上高地至近にある松本市内の「野湯」
「野湯」とは、源泉が出ているのにも関わらず、それを利用した商業施設が存在しない温泉を指します。
一口に「野湯」と言っても、蛇口からただ流れ出ているだけの温泉もあれば、川の脇から温泉が湧いていて川の水と混ぜれば浸かることができる温泉まで多種多様です。
今回は上高地付近に位置する「頑張れば浸かれる」ぐらいの温泉をご紹介します。
見どころは廃道と野湯のコラボレーションです!
国道から歩いて5分、廃道を歩く
上高地の入口である「釜トンネル」の手前、「赤怒谷(あかぬたに)トンネル」の入口からスタートです。
トンネルの前に車が2台分くらい置けるスペースがありまして、ここから歩くことになります。
トンネルのすぐ脇に廃道(国道の旧道)が続いています。
「廃道」と言っても手入れがされていて、藪こきする必要はありません。
ここはかつて国道だった部分で、この道幅で観光バスがすれ違うこともあったようです。恐ろしい……
途中道に穴が開いていたりと「廃道感」が出ています。
その割にちゃんとポールが立っていまして、人の手が入っていることも分かります。
赤茶けた未舗装(?)の道を進んでいくと、硫黄の香りと何やらモクモクとした煙が……
轍もあるので、ここまで車が入ったことがうかがえます。
近づいてみると、豪快な音と硫黄の香りが漂ってきます。
道路からも煙が出ていますね~
これが赤怒谷温泉です!
廃道の洞門の先には…
豪快にパイプからガスと温泉が噴出していますが、もう少し道を進んでみようと思います。
素晴らしい洞門が見えてきました。
廃道ファンが心躍る理由も良く分かるような気がします。
構造物としての美しさに見とれていたら、鉄骨が見えてきました。
特に損傷が激しい箇所は無く、そこまで危険な感じはありませんでした。
筆者は大学の関係でヘルメットを持っているので、念のため着用して行きましたけれども……
対岸側の岩盤は崩れていて、温泉によってグサグサになっています。
洞門を振り返ると……
良いカーブですね~!
取入隧道の先には、道路の真ん中に源泉の施設があります。
明らかに廃道になってからできたものだと思います。
ここのメンテナンスのために未だに旧道が手入れされているのかもしれません。
どこの温泉の源泉になっているのか、なっていたのか分かりませんが、現役で稼働していました。
引き返して、いよいよ野湯へと向かいます。
野湯「赤怒谷温泉」に浸かる
先ほど、湯気がパイプから出ていたところに戻りましたが…あれ……
おとなしくなってしまいました。
しかし、こういう「生き物」みたいな感じが野湯の魅力なのかもしれません。
川の方へ降りて、温泉を楽しみたいと思います。
ガードレールを跨ぎ、少しずつ高度を落とします。
斜面は急で足元が悪いので、慣れていない方はかなり注意した方がいいです。
沢靴のようなものを履いておくと楽です。
温泉が出ていれば、豪快に源泉が注がれる様子を堪能できそうですが、出ていない方が安心して川まで降りられます。
先ほどまであれだけ温泉が出ていたのでまだ温かいかも…という期待をもとに、温泉が溜まっているところへ向かいます。
少しだけ水たまりから湯気が出ていたので、手で触るとぬるめの温泉に仕上がっています。
深さはあまりないので、足湯することにしました。
肌がツルツル、ほんのり硫黄の香りがいたしまして、温度も温めですがいい感じです。
地球初期の生命は、こういう温泉の湧くところで生まれたという説もあります。
だから気分が良いのか~
景色も良く、豪快に流れる梓川が野湯の雰囲気を盛り上げてくれます。
梅雨時になって梓川の水位が上がってしまうとしばらくはお預けかもしれませんね~。
実際国道から歩いて10分程度でここまで降りられるので、意外と気軽な野湯だと感じました。
話は逸れますが、上高地付近は実は火山地帯で、活火山の「焼岳」や「アカンダナ山」が近くにあります。
上高地の入口にある大正池も、焼岳が噴火してせき止められてできたものです。
そしてその火山地帯をぶち抜いたのが「安房トンネル」。
工事中に水蒸気爆発が発生し、犠牲者が出てルートが変更になった過去があります。
色々と大変な歴史もありますが、このような秘湯を満喫できるのも火山のおかげかもしれませんね~
上高地周辺は秘湯が多数!
今回はかなり個性的な「赤怒谷温泉」をご紹介しましたが、周辺にも多数の秘湯があります。
一軒宿の坂巻温泉や中の湯、新たに掘られたさわんど温泉も魅力的です。
足をのばせば、白濁した温泉の白骨温泉や乗鞍温泉、県境を跨げば平湯温泉もあります。
個性あふれる上高地周辺の温泉、ぜひ堪能してもらいたいです!
↓赤怒谷温泉の位置。「中の湯」バス停から歩くこともできる。