駅周辺に商業施設はひとつもないそうです。
こちらのブログを見ると現役だった頃のコンビニの写真があります。
まるでゴーストタウンのようですが、もう少し進むと住宅街が広がっています。
こちらの住宅街はJR東日本が開発したもので「びゅうヴェルジェ 安中榛名」という名前で売り出され、なんと2016年にめでたく完売したらしいです!
住宅街を眺めた場所は展望台のようになっています。
オブジェは背景の山の形がデザインになっていておしゃれですね~
新しそうな家が多いのでしばらくは人が住むとは思いますが、団地のように高齢化が進んだらこの街はどうなってしまうのか…怖いところでもあります。
駅周辺にはとにかく商業施設がないので、ここにお住まいの方は結局車で安中や磯部の市街に出ないと買い物ができないのだと思います。
そういう点では不便なのではないでしょうかね~
東京駅から約1時間と、新幹線通勤駅としては立地は良い方であるはずですが、個人的には「地元が新幹線駅だけ作って終わってしまった」感じが否めません。
駅と同時に、地元も協力して街を作っていかないと「新駅」を活かせないのではないかと考えてしまいます。
ただ、宅地も完売したようなので需要がないわけではないはずです。
今後どうやってこの駅前が変化を遂げるのか、温かく見守りたい(?)と思います!