toremorの旅手帳

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台風から1年、上田電鉄の現在はどうなっているのか?

「赤い橋」が流された上田電鉄

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上田電鉄千曲川橋梁。

昨年の台風19号の被害を受け、千曲川橋梁の一部が流されてしまった上田電鉄

現在はどうなっているのでしょうか?

取材班(一人)は現場に向かいました……

 

 

現在も上田ー城下間で代行バスによる運行が続く

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一部流失した千曲川橋梁。

上田電鉄は上田ー別所温泉間を約30分で結ぶローカル線です。

昨年の台風19号で、上田電鉄の上田ー城下間にかかる「千曲川橋梁」の一部が流失してしまいました。

現在では堤防の工事と合わせて、橋梁の復旧作業が続けられています。

 

そのため上田駅と橋を渡ってすぐの城下駅の間の路線は、事実上の休止状態となっていて、すべての列車は城下駅発着となり、城下駅から上田駅まで代行バスに乗り換えとなります。

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「丸窓電車」の愛称で親しまれた上田電鉄の車両。なんと現役引退後すべての車両が解体されずに保存されている。

上田電鉄上田駅の現在

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列車の来ない上田電鉄上田駅のプラットホームは、広場として公開されている。

列車しばらく来ることのない上田電鉄の上田駅は、広場として開放されています。

記念撮影ができるパネルや復旧工事の様子などが展示されていて、わずかながら観光客の姿もありました。

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上田駅ホームには復旧工事の状況が展示されている。

そして筆者の目に留まったのはこの鉄道警戒標識

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ホーム先端にある鉄道警戒標識。「台風」の文字がある。

当時のものなのでしょうか、「警戒:台風」の文字でホーム端に取り付けられています。

現在進行形で「台風の復旧工事をしている」という想いをひしひしと感じます。

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上田電鉄上田駅。

上田駅のきっぷ売り場は営業しているようで、券売機も使えるようです。

 

さて、鉄道代行バスは上田駅の温泉口から出発します。

代行バス乗り場に移動すると、そこには想像以上の列が…

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代行バス乗り場は列になっていた。

写真にはありませんが、筆者の背後にもほぼ同じくらいの長さの列がありました。

訪れたのは休日の昼下がりでしたが、代行バスは満席、立ち客もかなりいる感じでした。

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代行バスは通常の路線バスの車両が使われる。

代行バスは、別所温泉からやってきた列車が城下駅に着く時間に合わせて上田駅を出発します。

本来であれば城下駅に到着する列車がそのまま上田駅に到着し、折り返しで運用に入ります。

したがって現状では、普段の上田駅の出発時間より相当前倒しで代行バスに乗車する必要があります

 

仕方ないですけどね~

 

バスに揺られて10分もしないうちに城下駅に到着。

城下駅では臨時の切符販売所が設けられ、こちらでもきっぷの販売をしています。

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城下駅はバスからの乗り換えの乗客で賑わう。

突然ターミナル駅の役割を背負った城下駅、列車の到着とバスの乗り換えが重なると、かなりの人数になります。

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城下駅に停車中の上田電鉄1000系。当駅が臨時のターミナル駅になっている。

 

「赤い橋」の現在を眺める

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千曲川橋梁の流失箇所には近づくことはできない。

一方、流されてしまった千曲川橋梁を眺めてみます。

赤色のトラス橋、1924年開通の歴史ある橋梁です。

 

当時の地方私鉄の橋梁は、国鉄からの払い下げたり、海外製のいわば「お古」の橋梁をかけることが多かったのですが、なんとこの橋は上田温泉電軌(上田電鉄の前身)の独自設計で新造。

 

立派な橋だっただけに流失は残念でしたが、廃線にならず、復旧(というよりは一部新造?)が決定しただけでも嬉しいですね。

 

ニュースでたびたび報じられた鉄道橋の途切れた箇所は、立ち入り禁止で見学もできません。

最も城下駅寄りの一つのトラス(?)が流されてしまったことが分かります。

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千曲川橋梁を下流側に向かって眺める。右端が流失部分。

では反対側に回ってみましょう。

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台風被害の復旧のスローガンは"ONE NAGANO"

