東日本大震災と私
職員室で見せていただいた、炎が海を泳いでいる映像は、
中学1年の私に大きく影響を与えた。
当時新宿にあった校舎の屋上で地震にあった。
中学ではスマホ禁止だったので、何が起こったのか理解できなかった。
一部の教室の屋根が損傷、結局帰れず、私は教室で一夜を過ごした。
東京ですら余震がずっと続き、揺れていなくても揺れているような、
地震に「酔った」感覚を今でも覚えている。
家に帰った後、福島第一原発事故が発生。
見ていられない現状に、
「このことはこれからの世代で向き合って、解決しなくてはならない」
小さいながらにそう私は思った。
そして私は「もっと地球科学へ理解を深めたい」と思い大学へ進学。
来年度からの卒業研究では地震のもとである「活断層」をテーマにするつもりである。
実際に入学してみると
私が最初に驚いたのは、「地学」という防災に直結しそうな学問を専攻する学生であっても、
実際「災害には興味がない」という人が半分以上いるということだ。
興味がないという人に、東日本大震災について聞いてみたところ、
九州出身で「うちは揺れなかったし興味ない」とのこと。
同世代でもここまで温度差があるのかと……
私はそのことを批判するのではなくて、現実としてとらえるべきだと思った。
研究はどうなっているのか
地学の世界で「地震や火山」の研究をしている人たちは、
- コンピューターで数字を解析して巨大地震・火山のメカニズムを知る(テレビとかに出てくる専門家の大多数がこっち)
- 土や石、地層を見て過去の噴火や地震の跡を探す(いわゆるフィールドワーク)
の大きく2つのグループに分けられる。
これらのグループは必ずしも連携が良いとは言えず、両者バラバラで研究していることが多い。
このことには背景があって、まず組織の問題である。
日本には「地震や火山を研究する一つの省庁」が存在しないのだ。
アメリカには地質調査所という機関が備わっているが、
日本では大学ごとにバラバラに研究を行っているのが現状だ。
そのため両グループが連携をとるには、個々のコミュニケーションに依存してしまうのである。
と、ここで。
「気象庁が全部そこらへんやってるんじゃないの?」
と思われた方がいるかもしれない。
実は気象庁の中の人は、地震や火山の専門家でないことが多いのだ。
これはそもそも「地学」を専門にしている人種が極めて少ないことにもよる。
気象庁は起こった現象のデータを発表することはできても、それを考察したり、
新たなモデルを作るのは基本的に大学や研究所にいる研究者なのだ。
ここら辺はなんとも縦割りで、日本における課題の一つでもある。
研究者にとっての東日本大震災とは
実際に被災された研究者の方も多く、「なんとしても次の災害を防ぎたい」という熱意をもっていらっしゃる方も少なくない。
それらの方の地道な研究は将来の人命を救う可能性もあるのだ。
実は、東日本大震災はその「地道な研究」の良いデータとなっている。
というのも、東日本大震災のような巨大な地震が映像や研究データとして観測されたのだ。
言い方を変えると、東日本大震災は研究者にとって「地震の実験」となったということ。
皮肉ではあるが、地震が起こるほど研究が進むという実態もある。
研究者が思っていたこと
福島第一原発付近を調査したチームの一人に話を聞いたことがあるが、ニュースでも言われている通り、
「実際に原子力発電所が津波を被る想定はあった」らしい。
断層を専門にしている研究者は「(国の主要な施設を横切るような)断層を見つけても、なかったことにされる」と話す。
研究者が考えていることをいかに生かすシステムを作るかが重要だと、筆者は思う。
まとめ
- 地学を専攻する学生であっても、災害対策に興味があるのは少数派
- 日本には「地震や火山を研究する大きな組織」が存在しない
- 気象庁にいる人は地震や火山の専門家でないことが多い
- 東日本大震災は研究者にとって「貴重な実験データ」となった
- 研究者の意見は必ずしも国に反映されるとは限らない