近づくとこのトラス橋、結構迫力があります。

かなり重厚な造りで、歴史を感じますね~

 

おお、東急建設も関わっていますね~流石…

後に述べますが上田電鉄は東急系列の鉄道会社です。

 

地域に愛され続ける上田電鉄

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別所温泉駅や上田駅には寄せ書きや折り鶴が飾られている。

上田駅にもその反対の終点、別所温泉駅も寄せ書きやメッセージ、折り鶴が飾られています。

かなり地域住民に愛されているという雰囲気が、一度行っただけでも感じとることができます。

 

事実、上田電鉄の早期復旧のために5万人の署名や3000万を超える寄付が集まり、これを見た上田市も補助金を出すことを決めました。

上田電鉄の千曲川橋梁を上田市が所有する形をとることで、交付税を復旧費用に充てられるようにする、という斬新なアイデアで復旧費用を賄っています。

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別所温泉駅は美しい景観の残る駅舎である。

余談ですが上田市は公共交通機関への投資が熱心で、市が補助金を出してバスの上限運賃を設けたりして、利用の促進をしています。

これはこれからの高齢化社会を見据えたもののようです。

 

地域住民の熱意が自治体を動かし、鉄道を早期復旧させる決断に至った今回のケースは、「公共交通機関としての鉄道の今後のあり方」を考える上でも一つのモデルになるかもしれません。

 

おまけ:長野県と東急創始者の意外な関係【#GoTo慶太キャンペーン】

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先日、Twitterで「go to トラベルキャンペーン」にあやかりまして、一部で#GoTo慶太キャンペーンなるハッシュタグが広がりました。

 

五島慶太とは東急の創始者であり、「渋谷」という町の初代の大家さんともいうべき実業家です。

実はこの方、長野県の出身

 

 

上田電鉄は東急グループ

五島慶太の出身地は長野県青木村で、上田電鉄の前身、上田温泉電軌青木線の沿線が実家でした(現在は青木線は廃止)。

青木線沿線の名湯、田沢温泉は五島慶太ゆかりの旅館も現存しています。

www.toremor.work

 

青木村には五島慶太の資料館が最近オープンしました。

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青木村に今年6月に完成した、五島慶太未来創造館。入場無料。

かつてこの地域では生糸の生産が盛んで、また沿線に温泉地があったことで、上田電鉄の路線がいくつもありました。

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上田電鉄下之郷駅にはかつての路線の分岐の跡が残る。

ところが全国の地方私鉄の例に漏れず、需要の低下から現在は別所線のみになっています。

 

 

上田電鉄は1958年から東急の系列会社となり、現在へ至ります。

今では車両も東急の中古車両を使っています…おかげで車両のvvvf化も達成。

車両内装もほとんど東急時代のままなので、乗車するとものすごい「東急感」があります。

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かつての東急をご存知の方はこの座席でピンとくるのではないだろうか。下之郷駅には「湯たんぽ」こと東急5200系も留置されている。

 

意外な路線も五島に救われた

東急の開発の陰で、五島はふるさと信州の鉄道も支えていました。

 

上田電鉄だけでなく当時私鉄だった現在の飯山線も、五島慶太の支援で廃線を免れた歴史があります。

飯山線は五島の支援の後、国有化され現在に至ります。

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飯山線も私鉄時代に五島の支援で助けられた。写真は森宮野原駅に停車中のキハ110形おいこっと編成。

他にも上田周辺が凶作の際にも、東急で人材を雇って学生の就職を支援したという話もあります。

故郷想いの人物だったんですね~

 

五島慶太が支援した上田電鉄は、現在では地域住民に支えられて復旧工事が進み、2021年度春の開業を目指しています。

 

当ブログでは、上田電鉄の今後の益々の発展をお祈りしております!

 

※ブロガーバトンを渡していただいた方、まことにありがとうございました!

これからも続けられるよう、頑張ってまいりますので今後ともよろしくお願いいたします。